エンジニアへの業務委託と源泉徴収|SESの業務名別判定表と消費税込み・税抜きの計算例

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

業務委託の源泉徴収とは?

源泉徴収とは、報酬を払う側が、払う金額から所得税を先に差し引いて、本人の代わりに国へ納める仕組みのことです。会社員の給与から所得税が引かれるのと同じ考え方です。

業務委託とは、雇用ではなく、会社の外の人や会社に仕事を任せる契約のことです。SESでよく使う準委任契約(決まった作業をすること自体に報酬を払う契約)も、業務委託の一種です。

業務委託の報酬は、給与と違い、すべてが源泉徴収の対象ではありません。対象になるのは、所得税法第204条第1項と、その内容をくわしく決めた所得税法施行令第320条に書かれた報酬だけです。

支払先源泉徴収の考え方
個人(フリーランス・個人事業主)所得税法第204条第1項の一覧に入る報酬なら必要
法人(BP企業・一人社長の会社)一覧に入る報酬でも、原則不要(競馬の賞金などを除く)

つまり、SES営業が確認することは2つです。「相手は個人か法人か」と、「頼む仕事は一覧に入っているか」です。

プログラミング・インフラ構築の報酬は源泉徴収不要

個人のエンジニアにプログラミングやインフラ構築を頼む報酬は、原則として源泉徴収は不要です。所得税法第204条第1項と施行令第320条の一覧に、プログラムの作成やシステムの構築が入っていないからです。

一覧に入っているのは、たとえば次のような報酬です。

  • 原稿、さし絵、作曲、デザインの報酬

  • 講演料、翻訳・通訳の報酬

  • 技芸や知識を教える報酬

  • 弁護士、税理士、社会保険労務士、技術士などの報酬

SESの主な仕事である開発・テスト・運用保守・ヘルプデスクは、どれにも当たりません。そのため、SESで個人事業主のエンジニアに開発の仕事を出すだけなら、源泉徴収をしないのが普通です。

仕事の中身が「雇用」に近いと話が変わる

契約書が業務委託でも、実態が雇用に近いと、報酬が給与と見られることがあります。給与なら、給与として源泉徴収が必要になります。

たとえば、勤務時間や作業の手順を細かく指示し、断る自由もない働き方です。このような働き方は、労働基準法の「労働者」に当たると判断されやすくなります。判断のポイントは、業務委託の労働者性の判断基準|偽装フリーランスを防ぐ8項目で整理しています。

SESの業務名別・源泉徴収の判定表

SESの案件でよく出る業務名ごとに、個人に払う場合の源泉徴収の要否をまとめました。開発・インフラ・運用は不要、見た目のデザイン・原稿・翻訳・講師は必要が基本です。

SESで出る業務名個人に払う場合根拠になる区分
プログラミング・システム開発原則不要一覧にない
テスト・品質保証(QA)原則不要一覧にない
インフラ構築・クラウド設定原則不要一覧にない
運用保守・監視・ヘルプデスク原則不要一覧にない
PM・PMO(進捗管理の支援)原則不要一覧にない
システムの画面設計(開発の一部)原則不要と扱う例が多い開発の一部
バナー・広告・ポスターのデザイン必要デザインの報酬
ロゴ・イラストの制作必要デザイン・さし絵の報酬
技術記事・マニュアルの原稿必要になりやすい原稿の報酬
翻訳・通訳必要施行令第320条
社内研修・勉強会の講師必要講演料・知識の教授
経営改善の指導(コンサル)必要になりうる企業診断員の報酬
技術士の業務必要技術士の報酬

※ 支払先が法人なら、どの行も原則不要です。「なりうる」「なりやすい」の行は、契約の中身で変わるので税理士か税務署に確認しましょう。

国税庁が示す「デザイン」の範囲

国税庁の所得税基本通達204−7では、源泉徴収の対象になるデザインの範囲を示しています。工業デザイン、クラフトデザイン、グラフィックデザイン、パッケージデザインなどです。

システムの画面やWebサイトの見た目は、この通達の中に名前では出てきません。ただ、広告やバナーのように「グラフィックデザイン」に近いものは、対象になると考えておくのが安全です。

システムエンジニアのデザイン業務は源泉徴収が要る?

システムエンジニアが開発の中で行う画面設計なら、開発の一部として源泉徴収をしない扱いが一般的です。一方、見た目のデザインだけを別に頼むなら、デザインの報酬として源泉徴収が必要になる可能性が高いです。

分け方の目安は、次のとおりです。

頼む内容見方
画面の項目や遷移を決め、プログラムを作る開発の一部 → 原則不要
Webサイトの見た目のデザインだけを作るデザインの報酬 → 必要になりやすい
広告用のバナー・LPの画像を作るグラフィックデザイン → 必要

1つの契約に「開発」と「デザイン」の両方が入ることもあります。その場合は、見積書や請求書で金額を分けてもらい、デザインの部分だけ源泉徴収するのが実務的です。

国税庁の通達204−8にも、デザインとその施工の対価を一括して払う場合の扱いが定められています。開発とデザインを1つの契約で頼むときも、金額を分けておくと、どこが源泉徴収の対象かを説明しやすくなります。

研修講師・翻訳・技術記事の執筆は源泉徴収が必要

研修の講師、翻訳・通訳、技術記事の執筆を個人に頼むなら、その報酬は源泉徴収の対象です。開発の仕事ではなく、講演料・翻訳・原稿の報酬に当たるからです。

SESの現場では、次のような場面で混ざりやすいです。

  • 客先の新人研修で、エンジニアが1日だけ講師をする

  • 英語の仕様書の翻訳を、開発とは別に頼む

  • 自社のオウンドメディア(自社のWebメディア)に、技術記事を書いてもらう

いつもの開発案件と同じ感覚で払うと、源泉徴収を忘れがちです。別の作業として頼むときは、発注前に「どの区分の報酬か」を確認しましょう。

源泉徴収税額の計算方法と税率

源泉徴収税額は、支払金額が100万円以下なら「支払金額×10.21%」です。100万円を超えるときは、「(支払金額−100万円)×20.42%+102,100円」で計算します。1円未満は切り捨てます。

10.21%は、所得税10%に復興特別所得税(所得税の2.1%)を足した税率です。2027年(令和9年)1月からは、復興特別所得税が1.1%に下がり、新しく防衛特別所得税1%がかかります。

内訳は変わりますが、合計の税率は10.21%・20.42%のままです。2027年以後も、源泉徴収税額の計算式は変わりません。

支払金額(源泉徴収の対象額)源泉徴収税額の計算式
100万円以下支払金額×10.21%
100万円超(支払金額−100万円)×20.42%+102,100円

たとえば150万円の研修講師料なら、源泉徴収税額は204,200円です。式は(150万円−100万円)×20.42%+102,100円です。

消費税を含む?含まない?計算例で比べる

源泉徴収の対象額は、原則として消費税を含めた金額です。ただし、請求書で報酬の額と消費税の額がはっきり分けて書かれていれば、税抜きの額だけを対象にしてよいとされています。

この扱いは、インボイス制度が始まった後も変わりません。国税庁は、分けて書く請求書はインボイス(適格請求書)でなくてもよいとしています。相手が免税事業者でも、消費税相当額を分けて書いていれば税抜きで計算できます。

計算例1:デザイン料30万円(税抜)

個人のデザイナーに、バナー制作の報酬として税抜30万円、消費税3万円を払う例です。

項目分けて書いた請求書税込33万円の1行だけ
源泉徴収の対象額300,000円330,000円
源泉徴収税額30,630円33,693円
振込額299,370円296,307円
  1. 分けて書いた場合:300,000円×10.21%=30,630円

  2. 振込額:300,000円+30,000円−30,630円=299,370円

  3. 税込1行の場合:330,000円×10.21%=33,693円(1円未満切り捨て)

請求書の書き方だけで、源泉徴収税額に3,063円の差が出ます。差し引かれた税は本人の確定申告で精算されますが、手元に入るお金は減ります。相手にとっても、分けて書くほうが負担は小さくなります。

計算例2:研修講師料150万円(税抜)

税抜150万円、消費税15万円を払う例です。請求書で分けて書かれているので、150万円を対象にします。

  1. 源泉徴収税額:(1,500,000円−1,000,000円)×20.42%+102,100円=204,200円

  2. 振込額:1,500,000円+150,000円−204,200円=1,445,800円

計算例3:開発とデザインを1枚の請求書で払う

開発60万円とデザイン10万円(どちらも税抜)を、1枚の請求書で払う例です。デザインの部分だけが対象です。

  1. 源泉徴収税額:100,000円×10.21%=10,210円

  2. 支払総額(税込):700,000円+70,000円=770,000円

  3. 振込額:770,000円−10,210円=759,790円

源泉徴収が必要な場合の請求書の書き方

源泉徴収が必要な報酬は、請求書で4つの項目を分けて書いてもらうのが基本です。「報酬」「消費税」「源泉徴収税額」「差引請求額」の4つです。こうすると、払う側も受け取る側も、同じ金額で確かめられます。

請求書の記載例(デザイン料30万円の場合)です。

例文・テンプレート
請求書
請求日:2026年10月30日(金)

株式会社〇〇 御中
□□デザイン事務所 △△

件名:Webバナー制作(2026年10月分)

  バナーデザイン制作        300,000円
  消費税(10%)             30,000円
  源泉徴収税額(10.21%)   −30,630円
  ----------------------------------
  差引ご請求額             299,370円

お支払期限:2026年11月30日(月)
振込先:〇〇銀行 〇〇支店 普通 1234567

免税事業者なら、登録番号の欄はありません。消費税相当額を請求するかどうかは、取引の条件として双方で決めることです。免税事業者との取引の注意点は、インボイスで免税事業者に値下げは違反?SESの取引と単価交渉で解説しています。

源泉徴収が不要な開発の請求書

開発・インフラ・運用の報酬なら、請求書に源泉徴収の行は要りません。相手のエンジニアが念のため差し引いて請求してくることもあります。その場合は「開発の報酬は源泉徴収の対象外なので、差し引かない額で出し直してください」と伝えましょう。

フリーランスに渡す請求書の記載例は、フリーランスの請求書の書き方|SES企業がBPに渡す記載例と注意点にまとめています。自社から支払通知書を出す場合は、業務委託の支払通知書テンプレート|支払明細書との違いと記載例が使えます。

源泉徴収した税を納める期限と支払調書

源泉徴収した税は、支払った月の翌月10日までに国へ納めます。デザイン・原稿・講演料などの報酬は、納期の特例(半年ごとにまとめて納める仕組み)が使えません。

10月30日(金)に払ったデザイン料なら、納付の期限は11月10日(火)です。期限を過ぎると、延滞税や不納付加算税がかかることがあります。

もう1つ忘れやすいのが支払調書です。支払調書とは、誰にいくら払ったかを税務署に知らせる書類のことです。デザイン料・原稿料・講演料などは、同じ人への1年の支払いが5万円を超えると、翌年1月31日までに提出します。

源泉徴収の要否を確認する5ステップ

  1. 支払先を確認する:個人か法人か。一人社長の会社なら法人

  2. 仕事の中身を確認する:開発・インフラ・運用か、デザイン・原稿・翻訳・講師か

  3. 金額を分けてもらう:対象の作業と対象外の作業、報酬と消費税を、請求書で分けて書いてもらう

  4. 税額を計算して差し引く:100万円以下は10.21%、1円未満は切り捨て

  5. 翌月10日までに納める:年末には支払調書の対象かも確認する

毎月の請求・支払いの流れは、SESの毎月の営業事務業務|注文書・請求・支払いの月次フローにまとめています。

SES営業が発注前に確認したいこと

源泉徴収で困るのは、支払いの直前に「この作業は対象だった」と気づくときです。経理が気づく前に、営業が発注の時点で作業内容を切り分けておくのが一番の予防です。

  • 案件に、研修・翻訳・記事執筆・デザインなどが含まれていないか

  • 相手は個人事業主か、法人か(登記簿や名刺で確認)

  • 作業ごとの金額を、注文書と請求書で分けられるか

  • フリーランス法で求められる取引条件の明示に、報酬の額と支払期日を書いたか

研修講師を追加で頼むときの発注メール例文

開発で参画中のフリーランスに、別作業として研修講師を頼む場面の例文です。金額を分け、源泉徴収をすることを発注時に伝えます。

〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
11月12日(木)の客先新人研修で、講師を1日お願いできないでしょうか。

・報酬:100,000円(税抜)。いつもの開発の報酬とは別にお支払いします
・講師料は源泉徴収の対象のため、10.21%(10,210円)を差し引いてお支払いします
・請求書は開発分と行を分け、報酬と消費税を別々にご記入ください
・お支払日:12月31日(開発分と同じ日)

ご検討のほど、よろしくお願いいたします。

発注時に伝えておくと、振込額が少ないという問い合わせを防げます。

個人のエンジニアに仕事を出すときは、フリーランス法の義務もあります。フリーランス法とは、フリーランスとの取引の決まりを定めた法律のことです。発注側の義務は、フリーランス法のSES対応|発注者の義務7つと実務チェック表で確認できます。

チョータツで案件ごとの作業内容を管理する

自分で管理する場合は、Excelに案件ごとの作業内容・支払先の区分(個人・法人)・源泉徴収の要否を書いておきます。ただ、案件と人材が増えると、どの案件に研修やデザインが混ざっているかを追いきれなくなります。

チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の作業内容を残すメールやExcelに散らばる案件の情報としてまとめて管理できる
発注前に中身を確認するメールを探して読み返す案件情報を開いて確認できる
経理や上長と共有するファイルを送り合うチームで同じ情報を共有できる
情報を入れる1件ずつ手で書き写すAIが入力を手伝う

作業内容を案件ごとに残しておけば、「開発だけのはずが研修講師も入っていた」という見落としを減らせます。他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材もデータベースとして見られます。

よくある質問

Q. SESで個人事業主のエンジニアに払う報酬は、源泉徴収が必要ですか?
開発・テスト・インフラ構築・運用保守の報酬なら、原則として不要です。所得税法第204条第1項の一覧に入っていないからです。研修講師や翻訳、デザインを別に頼む場合は必要です。
Q. 業務委託で源泉徴収が不要な場合はどんなときですか?
大きく2つです。1つは、支払先が法人のとき。もう1つは、頼む仕事がプログラミングやシステム構築のように、所得税法第204条第1項の一覧にない仕事のときです。
Q. システムエンジニアにデザインを頼んだら、源泉徴収は必要ですか?
開発の一部としての画面設計なら、不要と扱うのが一般的です。広告やバナーなど見た目のデザインだけを頼むなら、デザインの報酬として必要になる可能性が高いです。
Q. 源泉徴収は消費税を含む金額で計算しますか?
原則は消費税を含む金額です。ただし、請求書で報酬と消費税が分けて書かれていれば、税抜きの額で計算してよいとされています。この扱いはインボイス制度の後も変わりません。
Q. 報酬の源泉徴収はどう計算しますか?
100万円以下なら支払金額×10.21%です。100万円を超えるときは、(支払金額−100万円)×20.42%+102,100円で計算し、1円未満は切り捨てます。
Q. 一人社長の会社にデザインを頼んだら、源泉徴収は必要ですか?
支払先が法人なので、原則として不要です。請求書の宛先・発行者が、個人名ではなく会社名になっているかを確認しましょう。
Q. 開発の請求書で、エンジニアが源泉徴収税額を差し引いてきました。どうすればいいですか?
開発の報酬は対象外なので、差し引かない額で請求書を出し直してもらいましょう。そのまま払うと、差し引いた税の扱いを後で直す手間がかかります。

まとめ

  • 業務委託の源泉徴収は、所得税法第204条第1項の一覧に入る報酬を、個人に払うときだけ必要

  • プログラミング・インフラ構築・運用保守は一覧にないので、原則不要

  • デザイン(広告・バナーなど)、原稿、翻訳・通訳、研修講師は、個人に払うなら必要

  • 支払先が法人なら、原則不要

  • 税率は100万円以下が10.21%、超える部分が20.42%。1円未満は切り捨て

  • 請求書で報酬と消費税を分けて書けば、税抜きの額で計算できる

  • 開発とデザインが混ざるなら、金額を分けてデザイン部分だけ源泉徴収する

  • 納付は翌月10日まで。1年に5万円を超えるデザイン料・講演料などは支払調書も出す

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は税理士・税務署などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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