フリーランス法のSES対応|個人エンジニアに発注する会社の義務7つと担当分けつきチェック表

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

フリーランス法とは?SES企業に関係する理由

フリーランス法とは、個人で働くフリーランスが安心して仕事ができるよう、発注する会社に守るべきことを定めた法律のことです。正式な名前は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。「フリーランス・事業者間取引適正化等法」とも呼ばれます。2024年11月1日に施行されました。

SES企業に関係するのは、個人事業主のエンジニアに案件を出すことが多いからです。エンドや元請けから受けた案件に、フリーランスのエンジニアを業務委託で参画させる場面が当てはまります。

担当する役所は2つに分かれています。取引のルール(義務①〜③)は公正取引委員会と中小企業庁です。働く環境のルール(義務④〜⑦)は厚生労働省が担当します。

SES企業はどんなときに対象になるか

SES企業が従業員を雇っているか役員が2人以上いて、従業員のいないフリーランスに業務委託するときに対象になります。契約の名前が準委任でも請負でも、事業者どうしの業務委託なら当てはまります。なお、①取引条件の明示だけは、従業員のいない発注者にもかかります。

フリーランス(特定受託事業者)に当たる人

特定受託事業者とは、法律でいう「フリーランス」のことで、次のどちらかに当たる事業者です。

  • 従業員を使っていない個人事業主

  • 代表者が1人だけで、ほかに役員も従業員もいない法人(一人社長の会社)

ここでの「従業員」とは、週20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる人のことです。短時間のアルバイトだけを雇っている個人事業主は、フリーランスに当たることがあります。判定の詳しい例はフリーランス法の適用対象は法人も?一人社長・従業員の判定で解説しています。

SES企業の立場ごとの対象・対象外

取引の形義務を負う会社ポイント
自社 → 個人エンジニア自社7つの義務がすべてかかりうる
自社 → BP法人 → 個人エンジニアBP法人自社は個人と直接の契約がない
自社 → 一人社長の会社自社一人社長の会社もフリーランスに当たる
自社 → 従業員のいる個人事業主対象外フリーランス法の「フリーランス」ではない

名前が業務委託でも、実際には会社の指示で働く労働者と同じ場合は、フリーランス法ではなく労働基準法などが適用されます。客先の指示のしかたには注意が必要です。客先から本人へ直接の作業指示や勤怠管理をしないよう、指示の窓口を決めておきましょう。

発注者の義務7つと、かかる条件

SES企業が負う義務は7つで、業務委託の期間によって、かかる義務が増えます。短い単発の案件でも①②④⑥はかかります。

義務内容かかる条件
① 取引条件の明示発注したらすぐに条件を書面かメールで伝えるすべての業務委託
② 60日以内の支払い役務の提供を受けた日から60日以内に払うすべての業務委託
③ 禁止行為減額・買いたたきなど7つの行為をしない1か月以上
④ 募集情報の的確な表示うそや誤解を招く募集をしない広告などで募集するとき
⑤ 育児・介護への配慮申し出に応じて必要な配慮をする6か月以上(それ以外は努力義務)
⑥ ハラスメント対策相談に応じる体制を整えるすべての業務委託
⑦ 中途解除の予告30日前までに予告し、求めがあれば理由を示す6か月以上

継続的業務委託とは、6か月以上続く業務委託のことです。最初は3か月契約でも、更新して6か月以上続けば当てはまります。SESの常駐案件は更新が多いので、最初から6か月以上の前提で準備しておくのが安全です。

義務① 取引条件の明示(3条通知)

発注したら直ちに、取引の条件を書面かメールなどで伝えます。この通知は法律の条文から3条通知と呼ばれます。SNSのメッセージで伝えることも認められています。

伝える項目は次の9つです。

  1. 業務の内容

  2. 報酬の額

  3. 支払期日

  4. 発注する会社とフリーランスの名前

  5. 業務委託をした日

  6. 役務の提供を受ける日(期間)

  7. 役務の提供を受ける場所

  8. 検査をする場合は、検査が終わる日

  9. 現金以外で払う場合は、その支払方法

SESでは、6番に契約期間、1番に作業内容と精算幅を書くのが一般的です。精算幅とは、月の稼働時間の上限と下限のことです。記載例はフリーランス法の3条通知ひな形|SESの発注書・メール記載例にまとめています。

義務② 60日以内の支払い(再委託は30日ルールも)

報酬の支払期日は、役務の提供を受けた日から60日以内で、できるだけ短く決めます。月末締め翌月末払いのような月単位の締め方は、公正取引委員会のQ&Aで「2か月以内」として扱うと説明されています。

たとえば、10月分(10月1日〜31日)の稼働を月末で締める場合です。

支払条件支払日判定
月末締め翌月末払い11月30日(月)問題ない
月末締め翌々月末払い12月31日(木)60日を超えるので見直し

毎月続く準委任では、月の締め日(10月31日)を起点に数えても、12月31日は62日目です。翌々月払いにしている場合は、最初に見直しましょう。

再委託なら「元の支払日から30日以内」も選べる

再委託とは、自社が受けた仕事の全部か一部を、別の相手に任せることです。SES企業がエンドや元請けから受けた案件をフリーランスに任せる場合が当てはまります。

3条通知で「再委託であること」「元の発注者の名前」「元の発注者からの支払期日」を伝えます。そうすれば、元の支払期日から30日以内に支払日を決められます。元請けからの入金が12月31日(木)なら、フリーランスへの支払いは2027年1月29日(金)までにします。計算の詳細はフリーランス法の再委託30日ルール|SESの支払期日と例外条件で解説しています。

注意点として、「法律で60日まで良いから」と、今より遅い支払日に変えることは問題になります。Q&Aでも、できるだけ短い期間とはいえないと説明されています。

義務③ 7つの禁止行為

1か月以上の業務委託では、フリーランスに対して7つの行為が禁止です。準委任のように「作業をしてもらう」業務委託では、受領拒否と返品は当てはまらないので、SESでは次の5つに注意します。

禁止行為SESで起きやすい例
報酬の減額エンドの単価が下がったので、契約中の報酬を下げる
買いたたき相場より大幅に低い単価を一方的に決める
購入・利用の強制自社の有料研修や指定の機器を買わせる
不当な経済上の利益の提供契約外の打ち合わせや資料作成を無償でさせる
不当な給付内容の変更・やり直し途中で作業範囲を増やし、その費用を払わない

3条通知で計算方法を明示した精算幅どおりの控除は、減額には当たらないと考えられます。OK・NGの判定例はフリーランス法の禁止行為7つ|SESの減額・買いたたきOK・NG例で確認できます。

義務④ 募集情報の的確な表示

求人サイトやSNS、自社サイトでフリーランスを募集するときは、うその表示や誤解を招く表示をしてはいけません。情報は正確で最新の状態に保つ必要があります。

Q&Aでは、次の6つの事項が欠けた募集は「誤解を生じさせる表示」に当たり、法律違反になるとされています。

  1. 募集する会社の名前

  2. 住所(所在地)

  3. 連絡先

  4. 業務の内容

  5. 業務をする場所

  6. 報酬

場所は「候補を示して応相談」、報酬は「月◯万円〜」のような書き方も認められています。期間・時間や、契約の解除・不更新の扱いも、書く場合は正確に書きます。

SESの案件募集でよくあるのは、募集が終わった案件を掲載したままにすることです。案件が決まったら、その日のうちに取り下げましょう。書き方の注意はフリーランス法の募集情報の的確表示とは|SES案件募集の注意点5つで解説しています。

義務⑤ 育児・介護への配慮

6か月以上の業務委託では、フリーランスから申し出があれば、育児や介護と仕事を両立できるよう配慮しなければいけません。6か月未満の業務委託でも、配慮するよう努める必要があります。

SESでの配慮の例は、次のようなものです。

  • 子どもの急な病気で、決まった曜日の稼働を調整したいと言われた

  • 介護のため、週の一部をリモートにしたいと相談された

客先の了解が必要な内容は、営業が客先と調整します。どうしても配慮できない場合は、その理由を説明することが必要です。

義務⑥ ハラスメント対策の体制づくり

フリーランスへのハラスメント(嫌がらせ)を防ぐため、発注する会社は体制を整える必要があります。Q&Aでは10の措置が示されています。大きく分けると、次の3つです。

  1. 方針をはっきりさせて伝える:ハラスメントをしてはいけないことを社内に周知します。

  2. 相談窓口をつくる:フリーランスが相談できる担当者や窓口を決めて知らせます。

  3. 起きたらすぐに対応する:事実を確認し、行為者への対応や再発防止をします。

あわせて、相談した人のプライバシーを守ることと、相談を理由に契約を切らないことも決めて、フリーランスに知らせます。

SESで難しいのは、エンジニアが客先に常駐している場合です。Q&Aでは、窓口担当者と現場の管理者が連携して事実確認をする例が示されています。その連携を、客先との契約に盛り込む方法です。客先での対応の流れはSESの客先パワハラに営業はどう対応?相談から契約見直しまで6手順で解説しています。セクハラの相談を受けたときはSESの客先でセクハラが起きたら|営業の対応6手順と会社の義務を参考にしてください。

フリーランスに相談窓口を知らせる文面の例です。契約開始の案内メールに入れておきます。

例文・テンプレート
【ハラスメントの相談窓口】
当社は、業務委託先の皆さまへのハラスメントを許しません。
客先でのことも含め、困ったことがあれば次の窓口にご相談ください。
窓口:管理部 □□(メール:soudan@example.co.jp/電話:03-XXXX-XXXX)
相談内容とご本人のプライバシーは守ります。
相談したことを理由に、契約を打ち切るなどの扱いはしません。

義務⑦ 中途解除・不更新の30日前予告

6か月以上の業務委託を途中で終える場合や、更新しない場合は、原則として30日前までに予告します。予告は書面、FAX、メールなどで行います。

たとえば、12月31日(木)で契約を終えるなら、12月1日(火)までに予告します。予告のあとにフリーランスから理由を聞かれたら、遅れずに伝える必要があります。

SESでは、客先から「来月末で終了」と急に言われることがあります。その場合も、原則としてフリーランスへの予告の期限は変わりません。元の契約が解除されて仕事の大部分がなくなった場合などは例外になりえますが、使える場面は限られます。客先との契約にも、終了の連絡期限を入れておくと安全です。例外と通知の例文はフリーランス法の中途解約は30日前予告|例外と通知例文を解説にまとめています。

営業・管理部の担当分けつき実務チェック表

フリーランス法の対応は、営業と管理部で担当を分けると漏れが減ります。次のチェック表を、発注のたびに使ってください。

#確認すること担当タイミング
1相手が従業員のいない個人か、一人社長の会社か営業提案・面談の前
2募集情報に会社名・住所・連絡先・業務内容・場所・報酬の6つを書き、決まったら取り下げる営業募集のとき
33条通知を送る(9項目を記載)営業稼働開始の前
4再委託なら元の発注者と支払期日も書く営業3条通知のとき
5支払期日を60日以内(または30日ルール)にする管理部契約のひな形
6期日どおりに支払う管理部毎月
7契約中に単価を下げない、無償の追加作業をさせない営業契約期間中
8育児・介護の相談があれば客先と調整する営業申し出があったとき
9ハラスメント方針・相談窓口をフリーランスに知らせる管理部契約のとき
10客先常駐での相談時の連携を客先と決める営業客先との契約のとき
116か月以上の案件の終了・不更新は30日前に予告する営業終了が決まったとき
123条通知・予告・支払いの記録を保存する管理部毎月

自分でやるときの進め方

  1. 今のフリーランス取引を書き出す:直接契約している個人と一人社長の会社を一覧にします。

  2. 契約期間をたしかめる:更新を含めて、1か月以上か6か月以上かを印で分けます。

  3. ひな形を直す:3条通知と契約書に、9項目と支払期日が入っているか確認します。

  4. 窓口と方針を決める:ハラスメントの相談窓口を決め、フリーランスに知らせます。

  5. 営業に共有する:チェック表を配り、発注のたびに確認するルールにします。

私たちのおすすめは、3条通知と30日前予告から先に整えることです。どちらも営業の動き方で決まり、あとから取り戻せないからです。

チョータツで案件の条件と期間を管理する

フリーランス法の対応で手間がかかるのは、案件ごとの条件と期間を正しく把握し続けることです。条件がメールやExcelに散らばると、3条通知の中身や更新のタイミングを見落としやすくなります。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の条件を確認するメールやExcelを探して確認案件情報を1か所で管理し、提案前に確認
チームで共有する担当者ごとにファイルがばらばら案件・人材の情報をチームで共有
情報を入力する1件ずつ手で転記AIが入力を手伝う
他社の案件・人材を探す届いたメールを1通ずつ読む連携した他社の営業中案件・人材をデータベース化

チョータツは、3,000社以上が使うSES営業向けの案件・人材の管理・共有ツールです。無料で始められます。

ただし、3条通知の作成や支払いの管理そのものは、自社で行う必要があります。チョータツは、その前提になる案件の条件をそろえて共有するために使いましょう。

よくある質問

Q. SESの準委任契約でもフリーランス法の対象になりますか?
対象になります。フリーランス法は、事業者がフリーランスに仕事を任せる「業務委託」全体にかかります。準委任でも請負でも、相手が従業員のいないフリーランスなら当てはまります。
Q. フリーランス法で発注者が負う義務は何ですか?
義務は7つです。取引条件の明示、60日以内の支払い、禁止行為、募集情報の的確な表示、育児・介護への配慮、ハラスメント対策、中途解除の30日前予告です。期間によってかかる義務が変わります。
Q. BP企業を通してフリーランスが参画する場合、自社にも義務はありますか?
フリーランスと直接契約しているBP企業が義務を負います。自社は、BP企業との取引条件を守ることが大切です。BP企業が法人なら、取適法の対象になるかも確認しましょう。
Q. フリーランス法のハラスメント相談体制は、発注者が何をすればよいですか?
ハラスメントをしない方針を決めて周知し、相談窓口をつくり、起きたときにすぐ対応できるようにします。客先常駐の場合は、客先の管理者と連携する方法も決めておきます。
Q. 3か月ごとに更新するSES案件は、6か月以上の業務委託になりますか?
更新して6か月以上続く場合は当てはまります。30日前予告や育児・介護への配慮の義務がかかります。
Q. フリーランス法に違反するとどうなりますか?
公正取引委員会や厚生労働大臣から勧告を受けることがあります。勧告に従わないと命令と公表の対象になり、命令に違反すると50万円以下の罰金の対象です。
Q. フリーランスのエンジニアを直接探すにはどうすればよいですか?
求人媒体やSNSで募集する方法があります。DrivenXのxhours(エックスアワーズ)を使うと、ITフリーランスに企業から直接スカウトできます。どの方法でも、募集情報の的確な表示を守りましょう。

まとめ

  • 従業員を使う(または役員が2人以上いる)SES企業が、個人事業主や一人社長のエンジニアに業務委託すると、フリーランス法の義務がかかる

  • 義務は、明示・60日以内の支払い・禁止行為・募集表示・育児介護の配慮・ハラスメント対策・30日前予告の7つ

  • 禁止行為は1か月以上、配慮と予告は6か月以上。更新で続く場合も含む

  • 再委託なら、元の支払期日から30日以内に支払日を決める方法も使える

  • 営業は3条通知・募集・予告、管理部は支払い・窓口・ひな形を担当する

  • まず3条通知と30日前予告から整える

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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