フリーランス法の違反と罰則|勧告・命令・罰金の流れと公表された勧告20件の傾向、SES営業が残すべき記録
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
フリーランス法に違反するとどうなる?
フリーランス法に違反すると、指導・助言 → 勧告 → 命令 → 罰金の順に重くなります。いきなり罰金になるのではなく、行政から直すよう求められる段階が先にあります。
フリーランス法とは、個人で働くフリーランスと取引する会社に、守るべきことを定めた法律のことです。正式な名前は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。2024年11月1日に施行されました。
| 段階 | 中身 | 根拠の条文 |
|---|---|---|
| 指導・助言 | 違反を直すよう行政が求める | 第22条 |
| 勧告 | 支払いや返金など、具体的な措置を求める | 第8条・第18条 |
| 命令 | 勧告に従わないとき、措置をとるよう命じる | 第9条・第19条 |
| 罰金 | 命令に違反したときなど、50万円以下 | 第24条 |
勧告とは、違反した会社に「返金する」「支払う」などの具体的な対応を、行政が正式に求めることです。指導は、勧告よりも軽い形で是正を求めるものです。実際の件数は、指導のほうがずっと多くなっています。
フリーランス法が守る相手は特定受託事業者です。特定受託事業者とは、従業員を使っていない個人事業主と、代表者1人だけで従業員もいない法人(一人社長の会社)のことです。SES企業が個人のエンジニアに業務委託する場合が当てはまります。対象の判定はフリーランス法の適用対象は法人も?一人社長・従業員の判定で解説しています。
フリーランス法の罰則の中身
フリーランス法の罰則は、50万円以下の罰金と20万円以下の過料の2つです。どちらも、違反そのものではなく、命令に従わない、調査を妨げるといった行為にかかります。
| 罰則 | 対象になる行為 | 条文 |
|---|---|---|
| 50万円以下の罰金 | 公取委や厚生労働大臣の命令に違反した | 第24条1号 |
| 50万円以下の罰金 | 報告をしない・うその報告をする・立入検査を拒む | 第24条2号 |
| 会社にも同じ罰金 | 社員が業務で第24条の違反をした | 第25条 |
| 20万円以下の過料 | ハラスメント対策について厚生労働大臣から求められた報告をしない・うその報告をする | 第26条 |
第25条のように、行為をした社員と会社の両方を罰する決まりを両罰規定といいます。営業担当者が調査に対してうその報告をすると、本人だけでなく会社も罰金の対象になります。
罰金の額は大きくないように見えます。しかし、本当に重いのは次の「公表」です。取引先や求職者、フリーランス本人に社名と違反内容が知られることが、SES企業には大きな打撃になります。
誰が取り締まるか:公取委と厚生労働省の分担
フリーランス法の違反は、取引のルールは公正取引委員会、働く環境のルールは厚生労働省が担当します。どちらも勧告・命令ができます。
| 義務 | 取り締まる役所 | 勧告の条文 |
|---|---|---|
| 取引条件の明示(3条通知) | 公正取引委員会 | 第8条 |
| 60日以内の支払い | 公正取引委員会 | 第8条 |
| 7つの禁止行為 | 公正取引委員会 | 第8条 |
| 申出を理由にした不利益な扱いの禁止 | 公正取引委員会 | 第8条 |
| 募集情報の的確な表示 | 厚生労働省 | 第18条 |
| ハラスメント対策の体制づくり | 厚生労働省 | 第18条 |
| 中途解除・不更新の30日前予告 | 厚生労働省 | 第18条 |
中小企業庁も、取引のルールについて調査し、公取委に措置を求めることができます(第7条)。また、指導・助言は3つの役所のどれもができます(第22条)。
SES営業に関係が深いのは、公取委が担当する明示・支払期日・禁止行為です。毎月の発注と支払いの中で起きるからです。義務の全体はフリーランス法のSES対応|発注者の義務7つと実務チェック表で整理しています。
違反は公表される?勧告と公表の仕組み
公正取引委員会は、勧告をした時点で社名と違反内容を報道発表しています。法律上は「命令をしたときに公表できる」(第9条2項)と定められていますが、実際には勧告の段階で公表されています。
報道発表には、次のような内容が書かれています。
会社名と所在地
委託していた業務の内容
違反した条文と、対象になったフリーランスの人数
減額した金額や、支払いが遅れた内容
勧告の中身(返金、社内体制の整備など)
公表された勧告は、公取委の「フリーランス・事業者間取引適正化等法勧告一覧」でだれでも見られます。一度載ると、社名で検索したときに長く表示されます。
数字で見るフリーランス法の違反(令和7年度)
令和7年度の措置は1,552件で、そのうち勧告が10件、指導が1,542件でした。公取委が2026年6月10日に公表した運用状況によるものです。
| 項目 | 件数 |
|---|---|
| フリーランスからの違反の申出 | 604件 |
| 新しく調査を始めた件数 | 1,626件 |
| 勧告 | 10件 |
| 指導 | 1,542件 |
違反の種類別では、支払期日と取引条件の明示だけで全体の約8割です。1つの案件に複数の違反があるため、合計は2,727件になります。
| 違反の種類 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 期日までに報酬を払わない | 1,135件 | 41.6% |
| 取引条件を明示しない | 1,126件 | 41.3% |
| 買いたたき | 250件 | 9.2% |
| 報酬の減額 | 103件 | 3.8% |
| 不当な給付内容の変更・やり直し | 80件 | 2.9% |
| 不当な経済上の利益の提供要請 | 30件 | 1.1% |
| 購入・利用強制 | 3件 | 0.1% |
業種別では、情報通信業が575件(37.0%)で最も多くなっています。SES企業やIT企業が含まれる業種です。IT業界は、公取委の措置が最も多い業界だと考えて準備しましょう。
また、原状回復(払わせた金額など)は合計1,734万円でした。
公表された勧告の事例(2025年6月〜2026年9月)
公取委が公表した勧告は、2026年9月2日までに20件です。業種は出版・放送・音楽教室・家電設置など幅広く、違反の中身には共通点があります。
| 公表日 | 業種 | 主な違反 |
|---|---|---|
| 2025年6月17日 | 出版(2社) | 条件を明示しない・期日に払わない |
| 2025年6月25日 | 音楽教室 | 明示・期日違反、体験レッスンを無償でさせる |
| 2025年9月26日 | 放送番組制作 | 明示・期日違反 |
| 2025年12月5日 | 映像制作・結婚相談 | 明示・期日違反 |
| 2026年2月25日・27日 | 報道・電力 | 明示・期日違反 |
| 2026年3月16日・31日 | 放送(2社) | 明示・期日違反、手数料の差し引き |
| 2026年5月19日 | 音楽スクール | 体験レッスンを無償でさせる |
| 2026年5月29日 | 企画書などの資料作成 | 明示違反、報酬の減額 |
| 2026年6月11日 | 出版・原稿作成(2社) | 明示・期日違反 |
| 2026年6月18日・22日・24日 | 制作・教室・設置工事 | 明示・期日違反、減額・買いたたき |
| 2026年7月31日 | 放送番組制作 | 明示・期日違反 |
| 2026年8月26日 | 家電の運送・設置 | 振込手数料を超える額を減額 |
| 2026年9月2日 | 郵便配達の委託 | 明示・期日違反 |
20件のうち、ほとんどに取引条件の明示と支払期日の違反が入っています。大企業でも、長年の慣習のまま発注していたケースが目立ちます。
金額が大きかった減額の事例
減額の勧告では、フリーランスへの返金額が具体的に示されています。
資料作成の委託(2026年5月29日):「コンプライアンス対応費用調整額」などの名目で、160名から計5,519,134円を減額
家電の運送・設置の委託(2026年8月26日):振込手数料を事業者が負担する約束なのに、138名から計481,031円を減額
エアコン設置の委託(2026年6月24日):「事務手数料」などの名目で、17名から計2,472,995円を減額
名目を「調整額」「手数料」にしても、フリーランスに責任がないのに報酬を減らせば減額に当たります。減額のルールはフリーランス法の禁止行為7つ|SESの減額・買いたたきOK・NG例で詳しく解説しています。
勧告事例をSES取引に置き換えると
公表された事例は、SESの現場でも同じ形で起こりえます。事例の違反をSESの取引に置き換えると、次のとおりです。
| 事例で起きた違反 | SESで起きる形 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 条件を明示せずに発注 | 口頭で参画が決まり、注文書が後回し | 稼働開始の前に3条通知を送る |
| 60日を超える支払期日 | 「月末締め翌々月末払い」のまま | 翌月末払いに直す |
| 振込手数料の差し引き | 支払時に手数料を報酬から引く | 手数料は自社で負担する |
| 名目をつけた差し引き | 「管理費」「事務手数料」を毎月控除 | 契約時に決めていない控除をしない |
| 一方的な低い単価 | エンドの値下げを理由に単価を下げる | 協議して記録を残す |
| 無償の体験レッスン | 契約前の「お試し稼働」を無償でさせる | 稼働した分は報酬を払う |
特に気をつけたいのは、支払期日です。10月分(10月1日〜31日)を月末で締め、翌々月末に払うと、支払日は12月31日(木)です。月末の10月31日(土)を1日目として数えても62日目で、60日を超えます。
国のQ&A(問48)は、月単位の締め制度で61日目・62日目になる支払いを「受領から2か月以内」として問題にしないと説明しています。この扱いは、月初の作業分を翌月末に払う場合を想定しています。翌々月末払いは、稼働月の初日から数えると2か月を大きく超えるので、翌月末払いに直すのが安全です。計算の考え方はフリーランス法の支払期日60日|月末締めの起算日と計算例で解説しています。
支払条件を直すときは、フリーランス本人に次のように連絡します。
件名:【ご連絡】報酬のお支払日の変更について(2026年11月分から) 〇〇様 いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。 2026年11月稼働分から、報酬のお支払日を 「月末締め翌々月末払い」から「月末締め翌月末払い」に早めます。 11月分は12月31日(木)にお支払いします。 単価・精算幅など、ほかの条件に変更はありません。 変更後の条件を記載した発注書を、本日メールでお送りします。
調査が入るきっかけ4つ
公取委などの調査は、フリーランスからの申出だけで始まるわけではありません。主なきっかけは次の4つです。
フリーランス本人からの申出:フリーランスは、違反を公取委などに申し出ることができます(第6条)。令和7年度は604件ありました。
行政が自ら行う調査:令和7年度は、申出の604件に対し、新しく調査を始めた件数が1,626件でした。申出以外のきっかけで始まる調査も多いと読み取れます。
相談窓口への相談:フリーランスは国の相談窓口に相談できます。相談の内容から、違反の疑いが見つかることがあります。
ほかの会社の調査から広がる:1つの取引の調査で、同じ業界の慣習が問題になることがあります。
申出とは、フリーランスが違反の事実を役所に知らせ、対応を求めることです。申出をしたことを理由に、取引を減らしたり打ち切ったりすることは禁止されています(第6条3項)。
SESでは、契約を終えたエンジニアが申し出るケースに注意が必要です。取引が続いている間は言いにくくても、終わったあとに申し出ることがあるからです。
営業が日常で残しておく記録
調査を受けたときに困らないよう、3条通知・協議・支払いの3つの記録を残しておきます。記録があれば、違反がないことを説明できます。
| 記録 | 残すもの | 残すタイミング |
|---|---|---|
| 3条通知 | 送信したメールや注文書と、送った日時 | 稼働開始の前 |
| 単価の協議 | 単価を決めた打ち合わせのメモ・メール | 契約時・更新時 |
| 契約の変更 | 作業範囲や期間を変えたときの合意 | 変更のたび |
| 稼働報告 | 稼働時間と、精算の計算 | 毎月 |
| 支払い | 支払日と支払額、控除の内訳 | 毎月 |
| 終了の予告 | 30日前予告を送った記録 | 終了が決まったとき |
営業の毎月チェックリスト
今月から稼働する個人エンジニアに、3条通知を送ったか
3条通知に、支払期日(60日以内)を書いたか
報酬から、契約で決めていない控除をしていないか
振込手数料を、報酬から差し引いていないか
単価を変えるときに、協議のメールやメモを残したか
契約外の作業を、無償で頼んでいないか
6か月以上続く案件の終了は、30日前に予告したか
私たちのおすすめは、3条通知と支払期日の2つから整えることです。令和7年度の違反の約8割がこの2つで、公表された勧告のほとんどにも入っているからです。3条通知の書き方はフリーランス法の3条通知ひな形|SESの発注書・メール記載例にまとめています。
稼働報告書が遅れても、支払期日は役務の提供を受けた日から数えます。報告書の催促と請求の進め方はSESの稼働報告書が遅れる・出ないときの対応|請求を間に合わせる手順を参考にしてください。
違反を指摘されたときの対応5ステップ
公取委などから連絡が来たら、事実を確認し、自分から直すことが大切です。次の順で進めます。
社内の窓口を1つにする:営業・管理部・経営者の誰が対応するかを決めます。
取引の記録を集める:3条通知、稼働報告、支払いの記録を、対象のフリーランスごとにまとめます。
事実を正しく報告する:うその報告や、立入検査を拒むことは罰金の対象です(第24条2号)。
不足分を支払う:減額や支払い遅れがあれば、先に返金や支払いを済ませます。公表された勧告でも、減らした報酬を速やかに支払うことが求められています。
ひな形とルールを直す:同じ違反が起きないよう、3条通知のひな形と支払いサイトを見直します。
下請法(現在の取適法)で指摘されやすい点は下請法違反のSES事例|買いたたき・減額と協議記録の残し方でも確認できます。BPの法人と取引する場合は、取適法もかかる可能性があります。取適法とフリーランス法の違い|SESで両方かかる取引を表で整理をあわせて見てください。
チョータツで案件の条件をそろえて管理する
フリーランス法の違反の多くは、条件がどこにも書かれていない、担当者しか知らないことから起きます。条件を1か所にそろえておくと、3条通知や支払いの確認が楽になります。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 案件の条件を確認する | メールやExcelを探す | 案件情報を1か所で管理し、提案前に確認 |
| チームで共有する | 担当者ごとにファイルがばらばら | 案件・人材の情報をチームで共有 |
| 情報を入力する | 1件ずつ手で転記 | AIが入力を手伝う |
| 他社の案件・人材を探す | 届いたメールを1通ずつ読む | 連携した他社の営業中案件・人材をデータベース化 |
チョータツは、3,000社以上が使うSES営業向けの案件・人材の管理・共有ツールです。無料で始められます。
ただし、3条通知の送付や支払いそのものは自社で行う必要があります。チョータツは、その前提になる案件の条件をそろえて共有するために使いましょう。
よくある質問
- Q. フリーランス法に違反したら、すぐに罰金になりますか?
- なりません。まず指導や勧告を受け、勧告に従わないと命令、命令に違反すると50万円以下の罰金です。ただし、調査でうその報告をしたり検査を拒んだりすると、それだけで罰金の対象になります。
- Q. フリーランス法の違反は公表されますか?
- 公正取引委員会は、勧告をした時点で社名と違反内容を報道発表しています。2026年9月2日までに20件が公表されました。指導の段階では、社名は公表されていません。
- Q. フリーランス法の違反事例で多いのは何ですか?
- 令和7年度は、支払期日の違反(1,135件)と、明示の違反(1,126件)が最多です。2つで約8割を占めます。次に買いたたき(250件)、報酬の減額(103件)が続きます。
- Q. 勧告を受けたのはどんな会社ですか?
- 出版、放送、音楽教室、家電の設置、郵便配達の委託など、業種は幅広いです。大企業も含まれます。公表された20件にSES企業は入っていません(2026年9月30日確認)。ただし、指導の件数は情報通信業が最も多くなっています。
- Q. BPの会社を通して参画しているフリーランスの場合、自社も違反になりますか?
- 義務を負うのは、フリーランスと直接契約している会社です。自社がBPの法人と契約している場合、BPとの取引には取適法(旧下請法)がかかることがあります。
- Q. 違反を申し出たフリーランスとの取引を打ち切ってもいいですか?
- いけません。申出をしたことを理由に、取引を減らしたり打ち切ったりすることは禁止されています(第6条3項)。違反すると勧告の対象になります。
- Q. フリーランスのエンジニアを直接探すにはどうすればよいですか?
- 求人媒体やSNSで募集する方法があります。DrivenXのxhours(エックスアワーズ)を使うと、ITフリーランスに企業から直接スカウトできます。直接契約するときは、3条通知と支払期日を必ず整えましょう。
まとめ
フリーランス法に違反すると、指導・勧告 → 命令 → 50万円以下の罰金の順に重くなる。会社も罰金の対象
公取委は勧告の段階で社名を公表している。2026年9月2日までに20件
令和7年度の措置は1,552件で、違反の約8割は明示と支払期日。情報通信業が最も多い
SESでは、注文書の後回し、翌々月払い、振込手数料の差し引き、契約途中の値下げに注意する
3条通知・単価の協議・支払いの記録を、毎月残しておく
指摘を受けたら、事実を正しく報告し、不足分を先に支払う
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)」(第6条 申出、第7条 中小企業庁長官の請求、第8条 勧告、第9条 命令・公表、第11条 報告及び検査、第18条・第19条 厚生労働大臣の勧告・命令、第22条 指導及び助言、第24条〜第26条 罰則)
公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法勧告一覧」(令和7年度・令和8年度)
公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況等」(2026年6月10日)
公正取引委員会 報道発表(2026年5月29日 資料作成の委託、2026年6月24日 エアコン設置の委託、2026年8月26日 家電の運送・設置の委託)
公正取引委員会・厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法Q&A」(問48 月単位の締切制度)
公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」