フリーランス法の3条通知ひな形|SESの発注書・メール本文の記入例と揉めやすい項目の書き方
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
フリーランス法の3条通知とは?
3条通知とは、フリーランスに業務を任せたとき、発注者が取引条件を書面やメールで伝えることです。フリーランス法の第3条に定めがあるため、こう呼ばれます。「取引条件の明示」とも言います。
フリーランス法とは、個人で働くフリーランスとの取引で発注者が守ることを定めた法律のことです。正式名は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、2024年11月1日に施行されました。
3条通知は、従業員のいない個人事業主が発注する場合も含め、フリーランスに業務委託するすべての事業者にかかります。SES企業が個人のエンジニアや一人社長の会社に案件を任せる場面は、ほぼ対象です。一人社長の会社が対象になるかの判定は、フリーランス法の適用対象は法人も?一人社長・従業員の判定で整理しています。
書面でもメールでもよい
3条通知は、書面か電磁的方法で送ります。電磁的方法とは、メール・SMS・SNSのメッセージ・チャットツールなど、電気通信で送る方法のことです。PDFの添付やURLの記載でも構いません。
どちらを使うかは発注者が選べます。書類の名前も自由で、「発注書」「注文書」「業務委託のご案内」のどれでも有効です。
フリーランス法の書面交付義務
メールで3条通知を送ったあとでも、書面を求められたら遅滞なく書面を渡す必要があります(第3条第2項)。この義務を「書面交付義務」と呼びます。
ただし、フリーランスの求めに応じてメールで送った場合などは、書面を渡さなくてよいとされています。迷ったら、PDFを印刷して渡せば足ります。
3条通知に書く9項目と、SESでの記入例
3条通知には、次の9項目を書きます。SESでは「期間」「場所」「報酬の額」に、案件の実態をそのまま書くのがコツです。
| # | 項目 | SESでの記入例 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 当事者の名前 | 株式会社△△/山田太郎 | 屋号やハンドルネームでも特定できれば可 |
| 2 | 業務委託をした日 | 2026年10月16日 | 署名日でなく合意した日 |
| 3 | 業務の内容 | 〇〇システムの詳細設計・製造・単体テスト | 作業範囲がわかる程度に具体的に |
| 4 | 役務の提供期間 | 2026年11月2日〜2027年1月31日 | 開始日と終了日を日付で |
| 5 | 役務の提供場所 | 東京都港区の客先事業所(リモート併用) | 在宅なら「受託者の自宅等」 |
| 6 | 検査完了日 | 稼働報告書の受領後3営業日以内 | 確認をしないなら書かなくてよい |
| 7 | 報酬の額 | 月額60万円(税別)+精算の計算方法 | 控除・超過の単価まで数字で |
| 8 | 支払期日 | 各月末日締め、翌月末日払い | 60日以内。再委託は30日ルールも可 |
| 9 | 現金以外の支払方法 | 該当なし(銀行振込) | 手形などで払うときだけ必要 |
資料によっては、報酬の額と支払期日を1つにまとめて8項目と数えることもあります。書く中身は同じです。
報酬は算定方法で書いてよい
SESの報酬は、精算幅で毎月の金額が変わります。金額をあらかじめ決められない事情があるときは、算定方法で書くことが認められています。計算すれば金額が1つに決まる方法に限ります。
「月額60万円。140時間未満は不足1時間につき4,285円を控除」のように書けば、稼働時間が決まった時点で金額が確定します。金額が確定したら、請求書や支払通知書で具体的な額を伝えましょう。
決まっていない項目は「理由と予定日」を書く
正当な理由で最初に決められない項目は、未定事項として扱えます。3条通知には、決められない理由と、決める予定日を書きます。
たとえば「作業場所:客先で調整中のため、10月23日(金)までに決定しお知らせします」と書きます。決まったら直ちに、最初の通知とのつながりがわかる形で補充の通知を送ります。単価が決まらないまま参画する場合の考え方は、SESで単価未定のまま参画するときの仮単価|取適法上の扱いも参考になります。
発注書形式の3条通知ひな形(記入例)
PDFや紙で送るときに使える、発注書形式の記入例です。【 】を案件の条件に置きかえて使ってください。
発 注 書(業務委託 個別契約) 発注番号:2026-1016-01 業務委託をした日:2026年10月16日 受託者:山田 太郎 様(屋号:ヤマダシステム) 委託者:株式会社△△(東京都港区〇〇1-2-3)担当:営業部 □□ 下記のとおり業務を委託します。 1. 業務の内容:〇〇システム(金融系)の詳細設計・製造・単体テスト 2. 作業期間:2026年11月2日(月)〜2027年1月31日(日) 3. 作業場所:東京都港区〇〇の客先事業所(週2日程度リモート可) 4. 報酬の額:月額 600,000円(消費税別) ・精算幅:月140時間〜180時間 ・140時間未満:不足1時間につき 4,285円を控除 ・180時間超過:超過1時間につき 3,333円を加算 ・精算単位:15分(15分未満は切り捨て) 5. 稼働報告の確認:毎月末日締め、翌月3営業日以内に受領、受領後3営業日以内に確認 6. 支払期日:各月末日締め、翌月末日払い(金融機関休業日の場合は翌営業日) 7. 支払方法:受託者の指定口座へ銀行振込(振込手数料は委託者負担) 8. 交通費:客先への通勤交通費は報酬に含む(出張は実費を別途支払う) その他の条件は、2026年10月16日付「業務委託基本契約書」によります。 内容をご確認のうえ、承諾の旨をご返信ください。
発注書の最後の行のように、基本契約書で決めた共通事項は、どの書類によるかを書けば全部書き写さなくて済みます。基本契約書側に入れる条項は、フリーランス法の契約書の記載事項|9項目の書き方と条項チェックで紹介しています。
発注書を受け取る側・出す側の実務の流れは、注文書とは?SESの発行から請書返送までの流れと送付メール例文で解説しています。
メール本文形式の3条通知ひな形(記入例)
PDFを作らずに、メール本文だけで3条通知を送るときの記入例です。チャットツールやSNSのメッセージでも、同じ文面が使えます。
件名:【発注のご連絡】〇〇システム案件 業務委託条件(2026年10月16日) 山田 太郎 様 お世話になっております。株式会社△△の□□です。 本日お電話で合意しました〇〇システム案件について、 業務委託の条件を次のとおりお知らせします。 ■委託者:株式会社△△ ■受託者:山田 太郎 様(ヤマダシステム) ■業務委託をした日:2026年10月16日(金) ■業務の内容:〇〇システムの詳細設計・製造・単体テスト ■作業期間:2026年11月2日(月)〜2027年1月31日(日) ■作業場所:東京都港区〇〇の客先事業所(週2日程度リモート可) ■報酬:月額60万円(税別) 精算幅140〜180時間。140時間未満は1時間4,285円を控除、 180時間超は1時間3,333円を加算。精算単位は15分。 ■稼働報告の確認:翌月3営業日以内に受領し、受領後3営業日以内に確認 ■支払期日:毎月末日締め、翌月末日払い(休業日は翌営業日) ■支払方法:銀行振込(振込手数料は当社負担) ここに書いていない条件は、業務委託基本契約書によります。 内容に問題がなければ、「承諾します」とご返信ください。 書面での交付をご希望の場合は、お知らせください。
メールの最後に「書面をご希望の場合は」と一言入れておくと、書面交付を求められたときの対応がスムーズです。
再委託のときに足す3項目(30日ルール)
エンドや元請けから受けた案件をフリーランスに任せる場合は、再委託の3項目を書き足します。すると、支払期日を元の支払期日から30日以内に決められます。
再委託とは、自社が受けた仕事の全部か一部を、別の相手に任せることです。SESでフリーランスを客先に参画させる場面の多くが当てはまります。
書き足す3項目は次のとおりです。
再委託である旨
元委託者(自社に発注した会社)の名前
元委託者から自社への支払期日
■再委託に関する事項 本業務は再委託です。 元委託者:株式会社〇〇〇〇 元委託者から当社への支払期日:各月末日締め、翌々月末日払い ■支払期日:元委託者からの支払期日から30日以内 (例:11月分は、元委託者の支払日2027年1月31日から30日以内の 2027年3月2日(火)までに支払い)
元の支払期日が遅い場合でも、この3項目を書かないと原則の60日ルールになります。計算の詳細はフリーランス法の再委託30日ルール|SESの支払期日と例外条件で確認してください。
法定外だが揉めやすい項目の書き方
精算幅・精算単位・稼働時間・交通費・リモートの扱いは、法律で書く義務はありませんが、SESで一番揉めやすい項目です。3条通知に一緒に書いておきましょう。
| 項目 | 書き方の例 | 書かないと起きること |
|---|---|---|
| 精算幅 | 月140〜180時間、控除4,285円・超過3,333円 | 下限割れの月に控除額で揉める |
| 精算単位 | 15分単位、未満は切り捨て | 端数の扱いで請求額がずれる |
| 稼働時間の目安 | 客先の業務時間9:00〜18:00を目安とし、時間配分は受託者の裁量 | 指揮命令の証拠と受け取られる |
| 交通費 | 通勤交通費は報酬に含む | 月末に実費請求が来る |
| リモートの扱い | 週2日程度。客先の方針により変わる場合は協議 | 急な出社で条件違いと言われる |
稼働時間は、「指示する」ではなく「目安」と書くのがポイントです。準委任で時間や作業のやり方を細かく指示すると、偽装請負や労働者性の問題になりえます。
精算幅は、客先との契約と同じ幅と割り方にそろえます。決め方はSESの稼働時間の上限・下限の決め方|契約前の確認12項目つきで解説しています。
3条通知を送るタイミングと送り方
3条通知は、業務を任せることに合意したら直ちに送ります。SESでは、客先の参画決定を受けて本人と条件がまとまった、その日に送るのが目安です。
業務委託をした日とは、発注者とフリーランスが業務を任せることに合意した日のことです。稼働開始日ではありません。
送るまでの手順は次の5ステップです。
合意する:客先の参画決定を受け、本人と報酬・期間を電話やメールで合意します。
ひな形を埋める:発注書かメールのひな形に、客先との条件を写します。
再委託かを確認する:30日ルールを使うなら、元委託者の名前と支払期日を足します。
送る:合意した日のうちに、メールかPDFで送ります。
保存する:送ったメールとPDFを、案件ごとのフォルダに保存します。
更新のときも送り直す
SESの案件は3か月ごとなどで更新されることが多いです。更新で期間や報酬などの条件が変わる場合は、新しい条件で3条通知を送るのが安全です。
条件が同じでも、新しい期間を書いた発注書を出しておくと、いつまでの契約なのかがはっきりします。6か月以上続く契約では、終了や不更新の30日前予告も必要になるため、終了日の管理にも役立ちます。
保存について
フリーランス法には、3条通知の保存を義務づける条文はありません。ただし、チャットのメッセージは消えることがあります。公正取引委員会のQ&Aでも、双方で発注内容を保存することが望ましいとされています。
取適法の発注書と兼ねるとき
発注先が取適法の対象にもなる場合は、1通の発注書で両方の明示をまとめて行えます。両法の記載事項をすべて入れるのが条件です。
取適法とは、2026年1月1日に下請法を改正して施行された法律のことです。資本金や従業員数で決まる規模の差がある会社どうしの取引で、発注者が守ることを定めています。
取適法でも、発注内容は書面か電子メールなどで明示します。改正で、相手の承諾がなくてもメールで送れるようになりました。明示する事項は、給付の内容・代金の額・支払期日・支払方法などで、フリーランス法とほぼ同じです。
大きな違いは、取適法では取引の記録を作って2年間保存する義務があることです。両法の違いは取適法とフリーランス法の違い|SESで両方かかる取引を表で整理で表にまとめています。
送信前チェックリスト10項目
3条通知を送る前に、次の10項目を確認してください。1つでも欠けると、明示義務を果たしたことになりません。
| # | 確認すること | OK |
|---|---|---|
| 1 | 委託者と受託者の名前が入っている | □ |
| 2 | 業務委託をした日(合意日)が入っている | □ |
| 3 | 業務の内容が作業範囲までわかる | □ |
| 4 | 期間の開始日と終了日が日付で入っている | □ |
| 5 | 作業場所(リモートの扱い含む)が入っている | □ |
| 6 | 稼働報告を確認するなら、その完了日が入っている | □ |
| 7 | 月額と、控除・超過の単価が数字で入っている | □ |
| 8 | 支払期日が60日以内(再委託なら30日ルール)になっている | □ |
| 9 | 基本契約書で決めた共通事項の参照先が書いてある | □ |
| 10 | 合意した日のうちに送り、送信記録を保存した | □ |
私たちのおすすめは、このチェック表をメールのひな形の下に貼っておくことです。送るたびに上から確認すれば、営業が変わっても抜けが出ません。
チョータツで3条通知の下準備を楽にする
3条通知で手間がかかるのは、文面を書くことよりも、客先との条件を探して正しく写すことです。まず自分でできる方法から紹介します。
自分でやる方法
案件ごとに「単価・精算幅・控除超過の単価・期間・場所・支払サイト」を、Excelの1行にまとめます。3条通知は、この行をメールのひな形に写すだけにしておくと、書き間違いが減ります。
チョータツでもっと楽にする
チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。3,000社以上が利用していて、無料で始められます。
案件の条件を1か所で管理:単価や期間を案件ごとに残し、提案や発注の前に確認できます
チームで共有:担当者が休みでも、ほかの営業が同じ条件を見て3条通知を作れます
AIが入力を手伝う:案件情報の登録の手間を減らせます
他社と連携:連携した他社の営業中案件・営業中人材をデータベースとして見られます
3条通知の作成と送信そのものは、自社で行う必要があります。チョータツは、その材料になる案件の条件をそろえておくために使いましょう。
よくある質問
- Q. フリーランス法の3条通知は、決まった様式がありますか?
- 決まった様式はありません。9項目がそろっていれば、発注書・メール・チャットのどれでも構いません。書類の名前も自由です。
- Q. 3条通知はLINEやSlackで送ってもよいですか?
- 送れます。SNSのメッセージやチャットツールも、電磁的方法として認められています。メッセージが消えることもあるため、スクリーンショットなどで保存しておきましょう。
- Q. 契約書に9項目が書いてあれば、3条通知は別に要りませんか?
- 別に送る必要はありません。契約書を合意後すぐに渡せば、それが3条通知を兼ねます。ただし、締結が稼働開始の直前になる場合は、先にメールで送っておくと安全です。
- Q. 口頭で条件を伝えただけではだめですか?
- だめです。3条通知は書面か電磁的方法で行う必要があります。口頭で合意したら、その日のうちにメールで条件を送りましょう。
- Q. 3条通知を送らないとどうなりますか?
- 公正取引委員会などから指導や勧告を受けることがあります。勧告に従わないと命令と公表の対象になり、命令に違反すると50万円以下の罰金の対象です。流れは次に読む記事の「フリーランス法の違反と罰則」で解説しています。
- Q. BPの会社を通してフリーランスが参画する場合、自社も3条通知を送りますか?
- 3条通知を送るのは、フリーランスと直接契約しているBPの会社です。自社とBPの会社の間では、取適法の対象になるかを確認しましょう。BPが従業員のいない一人社長の会社なら、自社からBPへの発注もフリーランス法の対象になります。
まとめ
3条通知は、合意したら直ちに送る取引条件のお知らせ。発注書でもメールでもよい
書く項目は9つ。SESでは報酬を「月額+精算の計算方法」で書く
未定の項目は理由と予定日を書き、決まったら補充の通知を送る
再委託なら3項目を足すと、元の支払期日から30日以内の支払日にできる
精算幅・精算単位・稼働時間の目安・交通費も一緒に書くと揉めにくい
メールで送ったあと書面を求められたら、遅滞なく書面を渡す
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)」(第3条 取引条件の明示、第4条 支払期日、第16条 解除等の予告、第24条 罰則)
公正取引委員会「フリーランス法に関するQ&A」(Q35 明示事項、Q37 業務委託をした日、Q38 名称の表示、Q39・Q40 未定事項、Q41 電磁的方法と保存、Q51 再委託の明示事項)
公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法 パンフレット」(明示事項、電磁的方法、書面交付の求め、算定方法による明示、共通事項、未定事項と補充の明示、記載例)
公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法 特設サイト」
公正取引委員会「取適法 よくある質問(Q&A)」(4条明示の写しを7条記録とする扱い)
政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」(発注内容の明示を承諾なく電子メールで可能に、取引記録の2年間保存)