フリーランス法の再委託30日ルールとは?SESの多重商流で使う例外の条件・発注書に書く3項目・支払期日の計算例

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

フリーランス法の再委託30日ルールとは?

再委託30日ルールとは、フリーランスへの支払期日を元請けの支払期日から30日以内で決められる例外のことです。元請けなどから受けた仕事を、フリーランスに再委託するときに使えます。フリーランス法第4条第3項に定められています。

フリーランス法とは、2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」のことです。正式名称が長いため、「フリーランス・事業者間取引適正化等法」や「フリーランス新法」とも呼ばれます。

この法律では、従業員のいない個人事業主や一人社長を特定受託事業者と呼びます。発注する側は特定業務委託事業者と呼びます。従業員を使う個人、または役員が2人以上いるか従業員を使う法人です(第2条第6項)。SES企業の多くは、この特定業務委託事業者にあたります。

再委託とは、自社が上流の会社から受けた仕事の全部や一部を、別の相手にさらに任せることです。元委託者とは、自社に仕事を出した上流の会社のことで、SESでは多くの場合「元請け」がこれにあたります。

誰が特定受託事業者にあたるかの判定は、フリーランス法の適用対象は法人も?一人社長・従業員の判定で整理しています。

原則の60日ルールと、例外の30日ルールの違い

原則は「フリーランスから役務を受けた日から60日以内」、例外は「元請けの支払期日から30日以内」です。数え始める日が違うので、元請けの支払いが遅い商流ほど例外の意味が大きくなります。

項目原則(60日ルール)例外(30日ルール)
数え始める日役務の提供を受けた日元請けの支払期日
期限60日以内でできる限り短く30日以内でできる限り短く
使える場面すべての業務委託再委託で、3項目を明示したとき
根拠第4条第1項第4条第3項

SESの準委任契約では、1か月の稼働をまとめて受け取る形が一般的です。この場合、役務の提供を受けた日は、その月の稼働が終わった日(月末締めなら月末)として考えます。

60日ルールの数え方と、月末締めの具体例は、フリーランス法の支払期日60日|月末締めの起算日と計算例で詳しく解説しています。

再委託の例外が使える3つの条件

例外が使えるのは、次の3つの条件がすべてそろったときだけです。1つでも欠けると、原則の60日ルールに戻ります。

  1. 再委託にあたる:元請けから受けた業務と、フリーランスに出す業務に「業務の関連性」と「対価の関連性」がある

  2. 自社が特定業務委託事業者である:従業員を使っているか、役員が2人以上いる会社(または従業員を使う個人)が発注している

  3. 3項目を明示している:発注時の3条通知に、再委託である旨・元委託者の名前・元委託支払期日を書いている

Q&Aによると、業務の関連性とは、フリーランスに出す業務が元請けから受けた業務に含まれることです。対価の関連性とは、フリーランスへの報酬が元請けからの報酬に関連して決まっていることです。

SESで、元請けから受けた準委任の案件にフリーランスのエンジニアを入れる場合は、2つの関連性がそろうのが通常です。一方、自社の社内システムの開発をフリーランスに頼む場合は、再委託にあたりません。

なお、自社に従業員がおらず役員も1人だけなら、特定業務委託事業者にあたりません。支払期日の決まり(第4条)そのものがかかりません。この場合も、取引条件の明示(第3条)は必要です。

エンド→元請け→自社→フリーランスの商流で見る支払期日の流れ

多重商流で例外を使うと、フリーランスへの支払期日は自社の直接の上流(元請け)の支払期日を基準に決まります。エンドから元請けへの支払期日は基準になりません。

多重商流とは、エンド(最終的な発注者)から元請け、二次請け、三次請けと、仕事が何社も経由して流れる構造のことです。ここでは、次の流れを例にします。

立場会社法律上の呼び方
エンドユーザー企業A社関係しない
元請けSIerのB社元委託者
自社SES企業C社特定業務委託事業者
フリーランス個人事業主のDさん特定受託事業者

この場合、Dさんへの発注書に書く元委託者はB社です。エンドのA社の名前ではない点に注意しましょう。

発注書(3条通知)に書く3項目と記載例

例外を使うには、フリーランスへの3条通知に3項目を追記します。3条通知とは、フリーランス法第3条で義務になっている、発注内容・報酬・支払期日などを書面やメールで示す通知のことです。

公正取引委員会の規則(施行規則第4条)で決まっている3項目は、次のとおりです。

  1. 再委託である旨

  2. 元委託者の商号・氏名・名称(元委託者を識別できる番号や記号でもよい)

  3. 元委託業務の対価の支払期日(元請けから自社への支払期日)

発注書に追記する記載例

注文書の備考欄や、メール本文の最後に、次のように書きます。日付は2026年10月分の稼働を例にしています。

例文・テンプレート
【再委託に関する事項】
1. 本業務は、当社が元委託者から受託した業務の再委託です。
2. 元委託者:株式会社B(元請け)
3. 元委託業務の対価の支払期日:2026年12月31日(木)
   (元委託者との契約:毎月末日締め・翌々月末日払い)
【報酬の支払期日】
2027年1月29日(金)

元請けとの秘密保持契約で社名を出しにくいときは、施行規則の定めにより、元委託者を識別できる番号や記号でも示せます。ただし、フリーランスが元委託者を特定できない書き方では、要件を満たさないおそれがあります。

3条通知全体のひな形は、フリーランス法の3条通知ひな形|SESの発注書・メール記載例にまとめています。

3項目を書くタイミング

3項目は、発注するときの3条通知に書くのが基本です。第4条第3項は、第3条第1項の明示で3項目を示した場合に限って例外を認めています。

発注後に口頭で「元請けの入金を待って払う」と伝えるだけでは、例外は使えません。書き忘れた場合は、60日ルールで支払期日を決め直しましょう。

元請けの支払期日から30日以内の計算例

例外を使う場合の支払期日は、元委託支払期日を1日目として30日目までに決めます。数え方を安全側にそろえるため、ここでは期日当日を1日目として数えています。

2026年10月1日(木)〜10月31日(土)のDさんの稼働分を例に、元請けB社の支払条件ごとに計算します。

B社→自社の支払期日例外なし(60日)例外あり(30日)差
2026年11月30日(月)翌月末12月29日(火)まで12月29日(火)までなし
2026年12月15日(火)翌々月15日12月29日(火)まで2027年1月13日(水)まで15日遅くできる
2026年12月31日(木)翌々月末12月29日(火)まで2027年1月29日(金)まで31日遅くできる

元請けの支払いが「翌月末」なら、例外を使っても支払期日の上限はほぼ変わりません。例外が役に立つのは、元請けの支払いが翌々月以降になる商流です。

計算の手順

  1. 元請けとの個別契約・注文書で、その月分の支払期日を確認する

  2. その支払期日を1日目として、30日目の日付を出す

  3. 自社の入金確認や振込の準備にかかる日数を考え、30日目より前の日を支払期日に決める

  4. 3条通知に、3項目と決めた支払期日を書く

たとえば元請けの支払期日が2026年12月31日(木)なら、30日目は2027年1月29日(金)です。社内の振込が毎月20日なら、「2027年1月20日(水)払い」のように、30日目より前で決めます。

元請けの入金が遅れたときの支払期日

元請けの入金が遅れても、フリーランスへの支払期日は動きません。公正取引委員会のQ&Aでは、元委託支払期日を「支払う日として定められた期日」と説明しています。実際に入金された日ではありません。

つまり、元請けの入金が2027年1月10日(日)にずれても、Dさんへの支払期日は2027年1月29日(金)のままです。元請けの遅れを理由に、フリーランスへの支払いを遅らせることはできません。

反対に、元請けから予定より早く入金があっても、フリーランスへの支払いを早める義務はないとQ&Aで示されています。

例外を使うときに守りたい注意点5つ

例外は「支払いを遅らせるための道具」ではなく、元請けからの入金とフリーランスへの支払いの順番を合わせるための仕組みです。次の5点を守りましょう。

  1. 「できる限り短い期間」で決める:30日は上限です。今の支払条件より遅い期日に変えるのは避けます。

  2. 取適法もかかる取引では使わない:取適法には同じ例外がないため、60日以内の支払いが必要です。

  3. 支払期日を決めなかった場合も期日は来る:書かなければ、元委託支払期日が支払期日とみなされます(第4条第4項)。

  4. 30日を超えて決めた場合は30日目が期日になる:期日を超えた日に払うと、支払遅延になります。

  5. 元請けから前払金を受けたら配慮する:着手に必要な費用を、フリーランスにも前払いするよう適切に配慮します(第4条第6項)。

フリーランス側の理由で払えなかったときは、その理由がなくなった日から30日以内に払えばよいとされています(第4条第5項)。ただし、Q&A(問58)によると、請求書が出てこないことはこの理由に当たりません。当たるのは、フリーランスが誤った口座番号を伝えていた場合などです。

請求書が届かなくても、決めた支払期日までに払う必要があります。請求書の回収を早める方法は、フリーランスの請求書チェック8項目|SESで不備を差し戻す例文付きで紹介しています。

取適法もかかる取引では例外を使わない

自社が取適法の委託事業者にもあたる場合は、再委託の例外を使わず、役務を受けた日から60日以内に払います。取適法には、フリーランス法のような再委託の例外がないからです。

取適法とは、2026年1月1日に下請法が改正されてできた「中小受託取引適正化法」のことです。自社と発注先の資本金や従業員数によって、対象になるかが決まります。個人事業主のフリーランスも、受ける側(中小受託事業者)になりえます。

両方の法律がかかる取引では、次のように考えると安全です。

場面かかる法律支払期日の上限
フリーランス法だけかかるフリーランス法例外を使えば元請けの支払期日+30日
両方かかるフリーランス法+取適法受け取りから60日(例外は使わない)
取適法だけかかる取適法受け取りから60日

どちらの法律がかかるかの判定は、取適法とフリーランス法の違い|SESで両方かかる取引を表で整理で確認できます。取適法の支払期日の数え方は、取適法の支払期日60日とSESの支払サイト|計算例と手形禁止で解説しています。

営業が発注前にやる確認5ステップ

フリーランスへの支払期日は、発注書を出す前に、元請けの支払条件と自社にかかる法律を確認してから決めます。営業と管理部で、次の順番で確認しましょう。

  1. 元請けの支払条件を確認する:個別契約や注文書で「締め日」と「支払期日」を確かめる

  2. 発注先がフリーランス法の対象か確認する:従業員のいない個人事業主か、一人社長かを確かめる

  3. 自社に取適法がかかるか確認する:自社と発注先の資本金・従業員数で判定する

  4. 例外を使うかを決める:取適法がかからず、元請けの支払いが翌々月以降なら検討する

  5. 3条通知に3項目と支払期日を書く:発注と同時に、書面かメールで送る

元請けとフリーランスの支払日の差は、自社の資金繰りに直結します。支払いの差で資金が足りなくなる仕組みは、SESの黒字倒産を防ぐ資金繰り|支払いサイトの差と対策6つで解説しています。

例外を使うかどうかの目安

例外を使う価値があるのは、元請けの支払期日が、フリーランスから役務を受けた日の31日目より後になる場合です。元請けの支払いが早い商流で例外を使うと、60日ルールより上限が早まることもあります。「月末締め翌月末払い」の元請けなら、例外を使う必要はほとんどありません。

フリーランスに支払日を説明するときの例文

例外を使うと、フリーランスへの支払日は60日ルールより遅くなることがあります。発注前に、理由と日付を具体的に伝えておくと、後のトラブルを防げます。

〇〇様

今回の案件は、株式会社B(元請け)から弊社が受けた業務の再委託です。
元請けから弊社への支払期日が翌々月末のため、〇〇様への報酬は元請けの支払期日から30日以内にお支払いします。
10月分の場合、お支払日は2027年1月20日(水)です。
元請けからの入金が遅れても、このお支払日は変わりません。
同じ内容を発注書にも記載してお送りします。

「元請けの入金が遅れても支払日は変わらない」と一言入れると、フリーランスの不安が減ります。

一般的な支払いサイトの日数は、SESの支払いサイトの相場は?一般的な日数と短縮交渉のコツで紹介しています。

チョータツで案件ごとの支払条件を管理する

自分で管理する場合は、Excelに案件ごとの元請け名・締め日・支払期日を書き、フリーランスへの発注のたびに見返します。ただ、案件が増えると、どの案件がどの支払条件だったかを探す手間が増えます。

チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の条件を残すExcelやメールに散らばる案件の情報としてまとめて管理できる
発注前に条件を確認するメールを探して読み返す案件情報を開いて確認できる
社内で共有するファイルを送り合うチームで同じ情報を共有できる
情報を入れる1件ずつ手で書き写すAIが入力を手伝う

元請けの支払条件を案件と一緒に残しておけば、フリーランスへの発注書に書く3項目をすぐ確認できます。他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材もデータベースとして見られます。

よくある質問

Q. フリーランス法の再委託の例外とは何ですか?
元請けなどから受けた仕事をフリーランスに再委託するとき、元請けの支払期日から30日以内に支払期日を決められる例外です。発注時の3条通知で、再委託である旨・元委託者の名前・元委託支払期日の3項目を示すことが条件です。
Q. 再委託の30日は、元請けからの入金日から数えるのですか?
いいえ。元請けとの契約で決まった支払期日から数えます。公正取引委員会のQ&Aでも、実際の支払日ではないと説明されています。元請けの入金が遅れても、フリーランスへの支払期日は変わりません。
Q. 発注書に3項目を書き忘れたら、どうなりますか?
例外は使えず、原則の60日ルールが適用されます。役務の提供を受けた日から60日以内に、できる限り短い期間で支払期日を決め直しましょう。
Q. 元委託者として、エンドの社名を書くのですか?
自社に直接仕事を出した会社の名前を書きます。エンド→元請け→自社の商流なら、元請けが元委託者です。施行規則により、元委託者を識別できる番号や記号でも示せます。
Q. 取適法もかかる場合、再委託の30日ルールは使えますか?
取適法には再委託の例外がないため、両方かかる取引では、役務を受けた日から60日以内に払うのが安全です。違反時は原則フリーランス法が優先されますが、取適法の義務はなくなりません。
Q. フリーランスが一人社長の会社でも、再委託の例外は使えますか?
従業員のいない一人社長の法人も特定受託事業者にあたるため、同じく例外を使えます。3条通知に3項目を書くことが条件です。

まとめ

  • フリーランスへの支払いは、原則「役務を受けた日から60日以内」

  • 再委託なら、例外として「元請けの支払期日から30日以内」に決められる

  • 例外を使うには、3条通知に「再委託である旨・元委託者の名前・元委託支払期日」の3項目を書く

  • 30日は、実際の入金日ではなく、契約で決まった元請けの支払期日から数える

  • 元請けが翌々月末(2026年12月31日)払いなら、フリーランスへは2027年1月29日までにできる

  • 元請けの支払いが翌月末なら、例外を使っても上限はほぼ変わらない

  • 取適法もかかる取引では、例外を使わず60日以内に払う

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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