フリーランス法の適用対象は法人も含む?一人社長・家族経営のBPの判定表と確認メール例文

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

フリーランス法の適用対象とは

フリーランス法の適用対象は、従業員を使っていない個人と、代表者1人だけで従業員もいない法人です。法律では、この相手を「特定受託事業者」と呼びます。

フリーランス法とは、2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」の通称です。一人で働く事業者との取引で、発注者に条件の明示や期日どおりの支払いなどを求めています。

特定受託事業者とは、業務委託の相手方である事業者のうち、次のどちらかにあたる人・会社のことです。

  1. 個人で、従業員を使っていない

  2. 法人で、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ従業員を使っていない

つまり「個人か法人か」ではなく、一人で働いているかどうかで決まります。屋号の有無や、会社の資本金の大きさは関係ありません。

SESの取引はフリーランス法の「業務委託」にあたる

フリーランス法の業務委託には、物の製造、情報成果物(プログラムなど)の作成、役務(サービス)の提供が含まれます。SESの準委任契約で、エンジニアに開発や運用を頼む取引も業務委託にあたります。

なお、消費者を相手にしている人はフリーランス法の対象外です。SESの取引は事業者どうしなので、この点で外れることは通常ありません。

法人も対象になる?一人社長の判定

法人も、代表者のほかに役員がおらず、従業員もいなければフリーランス法の対象です。SESでよくある「エンジニア本人が社長の一人法人」は、多くが対象です。

一人社長とは、ここでは社長1人だけが役員で、ほかに役員も従業員もいない会社のことです。法人化したフリーランスエンジニアの多くが、この形で取引しています。

判定で見落としやすいのが役員の数です。フリーランス法でいう役員には、取締役のほか、監事・監査役、業務を執行する社員なども含まれます。

法人の形対象か理由
社長1人だけ・従業員なし対象他の役員も従業員もいない
社長+取締役1人(配偶者など)・従業員なし対象外他の役員がいる
社長+監査役1人・従業員なし対象外監査役も役員にあたる
社長1人+従業員1人(週20時間以上)対象外従業員を使っている

国のQ&A(問18)では、同居の親族が役員の場合も「他の役員」にあたるとされています。「妻を取締役にしている一人法人」は、実際には2人役員なので対象外です。

「従業員を使用している」の判定基準

「従業員を使用」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上で、かつ31日以上続けて雇う見込みの労働者を雇うことです。2つの条件を両方満たす人がいるときだけ、従業員を使っていると判定します。

所定労働時間とは、雇用契約などで決めた、働く予定の時間のことです。実際に働いた時間ではなく、決めている時間で見ます。

判定のポイントは次の4つです。

  1. 短時間のアルバイト:週20時間未満なら、何人いても従業員にあたりません。

  2. 短期のアルバイト:31日以上続けて雇う見込みがなければ、従業員にあたりません。

  3. 派遣社員:週20時間以上・31日以上の見込みで受け入れていれば、従業員を使っていると扱われます(Q&A問15)。

  4. 同居の家族:同居している親族だけを使っている場合は、従業員を使っていないと扱われます(Q&A問16)。

青色事業専従者とは、個人事業主と同じ家に住み、その事業の仕事をして給与を受け取る家族のことです。Q&A(問17)では、青色事業専従者も同居の親族にあたり、従業員を使っていないと扱われています。

同居していない親族を雇っている場合は、同居の親族の扱いにはあたりません。週20時間・31日の条件を満たせば、従業員として数えると考えられます。判断に迷うときは、専門家に確認してください。

SESのBP別|フリーランス法の適用対象ケース判定表

SESの取引で出てくる13のケースを、国のQ&Aに沿って判定しました。「一人で働いているか」「役員が1人だけか」を順に見れば、ほとんどのケースは判定できます。

#相手(BP)の状況対象か判断の根拠
1個人事業主のエンジニア・従業員なし対象個人で従業員を使っていない
2一人社長の法人・従業員なし対象役員1人で従業員なし(問2)
3一人社長の法人・同居の妻が取締役対象外同居親族の役員も「他の役員」(問18)
4個人事業主・同居の妻だけが手伝う対象同居親族のみの使用は従業員にあたらない(問16)
5個人事業主・妻が青色事業専従者対象青色事業専従者も同居親族(問17)
6個人事業主・週10時間のアルバイト1人対象週20時間未満は従業員にあたらない(問3)
7個人事業主・2週間だけの短期アルバイト対象31日以上の見込みがない(問3)
8一人社長の法人・週30時間の社員を1年契約で雇用対象外週20時間以上・31日以上の見込み(問3)
9一人社長の法人・派遣社員を週40時間で3か月受け入れ対象外派遣社員も条件を満たせば従業員(問15)
10社員30人のSES企業(法人BP)対象外従業員を使っている
11委託時は社員がいて、その後退職した対象外のまま判定は委託した時点(問8)
12個人事業主のエンジニアが、別の個人に再委託再委託先は対象再委託先が一人で働いていれば対象
13他社の正社員が、副業として個人で受ける対象副業で受けた業務の範囲では対象になりうる(問14)

表の中で、SESの営業がとくに間違えやすいのは3・5・9・13です。

  • ケース3:見た目は一人法人でも、登記上の役員が2人なら対象外です。

  • ケース5:家族に給与を払っていても、同居の親族なら従業員として数えません。

  • ケース9:自社で雇っていなくても、派遣社員の受け入れで対象外になります。

  • ケース13:本業が会社員でも、副業で個人として受けるなら「一人で働く事業者」として扱われます。

ケース12の「別の個人に再委託する」場面では、発注するBP自身もフリーランス法の義務を負います。従業員を使わない発注者でも、取引条件の明示だけは必要です。

対象外になった相手でも、取適法がかかることはあります。両方の法律の関係は取適法とフリーランス法の違い|SESで両方かかる取引を表で整理で整理しています。

判定はいつ行う?委託した時点で決まる

フリーランス法の対象かどうかは、業務を委託した時点で判定します。国のQ&A(問7)では、発注者は委託する時点で、相手の従業員の有無を確認する必要があるとされています。

委託した後に状況が変わっても、その委託の判定は変わりません。

  • 委託した時点で相手に従業員がいた場合、あとで従業員が退職しても、その委託は対象になりません(問8)。

  • 発注した自社が、委託の後に従業員を雇った場合も、その委託については重い義務を負いません(問9)。

SESでは、3か月ごとなどで契約を更新することが多くあります。更新は新しい委託になるので、そのたびに相手の状況を確認し直すのが安全です。

例|更新のたびに確認するスケジュール

たとえば、一人法人のBPと2026年10月から3か月契約を結ぶとします。

  1. 2026年10月1日(木)まで:初回の確認メールを送り、回答を保存する

  2. 2026年10月5日(月):稼働開始。3条通知(発注内容を示す書面やメール)を出す

  3. 2026年11月30日(月)ごろ:更新の打診と一緒に、従業員・役員の変化を聞き直す

  4. 2026年12月31日(木):契約満了。更新する場合は、新しい回答にもとづいて発注する

発注する自社側の区分も確認する

フリーランス法では、相手の判定に加えて、発注する自社の区分でも義務の数が変わります。従業員を使っているSES企業は、ほぼ「特定業務委託事業者」として重い義務を負います。

業務委託事業者とは、フリーランスに業務を委託するすべての事業者のことです。そのうち、従業員を使っている事業者や、役員が2人以上の法人を特定業務委託事業者と呼びます。

発注する自社区分主な義務
社員のいるSES企業特定業務委託事業者明示・60日以内の支払い・禁止行為・募集表示・ハラスメント対策など
一人社長のSES会社業務委託事業者取引条件の明示だけ
同居家族だけで回す個人の営業会社業務委託事業者取引条件の明示だけ

発注者の義務の中身は、フリーランス法のSES対応|発注者の義務7つと実務チェック表で詳しく解説しています。

取引開始時に営業が相手に確認する質問文

相手が対象かどうかは、発注前に3つの質問をメールで聞けば判定できます。Q&A(問7)では、口頭でもよいものの、メールなど記録が残る方法での確認が望ましいとされています。

聞く質問は次の3つです。

  1. 個人事業主ですか、法人ですか。

  2. 法人の場合、代表者の方以外に役員(取締役・監査役など)はいますか。

  3. 週20時間以上・31日以上働く見込みの従業員や派遣社員はいますか(同居のご家族だけなら「いいえ」)。

確認メールの例文

例文・テンプレート
件名:【ご確認】ご契約前の確認事項(2026年10月開始案件)

〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
2026年10月5日(月)開始予定の案件について、
法令に沿った発注書を作るため、次の3点を教えてください。

1. ご契約は個人事業主・法人のどちらでしょうか。
2. 法人の場合、代表者の方以外に役員
   (取締役・監査役など)はいらっしゃいますか。
3. 週20時間以上、かつ31日以上働く見込みの
   従業員・派遣社員はいらっしゃいますか。
   (同居のご家族だけの場合は「いいえ」とお答えください)

ご回答は、発注書の作成と取引条件の確認のためだけに使います。
お手数ですが、10月1日(木)までにご返信をお願いいたします。

回答別の対応

回答判定営業がやること
個人・従業員なし対象フリーランス法の記載事項を入れた発注書を出す
法人・役員は本人だけ・従業員なし対象同上。取適法の対象かも確認する
役員が2人以上、または従業員あり対象外通常の発注書。取適法の対象かは確認する
回答がない・あいまい未確定対象として扱い、フリーランス法の条件で発注する

回答があいまいなときは、対象として扱うのが安全です。フリーランス法の条件で発注しておけば、あとで対象とわかっても違反になりにくいからです。

相手が事実と違う回答をしていた場合も、違反は直す必要があります。国のQ&A(問13)は、その場合は指導・助言をすることがあり、直ちに勧告や命令はしないとしています。回答をメールで保存し、迷う相手は対象として扱うのが安全です。発注書の書き方は、フリーランス法の3条通知ひな形|SESの発注書・メール記載例が使えます。

対象になったら発注前にやること

相手がフリーランス法の対象なら、発注時に取引条件を示し、受け取りから60日以内に払うことが最低限の義務です。1か月以上の委託では禁止行為、6か月以上では中途解除の予告なども加わります。

  1. 取引条件を書面かメールで示す:業務の内容、報酬の額、支払期日などを入れます。

  2. 支払期日を受け取りから60日以内に決める:数え方はフリーランス法の支払期日60日|月末締めの起算日と計算例で確認できます。

  3. 1か月以上の委託では禁止行為を避ける:一方的な減額ややり直しの押しつけをしません。詳しくはフリーランス法の禁止行為7つ|SESの減額・買いたたきOK・NG例を見てください。

  4. 6か月以上の委託では、打ち切りや不更新を30日前に予告する:例文はフリーランス法の中途解約は30日前予告|例外と通知例文を解説にあります。

また、フリーランスとして契約していても、働き方の実態が社員と同じなら労働者として扱われることがあります。指揮命令のしかたは、業務委託の労働者性の判断基準|偽装フリーランスを防ぐ8項目で確認してください。

自分で管理する方法と、チョータツで楽にする方法

判定の結果は、取引先ごと・契約ごとに記録し、更新のたびに見直せる形で残すのが基本です。まずは自分でできる方法を紹介します。

自分で管理する場合は、Excelの取引先一覧に次の列を足します。「個人/法人」「役員の数」「従業員の有無」「フリーランス法の対象か」「確認日」「確認メールの保存場所」です。一覧の作り方は、SESのBP登録管理方法|取引先情報の管理項目15と更新の仕組みが参考になります。

ただ、BPが増えると、確認メールと一覧がばらばらになりがちです。営業が複数いると「誰がいつ確認したか」もわからなくなります。

もっと楽にするなら、チョータツが使えます。チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件ごとの条件を残すExcelやメールに散らばる案件の情報としてまとめて管理できる
発注前に条件を確認するメールを探して読み返す案件情報を開いて確認できる
社内で共有するファイルを送り合うチームで同じ情報を共有できる
情報を入れる1件ずつ手で書き写すAIが入力を手伝う

他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材もデータベースとして見られます。取引の条件を案件と一緒に見られるようにしておくと、提案から発注までの確認もれを減らせます。

よくある質問

Q. フリーランス法の適用対象に法人は含まれますか?
含まれます。代表者1人のほかに役員がおらず、従業員も使っていない法人は対象です。役員が2人以上いるか、従業員を使っている法人は対象外です。
Q. フリーランス法の「従業員を使用している」とは?
週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上続けて雇う見込みの人を雇っていることです。派遣社員も同じ条件で受け入れていれば含みます。同居の家族だけなら含みません。
Q. 一人社長の会社はフリーランス法の対象ですか?
ほかに役員も従業員もいなければ対象です。ただし、同居の家族を取締役や監査役にしている場合は「他の役員」がいるため対象外です。
Q. 家族だけを雇っている個人事業主は対象ですか?
同居している家族だけなら対象です。青色事業専従者として給与を払っていても同じ扱いです。同居していない親族は、週20時間・31日の条件で従業員かどうかを判断します。
Q. 相手が対象か確認できないときはどうすればいいですか?
フリーランス法の対象として扱い、その条件で発注するのが安全です。確認は電話でもできますが、メールで聞いて回答を保存しておきましょう。
Q. 契約の途中で相手が従業員を雇ったら、対象から外れますか?
その委託については、委託した時点の判定のままです。契約を更新するときは新しい委託になるので、あらためて確認してください。

まとめ

  • フリーランス法の対象は「一人で働いているか」で決まり、法人も含む

  • 一人社長の法人は対象。ただし同居の家族でも、役員にしていれば対象外

  • 「従業員を使用」は、週20時間以上・31日以上の見込みの両方を満たす人がいるとき

  • 同居の家族だけを使う個人事業主は対象。派遣社員の受け入れは従業員として数える

  • 判定は委託した時点で行い、SESの契約更新のたびに確認し直す

  • 発注前に3つの質問をメールで聞き、あいまいなら対象として扱う

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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