フリーランス法の支払期日60日|SESの月末締めで見る起算日と計算例、発注書の文例つき
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
フリーランス法の支払期日60日ルールとは?
フリーランス法の支払期日60日ルールとは、報酬の支払期日を、給付を受け取った日から60日以内に決めて払うルールのことです。守るのは、フリーランスに仕事を頼んだ会社です。60日は上限で、「できる限り短い期間内」に決めることが求められます。
フリーランス法とは、2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」のことです。フリーランスとの取引で、条件の明示や期日どおりの支払いなどを発注者に求めています。
この法律では、フリーランスを特定受託事業者と呼びます。従業員を使わない個人事業主や、社長1人だけの法人が当てはまります。
60日ルールを守る義務があるのは特定業務委託事業者です。従業員を使う個人、または役員が2人以上いるか従業員を使う法人を指します(第2条第6項)。ほとんどのSES企業が当てはまります。
| 決まり | 内容 |
|---|---|
| 支払期日の上限 | 給付を受領した日から60日以内で、できる限り短く |
| 数え方 | 受領した日を1日目に数える |
| 期日を決めなかったとき | 受領した日が支払期日になる |
| 60日を超えて決めたとき | 60日を経過する日(60日目)が支払期日になる |
| 再委託の例外 | 元の発注者からの支払期日から30日以内も選べる |
発注する相手が対象になるかは、フリーランス法の適用対象は法人も?一人社長・従業員の判定で確認できます。
SESの「給付を受領した日」はいつ?
SESの準委任では、給付を受領した日とは、役務の提供を受けた日のことです。フリーランスが実際に作業をした日が基準になり、書類が届いた日や確認を終えた日ではありません。
国が公表しているQ&A(問45)では、起算日は種類ごとに次のように説明されています。受領した日も1日目として数えます。起算日とは、期間を数え始める日のことです。
| 委託の種類 | 給付を受領した日 |
|---|---|
| 物を作ってもらう | 物を受け取り、自社の手元に置いた日 |
| プログラムなどの成果物 | 記録媒体を受け取った日、または自社のサーバーなどに記録された日 |
| 役務(作業)の提供 | 役務の提供を受けた日。日数がかかる一連の役務は、終わった日 |
SESの準委任は、多くが3番目の役務の提供です。原則は、個々の作業をした日ごとに数えます。
ただし、国の解釈ガイドラインには例外があります。続けて提供される役務は、次の3つをすべて満たせば、稼働月の末日に役務を受けたものとして数えられます。
月単位の締め期間の末日までの役務に対して払うことを話し合って決め、3条通知にはっきり書いている
3条通知に、その期間の報酬の額か、単価などの計算方法をはっきり書いている
続けて提供される役務が同じ種類のものである
3条通知の書き方によっては、月の途中の作業日から数えることになります。どちらで数えても60日に収まるように、月末締め翌月末払いを基本にするのが安全です。
3パターンで見る起算日と支払日の計算例
月末締め・稼働報告書の受領・検収のどれを基準にしても、起算日は役務の提供を受けた日です。2026年10月分(10月1日(木)〜10月31日(土))の稼働で、3つのパターンを計算します。
パターン1:月末締め(稼働月の末日から数える)
10月31日(土)を1日目にすると、60日目は12月29日(火)です。支払日がこの日までなら収まります。
| 支払条件 | 支払日 | 何日目か | 判定 |
|---|---|---|---|
| 月末締め翌月末払い | 11月30日(月) | 31日目 | 収まる |
| 月末締め翌々月10日払い | 12月10日(木) | 41日目 | 収まる |
| 月末締め翌々月20日払い | 12月20日(日) | 51日目 | 収まる |
| 月末締め翌々月末払い | 12月31日(木) | 62日目 | 2か月以内の扱い。ただし下の注意を参照 |
翌々月末払いは62日目です。国のQ&A(問48)は、31日の月のために61日目・62日目になる場合を「2か月以内」として運用し、問題としないと説明しています。
ただし、3条通知の書き方が3つの条件を満たさないと、月の初日の作業日から数えることになります。その場合、10月1日(木)の作業分を12月に払うと2か月を超えます。どちらの数え方でも収まるのは、翌月末払いまでと覚えておきましょう。
パターン2:稼働報告書の受領日から数える(NG)
稼働報告書が届いた日を起算日にするのは誤りです。稼働報告書とは、フリーランスがその月に働いた時間を書いて出す書類のことです。
たとえば、10月分の報告書が11月5日(木)に届き、「報告書の受領から60日以内に払う」と決めたとします。11月5日を1日目にすると、60日目は2027年1月3日(日)です。
| 数え始め | 60日目 | 本来の60日目との差 |
|---|---|---|
| 稼働月の末日:10月31日(土) | 12月29日(火) | ― |
| 報告書の受領日:11月5日(木) | 2027年1月3日(日) | 5日遅い |
報告書の提出が遅れるほど、支払日も後ろにずれてしまいます。報告書は、役務を受け取ったことを確かめる記録と考えましょう。報告書が届かないときの催促はSESの稼働報告書が遅れる・出ないときの対応|請求を間に合わせる手順で紹介しています。書き方と回収の流れは、稼働報告書のテンプレート|SES・業務委託の書き方と精算前チェックにまとめています。
パターン3:検収日から数える(NG)
検収を終えた日を起算日にすることもできません。検収とは、受け取った成果物や作業の内容が、注文どおりかを確かめることです。
フリーランス法の第4条は、検査をするかどうかを問わず、受領した日から60日以内に支払期日を決めると定めています。つまり、検収に何日かかっても、60日の数え始めは動きません。
| 例 | 起算日 | 60日目 |
|---|---|---|
| 10月分を11月10日(火)に検収完了 | 10月31日(土)のまま | 12月29日(火) |
| 「検収完了日から60日以内に払う」と決めた場合 | 11月10日(火)と誤って数える | 2027年1月8日(金)となり、10日遅い |
フリーランス法で検収期間を設けてもよい?
検収期間を設けること自体は問題ありませんが、検収期間を理由に60日の期限を延ばすことはできません。「フリーランス法 検収期間」と調べている方は、この点を押さえておきましょう。
検収期間を決めるなら、支払日から逆算します。月末締め翌月末払いなら、翌月の中旬までに検収を終える流れにしておくと、経理の処理にも余裕が出ます。
成果物をやり直してもらった場合
プログラムなどの成果物が注文と合わず、やり直してもらった場合は扱いが変わります。フリーランス側に原因があり、支払い前にやり直してもらう場合です。国のQ&A(問46)では、やり直し後の物を受け取った日が起算日になります。
ただし、SESの準委任では、成果物の完成ではなく作業そのものに報酬を払うのが一般的です。検収を理由に、稼働した月の報酬の支払いを止めないようにしましょう。
一方的に報酬を減らしたり、支払いを遅らせたりすることは、禁止行為に当たるおそれがあります。詳しくはフリーランス法の報酬の減額は違反?SESで許される例外と相殺の扱いをご覧ください。
支払期日を決めなかった・60日を超えて決めた場合
支払期日を決めなかったときは、受領した日が法律上の支払期日とみなされます。60日を超えて決めたときは、受領した日から60日目です。
| 発注時の決め方 | 法律上の支払期日(10月分の例) |
|---|---|
| 支払期日を書かなかった | 10月31日(土)=受領した日 |
| 「3か月後の10日払い」と書いた(1月10日) | 12月29日(火)=60日目 |
| 「翌月末払い」と書いた | 11月30日(月)=書いたとおり |
支払期日を書き忘れると、受け取ったその日に払う約束になってしまいます。発注書やメールには、必ず支払期日を書きましょう。
今より支払日を遅くするのもNG
「法律で60日まで認められているから」と、今の支払日より遅くするのも問題になります。国のQ&A(問49)は、「60日以内だから」という理由だけで支払期日を前より遅らせるのは法律違反になると説明しています。できる限り短い期間とはいえないからです。
たとえば、今は翌月末払いのフリーランスを、翌々月10日払いに変えるのは避けましょう。
発注書に書く支払期日の書き方と文例
支払期日は、締め日・支払日・休日の扱いの3つを、発注書やメールに具体的に書きます。フリーランス法では、発注したらすぐに取引条件を書面かメールなどで示す必要があり、これを3条通知と呼びます。
支払期日の書き方のポイントは、次の4つです。
「支払日:翌月末日」のように、特定できる日を書く
「検収後」「請求書受領後」など、日付が決まらない書き方をしない
支払日が休日のときの扱い(前の営業日か、後ろにずらすか)を書く
再委託の30日ルールを使う場合は、必要な事項をあわせて書く
文例1:月末締め翌月末払い(基本)
【報酬の支払期日】 毎月末日締め、翌月末日払いとします。 (例:2026年10月1日〜10月31日の業務分は、2026年11月30日に支払います) 支払日が金融機関の休業日に当たる場合は、その前営業日に支払います。 【支払方法】 乙の指定する銀行口座への振込。振込手数料は甲の負担とします。
文例2:休日の後ろ倒しを入れる場合
後ろにずらす場合は、前もって合意しておく必要があります。国の解釈ガイドラインとパンフレットでは、結果として60日を超えてもよい条件が2つ示されています。順延が2日以内であることと、翌営業日にずらすことを前もって書面やメールで合意していることです。なお、ずらした後も60日以内に収まるなら、前もって合意していれば2日を超えてもかまいません。
【報酬の支払期日】 毎月末日締め、翌月末日払いとします。 支払日が金融機関の休業日に当たる場合は、翌営業日に支払います (順延する期間は2日以内とします)。
文例3:再委託の30日ルールを使う場合
SES企業が、エンドや元請けから受けた仕事をフリーランスに任せる場合は、再委託の例外を使えることがあります。再委託とは、自社が受けた仕事を、別の相手に任せることです。
3条通知で示すのは「再委託であること」「元の発注者の名前」「元の発注者からの支払期日」です。示せば、元の支払期日から30日以内に支払期日を決められます。
【報酬の支払期日】 本業務は、〇〇株式会社(元委託者)から当社が受託した業務の再委託です。 元委託者から当社への支払期日:2026年12月31日 貴殿への報酬の支払期日:2027年1月29日
ただし、同じ取引に取適法もかかる場合は、取適法の60日を超えないように注意が必要です。くわしくはフリーランス法の再委託30日ルール|SESの支払期日と例外条件で解説しています。3条通知全体のひな形は、フリーランス法の3条通知ひな形|SESの発注書・メール記載例にあります。
支払期日を点検する5ステップ
フリーランスへの支払期日は、稼働月の末日を1日目として60日目を出し、発注書の支払日と比べることで点検できます。
フリーランス法の対象になる発注先を洗い出す:個人事業主と、社長1人だけの法人
発注書の支払条件を一覧にする:締め日、支払日、休日の扱い、支払方法を書き出す
起算日を確認する:報告書の受領日や検収日から数えていないかを見る
60日目と支払日を比べる:表計算ソフトなら「締め日+59日」が60日目
超えている発注先の条件を直す:新しい条件を3条通知で知らせる
BP企業への支払いも点検するなら、取適法の支払期日60日とSESの支払サイト|計算例と手形禁止の計算表もあわせて使ってください。2つの法律の違いは取適法とフリーランス法の違い|SESで両方かかる取引を表で整理で整理しています。
支払条件を変えるときのフリーランスへの連絡例文
点検で60日を超える条件が見つかったら、次回の発注から直します。変更はメールで伝え、3条通知として残します。
件名:【ご連絡】11月分以降の報酬のお支払日の変更について
〇〇様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
報酬のお支払日を、11月分から次のとおり早めることになりました。・変更前:毎月末日締め、翌々月末日払い
・変更後:毎月末日締め、翌月末日払い(11月分は12月31日にお支払い)
・支払日が金融機関の休業日の場合:前営業日にお支払い業務内容・報酬額に変更はありません。
本メールを、取引条件の明示として保存いただけますと幸いです。
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よくある質問
- Q. フリーランス法の支払期日60日は、いつから数えますか?
- 給付を受領した日から数え、その日を1日目にします。SESの準委任では、役務の提供を受けた日です。3条通知に月単位の締めと報酬の額(または計算方法)を書くなど、条件を満たせば稼働月の末日から数えられます。
- Q. 月末締めの場合、フリーランスへの支払いはいつまでですか?
- 月末締め翌月末払いなら、どの数え方でも問題ありません。10月分なら11月30日(月)です。翌々月末払いは、3条通知の書き方しだいで2か月を超えるので避けましょう。
- Q. フリーランス法で検収期間を設けてもいいですか?
- 設けることはできますが、検収にかかる日数で60日の期限は延びません。法律は、検査をするかどうかを問わず、受領した日から60日以内に支払期日を決めるよう定めています。
- Q. 稼働報告書の受領日を起算日にできますか?
- できません。報告書は作業の記録で、起算日は役務の提供を受けた日です。報告書が遅れて届いても、数え始めは変わりません。
- Q. フリーランス法の支払期日はどう書けばいいですか?
- 「毎月末日締め、翌月末日払い」のように、日付が特定できる形で書きます。休日の扱いと支払方法もあわせて書きましょう。
- Q. 支払期日を書き忘れたらどうなりますか?
- 給付を受領した日が支払期日とみなされます。月末締めの10月分なら、10月31日に払う約束になってしまうので、必ず書きましょう。
- Q. 元請けからの入金が遅い場合は、どうすればいいですか?
- 再委託であることなどを3条通知で示せば、元の支払期日から30日以内に支払期日を決められます。ただし、取適法もかかる取引では60日を超えないよう注意が必要です。
まとめ
フリーランス法では、給付を受領した日から60日以内で、できる限り短く支払期日を決める
受領した日を1日目に数える。SESの準委任では、役務の提供を受けた日が基準
稼働報告書の受領日や検収日を、数え始めの日にはできない
月末締めなら、翌月末払いにすればどの数え方でも収まる。翌々月末払いは数え方しだいで超えるので避ける
支払期日を書かなければ受領日、60日を超えれば60日目が支払期日になる
発注書には、締め日・支払日・休日の扱い・支払方法を具体的に書く
元請けの入金を待つなら、再委託の30日ルールの条件を満たす書き方にする
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)」(第3条 取引条件の明示、第4条 報酬の支払期日等)
公正取引委員会・厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方(解釈ガイドライン)」(給付を受領した日、役務の提供委託の起算日の例外、金融機関の休業日の順延)
厚生労働省掲載「フリーランス・事業者間取引適正化等法 Q&A」(令和8年8月26日時点版。問45 起算日、問46 やり直しと起算日、問48 月単位の締切制度、問49 支払期日の後ろ倒し、問55 再委託の例外)
公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法 パンフレット」(施行日、報酬の支払期日、月単位の締切制度、金融機関の休業日の順延)
公正取引委員会規則「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」(再委託の場合に明示する事項)
公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」