準委任契約の検収とは?検収書の要否とみなし検収の決め方|SESの稼働報告→検収→請求の流れと条文例
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
準委任契約の検収とは?
準委任契約の検収とは、受けた側が報告した業務の実績を、頼んだ側が確認して認めることです。SESでは、毎月の稼働時間と作業内容を客先が確認し、その月の請求額を確定させる手続きを指すのが一般的です。
もともと検収とは、納品された物が注文どおりかを確かめて受け取ることです。請負契約やモノの売買で使われてきた言葉です。
準委任契約とは、成果物の完成ではなく、決まった業務を行うことに対して報酬を払う契約のことです。民法第656条で、法律行為でない事務の委託に委任の規定を当てはめると定められています。
準委任契約に検収は必要?履行割合型と成果完成型で違う
結論から言うと、成果物を納める型なら検収が必要で、稼働した時間で払う型なら合格判定としての検収は要りません。準委任契約には、報酬の払い方で2つの型があるからです。
履行割合型とは、業務を行った時間や割合に応じて報酬を払う型のことです。SESの月額単価と精算幅の契約は、ほぼ履行割合型です。成果完成型とは、業務の結果として成果物を渡したときに報酬を払う型のことです(民法第648条の2)。
| 比べる点 | 履行割合型(SESで多い) | 成果完成型 | 請負契約 |
|---|---|---|---|
| 報酬の対象 | 業務を行ったこと | 成果の引き渡し | 仕事の完成 |
| 報酬を請求できる時期 | 期間の経過後(月額なら月末後) | 成果の引き渡しと同時 | 目的物の引き渡しと同時 |
| 検収の意味 | 稼働実績の確認・金額の確定 | 成果物の確認 | 完成・合格の判定 |
| 検収で不合格になると | 報酬は原則減らない(時間の誤りは直す) | やり直しや支払い保留の争いになりやすい | 修正して再納品 |
民法第648条第2項では、期間で報酬を決めた準委任は、その期間が過ぎた後に請求できるとされています。つまり月額契約なら、法律上は月末が過ぎれば請求できます。
それでも実務で検収をするのは、精算幅の控除・超過で請求額が月ごとに変わるからです。客先と時間を合わせずに請求すると、後で請求書の出し直しになります。
成果完成型の注意点は、準委任契約の成果完成型とは|履行割合型との違いと検収の注意点で詳しく扱っています。
「検収に合格しないと払わない」は準委任ではおかしい
履行割合型の準委任で、作業の出来ばえを理由に報酬を払わないのは筋が通りません。報酬は業務を行ったことに払うものだからです。
ただし、エンジニアが必要な注意を払わずに業務をした場合は、別の問題になります。受けた側には善管注意義務(仕事を引き受けた人に求められる、ふつう以上の注意を払う義務)があるためです。検収の場で品質の指摘が出たら、報酬の話と責任の話を分けて整理しましょう。
SESの検収の流れ|稼働報告→検収→請求の5ステップ
SESの検収は、稼働報告→検収→請求→入金→BPへの支払いの順に進みます。2026年10月分を例に、営業がやることを並べます。
稼働報告書を集める(11月2日・月):エンジニアから、10月の稼働時間と作業内容を記入した稼働報告書を受け取る。BPのエンジニアならBPの営業から受け取る
客先に検収を依頼する(11月2日・月):稼働報告書を客先の承認者に送り、確認をお願いする。精算幅を外れていれば、控除・超過の計算も一緒に送る
検収を確定させる(11月10日・火まで):5営業日で数える(11月3日は文化の日で休み)。承認印・承認メール・システム上の承認のどれかで確定させる。返事がなければ、みなし検収の日付で確定とする
請求書を送る(検収が確定した日):確定した時間と金額で請求書を作り、送る
入金を確認し、BPへ支払う:月末締め翌月末払いなら11月30日(月)に入金。BPへの支払いにも同じ確定時間を使う
稼働報告書の書き方は稼働報告書のテンプレート|SES・業務委託の書き方と精算前チェックにまとめています。請求書の形はSESの請求書の書き方とテンプレート|精算の記載例と送付前チェック10を使ってください。
稼働時間は誰が確認するか
稼働報告の確認は、客先の管理者と、SES企業側の責任者の両方で行うのが安全です。客先が日々の勤怠を細かく管理すると、偽装請負と見られるおそれがあるからです。
偽装請負とは、契約は準委任や請負なのに、実態は客先がエンジニアに直接指示を出している状態のことです。客先には「月の実績の確認」だけをお願いし、日々の管理はSES企業側でする形にしましょう。詳しくは偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選と予防策をご覧ください。
検収書は必要?作らなくてよい場合と残すべき証拠
検収書は法律で必ず作る書類ではありません。準委任の報酬は業務を行ったことで発生するので、検収書がなくても請求はできます。
検収書とは、頼んだ側が「この内容で受け取った・確認した」と書いて渡す書類のことです。請負や物品の取引では、発注側が出すのが一般的です。
一方で、SESでは次のような理由から、何らかの形で承認を残すことが大切です。
請求額(控除・超過)で揉めたときに、確定した時間を示せる
客先の経理が、支払いの手続きに承認の記録を求めることがある
BPへの支払い額を決めるときの根拠になる
| 承認の残し方 | 手間 | 証拠としての強さ | 向いている取引 |
|---|---|---|---|
| 検収書(客先発行) | 大きい | 強い | 客先の社内ルールで必要な場合 |
| 稼働報告書への承認印・署名 | 中くらい | 強い | 紙・PDFで報告している取引 |
| 承認メール(「内容を確認しました」) | 小さい | 中くらい | 多くのSES取引 |
| 勤怠・工数システム上の承認 | 小さい | 中くらい | 客先のシステムを使う取引 |
| みなし検収(期限内に異議なし) | ほぼなし | 条項と送付記録があれば十分 | 返事が遅れがちな取引 |
おすすめは、承認メールを基本にし、みなし検収の条項で返事の遅れに備える形です。検収書の発行を客先に求めると、かえって手続きが遅れることがあります。
みなし検収とは?基準の決め方と条文例
みなし検収とは、決めた期限までに頼んだ側から異議が出なければ、検収が終わったものと扱う取り決めのことです。客先の返事が遅れても、請求を止めずに済みます。
みなし検収は、法律で自動的に決まるものではありません。基本契約書か個別契約書に書いておく必要があります。
みなし検収の基準を決める4項目
みなし検収の条項を作るときは、次の4つを決めます。
| 決めること | よくある例 | 営業のおすすめ |
|---|---|---|
| 起点になる日 | 報告書を送った日/届いた日 | 「送った日」にし、メールの送信記録を残す |
| 期限 | 3営業日・5営業日・7日 | 5営業日(月初の請求に間に合う) |
| 異議の出し方 | 書面・電子メール | 「理由を示した書面または電子メール」 |
| 異議が出たとき | 協議して修正 | 争いのない部分は先に確定させる |
「争いのない部分は先に確定」を入れておくと便利です。例えば2時間分だけ食い違っても、残りの時間で請求を進められます。
みなし検収の条文例(SESの準委任・履行割合型)
基本契約書に入れる条文の例です。自社の契約書に合わせて、甲(客先)と乙(SES企業)を置き換えてください。
第○条(業務の報告及び確認)
乙は、毎月の業務終了後、当月の作業時間及び作業内容を記載した業務報告書を、翌月第2営業日までに甲に提出する。
甲は、前項の業務報告書を受領した日から5営業日以内に内容を確認し、その結果を書面又は電子メールにより乙に通知する。
甲が前項の期間内に、理由を示した書面又は電子メールによる異議を述べないときは、当該業務報告書の内容で確認が完了したものとみなす。
甲が異議を述べた場合、甲乙は誠実に協議する。この場合でも、異議のない部分については前項と同様に確認が完了したものとする。
前各項の確認は、甲が業務の成果を評価し、又は受け入れるものではなく、作業時間の確定を目的とする。
第5項は、準委任であることをはっきりさせるための一文です。「検収=成果の合格判定」と読まれると、請負に近い契約と見られるおそれがあるからです。条文の名前も「検収」ではなく「業務の報告及び確認」にしておくと、趣旨が伝わりやすくなります。
検収と支払期日の関係|取適法では検収日から数えない
取適法がかかる取引では、支払期日は役務を提供した日から60日以内です。検収が終わった日から数えることはできません。
取適法とは、2026年1月1日に下請法が改正されてできた「中小受託取引適正化法」のことです。SESの取引がすべて対象になるわけではありません。委託の内容と、客先・自社の資本金や従業員数で決まります。
公正取引委員会の運用基準では、役務提供委託の支払期日は「役務の提供を受けた日」から数えるとされています。検査の期間が長くなっても、起算日は変わりません。
毎月続くSESでは、条件を満たせば月の末日に役務を提供したものとして数えられます。条件は次の3つです。月単位の締めで払うことを事前に合意し明示していること、金額か計算方法が示されていること、同じ種類の役務であることです。
| 支払条件の書き方 | 10月分の支払日 | 取適法の対象なら |
|---|---|---|
| 月末締め翌月末払い | 11月30日(月) | 60日以内で問題なし |
| 検収月の翌月末払い(検収が11月) | 12月31日(木) | 10月31日から62日目。60日を超えるおそれ |
| 月末締め翌々月末払い | 12月31日(木) | 62日目。60日を超えるおそれ |
表の2行目のように、「検収月の翌月末払い」という書き方は要注意です。検収が月をまたぐと、支払いが1か月後ろにずれます。
なお、フリーランス法では、31日の月のために61日目・62日目になる支払いを「2か月以内」として扱います(国のQ&A問48)。取適法の運用基準には同じ明記が見当たらないため、BPへの支払いは翌月末払いにそろえるのが安全です。
60日の数え方の細かい条件は、取適法の支払期日60日とSESの支払サイト|計算例と手形禁止で解説しています。客先に検収を引き延ばされたときの対応は、下請法の検収は何日以内?SESで検収を引き延ばされた時の対処法をご覧ください。
先行検収とは?SESで頼まれたときの注意点
先行検収とは、業務や納品が終わる前に、先に検収を済ませたことにする扱いのことです。客先の予算を年度内に使い切りたいときなどに頼まれることがあります。
履行割合型のSESで、まだ稼働していない期間の分を検収・請求するのは避けましょう。実態と書類が合わなくなり、次のような問題につながるおそれがあります。
売上を計上する時期がずれ、会計や税務の処理で問題になる
途中で契約が終わったとき、先にもらった代金の返金で揉める
客先の監査で、実態のない検収として指摘される
頼まれたときは、実際に稼働した分だけを検収してもらうよう提案します。どうしても前払いが必要なら、前払金として契約を分け、経理や税理士に処理を確認してから進めましょう。
検収が遅れて入金がずれるのを防ぐ営業の段取り
入金のずれは、報告の遅れと承認の遅れの2つから起きます。どちらも、契約前と月末前の段取りで防げます。
契約前に決めること(チェックリスト)
稼働報告書の提出期限(例:翌月第2営業日まで)
客先の承認者の名前と、不在時の代わりの人
承認の方法(メール・承認印・システム)
みなし検収の期限(例:5営業日)
支払条件が「月末締め」か「検収月基準」か
請求書の送り先と、客先の請求書の締め日
BPからの稼働報告の提出期限(客先より1営業日早く)
毎月の段取り
月末の3営業日前:エンジニアとBPに、報告書の提出日をメールで知らせる
翌月1営業日目:報告書を回収し、精算幅から外れていないかを確認する
翌月2営業日目まで:客先の承認者へ送り、みなし検収の期限日を本文に書く
期限の前日:返事がなければ、確認のお願いを1回だけ送る
期限日:承認かみなし検収で確定し、その日のうちに請求書を送る
客先への依頼メールは、次のように書くと期限が伝わります。BPから報告書が届かないときは、SESの稼働報告書が遅れる・出ないときの対応|請求を間に合わせる手順の例文を使えます。
件名:【ご確認のお願い】2026年10月分 業務報告書(○○様)
○○株式会社 ○○様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
2026年10月分の業務報告書をお送りします。稼働時間は152時間で、精算幅(140〜180時間)の範囲内です。
契約第○条に基づき、11月10日(火)までにご確認をお願いいたします。
期日までにご連絡がない場合は、この内容で確定として請求書をお送りします。
どうぞよろしくお願いいたします。
時間の計算で揉めやすいのは、精算幅を外れた月です。控除・超過の計算方法はSESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法と有給・固定の扱いで確認できます。
検収ルールの管理をチョータツで楽にする
自分でやるなら、案件ごとの検収ルールをExcelの一覧にまとめるのが第一歩です。提出期限・承認者・みなし検収の期限・支払条件を列にして、月初にその一覧を見ながら動きます。
ただ、担当する案件が増えると、Excelの更新が追いつかなくなります。営業ごとに別のファイルを持つと、担当が変わったときに条件がわからなくなります。
チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 検収ルールを残す | 営業ごとのExcelに散らばる | 案件の情報としてまとめて管理できる |
| 担当が変わったとき | ファイルを探して引き継ぐ | チームで同じ情報を共有できる |
| 情報を入れる | 1件ずつ手で書き写す | AIが入力を手伝う |
案件ごとに検収や支払いの条件を残しておけば、次の提案の前に確認できます。「この客先は検収が遅れやすい」「支払条件が検収月基準だった」などです。
よくある質問
- Q. 準委任契約に検収は必要ですか?
- 履行割合型なら、成果物の合格判定としての検収は不要です。ただし請求額を確定させるため、稼働報告を客先に確認してもらう手続きは入れておくのがおすすめです。
- Q. 準委任契約で検収書がないと請求できませんか?
- 請求できます。報酬は業務を行ったことで発生し、期間で決めた報酬は期間の経過後に請求できます。承認メールや稼働報告書への承認印でも、証拠として十分なことが多いです。
- Q. みなし検収の期限は何日が一般的ですか?
- 3〜7営業日程度で決める例が多いです。月初に請求書を出したいSESでは、報告書を受け取ってから5営業日が使いやすい長さです。
- Q. 検収が終わるまで支払わないと言われたら?
- 取適法の対象なら、支払期日は役務を提供した日から60日以内で、検収の遅れは理由になりません。対象外の取引でも、契約書の支払条件とみなし検収の条項を示して相談しましょう。
- Q. 請負契約の検収とは何が違いますか?
- 請負の検収は、完成した物が注文どおりかを判定するものです。不合格なら修正して納め直します。履行割合型の準委任の検収は、稼働時間を確定させるもので、合否の判定ではありません。
- Q. 工数や時間で精算する準委任でも検収はしますか?
- します。工数や時間で精算する契約は、月ごとに請求額が変わるためです。時間を確定させる手続きとして、稼働報告の確認とみなし検収を決めておきましょう。
まとめ
SESで多い履行割合型の準委任には、成果物の合格判定としての検収は法律上ない
実務の検収は、月ごとの稼働報告を客先が確認し、請求額を確定させる手続き
検収書は必須ではない。承認メールや承認印でもよいが、承認の記録は残す
みなし検収の条項(報告から5営業日以内に異議がなければ確定)を契約に入れる
条文では「成果の評価ではなく作業時間の確定が目的」と書き、準委任であることをはっきりさせる
取適法の対象なら、支払期日は検収日ではなく役務を提供した日から60日以内。BPへは翌月末払いが安全
「検収月の翌月末払い」は、検収が月をまたぐと入金が1か月ずれる
先行検収は避け、実際に稼働した分だけを検収してもらう
入金のずれは、報告の提出日と承認の期限を月末前に決めておけば防げる
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「民法」(第624条 報酬の支払時期、第632条・第633条 請負、第648条 受任者の報酬、第648条の2 成果等に対する報酬、第656条 準委任)
公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」(役務提供委託の支払期日の起算日、月単位の締切対象期間の3条件、検査期間と起算日)
公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」
政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」
厚生労働省「請負を適正に行うために」(37号告示)