下請法の検収は何日以内?SESで検収を引き延ばされた時の計算例と確認メール文例

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

下請法(取適法)に「検収は何日以内」の決まりはある?

ありません。下請法にも、2026年1月1日に施行された取適法にも、検収の日数を決めた条文はありません。「7日以内」という数字も、公正取引委員会の運用基準やQ&Aには出てきません。

検収とは、頼んだ側が、受け取った仕事の中身を確かめて認めることです。SESでは、毎月の稼働時間と作業内容を客先が確認し、請求額を決める手続きを指すのが一般的です。

「検収は7日以内」は、会社ごとの契約や社内ルールで決めていることが多い数字です。法律の決まりと混ざって広まっていると考えてください。検収の期限を守らせたいなら、契約書や注文書に日数を書いておくことが必要です。

取適法とは

取適法とは、下請法が改正されてできた「中小受託取引適正化法」のことです。2026年1月1日に施行されました。発注側を「委託事業者」、受ける側を「中小受託事業者」と呼びます。

名前は変わりましたが、支払期日を受け取った日から60日以内に決めるルールは下請法から引き継がれています。「下請法 検収」で調べている方は、同じ考え方が今も使われていると理解して大丈夫です。

支払期日は検収日ではなく「受領日」から数える

取適法の支払期日は、役務の提供を受けた日(受領日)から数えて60日以内です。検収が終わった日から数えることはできません。

公正取引委員会の運用基準は、起算日を「給付を受領した日」としています。また、検査を基準に支払日を決める会社には、検査の日数を見込んだ支払制度を求めています。

つまり、検収に時間がかかるのは発注側の事情です。検収の遅れを理由に、60日を超えて支払いを遅らせることは認められません。

項目取適法での考え方
支払期日の起算日役務の提供を受けた日(受領日)
検収にかかった日数起算日をずらす理由にならない
支払期日の上限受領日から60日以内で、できる限り短く
期日に払わなかったとき60日を過ぎた日から年14.6%の遅延利息

毎月続くSESは「稼働月の末日」から数える

毎月続くSESの準委任で条件を満たせば、稼働月の末日を受領日として数えられます。運用基準は、連続して提供される役務について、次の3つをすべて満たすことを条件にしています。

  1. 月単位の締めで払うことを、協議のうえ事前に合意し、明示していること

  2. その期間の代金の額か、単価を使った計算方法が示されていること

  3. 連続して提供する役務が、同じ種類であること

「月末締め翌月末払い」「1時間あたり◯円で精算」と注文書に書かれていれば、多くの場合は条件に当てはまります。

計算例:検収が遅れたら支払期日はいつ?

2026年10月分なら、10月31日(土)を1日目として、60日目は12月29日(火)です。検収がいつ終わっても、この日付は動きません。

例として、次のような取引を考えます。

  • 稼働月:2026年10月(1人・月額88万円、税込み)

  • 支払条件:月末締め翌月末払い

  • 稼働報告書の提出:11月2日(月)

  • 客先の返事:「社内の検収が終わらないので、支払いは12月末になる」

日付数え方意味
10月31日(土)1日目10月分の受領日(稼働月の末日)
11月30日(月)31日目契約で決めた支払期日(翌月末)
12月29日(火)60日目取適法の支払期日の上限
12月31日(木)62日目客先が言う支払日。60日を超える

この例には、問題が2つあります。

  1. 契約の支払期日(11月30日)を過ぎている:取適法の対象なら、支払遅延にあたります。対象外でも、契約違反です。

  2. 60日目(12月29日)も過ぎている:たとえ支払条件を変えたとしても、60日を超える支払いは認められません。

表計算ソフトで数えるときは、「受領日+59日」が60日目です。10月31日に59日を足すと、12月29日になります。

遅延利息はいくらになる?

取適法の対象なら、60日を過ぎた日から実際に払う日まで、年14.6%の遅延利息がかかります。88万円の支払いが2027年1月29日(金)までずれた場合で計算してみます。

  • 遅れた日数:12月30日〜1月29日の31日

  • 計算式:880,000円 × 14.6% × 31日 ÷ 365日 = 約10,912円

金額は大きくありません。ただ、「遅延利息の対象になる」と相手が知るだけで、社内の処理が早まることがあります。詳しい計算は下請法の遅延利息14.6%とは|計算方法と請求・支払いの手順で解説しています。

取適法の対象にならない取引もある

すべてのSES取引に取適法がかかるわけではありません。資本金や従業員数の組み合わせと、取引の中身で決まります。まず自社の取引が対象かを確かめましょう。

状況取適法支払いの根拠
客先が大きく、自社が小さい規模の条件に当たる対象になりうる受領日から60日以内
自社の方が規模が大きい、または同じくらい対象外のことが多い契約で決めた支払期日
エンドが自社で使う業務を直接頼む役務提供委託にあたらないことがある契約で決めた支払期日
BPがフリーランス(個人・一人社長)フリーランス法の対象受領日から60日以内

運用基準は、会社が自ら用いる役務を他社に頼むことは「役務提供委託」にあたらない、としています。エンドとの直接契約では、この点に注意が必要です。

取適法の対象外でも、契約で決めた支払期日を過ぎれば支払いの遅れです。「検収が終わるまで払わない」と契約に書いていなければ、引き延ばしは認められません。対象かどうかの見分け方は、取適法でSESの準委任は対象?適用条件と営業の変更点7つで整理しています。

請負で成果物を納める場合は数え方が変わる

プログラムなどの成果物を納める請負的な取引では、「一定の水準を確認した時点を受領とする」合意ができます。ただし運用基準は、明示した納期に成果物が発注側の手元にあれば、納期の日を受領日とするとしています。確認が終わっているかどうかは問いません。

SESで多い時間精算の準委任は、この形ではありません。

引き延ばしに備えて記録しておく5つのこと

検収トラブルで一番効くのは、「いつ、何を、誰に渡したか」の記録です。稼働報告書の提出日がはっきりしていれば、相手も言い逃れしにくくなります。

稼働報告書とは、エンジニアがその月に働いた時間と作業内容をまとめた書類のことです。SESでは、請求額を決める元になります。

  1. 稼働報告書を送った日時:メールの送信日時をそのまま残す。口頭や手渡しで済ませない

  2. 受け取った人の名前:客先の承認者か、窓口の担当者かを分けて記録する

  3. 客先の返事と日付:「確認します」「今週中に」などの返事も、日付と一緒に残す

  4. 契約上の支払条件:注文書・個別契約の「締め日」「支払日」「検収の期限」を控えておく

  5. 精算の計算:精算幅を外れた月は、控除・超過の計算を報告書と一緒に送った記録を残す

記録は、案件ごとに1か所へまとめておきます。担当者のメールボックスだけにあると、休みや異動のときに追えません。稼働報告書の書き方は、稼働報告書のテンプレート|SES・業務委託の書き方と精算前チェックが参考になります。報告書がBPから遅れて届く月は、SESの稼働報告書が遅れる・出ないときの対応|請求を間に合わせる手順で督促の段取りを確認します。

検収を引き延ばされたときの対処5ステップ

対処は「確認→期日の提示→責任者への相談→利息の案内→相談窓口」の順に、段階を踏んで進めます。いきなり法律の話をすると、関係がこじれやすいからです。

  1. 契約の支払条件を確認する:注文書の支払日と、検収の期限が書かれているかを見る

  2. 確認メールを送る:支払期日と、稼働報告書を送った日付を具体的に書いて伝える

  3. 自社の責任者から相手の責任者へ連絡する:担当者どうしで止まっているなら、上の立場で話す

  4. 60日と遅延利息を伝える:取適法の対象なら、60日目の日付と年14.6%の遅延利息を示す

  5. 相談窓口を使う:それでも払われなければ、公正取引委員会などの窓口に相談する

期日を過ぎてからの督促は、SESの支払い遅延への対応|督促メール例文と入金までの6ステップで扱っています。

検収が終わらない本当の理由を聞く

引き延ばしの理由は、たいてい客先の社内事情です。よくあるのは、承認者の不在、社内システムの締め、予算の確定待ちなどです。

理由がわかれば、手を打てます。承認者が不在なら代わりの人を、書類の形式が合わないなら指定の書式を聞きましょう。自社の書類に不備がないかも、同時に確かめておきます。

元請・客先への確認メール文例

最初のメールは、責めずに「確認のお願い」として送ります。日付と金額を具体的に書くと、相手は社内で動きやすくなります。

文例1:検収の状況を確認する(支払期日の前)

例文・テンプレート
件名:【ご確認のお願い】10月分稼働の検収状況について(◯◯案件)

株式会社◯◯
◯◯様

いつもお世話になっております。
株式会社△△の□□です。

◯◯案件の2026年10月分稼働報告書を、
11月2日(月)にメールでお送りしております。

ご契約では、月末締め翌月末払いのため、
10月分のお支払日は11月30日(月)となっております。

請求書の準備を進めたく、検収の状況を
お知らせいただけますでしょうか。
不足している書類などがあれば、すぐにご用意いたします。

どうぞよろしくお願いいたします。

文例2:検収を理由に支払いを遅らせると言われたとき

例文・テンプレート
件名:【ご相談】10月分のお支払日について(◯◯案件)

株式会社◯◯
◯◯様

いつもお世話になっております。
株式会社△△の□□です。

10月分のお支払いを12月末にしたいとのご連絡、
ありがとうございます。

大変恐縮ですが、ご契約のお支払日は11月30日(月)です。
10月分の稼働報告書は、11月2日(月)にお送りしております。

また、取適法では、支払期日は検収日ではなく、
役務をご提供した日から60日以内と定められております。
10月分の場合、60日目は12月29日(火)となります。

ご契約どおり11月30日(月)にお支払いいただけるよう、
社内でのご調整をお願いできますでしょうか。
検収に必要な書類があれば、すぐにご用意いたします。

どうぞよろしくお願いいたします。

取適法の対象外の取引では、文例2の「取適法では〜」の段落を外し、契約の支払日だけを伝えます。法律を持ち出すのは、対象だと確かめてからにしましょう。

自社がBPに払う側のときも同じルール

客先の検収が遅れても、自社がBPへ払う期日は動きません。客先との契約とBPとの契約は、別の契約だからです。

BPがフリーランス(従業員を使わない個人や一人社長の会社)なら、フリーランス法がかかります。フリーランス法も、給付を受領した日から60日以内に支払期日を決めるルールです。

月末締めで31日の月をはさむと、翌々月末払いが61日目・62日目になることがあります。フリーランス法では、Q&A問48でこれを「受領日から2か月以内」として問題にしない運用が示されています。取適法の対象取引には同じ明記が見当たらないため、取適法の側は60日目までに払う前提で考えます。

元の客先から受けた仕事を再委託している場合は、例外として「元の支払期日から30日以内」とできることがあります。ただし、事前に書面などで示すなどの条件があります。詳しくはフリーランス法の再委託30日ルール|SESの支払期日と例外条件をご覧ください。

自社がBPに対して「客先の検収待ち」を理由に支払いを止めると、今度は自社が違反を問われるおそれがあります。BPへの支払条件は、客先の条件と分けて管理しましょう。

引き延ばしを防ぐ契約の決め方

一番の予防は、検収の期限を契約に書くことです。「何日以内」を決めておけば、法律に頼らなくても話が進みます。

決めておくこと書き方の例
検収の期限稼働報告書の受領から5営業日以内に検収する
みなし検収期限までに異議がなければ、検収完了とみなす
支払日月末締め翌月末払い(検収の完了日によらない)
支払日が休日のとき前の営業日に支払う

みなし検収とは、決めた期限までに相手から異議が出なければ、検収が終わったものと扱う取り決めのことです。客先の返事が遅れても、請求を進められます。

「検収月の翌月末払い」という書き方は避けましょう。検収が月をまたぐと、支払いが1か月後ろにずれるからです。条文の書き方は、準委任契約の検収とは?検収書の要否とみなし検収の決め方に例があります。

チョータツで、案件ごとの支払条件と記録を管理する

検収のトラブルは、条件と記録が担当者の手元に散らばっているときに起きやすくなります。自分で管理するなら、案件ごとに1行の表を作り、支払条件と報告書の提出日を並べるのが基本です。

列入れる内容
案件名・客先◯◯案件/株式会社◯◯
支払条件月末締め翌月末払い・検収5営業日
報告書の提出日2026年11月2日(月)
60日目2026年12月29日(火)

案件が増えると、表計算ソフトの管理では追いつかなくなります。チョータツは、SES営業のための案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。案件の条件をまとめておけば、提案前に支払条件を確かめられます。

チョータツは、3,000社以上が利用しています。他社と連携すると、他社の営業中案件をデータベースにでき、支払いの安定した取引先を探すことにも使えます。1社の検収待ちに振り回されない体制づくりに役立ちます。

よくある質問

Q. 下請法で検収は7日以内と決まっていますか?
決まっていません。下請法にも取適法にも、検収の日数を決めた条文はありません。検収の期限は、契約書や注文書で決めるものです。
Q. 検収が終わっていないと、支払期日は来ないのですか?
取適法の対象なら、来ます。支払期日は検収日ではなく、役務の受領日から60日以内です。検収の遅れで期日はずれません。
Q. SESの受領日はいつになりますか?
毎月続くSESで条件を満たせば、稼働月の末日です。2026年10月分なら10月31日(土)が1日目で、60日目は12月29日(火)です。
Q. 取適法の対象でなければ、検収が終わるまで待つしかありませんか?
待つ必要はありません。契約で決めた支払日を過ぎれば、支払いの遅れです。「検収完了後に払う」と契約にない限り、期日どおりの支払いを求められます。
Q. 検収を理由に支払いが遅れたら、遅延利息を請求できますか?
取適法の対象なら、60日を過ぎた日から年14.6%の遅延利息がかかります。対象外なら、契約に定めがなければ民法の法定利率が基準です。2026年4月1日から2029年3月31日までの法定利率は年3%です。
Q. 客先の検収が遅れたら、BPへの支払いも遅らせていいですか?
遅らせてはいけません。客先との契約とBPとの契約は別です。BPがフリーランス法の対象なら、期日に払わないと違反になるおそれがあります。

まとめ

  • 下請法(取適法)に「検収は何日以内」という決まりはない。検収の期限は契約で決める

  • 取適法の対象なら、支払期日は受領日から60日以内。検収日から数えることはできない

  • 毎月続くSESは稼働月の末日から数え、2026年10月分の60日目は12月29日(火)

  • 稼働報告書の提出日と相手の返事を記録し、日付入りの確認メールで伝える

  • 客先の検収が遅れても、自社からBPへの支払いは期日どおり

  • 予防には、検収の期限とみなし検収を契約に書いておく

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)