下請法(取適法)の相談窓口はどこ?3窓口の違いとSES企業が減額・支払遅延を申告する手順

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

下請法(取適法)の相談窓口は3つ|目的で使い分ける

下請法の相談窓口は、公取委・中小企業庁・取引かけこみ寺の3つが基本です。どこに相談するかは、「何をしてほしいか」で決めます。

下請法とは、発注する会社が、立場の弱い発注先に不利な扱いをしないように決めた法律のことです。2026年1月1日からは取適法という名前になりました。取適法では、発注する側を「委託事業者」、受ける側を「中小受託事業者」と呼びます。

窓口向いている目的連絡先(2026年9月時点)費用
公正取引委員会違反かどうかの相談、違反の申告0120-060-110(平日10:00〜17:00)無料
中小企業庁違反の申告、匿名での情報提供事業環境部取引課 03-3501-1511(内線5293〜7)無料
取引かけこみ寺弁護士への相談、話し合いでの解決(調停)0120-418-618(平日9:00〜17:00、12〜13時を除く)相談・弁護士相談は無料

どの窓口に相談しても、役所どうしで情報を共有できる仕組みがあります(取適法第13条)。「窓口を間違えたら終わり」ではないので、まずは一番近い窓口に連絡して大丈夫です。

SES企業が「受ける側」になるのはどんなとき?

SES企業は、エンドや元請けから仕事を受けるときに「中小受託事業者」になります。SESの準委任契約は、多くの場合「役務提供委託」や「情報成果物作成委託」にあたります。

ただし、取適法の対象になるかは、自社と相手の資本金・従業員数で決まります。判定のしかたは「下請法の対象かどうか判定|資本金と従業員数の基準をSES向けに」で詳しく解説しています。

公正取引委員会の相談窓口|「違反かどうか」を聞きたいとき

公取委は、取適法を担当する中心の役所です。「この値下げは違反ですか?」と聞くだけの相談も受け付けています。

公正取引委員会とは、会社どうしの公正な競争や取引を守るための国の機関のことです。いわゆる「下請けいじめ」も、公取委の担当分野です。

電話・対面・オンラインで相談できる

公取委のフリーダイヤルは 0120-060-110 です。受付は平日10時〜17時で、土日祝日と年末年始は休みです。

対面での相談は、本局と全国の地方事務所で受け付けています。東京の本局(企業取引課)は、関東甲信越と全国を担当しています。

地域担当部署電話番号
関東甲信越・全国事務総局 企業取引課03-3581-3375
近畿近畿中国四国事務所06-6941-2176
中部中部事務所052-961-9424
九州九州事務所092-431-6032

北海道・東北・中国・四国・沖縄にも窓口があります。対面の相談は、事前に電話で日時を決めてから行きます。番号は公取委の「取適法に関する相談窓口」ページで確認できます。

最初の電話で伝えること(例文)

SES事業をしている〇〇株式会社の〇〇です。資本金は〇〇万円、従業員は〇〇人です。
資本金〇億円の元請けから、準委任のシステム開発を受けています。
9月分の支払いで、契約書の単価60万円が55万円に減らされました。事前の合意はありません。
取適法の減額にあたるか、相談したいです。

自社と相手の規模、取引の中身、起きたこと、聞きたいことの4点を先に言うと、窓口の判断が早くなります。

違反を申告するならオンライン窓口が便利

申告とは、相手の違反を役所に知らせて、調べてもらうよう求めることです。公取委には、取適法違反の申告専用のオンライン窓口があります。郵送や電話で、近くの事務所に申告することもできます。

公取委の2025年度(令和7年度)の実績では、取適法の相談は34,810件ありました。勧告は39件、指導は8,261件です。相談する会社は少なくありません。

中小企業庁の窓口|申告と「匿名の情報提供」ができる

中小企業庁は、中小企業を支える国の役所です。取適法では、公取委と一緒に違反を調べる役割があります。名前を出さずに情報を送れるのが、中小企業庁の大きな特徴です。

中小企業庁には、2つの受付方法があります。

方法どんなときに使う名前
申告・情報提供窓口支払遅延・減額・受領拒否などを調べてほしい原則として名乗る
違反行為情報提供フォーム買いたたきなどの疑いを知らせたい匿名でよい

情報提供とは、「こんな会社があります」と役所に知らせることです。申告とちがい、自社の個別の被害を回復してもらう目的より、役所の調査のきっかけにしてもらう意味が強くなります。

取引Gメンが業界を回っている

中小企業庁には「取引調査員(取引Gメン)」がいます。取引Gメンとは、中小企業を訪ねて取引の実態を聞き取る調査員のことです。

取引Gメンは、聞き取った内容を業界全体の改善に生かしています。個社の名前を出さずに実態を伝える手段として、覚えておくとよいでしょう。

取引かけこみ寺|弁護士相談と話し合い(ADR)で解決したいとき

取引かけこみ寺とは、中小企業の取引トラブルを無料で相談できる窓口のことです。中小企業庁の委託で、公益財団法人全国中小企業振興機関協会が運営しています。以前は「下請かけこみ寺」という名前でした。

役所の窓口が「違反を調べる」場所なのに対し、取引かけこみ寺は「トラブルを解決する」ための場所です。代金の支払遅延、単価の引き上げ協議に応じない、突然の取引停止などを相談できます。

取引かけこみ寺でできること

  1. 相談員への相談:取引の悩みを、電話・オンライン・対面で話せます。

  2. 弁護士への無料相談:全国の登録弁護士に、法律の見立てを聞けます。

  3. ADR(裁判外紛争解決手続):ADRとは、裁判をせずに、第三者が間に入って話し合いで解決する手続きのことです。登録弁護士が調停人になります。

フリーダイヤルは 0120-418-618 です。受付は平日9時〜17時(12時〜13時を除く)で、全国どこからでも電話・オンライン・対面で相談できます。

取引かけこみ寺の相談件数は?

取引かけこみ寺の相談は、2025年度に13,846件ありました(運営団体のパンフレット)。そのうち「未払い・支払遅延」は1,974件、「不当な値引き・買いたたき」は986件です。

件数よりも大事なのは、匿名で相談でき、弁護士相談も無料という点です。ただし、弁護士への相談は匿名ではできません。ADRの手続きや費用は、申し込む前に窓口で確かめましょう。

匿名で相談できる?窓口ごとの違い

匿名で相談できる窓口はあります。ただし、相手を調べてもらう申告や、弁護士への相談は、名乗る必要があると考えておきましょう。

窓口・手段匿名注意点
中小企業庁の違反行為情報提供フォームできる自社の被害の回復までは求めにくい
取引かけこみ寺の相談員への相談できる弁護士相談は匿名不可
公取委・中小企業庁への申告原則名乗る社名の扱いは申告前に窓口で確認する

SES営業がよく迷うのは、「名乗ったら、元請けに自社がばれるのでは」という点です。申告した社名が相手にどう扱われるかは、申告の前に窓口で確認しておきましょう。

とはいえ、取引先が1〜2社しかない場合は、調査の内容から推測される可能性はゼロではありません。不安なときは、まず匿名の相談で「違反にあたりそうか」を確かめてから、申告するかを決めるのが安全です。

取引を続けたまま申告できる?報復措置は禁止されている

取引を続けたまま申告できます。申告を理由にした取引の削減や停止は、取適法で禁止されています。

報復措置とは、発注先が役所に違反を知らせたことを理由に、取引を減らしたり止めたりすることです。取適法第5条第1項第7号が、この不利益な扱いを禁止しています。知らせる先は、公取委・中小企業庁長官・事業を所管する大臣です。

取適法への改正で、知らせる先に事業を所管する大臣(業界を担当する省庁)が加わりました。報復措置も、勧告と社名公表の対象になる禁止行為です。

申告後に取引を続けるための注意点

  1. 申告の前後で態度を変えない:いつもどおりの営業連絡を続けます。

  2. 稼働中のエンジニアを守る:現場のエンジニアに申告の話を広げず、不安を与えないようにします。

  3. 取引の変化を記録する:申告後に発注が減ったら、日付・内容・理由の説明をメモします。

  4. 報復が疑われたらすぐ再相談:記録を持って、申告した窓口にもう一度連絡します。

営業として一番避けたいのは、証拠がないまま感情的に元請けへ抗議することです。交渉と申告は分けて考え、交渉の場では記録に基づいて冷静に話しましょう。減額を求められたときの返し方は「SESの単価を下げたいと言われたら?減額交渉の対応6ステップ」で紹介しています。

値上げの相談を無視されたら、「取適法で単価交渉の協議拒否は違反?一方的な代金決定のNG例と対処法」を読んでください。

SES企業が取引先の違反を相談・申告する手順

相談・申告は、「証拠をそろえる→匿名で相談→申告するか決める」の順に進めると失敗しません。

相談・申告の7ステップ

  1. 何が起きたかを1枚にまとめる:相手の会社名、案件名、起きたこと、金額、日付を書き出します。

  2. 対象になるかを確かめる:自社と相手の資本金・従業員数を確認します。

  3. 証拠を集める:契約書、注文書、請求書、入金記録、単価変更のメールやチャットを保存します。

  4. 匿名で相談する:公取委のフリーダイヤルか、取引かけこみ寺に「違反にあたりそうか」を聞きます。

  5. 目的を決める:「調べてほしい」なら申告、「お金を取り戻したい」なら取引かけこみ寺の弁護士相談やADRを選びます。

  6. 申告・相談する:オンライン窓口、郵送、電話、対面のどれかで手続きします。

  7. その後の取引を記録する:報復が疑われる変化がないか、日付つきで記録を続けます。

持っていく資料チェックリスト

#資料SESでの具体例
1契約書・注文書基本契約書、個別契約書、注文書(単価・精算幅・支払期日)
2請求書と入金記録請求額と入金額がちがう月の明細
3条件変更のやりとり「来月から単価を5万円下げます」というメール・チャット
4稼働実績作業報告書、勤怠表、検収の記録
5経緯メモ日付順の出来事と、相手の担当者名
6自社の会社情報資本金、従業員数(対象かどうかの判定に使う)

よくある違反の例と相談の言い方

窓口では、専門用語を使わなくても大丈夫です。起きたことを、事実と数字で伝えます。

よくある被害取適法での呼び方窓口での伝え方の例
契約後に単価を下げられた減額「6月分から、契約書の単価60万円を55万円にして支払われました」
話し合いなく低い単価を決められた協議に応じない一方的な代金決定「値上げの相談を3回お願いしましたが、返事がないまま据え置かれています」
支払いが遅れた支払遅延「9月末までの稼働分が、60日を過ぎた12月になっても入金されません」
振込手数料を引かれた減額「合意していないのに、毎月振込手数料が差し引かれています」

支払期日の60日は、稼働報告や請求書の日ではなく、役務の提供を受けた日から数えます。月単位のSESでは、条件を満たせば稼働月の末日が起点です。

違反になる行為の一覧は「下請法の禁止事項11個|SESの減額・買いたたき・発注取消の例」で解説しています。支払遅延の督促は「SESの支払い遅延への対応|督促メール例文と入金までの6ステップ」を使ってください。

取適法の対象外だったら?ほかの相談先

取適法の対象外でも、相談先がなくなるわけではありません。資本金や従業員数の条件を満たさない取引でも、別の法律で守られることがあります。

状況使える法律・窓口相談先
相手との力の差を使って不利な条件を押しつけられた独占禁止法の「優越的地位の濫用」公正取引委員会
相手が個人のフリーランスに発注しているフリーランス法公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省など
お金の回収を急ぎたい民法・契約取引かけこみ寺の弁護士相談、弁護士

優越的地位の濫用とは、取引上の立場が強い会社が、その立場を使って相手に不当な不利益を与えることです。公取委は2025年度、この相談にも4,043件対応しています。

自社が発注する側としてBPのフリーランスと取引している場合は、フリーランス法の義務もあります。両方の法律の違いは「取適法とフリーランス法の違い|SESで両方かかる取引を表で整理」で整理しています。

契約トラブル全般の相談先は、「業務委託契約の相談先は?SES取引トラブルの窓口と選び方」で比べています。

証拠づくりをチョータツで楽にする

相談・申告で一番大事なのは、「いつ、誰と、いくらで決めたか」がわかる記録です。自分でやるなら、案件ごとにフォルダを作り、注文書・請求書・入金記録・条件変更のメールを保存しておきましょう。

ただ、案件が増えると、単価や精算幅がメールやチャットに散らばります。いざ相談しようとしたとき、「最初の単価がいくらだったか」をすぐに示せないことがよくあります。

チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。案件ごとの情報をまとめて管理し、チームで共有できます。

  • 案件・人材の情報をまとめて管理し、営業チームで共有できる

  • AIが入力を手伝うので、条件の記録を続けやすい

  • パートナーへのメール配信機能がある

  • 3,000社以上が利用していて、無料で始められる

チョータツは、契約書や請求書などの証拠書類そのものの代わりにはなりません。案件ごとの条件をチームでそろえ、変化にすぐ気づくための道具として使うと効果的です。

よくある質問

Q. 下請法の相談はどこにすればいいですか?
違反かどうかを聞くなら、公取委のフリーダイヤル0120-060-110が手軽です。調べてほしいなら、公取委か中小企業庁へ申告します。話し合いで解決したいなら、取引かけこみ寺(0120-418-618)が向いています。
Q. 下請けいじめを公正取引委員会に申告すると、相手にばれますか?
社名の扱いは、申告する前に窓口で確認できます。不安なら、中小企業庁の違反行為情報提供フォームで匿名で知らせるか、取引かけこみ寺の相談員に匿名で相談する方法があります。
Q. 申告したら取引を切られませんか?
申告を理由に取引を減らす・止めることは、取適法第5条第1項第7号で報復措置として禁止されています。申告後に取引の変化があれば、日付と内容を記録して、窓口に再度相談しましょう。
Q. 取引かけこみ寺と公正取引委員会は何が違いますか?
公取委は違反を調べて勧告や指導をする役所です。取引かけこみ寺は、無料の弁護士相談や調停(ADR)で、当事者どうしのトラブル解決を手伝う窓口です。
Q. 下請かけこみ寺の相談件数はどのくらいですか?
2025年度は13,846件でした。公取委への取適法の相談は、同じ年度に34,810件ありました。
Q. 相談にお金はかかりますか?
公取委・中小企業庁・取引かけこみ寺の相談は、いずれも無料です。取引かけこみ寺の弁護士相談も無料です。ADRを使うときは、手続きの費用を窓口で確かめましょう。

まとめ

  • 下請法は2026年1月1日から取適法になり、相談窓口は公取委・中小企業庁・取引かけこみ寺の3つが基本

  • 違反かどうか聞くなら公取委の0120-060-110、調べてほしいなら申告

  • 話し合いで解決したいなら、取引かけこみ寺(0120-418-618)の無料弁護士相談とADR

  • 匿名なら中小企業庁の情報提供フォームか、取引かけこみ寺の相談員への相談

  • 申告を理由にした取引の削減・停止は、取適法第5条第1項第7号で禁止

  • 相談の前に、契約書・請求書・入金記録・条件変更のメールをそろえる

  • 取適法の対象外でも、独占禁止法の優越的地位の濫用として公取委に相談できる

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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