SESの単価を下げたいと言われたら?減額交渉の対応6ステップ|受ける・条件付き・断るの判断基準と交渉トーク例
公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日
SESの単価減額とは?顧客が下げたいと言う4つの理由
SESの単価減額とは、エンジニア1人あたりの月額料金(単価)を、顧客が今より下げてほしいと求めることです。「減額依頼」「値下げ要請」とも呼ばれます。顧客が単価を下げたい理由は、主に次の4つです。
| 理由 | 顧客のよくある言い方 | 営業が確かめること |
|---|---|---|
| 予算の削減 | 「来期の予算が減った」 | 一時的か、ずっと続くか |
| 作業量の減少 | 「今はそこまで忙しくない」 | 作業範囲も一緒に減らせるか |
| 評価への不満 | 「期待したスキルと違う」 | 具体的にどの作業が足りないか |
| 相場との比較 | 「他社はもっと安い」 | 比べている人材のスキルと経験 |
理由によって、正しい対応は変わります。予算の削減なら期間の延長と交換できるかもしれません。評価への不満なら、単価より先にスキルの問題を話し合う必要があります。
スキルへの不満が大きい場合は、スキル不足で退場を求められた時の5手順もあわせて確認してください。
契約途中の減額と、更新時の減額は扱いが違う
契約途中の減額と更新時の減額は、まったく別の話として考えます。契約途中は「すでに決めた約束を変える話」で、更新時は「次の約束を決める話」だからです。
| 比べる点 | 契約途中の減額 | 更新時の減額 |
|---|---|---|
| 何を変えるか | すでに結んだ個別契約の単価 | 次の期間の単価 |
| 変えるための条件 | 双方の合意が必要 | 新しい条件として交渉する |
| 営業の基本姿勢 | 今の期間は契約どおりを求める | 条件の交換で落としどころを探す |
| 特に注意すること | 請求書から一方的に引かれていないか | 相場より著しく低くないか |
契約途中の一方的な減額は、合意がなければ認めなくてよい
契約は、申込みと承諾がそろったときに成立します(民法第522条)。個別契約とは、基本契約のもとで、期間・単価・作業内容などを1件ずつ決める契約のことです。個別契約で決めた単価は、双方が合意しなければ変わらないのが原則です。
そのため、契約途中に「今月から単価を5万円下げます」と一方的に言われても、応じる義務はありません。まずは「今の契約期間は契約どおりでお願いします」と伝えます。
ただし、準委任契約には注意点があります。準委任契約とは、作業の完成ではなく、決められた作業をすること自体を約束する契約のことです。民法では、委任(準委任)は各当事者が「いつでもその解除をすることができる」とされています(民法第651条、第656条)。
つまり、減額を断ると、顧客が契約を終わらせる選択をとる可能性もあります。ただし、相手に不利な時期に解除した側は、やむを得ない事由がなければ損害を賠償するのが原則です(民法第651条第2項)。
解除の予告期間は、基本契約書に書かれていることが多いです。断る前に、自社の基本契約書で解除の条項を確認してください。
取適法・フリーランス法・独占禁止法が関わる場合
取引の相手や中身によっては、法律で減額が禁止されることがあります。SES営業が知っておきたい法律は、次の3つです。
| 法律 | 減額についての決まり | 当てはまる主な場面 |
|---|---|---|
| 取適法(旧・下請法) | 受託側に責任がないのに、発注後に代金を減らすと違反。受託側の了解があっても違反 | 資本金・従業員数の基準に当てはまる委託取引 |
| フリーランス法 | フリーランスに責任がないのに、決めた報酬を後から減らすのは禁止 | 個人のフリーランスへの1か月以上の業務委託 |
| 独占禁止法 | 立場の強い発注者が、自分の都合で契約の代金を減らすと問題になる | 取引上の力に大きな差がある場合 |
取適法とは、2026年1月1日に下請法が改正されてできた法律です。正式名は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。発注後の減額のほかに、買いたたき(通常の対価より著しく低い代金を不当に決めること)も禁止しています。
取適法では、受託側から価格の協議を求めたのに、発注側が協議に応じず一方的に代金を決めることも禁止されました。更新時の減額でも、話し合いをせずに一方的に決められるなら問題になる可能性があります。
自社の取引がどの法律の対象になるかは、取引の中身と両社の規模で決まります。たとえば、顧客が自社で使う作業を頼むだけの取引は、取適法の対象外になる場合があります。判断に迷うときは、公正取引委員会の資料を確認し、弁護士に相談してください。
自社がBPに減額を回すときは、立場が逆になる
顧客から減額を受け入れると、BP(取引先の会社)やフリーランスへの支払いも下げたくなります。このとき、自社は「発注する側」になる点に注意が必要です。
すでに決めたBPへの支払いを、契約途中に一方的に下げると、取適法やフリーランス法の問題になる可能性があります。BPへの支払いを変えるのは、次の更新時に、話し合ったうえで行うのが安全です。
受ける・条件付きで受ける・断るの判断基準
減額への対応は、粗利が残るかとエンジニアが続けられるかの2つで決めます。粗利とは、顧客からもらう単価から、エンジニアの給与やBPへの支払いを引いた、自社に残るお金のことです。
| 対応 | 当てはまる状況 | 営業の動き |
|---|---|---|
| 受ける | 減額後も粗利が残り、エンジニアの給与も変わらない | 期間の延長など小さな見返りを求める |
| 条件付きで受ける | 粗利は減るが、長く続けば元が取れる | 作業範囲・期間・精算幅を交換条件にする |
| 断る | 粗利がほぼなくなる/エンジニアの給与を下げることになる | 相場の根拠を示し、次の現場も並行して探す |
粗利の計算例
たとえば、顧客からの単価が月70万円で、エンジニアへの支払いが月60万円だとします。今の粗利は月10万円です。
ここで顧客から「月5万円下げたい」と言われると、粗利は月5万円に半減します。1年続けば、粗利は60万円減る計算です。
粗利率の目安や計算式は、SESの粗利率の平均と利益率の計算式で確認できます。
一方、減額を断って契約が終わり、次の現場まで1か月待機したとします。待機期間とは、エンジニアが現場に入っておらず、売上が出ない期間のことです。自社の社員なら、その間も給与を払う必要があります。
「減額を受けて失う粗利」と「断って待機になったときの損失」を比べて、判断してください。待機の考え方はSESの待機期間の給与と対応で詳しく解説しています。
迷ったら「条件付きで受ける」が基本
どちらとも決めきれないときは、「条件付きで受ける」を選びます。単価だけを下げるのではなく、顧客にも何かを変えてもらう形です。交換条件の例は次のとおりです。
作業範囲を減らす(担当する機能や会議を減らす)
契約期間を延ばす(3か月更新を6か月更新にする)
精算幅を広げる(例:140〜180時間を130〜190時間にする)
減額の期間を区切る(次の更新で元の単価に戻す)
別の案件で追加の人員を受け入れてもらう
精算幅とは、単価のままで働く時間の上限と下限のことです。精算幅の決め方はSESの稼働時間の上限・下限にまとめています。
減額交渉の対応6ステップ
単価を下げたいと言われたら、次の6ステップで対応します。ポイントは、すぐに答えず、情報を集めてから方針を決めることです。
その場では答えず、理由・希望額・時期を聞く
基本契約書と個別契約を確認する
相場を調べて、今の単価の根拠をそろえる
粗利とエンジニアへの影響を計算する
受ける・条件付き・断るを決め、交換条件を用意する
回答し、合意した内容を書面に残す
ステップ1:その場では答えず、理由・希望額・時期を聞く
最初の電話や会議では、「社内で確認して、〇日までにお返事します」と伝えます。その場で「わかりました」と言うと、合意したと受け取られるおそれがあります。
そのうえで、次の3つを必ず聞きます。
下げたい理由(予算・作業量・評価・相場のどれか)
希望する金額(月いくらにしたいか)
いつから下げたいか(今月からか、次の更新からか)
ステップ2:基本契約書と個別契約を確認する
基本契約書とは、取引全体に共通するルールを決めた契約書のことです。確認するのは、単価、契約期間、解除の予告期間、精算幅の4点です。
今の契約期間の途中なのか、次の更新の話なのかをはっきりさせます。契約書のどこを見ればよいかは、SES基本契約書のテンプレートと条項チェック15が参考になります。
ステップ3:相場を調べて、今の単価の根拠をそろえる
同じスキル・経験の人材が、今いくらで動いているかを調べます。「他社はもっと安い」と言われたときに、具体的な数字で返せるようにするためです。比べるときは、スキル・経験年数・担当する工程・商流(間に入る会社の数)をそろえます。
調べ方は、この記事の「単価の根拠を相場で示す方法」で説明します。あわせて、エンジニアの現場での実績(担当した作業、減らしたミス、任されている役割)も書き出しておきます。
ステップ4:粗利とエンジニアへの影響を計算する
減額後の粗利がいくら残るかを計算します。BPの人材なら、BPへの支払いを変えられるのは次の更新からになることが多い点も考えに入れます。
エンジニア本人への影響も確認します。給与や報酬が下がるなら、エンジニアが辞めてしまうおそれがあります。そうなると、顧客にとっても困る結果になります。
ステップ5:受ける・条件付き・断るを決め、交換条件を用意する
ステップ1〜4の情報をもとに、社内で方針を決めます。営業担当者1人で決めず、上司や経営者と相談するのが安全です。
「条件付きで受ける」なら、交換条件を2〜3個用意します。一番通したい条件と、ゆずってもよい条件に分けておくと、交渉がスムーズです。
ステップ6:回答し、合意した内容を書面に残す
決めた方針を、約束した日までに回答します。合意できたら、新しい個別契約書や注文書で、新しい単価・期間・開始月を残します。
口頭やチャットだけの合意は、後で「言った・言わない」になりがちです。メールで要点を送り、必ず書面に反映してください。
そのまま使える減額交渉トーク例
減額交渉で使えるトーク例を、場面別に4つ紹介します。会社名・金額・期間は、自社の状況に合わせて書き換えてください。
最初に減額を言われたとき
ご事情をお聞かせいただき、ありがとうございます。社内で確認のうえ、〇月〇日までにお返事いたします。確認のため、ご希望の金額と、いつからの適用をお考えか教えていただけますか。
条件付きで受けるとき
ご予算の事情は理解いたしました。月〇万円の減額について、次の更新から契約期間を6か月にしていただけるのであれば、お受けできる方向で調整いたします。あわせて、〇〇の作業は今後ご担当範囲から外していただく形でいかがでしょうか。
断るとき
現在、同じスキルと経験の人材は、月〇万円前後で提案されている状況です。〇〇さんには〇〇の作業もお任せいただいており、現在の単価は相場の範囲と考えております。大変恐縮ですが、現行の単価で継続をお願いできませんでしょうか。
契約途中での減額を言われたとき
今月からの変更は、現在の個別契約の期間中となるため、契約どおりの単価でお願いできればと存じます。次回の更新時に、改めて条件をご相談させてください。
単価交渉のメール例文は、SESの単価交渉のタイミングと使えるメール例文でも紹介しています。
単価の根拠を相場で示す方法
減額を断る・減らす幅を小さくするには、今の単価が相場の範囲だと示すのが一番効きます。自分で相場を集める方法は、次の3つです。
届いた案件メールの単価を記録する:同じ職種・スキルの案件が、いくらで募集されているかを表にまとめます。
BPから届く人材情報の単価を記録する:同じ経験年数の人材が、いくらで提案されているかを集めます。
相場の解説記事で目安をつかむ:職種・スキル別の目安を、SESの単価相場と調べ方3つで確認します。
集めた数字は、「職種」「経験年数」「主なスキル」「単価」の4列で表にすると比べやすくなります。顧客には、似た条件の3〜5件だけを抜き出して見せます。
注意したいのは、他社の案件名や会社名をそのまま顧客に見せないことです。取引先との約束(秘密保持)に反するおそれがあるためです。「Java・経験5年の人材の募集単価」のように、条件と金額だけを示します。
チョータツで、営業中の案件・人材の単価を根拠にする
自分で案件メールや人材メールを表にまとめるのは、手間がかかります。この手間を減らせるのが、SES営業向けの案件・人材管理ツールチョータツです。
チョータツとは、SES営業が案件と人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。減額交渉では、次のように役立ちます。
| 使う場面 | チョータツでできること | 減額交渉での使い方 |
|---|---|---|
| 相場の根拠を集める | 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる | 似たスキルの案件・人材と比べ、相場の根拠にする |
| 自社の情報を整理する | 案件・人材の情報を管理・共有できる | 今の単価や契約期間を社内ですぐ確認する |
| 断った後の備え | パートナーへのメール配信機能がある | 待機になりそうな人材の情報を、パートナーへ早めに届ける |
減額を断るときに一番こわいのは、契約が終わってエンジニアが待機になることです。チョータツで営業中の案件を日ごろから確認しておけば、断っても次がある状態で交渉に臨めます。
交渉の強さは、話し方よりも「ほかの選択肢があるかどうか」で決まります。相場の根拠と次の選択肢を、同じツールでそろえておきましょう。
減額を言われにくくする日ごろの準備
減額を防ぐいちばんの方法は、顧客が予算を決める前に、エンジニアの成果を数字で伝えておくことです。予算が決まった後では、単価を戻すのは難しくなります。
減額の話が出やすいのは、次の3つの時期です。
| 時期 | 減額が出やすい理由 | 営業が先にやること |
|---|---|---|
| 顧客の予算を決める時期 | 来期の外注費を見直すため | 1〜2か月前に実績をまとめて伝える |
| 年度末(3月決算なら1〜3月) | 次の年度の体制を決めるため | 次の年度の体制と単価を早めに相談する |
| 契約更新の1〜2か月前 | 次の期間の条件を決めるため | 更新の意向と条件を先に確認する |
日ごろの準備として、次の3つを続けます。
月1回、実績を短く報告する:担当した作業、終わらせた課題、任されている役割を3行でまとめます。
現場の担当者と定期的に話す:不満は、減額の前に小さな形で出ます。早く気づけば、単価の前に作業の中身で調整できます。
更新の時期を一覧で管理する:どの現場がいつ更新かを表にし、1〜2か月前から動きます。
更新時期の考え方は、SESの契約更新はいつ決まる?通知時期と更新しない時の4手順で詳しく解説しています。
減額交渉でやってはいけない5つの対応
減額交渉では、次の5つの対応を避けてください。どれも、後から取り返すのが難しい失敗です。
その場で了承する:社内で粗利を計算する前に答えると、損な条件で決まってしまいます。
理由を聞かずに断る:評価への不満が隠れていると、次の更新で契約が終わるおそれがあります。
エンジニア本人に交渉させる:単価の交渉は営業の仕事です。本人と顧客の関係が悪くなります。
BPへの支払いを、すぐ一方的に下げる:自社が発注側として法律の問題を起こすおそれがあります。
口頭の合意だけで済ませる:新しい単価と開始月は、必ず個別契約書や注文書に残します。
よくある質問
- Q. SESの単価を契約途中で下げたいと言われたら、応じる必要はありますか?
- 応じる義務はありません。個別契約で決めた単価は、双方の合意がなければ変わらないのが原則です。ただし準委任契約は解除できるため、契約書の解除条項も確認したうえで対応を決めます。
- Q. 単価の値下げを断ると、契約を切られませんか?
- 切られる可能性はあります。そのため、断る前に「断って待機になった場合の損失」と「減額を受けた場合の粗利の減少」を比べます。あわせて、次の案件も並行して探しておくと安心です。
- Q. 顧客が単価を下げたい理由には、どんなものがありますか?
- 主に、予算の削減、作業量の減少、スキルへの不満、他社との価格比較の4つです。理由によって対応が変わるので、最初に必ず確認します。
- Q. 減額を受け入れたら、BPやエンジニアへの支払いもすぐ下げてよいですか?
- すぐに一方的に下げるのは避けてください。自社が発注側になるため、取適法やフリーランス法の問題になる可能性があります。次の更新時に、話し合って決めるのが安全です。
- Q. 「他社はもっと安い」と言われたら、どう返せばよいですか?
- 比べている人材のスキルと経験を聞き、似た条件の相場を数字で示します。相場の範囲なら、担当している作業の実績とあわせて、今の単価の理由を説明します。
- Q. 減額の合意は、どう記録すればよいですか?
- 新しい単価・適用する月・契約期間を、個別契約書や注文書に書いて残します。合意までのやりとりも、メールで要点を送っておくと安心です。
まとめ
単価を下げたいと言われたら、その場で返事をせず、理由・希望額・時期を聞く
契約途中の減額は合意がなければ変わらないのが原則。更新時の減額は条件の交渉として扱う
取適法・フリーランス法・独占禁止法で、減額が問題になる取引もある。自社がBPに減額を回すときも注意する
判断は「粗利が残るか」「エンジニアが続けられるか」の2つ。迷ったら条件付きで受ける
予算を決める時期や更新の1〜2か月前に、実績を数字で伝えておくと減額を防ぎやすい
相場の根拠と次の案件をそろえておくと、落ち着いて交渉できる。チョータツの連携で営業中の案件・人材を確認できる
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日
参考資料(2026年9月28日確認)
e-Gov法令検索「民法」(第522条 契約の成立、第651条 委任の解除、第656条 準委任)
公正取引委員会「委託事業者の禁止行為」
公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」
政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」
公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法パンフレット」
公正取引委員会「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」