SESの待機期間の給与と会社の対応|休業手当の計算例・待機コストの試算と、次の案件を早く決める7ステップ

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

SESの待機期間とは

SESの待機期間とは、自社エンジニアの参画先(客先)が決まらず、客先で働いていない期間のことです。主に次の3つの場面で起こります。

  1. 契約が終わり、次の案件がまだ決まっていないとき

  2. 客先の都合で、契約が途中で急に終わったとき

  3. 新しく入社したエンジニアや研修を終えた新人の、最初の参画先が決まらないとき

待機には、大きく2つの形があります。

社内待機とは、エンジニアが自社に出社し、社内の仕事や勉強をしながら次の案件を待つことです。

自宅待機とは、会社の指示でエンジニアが仕事をせず、自宅で次の案件を待つことです。労働基準法の「休業」にあたります。

形エンジニアの状態会社が払うもの
社内待機出社して社内の仕事・研修をする通常の給与(全額)
自宅待機(会社都合の休業)仕事をせず自宅にいる少なくとも休業手当(平均賃金の60%以上)

どちらの形でも、待機中の売上はゼロです。会社にとって、待機は給与を払いながら利益が生まれない期間になります。

待機期間中の給与はどうなる?休業手当の考え方

待機期間中も、会社は給与を払う必要があります。社内待機なら全額、会社都合の自宅待機なら少なくとも平均賃金の60%です。

休業手当とは、会社の責任で労働者を休ませたときに、会社が払わなければならない手当のことです。労働基準法第26条で「平均賃金の百分の六十以上」と決められています。

案件が決まらないことは、一般に会社側の事情と考えられます。そのため、待機を理由にした自宅待機では、休業手当の支払いが必要になると考えておきましょう。

会社の対応法的な考え方注意点
社内待機で給与を全額払う通常の勤務なので問題ない仕事や研修の指示を出す
自宅待機で休業手当(60%以上)を払う労働基準法第26条の最低ラインを満たす就業規則・雇用契約の定めも確認する
自宅待機で給与を払わない労働基準法第26条違反のおそれ30万円以下の罰金(第120条)や付加金の対象になりうる

「60%払えば十分」とは限らない

休業手当の60%は、最低ラインです。民法第536条第2項は、相手の責任で仕事ができなくなった場合のルールです。この場合、相手(会社)は反対給付(給与)の支払いを拒めないとされています。

そのため、会社の責任で休ませた場合、エンジニアから給与の全額を求められる可能性があります。就業規則や雇用契約書で待機中の扱いをどう決めているかが大切です。扱いに迷ったら、社会保険労務士に確認しましょう。

待機中に給与や手当を減らしてよいか

基本給を会社が一方的に下げることは、原則としてできません。労働契約法第8条は、労働条件は本人との合意で変えられると定めています。

就業規則を変えて不利益に変える場合も、変更に合理性がなければ認められません(労働契約法第9条・第10条)。一方、通勤手当のように実費を補う手当は、規程に定めがあれば、出社しない日に払わない運用も考えられます。

営業責任者は、入社時の雇用契約書と就業規則に、待機中の給与の扱いが書かれているかを確認しましょう。書かれていない状態で減額すると、トラブルになりやすくなります。

待機の日を有給休暇で埋めてよいか

待機の日を、会社が一方的に有給休暇として扱うことはできません。有給休暇をいつ取るかは、原則として労働者が決めるものです(労働基準法第39条第5項)。

会社が取る日を決められるのは、労使協定を結んで計画的に割り振る場合などに限られます(第39条第6項)。「待機中だから有給を使って」と指示するのは避けましょう。

払わなかったときのリスク

休業手当を払わないと、労働基準法第120条により30万円以下の罰金の対象になりえます。また第114条により、裁判所が未払い額と同じ額の付加金の支払いを命じることがあります。

休業手当の計算方法と計算例

休業手当は、「平均賃金 × 60% × 休業した日数」で計算します。月給の60%ではない点に注意しましょう。

平均賃金とは、直前3か月間に払った賃金の合計を、その期間の暦の日数で割った金額のことです。暦の日数には、土日も含みます。

平均賃金の計算方法は、労働基準法第12条で決められています。賃金の締め日がある場合は、直前の締め日から数えます。

計算例

次の数字は、計算のしかたを示すための例です。

  • 直前3か月の賃金:毎月40万円(合計120万円)

  • 3か月の暦の日数:92日

  • 休業した日(会社の所定労働日):1か月で20日

計算は次の3つの手順で行います。

  1. 平均賃金を出す:120万円 ÷ 92日 = 約13,043円

  2. 1日あたりの休業手当を出す:13,043円 × 60% = 約7,826円

  3. 1か月分を出す:7,826円 × 20日 = 約156,520円

平均賃金は暦の日数で割るため、休業手当の月額は月給の約4割になる例もあります。「60%払っているつもり」で計算を誤らないよう、給与担当と式を共有しておきましょう。

待機のコストを試算する

待機1か月あたりのコストは、給与+会社負担の社会保険料です。さらに、働いていれば得られた粗利も失います。

会社負担の社会保険料とは、健康保険や厚生年金などの保険料のうち、会社が払う分のことです。厚生年金だけでも、給与の9.15%を会社が負担します。待機中も、保険料はかかり続けます。

月給40万円のエンジニアを例に、待機が続いたときのコストを試算します。社会保険料の会社負担は約6万円/月、客先の単価は70万円/月と置いた例です。

社会保険料の約6万円は、厚生年金(9.15%)に健康保険・雇用保険などの会社負担を足した目安です。実際の額は、加入している健康保険や年齢で変わります。

待機の長さ給与全額の場合の持ち出し失う粗利(単価70万円−原価46万円=24万円/月)
1か月約46万円24万円
3か月約138万円72万円
6か月(半年)約276万円144万円

待機が半年続くと、約276万円の持ち出しになります。エンジニア1人が働いた場合の半年分の粗利(144万円)を大きく上回る金額です。

→ 待機が年間の粗利率をどれだけ下げるかは、SESの粗利率の平均は?利益率の計算式と上げる方法5つで計算しています。

待機期間の平均は?半年は長い?

SESの待機期間の平均を示す公的な統計はありません。業界の記事では「長くても1か月程度」と書かれることが多いものの、調査の出典は示されていません。

私たちは、待機の長さを次のように考えるのがよいと考えます。

待機の長さ状態会社がやること
1か月未満案件の切り替えで起こりうる範囲通常の営業を続ける
1〜3か月注意が必要提案先を広げ、条件(単価・勤務地・スキル)を見直す
3か月以上長期化営業方針を見直す。研修や社内の仕事の計画を立てる
半年以上深刻約276万円の持ち出し(上の例)。エンジニアの退職リスクも高まる

待機が長引くと、エンジニアは「会社に必要とされていない」と感じやすくなります。お金の問題だけでなく、人が辞める原因にもなることを意識しましょう。

待機が長引く原因6つ

待機が長引くのは、多くの場合エンジニアの問題ではなく、営業の動き方の問題です。よくある原因は次の6つです。

  1. 次の案件探しを始めるのが遅い:契約終了が決まってから動くと、提案と面談の調整が間に合いません。

  2. 提案できる案件が少ない:付き合いのあるパートナーが少なく、届く案件の数が足りません。

  3. スキルシートが古い:最新の経験が書かれておらず、書類で落ちてしまいます。

  4. 条件が合わない:単価・勤務地・リモートの希望が、市場の案件と合っていません。

  5. 契約の終了を知るのが遅い:客先からの終了連絡が遅く、準備の時間がありません。

  6. 面談の準備が足りない:エンジニアが自分の経験をうまく話せず、面談で落ちてしまいます。

原因1・5は、営業が契約終了の予定を管理すれば防げます。原因2は提案先を広げること、原因3・6はエンジニアと一緒の準備で改善できます。

→ SESの契約更新はいつ決まる?通知時期と更新しない時の4手順
→ SESの契約途中の退場|営業がやるべき対応5ステップ
→ SES面談の質問内容|営業が聞くべき深掘り質問27

次の参画先を早く決める7ステップ

待機を短くするには、契約終了の2か月前から、提案先を広げて動くことが大切です。営業がやる手順は次の7つです。

  1. 契約終了の予定を一覧にする:エンジニアごとに、契約の終わりと更新の確認日を記録します。

  2. 終了2か月前に、客先へ更新の意向を確認する:更新しない場合は、その場で次の準備に入ります。

  3. スキルシートを最新にする:今の現場での担当業務・使った技術・期間を書き足します。

  4. エンジニアの希望を聞く:単価・勤務地・リモート・やりたい技術を確認し、優先順位をつけます。

  5. 営業中案件を集める:自社の案件に加え、パートナーから届く営業中案件にも目を通します。

  6. 複数の案件に並行して提案する:1件ずつ結果を待たず、条件に合う案件に同時に提案します。

  7. 面談の日程を早めに押さえる:面談の候補日を先に3つほど出し、決定までの時間を縮めます。

時期やること
契約終了の2か月前更新の意向を確認する。スキルシートを直す
1か月半前エンジニアの希望を聞き、営業中案件を集める
1か月前複数の案件に提案し、面談を進める
2週間前参画先を決め、契約の手続きを進める

→ SESスキルシートのフォーマットと書き方|営業用テンプレ付き
→ 要員提案メールの例文とテンプレ|SES営業の通過率を上げる書き方
→ SES営業メールの例文10選|案件・人材紹介の書き方とコツ

待機中のエンジニアに会社がやってもらうこと

待機中は、次の案件に入りやすくなる準備をしてもらうのがおすすめです。社内待機として業務の指示を出す場合は、給与の全額を払う前提で計画します。

  • スキルシートを本人と一緒に最新にする

  • 次に狙う案件で求められる技術を学ぶ

  • 資格の勉強をする(クラウドの資格など、案件の条件によく出るもの)

  • 社内のツール作りや、後輩の研修を手伝う

自宅待機(休業)なのに業務の指示を細かく出すと、休業ではなく勤務と判断されることがあります。社内待機と自宅待機を、社内で明確に分けて運用しましょう。

チョータツとxhoursで、待機を短くする

待機を短くするいちばんの近道は、提案できる案件の数を増やすことです。自分でやる方法と、DrivenXのツールで楽にする方法を比べます。

やりたいこと自分でやる場合DrivenXのツールを使う場合
営業中案件を集めるパートナーのメールを読み、Excelに転記するチョータツで他社と連携し、営業中の案件をデータベース化する
空いたエンジニアを知らせるBCCで人材情報を一斉送信するチョータツのメール配信機能でパートナーに配信する
案件・人材を社内で共有する営業ごとのExcelを見比べるチョータツで案件・人材を管理・共有する(AIが入力を手伝う)
案件はあるのに人がいない採用やBP探しに時間がかかるxhoursでITフリーランスに直接スカウトする

チョータツとは、SES営業の案件・人材を管理・共有できるツールです。3,000社以上が使っており、無料で始められます。連携した会社の営業中案件が1か所に集まるので、待機中のエンジニアに合う案件を探しやすくなります。

xhours(エックスアワーズ)とは、企業がITフリーランスに直接スカウトを送れるサービスです。数千名のフリーランスのデータベースから探せます。

xhoursは、案件はあるのに提案できる人がいないときに役立ちます。人手が足りない案件のたびに正社員を採用すると、案件が終わったあとに待機が生まれやすくなります。案件の数に応じてフリーランスの力も借りると、自社エンジニアの待機リスクを抑えやすくなります。

→ ツール選びの基準はSESマッチングツールの選び方|無料・有料の違いと比較ポイント7つで比べています。
→ xhoursでITフリーランスを探す

よくある質問

Q. SESの待機期間中、無給にしても問題ありませんか?
会社の都合で休ませる場合、無給は労働基準法第26条違反になるおそれがあります。少なくとも平均賃金の60%以上の休業手当が必要です。社内待機で出社させるなら、給与は全額払います。
Q. 休業手当の60%は、月給の60%のことですか?
いいえ。平均賃金(直前3か月の賃金÷暦の日数)の60%を、休業した日数分払います。月給40万円の例では、1か月約15.7万円と、月給の約4割になります。
Q. SESの待機期間の平均はどれくらいですか?
公的な統計はありません。業界では1か月程度と言われることが多いものの、出典は示されていません。1か月を超えたら提案先を広げ、3か月を超えたら営業方針を見直しましょう。
Q. 待機が半年続くと、会社にはどれくらいの負担がありますか?
月給40万円・社会保険料の会社負担6万円の例では、給与全額を払うと約276万円の持ち出しです。働いていれば得られた粗利も失います。
Q. 待機中の給与を減らしたり、有給休暇を使わせたりできますか?
基本給を一方的に下げることは、原則としてできません(労働契約法第8条)。有給休暇をいつ取るかも、原則として本人が決めます(労働基準法第39条第5項)。
Q. 待機が長いエンジニアを解雇できますか?
待機が長いことだけを理由にした解雇は、認められにくいと考えましょう。労働契約法第16条では、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当と認められない解雇は無効です。必ず専門家に相談してください。
Q. 待機を減らすために、営業が今日からできることは?
エンジニアごとの契約終了予定を一覧にし、2か月前に動き出すことです。自社の案件だけでなく、パートナーの営業中案件にも提案しましょう。

まとめ

  • 社内待機は通常の勤務なので給与は全額。会社都合の自宅待機は、平均賃金の60%以上の休業手当が最低ライン

  • 待機を理由にした無給は、労働基準法第26条違反のおそれがある。給与全額を求められる可能性もある

  • 基本給の一方的な減額や、待機日を会社が勝手に有給休暇にすることは避ける

  • 休業手当は「平均賃金×60%×休業日数」。月給の60%ではない

  • 月給40万円の例では、待機1か月で約46万円、半年で約276万円の持ち出し

  • 待機の平均を示す公的な統計はない。1か月を超えたら注意、3か月を超えたら方針を見直す

  • 契約終了の2か月前から動き、パートナーの営業中案件にも並行して提案する

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料(2026年9月28日確認)

  • e-Gov法令検索「労働基準法」(12条:平均賃金、26条:休業手当、39条:年次有給休暇、114条:付加金、120条:罰則)

  • e-Gov法令検索「民法」(536条:債務者の危険負担等)

  • e-Gov法令検索「労働契約法」(8〜10条:労働条件の変更、16条:解雇)

  • 日本年金機構「厚生年金保険料額表」(厚生年金保険料率18.3%、会社負担9.15%)

  • 全国健康保険協会「保険料額表」(健康保険料率は都道府県ごとに異なる)

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