SESの粗利率の平均は?粗利・利益率の計算式と計算例、商流と待機が粗利率を削る仕組み、営業が優先して取り組む改善策5つ

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

SESの粗利率の平均は?公的な統計はない

SESの粗利率の平均について、国などが出している統計はありません。まずは、出典のない数字を目標にしないことが大切です。

業界の記事では「平均は20〜30%程度」とよく書かれます。ただし、どの会社を何社調べた数字なのかは示されていないことがほとんどです。自社の目標は、次に紹介する公的データと、自社の過去の数字を比べて決めましょう。

参考になる公的データ:厚生労働省の派遣の集計

参考になるのは、厚生労働省の「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)です。SESではなく派遣のデータですが、エンジニアの料金と賃金の差がわかります。

区分(8時間あたり)派遣料金の平均派遣労働者の賃金の平均差の割合
全業務26,257円16,735円約36%
情報処理・通信技術者34,382円21,032円約39%

※ 差の割合は「(料金−賃金)÷料金」で当メディアが計算しました。料金は消費税込みの額です。

この数字を見るときは、2つの注意点があります。1つめは、料金が消費税込みなので、税抜きで計算すると割合はもっと小さくなることです。2つめは、賃金に会社負担の社会保険料が入っていないことです。

つまり、実際の粗利率は約39%より低くなります。自社エンジニアの粗利率が30%前後なら、派遣のデータと比べて大きくずれてはいない、というのが一つの目安です。

粗利・粗利率・利益率・マージン率の違い

SESの利益を話すときは、粗利・粗利率・利益率・マージン率の4つを区別しましょう。言葉が混ざると、社内でも取引先とも話がかみ合いません。

粗利(あらり)とは、売上から売上原価を引いた利益のことです。会計では「売上総利益」と呼びます。

粗利率とは、売上のうち粗利が占める割合のことです。「粗利÷売上×100」で計算します。

営業利益率とは、粗利からさらに営業の人件費や家賃などの経費を引いた利益の、売上に対する割合のことです。一般に「利益率」と言うときは、営業利益率を指すことが多いです。

マージン率とは、派遣料金と賃金の差が料金に占める割合のことです。労働者派遣法第23条第5項により、派遣会社はこの割合を公開する義務があります。

言葉計算式何がわかるか
粗利売上 − 売上原価1案件・1人あたりで残るお金
粗利率粗利 ÷ 売上 × 100売上のうち何%が残るか
営業利益率営業利益 ÷ 売上 × 100会社全体の経費を引いた後の利益の割合
マージン率(派遣法)(料金平均 − 賃金平均)÷ 料金平均 × 100派遣料金のうち賃金以外に回る割合
還元率エンジニアへの支払い ÷ 単価 × 100単価のうちエンジニアに渡る割合

→ 取引先への説明のしかた:SESのマージン率の平均と相場|適正ラインと説明のしかた

SESの粗利率の計算式と計算例

SESの粗利率は、自社エンジニアとBPのエンジニアで、売上原価の中身が違うことに注意して計算します。

売上原価とは、売上をつくるために直接かかった費用のことです。SESでは、エンジニアにかかるお金が売上原価になります。

エンジニア売上売上原価に入るもの
自社エンジニア客先からの月額単価給与、会社負担の社会保険料、交通費など
BPのエンジニア客先からの月額単価BPに支払う月額

計算例1:自社エンジニア

次の数字は、計算のしかたを示すための例です。

  • 月額単価:70万円

  • 給与:40万円

  • 会社負担の社会保険料:6万円(例。厚生年金だけで給与の9.15%がかかります)

  • 交通費:1.5万円

売上原価は40万+6万+1.5万=47.5万円です。粗利は70万−47.5万=22.5万円、粗利率は22.5万÷70万×100=約32.1%です。

計算例2:BPのエンジニア

  • 月額単価:70万円

  • BPへの支払い:63万円

粗利は70万−63万=7万円、粗利率は7万÷70万×100=10.0%です。

計算例3:フリーランスのエンジニア

  • 月額単価:70万円

  • フリーランスへの支払い:60万円

粗利は70万−60万=10万円、粗利率は10万÷70万×100=約14.3%です。フリーランスとは直接契約するので、BPを通すより粗利率が高くなりやすいです。

BPやフリーランスのエンジニアは、給与や社会保険料を自社で払いません。待機のリスクもありません。ただし、1人あたりの粗利率は自社エンジニアより低くなります。

会社全体の粗利率は、自社エンジニア・BP・フリーランスの比率で大きく変わります。

還元率と粗利率の関係

還元率を上げると、そのぶん粗利率は下がります。還元率と粗利率は、同じ単価を「エンジニアに渡す分」と「会社に残す分」で分け合う関係だからです。

還元率とは、客先からの単価のうち、エンジニアに支払う割合のことです。エンジニアの採用で「還元率◯%」と打ち出すSES企業が増えています。

計算例1の自社エンジニアで見ると、次のようになります。

項目金額単価に対する割合
単価70万円100%
給与(還元)40万円約57.1%
会社負担の社会保険料・交通費7.5万円約10.7%
粗利22.5万円約32.1%

還元率の計算に社会保険料を含めるかどうかは、会社によって違います。他社の「還元率◯%」と比べるときは、何を含めた数字かを必ず確かめましょう。

私たちのおすすめは、還元率を上げる前に単価と商流を上げることです。単価が上がれば、還元率を上げても粗利の額を保てます。

商流の深さが粗利率を削る仕組み

商流が1段深くなるごとに、間の会社が手数料を取ります。そのため同じエンジニアでも受け取る単価が下がり、粗利率が下がります。

商流とは、SESの仕事がエンド(発注元)から、いくつもの会社を通って流れてくる経路のことです。

計算例1の自社エンジニア(売上原価47.5万円)を、商流の位置だけ変えて比べます。単価は説明のための例です。

自社の位置受け取る単価(例)粗利粗利率
一次請け80万円32.5万円約40.6%
二次請け70万円22.5万円約32.1%
三次請け62万円14.5万円約23.4%

エンジニアの給与は同じでも、商流が2段違うだけで、粗利率は17ポイント以上変わります。給与を上げたいのに粗利が足りない会社は、まず商流を疑いましょう。

→ 商流の位置の見分け方はSESの一次請け・二次請けの違い|単価差と商流を上げる方法で解説しています。

待機が粗利率を削る仕組み

待機中は売上がゼロなのに給与は発生するので、1か月の待機でも年間の粗利率は大きく下がります。

待機とは、自社エンジニアの参画先が決まらず、客先で働いていない状態のことです。会社の都合で休ませる場合、少なくとも休業手当(平均賃金の60%以上)を払う必要があります(労働基準法第26条)。

計算例1の自社エンジニアで、待機中も給与を全額払った場合を比べます。

1年間の待機年間の売上年間の売上原価年間の粗利率
0か月840万円570万円約32.1%
1か月770万円570万円約26.0%
2か月700万円570万円約18.6%

待機が1か月増えるたびに、粗利は70万円ずつ減ります。待機を1か月減らすことは、単価を月5万円以上上げるより効果が大きい場合があります。

→ SESの待機期間の給与と対応|休業手当と早く案件に入れる手順
→ SESの稼働率の平均と計算式|待機を減らす営業の打ち手5つ

精算幅の控除が粗利率を削る仕組み

稼働時間が精算幅の下限を下回ると、売上は減るのに給与は変わらないので、粗利率が下がります。

精算幅とは、月の稼働時間の上限と下限のことです(例:140〜180時間)。下限を下回ると単価から差し引かれ(控除)、上限を超えると上乗せされます(超過)。

計算例1の自社エンジニアで、控除により売上が3万円減った月を比べます。

月の状態売上売上原価粗利率
精算幅の中70万円47.5万円約32.1%
控除で3万円減67万円47.5万円約29.1%

有給休暇が多い月は、稼働時間が下限を下回りやすくなります。精算幅は、契約のときに実態に合う幅で決めることが大切です。

→ SESの稼働時間の上限・下限|精算幅140-180hの決め方と計算例
→ SESで有給を取ると稼働時間はどうなる?精算の扱い3パターン

SESの粗利率を上げる方法5つ(優先順)

SESの粗利率を上げる方法は、待機を減らす・商流を上げる・単価交渉・BPの見直し・見える化の5つです。効果が早く確実なものから、次の順で取り組むのがおすすめです。

順番方法効果が出るまで主な担当
1待機を減らすすぐ営業
2商流を上げる3か月〜1年営業・経営
3既存案件の単価交渉契約更新のたび営業
4BPとの仕入れ単価の見直し契約更新のたび営業
5案件別の粗利の見える化1〜2か月営業・管理

1. 待機を減らす

待機を減らすことは、粗利率を上げる方法の中で最も早く、確実に効きます。契約終了の2か月前には次の案件探しを始め、提案できる案件の数を増やしましょう。

具体的には、次の3つを徹底します。

  1. 契約の更新・終了の予定を、エンジニアごとに一覧にする

  2. 終了が決まったら、その週のうちにスキルシートを最新にする

  3. 自社の案件だけでなく、パートナーの営業中案件にも提案する

2. 商流を上げる

商流を1段上げるだけで、同じエンジニアの粗利率が約8〜9ポイント上がる例もあります(上の表の二次請け→一次請け)。エンド企業や元請けとの直接取引を少しずつ増やしましょう。

→ SESのエンド開拓のやり方|元請け・直案件を取る7ステップ

3. 既存案件の単価交渉

既存の客先には、契約更新の1〜2か月前に単価交渉を持ちかけます。エンジニアのスキルが上がったことや、担当範囲が広がったことを、具体的な事実で伝えましょう。

→ SESの単価交渉のタイミング|使えるメール例文と資料5点

4. BPとの仕入れ単価の見直し

BPのエンジニアの粗利率が低い場合は、仕入れ単価と、BPの商流の位置を確認します。BPのさらに上に別の会社が入っていると、そのぶん仕入れ単価が上がっているかもしれません。

計算例2で仕入れ単価を63万円から61万円にすると、粗利率は10.0%から約12.9%に上がります。ただし、無理な値下げは関係を壊すので、取引量を増やす提案などとセットで交渉しましょう。

5. 案件別の粗利の見える化

最後に、案件ごと・エンジニアごとの粗利と粗利率を毎月一覧にします。会社全体の数字だけでは、どの案件が利益を削っているのかわかりません。

見る項目確認すること
案件別の粗利率20%を下回る案件がないか(自社の基準で決める)
商流の位置三次請け以下の案件がいくつあるか
待機の月数過去12か月で、誰が何か月待機したか
契約更新の予定単価交渉のタイミングを逃していないか

Excelでの管理が追いつかなくなったら、案件管理ツールへの移行も検討しましょう。

→ SES案件管理ツールの比較ポイント|Excelから移る基準5つ

チョータツ・チョータツブースト・xhoursで、待機を減らし取引先を増やす

粗利率を上げる方法のうち、1(待機を減らす)と4(BPの見直し)は、取引先の数で結果が変わります。提案できる案件と、選べるパートナーが多いほど有利です。自分でやる方法と、ツールで楽にする方法を比べます。

やりたいこと自分でやる場合DrivenXのツールを使う場合
次の参画先を早く見つける届くメールを読み、Excelに転記するチョータツで他社と連携し、営業中の案件・人材をデータベース化
自社エンジニアの空き情報を届けるBCCでメールを一斉送信するチョータツのメール配信機能でパートナーに配信する
条件のよい取引先を増やす検索・交流会・紹介で1社ずつ探すチョータツブーストで新しいパートナー企業を開拓する
BPを通さず人材を確保する知り合いやSNSで声をかけるxhoursでITフリーランスに直接スカウトする
案件・人材の情報を管理するExcelを営業ごとに更新するチョータツで案件・人材を管理・共有する(AIが入力を手伝う)

チョータツとは、SES営業の案件・人材を管理・共有できるツールです。3,000社以上が使っており、無料で始められます。

チョータツブーストとは、チョータツの中で新しいパートナー企業を開拓できる機能のことです。取引先が増えるほど、案件の選択肢が増えます。商流の浅い案件や、条件のよい取引も選びやすくなります。

xhoursとは、企業がITフリーランスに直接スカウトできるDrivenXのサービスです。数千名のフリーランスのデータベースから探せます。計算例3のように、BPを通さない分だけ粗利率を確保しやすくなります。

→ xhoursを見てみる

よくある質問

Q. SESの粗利率の平均は何%ですか?
公的な統計はありません。参考値として、厚生労働省の2024年度の派遣データでは、情報処理・通信技術者の料金と賃金の差が料金の約39%でした。社会保険料などを引くと、実際の粗利率はこれより低くなります。
Q. SESの利益率の平均はどれくらいですか?
SESに限った営業利益率の公的な統計もありません。営業利益率は、粗利から営業の人件費や家賃などを引いて出すため、粗利率よりかなり低くなります。自社の決算書で毎年の推移を確認しましょう。
Q. SESのマージン率と粗利率は同じですか?
近いですが、同じではありません。派遣法のマージン率は「料金と賃金の差」の割合で、社会保険料などの会社負担も差の中に含まれます。粗利率は、社会保険料なども原価として引いた後の割合です。
Q. SESの粗利を上げるには、何から始めるべきですか?
まず待機を減らすことです。1か月の待機で、例では年間の粗利率が約6ポイント下がります。次に商流を上げ、契約更新のたびに単価交渉をしましょう。
Q. 還元率を上げると、粗利率はどうなりますか?
同じ単価のままなら、還元率を上げたぶん粗利率は下がります。先に単価や商流を上げてから還元率を見直すと、粗利の額を保ちやすくなります。
Q. BPのエンジニアばかりだと、粗利率は低くなりますか?
低くなりやすいです。例ではBPのエンジニアの粗利率は10%で、自社エンジニアの約32%より低くなります。ただし待機のリスクがないので、両方を組み合わせるのが一般的です。

まとめ

  • SESの粗利率の平均を示す公的な統計はない。出典のない数字を目標にしない

  • 参考値として、厚生労働省の派遣データでは、情報処理・通信技術者の料金と賃金の差は料金の約39%

  • 粗利率は「粗利÷売上×100」。自社エンジニアは給与・社会保険料・交通費、BPのエンジニアは支払額が原価

  • 還元率と粗利率は同じ単価を分け合う関係。還元率を上げる前に単価と商流を上げる

  • 商流が2段違うと、例では粗利率が17ポイント以上変わる

  • 待機1か月で、例では年間の粗利率が約32%から約26%に下がる。精算幅の控除も粗利率を下げる

  • 改善の順番は、待機を減らす→商流を上げる→単価交渉→BPの見直し→案件別の見える化

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料(2026年9月28日確認)

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