SES基本契約書のテンプレート(条文の構成)と、個別契約書・注文書の違い|新しいBPと取引する前の条項チェック15

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

SES基本契約書とは?

SES基本契約書とは、同じ取引先と何度もSES取引をするときに、どの案件にも共通するルールをまとめた契約書のことです。「業務委託基本契約書」「取引基本契約書」という名前で結ぶことも多いです。

SES契約は、多くの場合準委任契約です。準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決められた業務を行うことに対してお金を払う契約のことです(民法第656条)。SESでは、エンジニアが作業した時間に応じて代金を払う形が一般的です。

案件のたびに長い契約書を作るのは大変です。そこで、共通ルールは基本契約書で1回だけ決め、案件ごとの条件は短い個別契約書や注文書で決めます。

準委任の受注側は、注意を尽くして業務を行う義務(善管注意義務)を負います(民法第644条・第656条)。そのため、請負のような「完成しなかった責任」は原則として負いません。成果物に対して報酬を払う「成果完成型」の準委任もあるので、個別契約でどちらかを確認しましょう。

→ 準委任と請負の違い|契約書で見分ける6点 / 準委任契約の成果完成型とは / SESに瑕疵担保責任はある?

基本契約書・個別契約書・注文書の違い

基本契約書は「ずっと使う共通ルール」、個別契約書と注文書は「案件1件ごとの条件」を決める書類です。3つの役割を1枚の表にまとめました。

書類役割主に書くこと作るタイミング
基本契約書取引全体の共通ルール支払い条件、再委託、秘密保持、損害賠償、解約最初の取引の前に1回
個別契約書案件ごとの条件(双方が署名)要員、期間、単価、精算幅、作業場所案件が決まるたび
注文書発注側からの申込み個別契約書と同じ項目案件が決まるたび
注文請書受注側の「引き受けます」注文書の内容を引き受ける旨注文書を受け取ったあと

注文書とは、発注する側が「この条件でお願いします」と申し込む書類のことです。注文書だけでは申込みにすぎません。受注側が注文請書を返すか、基本契約書に「注文書の発行で個別契約が成立する」と書いておきます。

個別契約書と注文書、どちらを使う?

どちらを使っても、書く中身はほぼ同じです。違いは手続きです。

  • 個別契約書:1枚の書類に双方が署名・押印する。内容の食い違いが起きにくい

  • 注文書+注文請書:2枚の書類をやり取りする。発注側の書式で早く回せる

大手の取引先は、自社の注文書の書式を使うことが多いです。その場合は、注文書の項目が基本契約書と食い違っていないかを確認しましょう。

取引を始めるまでの書類の流れ

新しいBPとの取引は、「秘密保持契約 → 基本契約書 → 個別契約書(注文書)」の順に進めるのが基本です。

  1. 秘密保持契約(NDA)を結ぶ:案件や人材の情報を渡す前に結びます。

  2. どちらのひな形を使うか決める:自社のひな形か、相手のひな形かを決めます。

  3. 基本契約書の条項を確認する:後で紹介する15項目を確認し、修正したい点を伝えます。

  4. 基本契約書を締結する:電子契約か紙かを決め、双方が締結します。

  5. 案件ごとに個別契約書か注文書を交わす:稼働開始日の前までに交わします。

  6. 稼働後、毎月の稼働報告書で精算する:稼働時間をもとに請求額を計算します。

特にステップ5は遅れがちです。書類が交わされないまま稼働が始まると、単価や精算幅で揉めたときに根拠がありません。

→ 精算の流れは稼働報告書のテンプレート|書き方と精算前チェックで解説しています。

SES基本契約書のテンプレート(条文の構成)

SES基本契約書は、おおむね次の18条前後で構成されます。下の構成を、自社のひな形を作るときや、相手のひな形を読むときの目次として使ってください。

条条項名中身
1目的準委任による業務委託の基本ルールであること
2個別契約個別契約書・注文書で決める項目と、成立のしかた
3業務の遂行受注側が自らの責任で業務を行うこと
4業務責任者双方の窓口となる責任者を決めること
5作業場所作業場所は個別契約で決めること
6委託料と精算単価、精算幅、超過・控除の計算方法
7支払い締め日、支払日、振込手数料
8報告稼働報告書の提出期限と中身
9再委託再委託の可否と、事前承諾の要否
10知的財産権作ったプログラムの著作権の帰属
11秘密保持業務で知った情報の扱い
12個人情報個人情報の取り扱い
13損害賠償賠償の範囲と上限
14引き抜き・直接取引の禁止要員や顧客との直接取引の制限
15反社会的勢力の排除暴力団などと関係がないことの確認
16解除契約違反などで解除できる場合
17契約期間期間と自動更新
18協議・管轄揉めたときの話し合いと裁判所

3条と4条は特に大切です。発注側がエンジニアに直接指示を出す形になっていると、偽装請負を疑われます。→ 偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選

個別契約書・注文書に書く項目

項目記入の例
業務内容〇〇システムの詳細設計・開発
要員イニシャル、人数
契約期間2026年10月1日〜2026年12月31日
作業場所東京都港区(リモート併用)
月額単価70万円(税別)
精算幅140〜180時間
超過・控除単価上限割・下限割(または中間割)
精算単位15分・30分・1時間など

精算幅とは、月額単価のままで精算する稼働時間の範囲のことです。範囲を超えたら追加で請求し、下回ったら差し引きます。

→ SESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法

新しいBPと取引する前の条項チェック15

新しいBPと基本契約を結ぶ前に、営業は次の15項目を確認しましょう。法務の確認とは別に、営業が「現場で困らないか」を見るためのチェックリストです。

#条項営業が見るポイント
1契約の形準委任か請負か。派遣の形になっていないか
2業務の範囲個別契約で業務内容を具体的に書く決まりか
3指示の流れ指示は双方の業務責任者を通すと書いてあるか
4作業場所リモートや出張の扱いが決まっているか
5精算幅140〜180時間など、幅の決め方が書いてあるか
6超過・控除の計算上下割か中間割か。端数の扱いはどうか
7精算単位15分・30分・1時間のどれか
8支払いサイト締め日から入金まで何日か。60日を超えていないか
9再委託再委託できるか。事前の書面承諾が要るか
10個人事業主への再委託フリーランスを入れてよいか
11著作権の帰属いつ、誰に移るか。対価に含まれるか
12損害賠償の上限上限があるか。「委託料〇か月分」など
13契約期間・更新自動更新か。解約予告は何日前か
14引き抜き・直接取引禁止期間と、違反したときの金額
15稼働報告書提出期限と、確認の方法

営業が特に揉めやすい4項目

5〜8の「お金まわり」は、稼働が始まってから毎月効いてきます。精算幅と支払いサイトは、自社がエンドと結んでいる条件と比べましょう。BPへの支払いが、自社への入金より早いと、資金繰りが苦しくなります。

9と10の「再委託」は、商流が深くなる原因です。再委託を無条件に認めると、知らない会社のエンジニアが入ってくることがあります。二重派遣などのトラブルを防ぐため、事前の書面承諾を条件にしておくと安心です。

→ SESの二重派遣は違法?罰則と避ける契約の組み方

13の「解約予告」は、途中退場のときに効きます。「1か月前に通知」などの期間を、エンドとの契約とそろえておきましょう。

→ SESの契約更新はいつ決まる?通知時期と更新しない時の4手順

14の「引き抜き」は、違反したときの金額が大きすぎないかを見ます。→ SESの引き抜きに紹介料は取れる?相場と契約条項の書き方

支払いサイトは取適法・フリーランス法の期限も確認する

取適法やフリーランス法の対象になる取引では、支払期日を受け取った日から60日以内に決める必要があります。支払いサイトとは、請求の締め日から実際に入金されるまでの期間のことです。SESでは「月末締め翌月末払い(30日)」や「翌々月15日払い(45日)」などがあります。

2026年1月1日、下請法は取適法(中小受託取引適正化法)に変わりました。対象になる取引では、物やサービスを受け取った日から60日以内のできるだけ短い期間で支払期日を決める必要があります。手形での支払いも禁止されました。

取適法の対象かどうかは、取引の内容と、双方の資本金・従業員数で決まります。自社が対象になるかは、公正取引委員会の資料で確認しましょう。

相手が個人事業主(フリーランス)の場合は、別の法律も関係します。2024年11月1日に始まったフリーランス・事業者間取引適正化等法です。この法律では、次のルールが決まっています。

ルール中身
条件の明示業務内容・報酬の額・支払期日などを、書面やメールで示す
支払期日受け取った日から60日以内のできるだけ短い期間
再委託の場合元の発注者の支払期日から30日以内にできる

SES基本契約書に印紙は必要?

準委任だけの基本契約書は、一般に印紙税の「継続的取引の基本となる契約書(7号文書)」にあたらないとされます。国税庁の説明では、7号文書の対象は売買・請負・運送などの取引で、準委任(委任)は含まれていないためです。

ただし、契約書の中身によっては課税されます。判断は名前ではなく中身で決まります。

契約書の中身印紙の考え方
準委任だけ一般に不課税とされる
請負の内容を含む基本契約7号文書として4,000円になる場合がある
著作権を譲る条項がある1号文書(無体財産権の譲渡)になる場合がある
電子契約で結ぶ紙の文書ではないので印紙税はかからない

注文書は、ふつうは申込みの書類なので印紙はかかりません。ただし、次の2つの場合は契約書として扱われます。「基本契約に基づき注文書だけで契約が成立する」と書いてある場合と、双方が署名・押印した場合です。

契約書として扱われても、中身が準委任だけなら課税文書にはあたらないとされます。請負の内容を含むときは、請負の契約書(2号文書)として印紙が必要になる場合があります。

印紙の判断は、税額や号数の判定が複雑です。迷ったら、税務署や税理士に確認しましょう。

→ 準委任契約の印紙は必要?不要な場合と2号・7号文書の判定表

テンプレートを使うときの注意点3つ

テンプレートは「そのまま使う」ものではなく、「自社の取引に合わせて直す」ための土台です。

  1. 相手のひな形を使うときは、15項目を先に確認する:相手に有利な条項が入っていないかを見ます。特に損害賠償の上限と、引き抜きの違約金です。

  2. エンドとの契約と条件をそろえる:精算幅・支払いサイト・解約予告が、上流の契約とずれていないかを確認します。

  3. 修正した点を記録する:どの条項をどう直したかを残し、次のBPとの交渉で使います。

ネットで公開されているひな形は、作った側の立場に有利な内容になっていることがあります。最終版は、弁護士などの確認を受けましょう。

案件条件の確認をチョータツで楽にする

契約で揉めないコツは、「提案する前に案件の条件を確認しておくこと」です。単価・精算幅・商流・作業場所が分かっていれば、契約の段階で驚くことが減ります。

自分でやる方法

まずは、Excelやスプレッドシートで案件の条件表を作りましょう。列は「案件名」「取引先」「単価」「精算幅」「支払いサイト」「再委託の可否」「作業場所」があれば十分です。BPから案件メールが届くたびに、この表へ転記します。

ただ、案件メールは1日に何十通も届きます。転記が遅れると、古い条件のまま提案してしまうことがあります。

チョータツでもっと楽にする

チョータツとは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。

  • 案件・人材の情報を1か所で管理・共有できる:条件をチームで同じように見られます。

  • AIが入力を手伝う:案件情報を登録する手間を減らせます。

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・人材をデータベース化できる:BPの情報がたまり、条件を比べやすくなります。

  • パートナーへのメール配信機能がある:自社の案件・人材を取引先にまとめて届けられます。

契約書そのものは自社で用意する必要があります。チョータツは、契約の前段階である案件・人材の情報を整えるのに役立ちます。

→ BPを増やす方法はSESパートナー募集企業の一覧と探し方7選で解説しています。

よくある質問

Q. SES基本契約書のテンプレートは無料で使えますか?
法律事務所や電子契約サービスなどが公開しているものがあります。ただし、自社の取引に合わせた修正が必要です。本記事の15項目で中身を確認し、専門家のチェックを受けて使いましょう。
Q. 個別契約書と注文書の違いは何ですか?
個別契約書は双方が署名する1枚の契約書です。注文書は発注側からの申込みで、注文請書を返すなどして契約が成立します。書く項目はほぼ同じです。
Q. SES基本契約書に印紙は必要ですか?
準委任だけの基本契約書は、一般に7号文書にあたらないとされます。ただし、請負の内容や著作権を譲る条項があると課税される場合があります。電子契約なら印紙税はかかりません。
Q. 注文書に印紙は必要ですか?
ふつうの注文書は申込みの書類なので不要です。ただし、注文書だけで契約が成立する決まりがある場合は例外です。双方が署名・押印した場合も、契約書として課税されることがあります。
Q. 基本契約書を結ばずに、注文書だけで取引してもいいですか?
法律上、契約は成立しえます。ただし、損害賠償や再委託などの共通ルールがないので、トラブルのときに困ります。継続して取引するなら、基本契約書を結びましょう。
Q. 支払いサイトは何日まで認められますか?
取適法やフリーランス法の対象になる取引では、受け取った日から60日以内に支払期日を決める必要があります。対象かどうかは、取引の内容と会社の規模で決まります。

まとめ

  • SESの契約書は、基本契約書(共通ルール)と個別契約書・注文書(案件ごとの条件)の2段構え

  • 注文書は申込み。注文請書を返すか、基本契約書で成立のしかたを決める

  • 取引前に、精算幅・支払いサイト・再委託を含む15項目を確認する

  • 2026年1月からの取適法、フリーランス法では、支払期日は60日以内が原則

  • 準委任だけの基本契約書は一般に不課税。請負や著作権譲渡の条項があると課税される場合がある

  • 案件の条件は、契約前にチョータツで管理・共有しておくと揉めにくい

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料(2026年9月28日確認)

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