取適法でSESの準委任は対象になる?資本金・従業員基準の判定表と営業が変えること7つ

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

取適法とは?下請法から何が変わったか

取適法とは、発注する会社が、立場の弱い受注側の会社に不利な取引をしないよう定めた法律のことです。正式な名前は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。2026年1月1日に、それまでの下請法を改正して施行されました。

呼び方も変わりました。発注する側は「親事業者」から委託事業者へ、受ける側は「下請事業者」から中小受託事業者になりました。

SES営業に関係する主な変更点は、次の5つです。

変更点下請法(2025年まで)取適法(2026年1月から)
対象を決める基準資本金だけ資本金+従業員数
手形での支払い条件つきで使えた禁止
単価の話し合い定めなし協議に応じない一方的な決定を禁止
発注内容の伝え方書面(電子は相手の承諾が必要)書面かメールなどの電子の方法
遅延利息支払いが遅れたとき減額したときも対象に追加

SESの準委任は取適法の対象になるか

SESの準委任でも、取適法の対象になりえます。準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決められた作業をすること自体を約束する契約のことです。取適法は、契約の名前が準委任か請負かではなく、委託した仕事の中身で対象かどうかを決めます。

対象になるのは「仕事を受けて、その一部を外に出す」取引

取適法の対象になる取引は、大きく2つの型に分かれます。

  • 情報成果物作成委託とは、プログラムなどの作成を他の会社に任せることです。

  • 役務提供委託とは、自社が受けたサービスの提供を、他の会社に任せることです。

SESに当てはめると、次のようになります。

取引の例当てはまる型対象になるか
元請けから受けた開発を、BPのエンジニアに手伝ってもらう情報成果物作成委託規模の条件を満たせば対象
客先から受けたシステム運用の一部を、BPに任せる役務提供委託(情報処理)規模の条件を満たせば対象
エンド企業が、自社で使うシステムの開発を外に出す自社で作る力がない部分は当たらない対象外になることが多い
労働者派遣契約でエンジニアを受け入れる取適法の委託ではない対象外

取適法の定義(第2条)は、働く場所ではなく、プログラムの作成や役務の提供を任せているかどうかで決まります。つまり、客先常駐という働き方だけで対象外になるとは言えません。

SES企業が注意すべきは「BPへの発注」

SES企業は、多くの場合「受ける側」と「出す側」の両方の顔を持っています。エンドや元請けから受けた仕事を、BPに再委託するからです。

取適法の義務を負うのは「出す側」です。自社がBPに発注する取引が対象になりえるので、まずここを点検しましょう。自社が受ける側のときは、上位の会社の違反から守られる立場になります。

準委任・請負・派遣の違いはSESと派遣の違い|準委任・派遣・請負の比較表と確認5項目で比較しています。

資本金基準と従業員基準の判定表

取適法の対象かどうかは、資本金基準か従業員基準のどちらかに当てはまるかで決まります。SESの開発(プログラムの作成)や運用(情報処理)は、次の区分で判定します。

基準自社(発注する側)BP(受ける側)
資本金①3億円超3億円以下(個人を含む)
資本金②1,000万円超〜3億円以下1,000万円以下(個人を含む)
従業員300人超300人以下(個人を含む)

プログラム作成や情報処理に当たらない仕事は、別の区分になります。資本金「5,000万円」と従業員「100人」の区分です。たとえば、ヘルプデスクの電話対応だけを任せる場合は、こちらになることがあります。上位・下位の取引ごとの判定フローや、グループ会社・商社が間に入る場合は下請法の対象かどうか判定|資本金と従業員数の基準をSES向けにで詳しく説明しています。迷ったら、公正取引委員会の取適法の簡易診断で確かめましょう。

自社とBPの組み合わせ別の判定例

SESの開発案件をBPに出す場合の例です。

自社(発注する側)BP(受ける側)判定理由
資本金5,000万円・社員80人資本金1,000万円・社員20人対象資本金②に当たる
資本金5,000万円・社員80人資本金3,000万円・社員50人対象外BPの資本金が1,000万円超、自社は300人以下
資本金1,000万円・社員350人資本金500万円・社員20人対象資本金は外れるが、従業員基準に当たる
資本金1億円・社員400人資本金2,000万円・社員150人対象従業員基準に当たる(新しく対象に)
資本金3億円・社員120人資本金5,000万円・社員40人対象外どちらの基準にも当たらない
資本金1,000万円超の会社個人事業主のエンジニア対象個人は受ける側に含まれる

3行目と4行目は、2025年までの下請法では対象外でした。資本金は小さいが、エンジニアを多く雇っているSES企業は、今回の改正で新しく「発注する側」の義務を負うことがあります。

相手が個人事業主のときは、フリーランス法も関係します。両方の関係は取適法とフリーランス法の違い|SESで両方かかる取引を表で整理で整理しています。

従業員基準の数え方

常時使用する従業員とは、正社員・契約社員・パート・アルバイトなど、会社が雇っている人のことです。基本は、賃金台帳に載せる労働者の数で数えます。日雇いの人の扱いなど細かい点は、公正取引委員会のQ&Aで確認できます。

SES企業が数えるときのポイントは、次の3つです。

  1. 客先に常駐している自社エンジニアも数に入る:雇用している社員なので、本社の社員と同じく数えます。

  2. 派遣で受け入れている人や、BPのエンジニアは入らない:自社が雇っている人ではないからです。

  3. 発注した時点の人数で判断する(Q&A Q10):前々月分の賃金台帳の人数を、当月の発注に使うこともできます(Q12)。300人前後で増減している会社は、社内で数え方を決めておきましょう。

相手の従業員数は、見積依頼や取引先登録のときにメールや書面など記録に残る形で聞いておきましょう。口頭で聞いただけだと、あとで判定の根拠を示せません。

対象になったら委託事業者が守ること

取適法の対象になると、発注する側には4つの義務と11の禁止行為がかかります。SESの営業に特に関係するものをまとめます。

区分内容SESでの例
義務発注内容をすぐに書面かメールで伝える注文書を稼働開始前に送る
義務60日以内に支払期日を決める月末締め翌月末払いにする
義務遅れたら遅延利息を払う年14.6%の利息がかかる
義務取引の記録を作って保存する注文書・稼働報告・支払記録を残す
禁止代金を減らす・支払いを遅らせる一律値引き、手形払い
禁止協議に応じず一方的に代金を決める値上げ相談を無視して単価を据え置く

違反すると、公正取引委員会から勧告を受けることがあります。発注内容を伝えなかった場合や、記録を作らなかった場合は、50万円以下の罰金の対象です。

SES営業が明日から変えること7つ

取適法の対象になる取引では、営業の動き方を7つ変えます。1〜3は発注前、4〜5は支払い、6〜7は単価の話です。

1. 発注前にBPの資本金と従業員数を確認する

BPの資本金と従業員数を、取引先登録のときに記録します。資本金は登記や会社のサイトで確認できます。従業員数はメールで聞き、返事を保存しておきましょう。

聞くときのメール例文です。

例文・テンプレート
件名:取引先情報のご確認のお願い(株式会社△△)

株式会社〇〇 □□様

いつもお世話になっております。株式会社△△の◇◇です。
取適法への対応のため、取引先情報を確認しております。
お手数ですが、次の2点をご返信いただけますでしょうか。

・資本金の額
・常時使用する従業員の数(2026年9月末時点)

いただいた情報は、取引条件の確認にのみ使用いたします。
よろしくお願いいたします。

2. 注文書はBPの稼働開始前に送る

取適法では、発注したら直ちに発注内容を伝える必要があります。注文書とは、仕事の内容・金額・支払期日などを相手に伝える書類のことです。2026年からは、メールなどの電子の方法でも伝えられます。

SESでよくある「先に現場に入って、注文書は後から」は避けます。たとえば10月1日(木)から稼働なら、9月30日(水)までに注文書を送りましょう。記載事項と例文は下請法の3条書面とは|SESの発注書・注文書の記載事項と例文で解説しています。

3. 注文書に「決まっていないこと」を残さない

注文書には、作業の内容、単価、精算幅、支払期日、支払方法を書きます。精算幅とは、月の稼働時間の上限と下限のことです。精算の計算方法も書いておくと、支払いの段階で揉めません。

それでも単価が決まらないまま稼働を始める場合は、未定の理由と決定予定日を書きます。書き方はSESで単価未定のまま参画するときの仮単価|取適法上の扱いで確認できます。

4. 支払サイトを60日以内にする

支払期日は、役務の提供を受けた日から60日以内で、できるだけ短く決めます。支払サイトとは、締め日から支払日までの期間のことです。

支払条件(10月分の稼働)支払日判定
月末締め翌月末払い11月30日(月)問題ない
月末締め翌々月15日払い12月15日(火)60日以内に収まる
月末締め翌々月末払い12月31日(木)60日を超えるので見直し

毎月続く準委任では、運用基準の条件を満たせば、月の締め日(10月31日)を役務の提供を受けた日として数えられます。10月31日を1日目とすると、60日目は12月29日(火)です。翌々月末払いは60日を超えるので、最初に見直しましょう。詳しい計算は取適法の支払期日60日とSESの支払サイト|計算例と手形禁止にまとめています。

5. 手形をやめ、振込手数料をBPに負担させない

取適法では、手形での支払いが禁止されました。支払期日までに現金に換えにくい支払い方法も、同じく使えません。支払いは銀行振込などの現金に切り替えます。

振込手数料を代金から差し引くことにも注意が必要です。公正取引委員会の運用基準は、合意の有無にかかわらず、振込手数料を相手に負担させて代金から差し引くことを減額としています。振込手数料は自社で負担する運用にしましょう。

6. BPから単価の相談が来たら、必ず話し合う

取適法で新しく禁止されたのが、協議に応じない一方的な代金の決定です。BPから「人件費が上がったので単価を見直したい」と言われたら、話し合いに応じます。断る場合も、理由と根拠を説明する必要があります。

話し合った日付・内容・結論は、議事録やメールで残しましょう。協議の進め方は取適法で単価交渉の協議拒否は違反?一方的な代金決定のNG例と対処法で解説しています。

7. 発注後に単価を下げない

発注した後に、BPの責任ではない理由で代金を減らすことは禁止です。SESで起きやすいのは、次のような場面です。

  • エンドから単価を下げられたので、同じ月からBPの単価も下げる

  • 「今月は協力金として」と、支払額から一律に差し引く

  • 精算幅の計算で、契約にない端数の切り捨てをする

注文書で決めた精算幅どおりの控除は、減額には当たらないと考えられます。単価を変えるなら、次の契約期間から、話し合って決めるのが基本です。場面ごとの判定は下請法の禁止事項11個|SESの減額・買いたたき・発注取消の例で紹介しています。

取適法対応を自分で進める手順

取適法への対応は、取引先の洗い出しから始めて、ひな形と社内ルールを直す順に進めます。営業責任者が1か月で進めるなら、次の5つの手順です。

  1. BPの一覧を作る:直近6か月に発注したBPを、Excelなどの表に書き出します。

  2. 資本金と従業員数を埋める:「1. 発注前にBPの資本金と従業員数を確認する」のメール例文で聞き、返事を保存します。

  3. 対象の取引に印をつける:判定表を使い、対象になるBPを決めます。

  4. 注文書と支払条件を直す:支払期日、支払方法、振込手数料の負担を見直します。

  5. 営業にルールを伝える:「注文書は稼働前」「単価相談は必ず記録」を社内で共有します。

迷ったら、すべてのBP取引を取適法の対象と考えて運用するのも1つの方法です。支払期日や協議のルールを会社全体でそろえると、担当者ごとの判断ミスを防げます。

経産省のソフトウェア業向けガイドラインも確認する

経済産業省(中小企業庁)は、「情報サービス・ソフトウェア産業における中小受託適正取引等の推進のためのガイドライン」を出しています。取適法で問題になりうる取引の例と、望ましい取引の例が載っています。2026年9月時点の最新版は、令和7年(2025年)12月の改定版です。使う前に、中小企業庁のガイドライン一覧で新しい版が出ていないか確かめましょう。

チョータツで条件の確認と共有を楽にする

取適法の対応で一番の手間は、BPごとの条件を正しく把握し続けることです。Excelやメールに情報が散らばると、注文書の条件と実際の運用がずれやすくなります。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の条件を確認するメールやExcelを探して確認案件情報を1か所で管理し、提案前に確認
チームで共有する担当者ごとにファイルがばらばら案件・人材の情報をチームで共有
情報を入力する1件ずつ手で転記AIが入力を手伝う
BPに情報を届けるBCCでメールを一斉送信メール配信機能でパートナーに配信

チョータツは、3,000社以上が使うSES営業向けの案件・人材の管理・共有ツールです。無料で始められます。他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベースにできます。

ただし、取適法の判定や注文書の作成そのものは、自社で行う必要があります。チョータツは、その前提になる案件と条件の情報をそろえておくために使いましょう。

よくある質問

Q. 取適法はSESの準委任契約にも適用されますか?
適用されることがあります。取適法は契約の名前ではなく、仕事の中身で判断します。元請けから受けた開発や運用をBPに出す場合は、規模の条件を満たせば対象です。
Q. 取適法の従業員基準は300人と100人のどちらですか?
SESの開発(プログラム作成)や運用(情報処理)を任せる場合は、300人の基準です。それ以外の役務や成果物の作成を任せる場合は、100人の基準になります。
Q. 取適法の従業員数はどうやって数えますか?
賃金台帳に載せる労働者の数で数えます。正社員・契約社員・パート・アルバイトを含みます。客先常駐の自社エンジニアは含み、派遣で受け入れている人やBPのエンジニアは含みません。発注した時点の人数で判断します。
Q. SESで下請法が適用される資本金の基準は変わりましたか?
資本金の基準は変わっていません。開発や運用の委託なら、3億円と1,000万円の区分です。取適法では、資本金の基準に従業員数の基準が加わりました。
Q. エンド企業からSES企業への発注も取適法の対象ですか?
エンド企業が自社で使うシステムの開発を出す場合は、対象外になることが多いです。自社で作る力がない部分の外注は、取適法の委託に当たらないとされているためです。
Q. BPが個人事業主の場合はどうなりますか?
自社の資本金が1,000万円を超えていれば、取適法の対象になりえます。あわせてフリーランス法の義務もかかります。
Q. 取適法に違反するとどうなりますか?
公正取引委員会から勧告を受けることがあります。注文書を出さない、記録を保存しないといった違反は、50万円以下の罰金の対象です。

まとめ

  • SESの準委任でも、BPに開発や運用を出す取引は取適法の対象になりえる

  • 開発・運用の委託は、資本金3億円・1,000万円と、従業員300人の区分で判定する

  • 資本金が小さくても、社員300人超のSES企業は新しく対象になることがある

  • 従業員数は賃金台帳の人数で、発注した時点で数える。常駐エンジニアも含む

  • 営業が変えるのは、規模確認・注文書・60日以内の支払い・手形廃止・振込手数料・協議・減額禁止の7つ

  • まずは自社が「発注する側」になるBP取引から点検する

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)