取適法の支払期日60日とSESの支払サイト|締め日別の計算表と手形禁止
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
取適法の支払期日60日ルールとは?
取適法の支払期日60日ルールとは、代金の支払期日を、役務や成果物を受け取った日から60日以内に決めるルールのことです。決める義務を負うのは、発注する会社です。60日は上限で、法律は「できる限り短い期間内」に決めるよう求めています。
取適法とは、2026年1月1日に下請法を改正して施行された法律のことです。正式な名前は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。「中小受託取引適正化法」とも呼ばれます。
取適法では、呼び方も変わりました。発注する側を委託事業者、受ける側を中小受託事業者と呼びます。SES企業は、エンドや元請けから見ると受ける側、BPに発注するときは出す側です。
| 決まり | 内容 |
|---|---|
| 支払期日の上限 | 受け取った日から60日以内で、できる限り短く |
| 数え方 | 受け取った日を1日目に数える |
| 期日に払わなかったとき | 60日を過ぎた日から年14.6%の遅延利息 |
| 支払いの方法 | 手形は禁止。現金に換えにくい方法も禁止 |
下請法のころと何が違う?
60日以内に支払期日を決めるルールは、下請法のころからありました。「SES 支払いサイト 下請法」で調べている方は、同じルールが取適法に引き継がれたと考えてください。
大きく変わったのは、支払いの方法と対象になる会社の範囲です。手形が禁止になり、資本金だけでなく従業員数でも対象を判断するようになりました。自社とBPが対象になるかの判定は、取適法でSESの準委任は対象?適用条件と営業の変更点7つで表にしています。
SESの支払サイトはどこから60日を数える?
SESの支払サイトは、役務の提供を受けた日から数えます。毎月続く準委任では、次の3つの条件を満たせば、稼働月の末日に役務を受け取ったものとして数えられます。
支払サイトとは、締め日から支払日までの期間のことです。「月末締め翌月末払い」なら、支払サイトは約30日です。
役務提供委託とは、自社が受けたサービスの提供を、他の会社に任せる取引のことです。システムの運用をBPに任せる場合などが当てはまります。
公正取引委員会の運用基準は、次の3つをすべて満たす場合を定めています。そのときは、月単位の締め期間の末日を役務の提供日として扱います。
月単位の締め期間の末日までに提供した役務に代金を払うと、協議のうえ前もって合意し、発注時に明示している
その期間の代金の額、または単価と数量から金額を出す計算方法を明示している
受ける側が続けて提供する役務が、同じ種類のものである
SESでは、注文書に「月末締め」「月額単価と精算幅」を書いておきます。同じ作業を毎月続ける契約なら、条件にあてはまりやすくなります。単価が決まる前に参画させる場合の扱いは、SESで単価未定のまま参画するときの仮単価|取適法上の扱いで解説しています。3つがそろわない場合は、稼働した日ごとに数える考え方になるので、支払いを早めにしておくのが安全です。
稼働報告書の受領日や検収日から数えるのはNG
稼働報告書が届いた日や、検収を終えた日を「受け取った日」にすることはできません。稼働報告書とは、エンジニアがその月に働いた時間を書いて提出する書類のことです。
報告書は、役務を受け取ったことを示す記録です。10月分の報告書が11月5日(木)に届いても、数え始めは10月31日(土)のままです。報告書の回収が遅れる会社ほど、支払日までの余裕が少なくなります。回収を早める手順は、SESの稼働報告書が遅れる・出ないときの対応|請求を間に合わせる手順で紹介しています。
締め日別|支払サイトが60日に収まるかの計算表
月末締めなら、翌月末払いと翌々月20日払いまでは60日に収まります。翌々月末払いは、1月分と12月分を除いて61日目以降になります。
次の表は、2026年10月分(締め日は10月31日(土))の例です。10月31日を1日目として数えると、60日目は12月29日(火)です。
| 支払条件 | 支払日 | 何日目か | 判定 |
|---|---|---|---|
| 月末締め翌月末払い | 11月30日(月) | 31日目 | 収まる |
| 月末締め翌々月10日払い | 12月10日(木) | 41日目 | 収まる |
| 月末締め翌々月20日払い | 12月20日(日) | 51日目 | 収まる |
| 月末締め翌々月末払い | 12月31日(木) | 62日目 | 超えるおそれ |
支払日が土日や祝日に当たるときは、前の営業日に払う決まりにしておくと安心です。後ろにずらすと、60日を超えるおそれがあります。
月によって「翌々月末払い」の日数は変わる
月末締め翌々月末払いは、月によって60〜63日目になります。2026年の各月で数えると、次のとおりです。
| 稼働月 | 締め日 | 60日目 | 翌々月末は何日目か |
|---|---|---|---|
| 1月分 | 1月31日(土) | 3月31日(火) | 60日目(収まる) |
| 4月分 | 4月30日(木) | 6月28日(日) | 62日目(超えるおそれ) |
| 6月分 | 6月30日(火) | 8月28日(金) | 63日目(超えるおそれ) |
| 10月分 | 10月31日(土) | 12月29日(火) | 62日目(超えるおそれ) |
| 11月分 | 11月30日(月) | 2027年1月28日(木) | 63日目(超えるおそれ) |
| 12月分 | 12月31日(木) | 2027年2月28日(日) | 60日目(収まる) |
12か月のうち、60日目以内に収まるのは1月分と12月分だけです。
なお、フリーランス法では、31日の月のために61日目・62日目になる支払いを「2か月以内」として扱います(国のQ&A問48)。一方、取適法の運用基準には同じ明記が見当たりません(2026年9月30日時点で編集部が確認)。公正取引委員会の説明資料も「締切日からではなく、受領から60日を超えないこと」としています。
そのため取適法の対象取引では、「翌々月末払い」は使わず、翌月末払いか翌々月20日払いまでに変えるのが安全です。個別の判断は、公正取引委員会の相談窓口や弁護士に確認しましょう。
20日締め・15日締めの場合
月末以外の締め日でも、数え方は同じです。締め期間の末日(20日や15日)を1日目にします。
| 締め日と支払条件 | 例(2026年) | 何日目か | 判定 |
|---|---|---|---|
| 20日締め翌月末払い | 10月20日(火)締め→11月30日(月) | 42日目 | 収まる |
| 20日締め翌々月10日払い | 10月20日(火)締め→12月10日(木) | 52日目 | 収まる |
| 20日締め翌々月20日払い | 10月20日(火)締め→12月20日(日) | 62日目 | 超えるおそれ |
| 15日締め翌々月10日払い | 10月15日(木)締め→12月10日(木) | 57日目 | 収まる |
| 15日締め翌々月15日払い | 10月15日(木)締め→12月15日(火) | 62日目 | 超えるおそれ |
「締め日と支払日が同じ日付で、2か月後」の条件は、どの締め日でも60日を超えやすいと覚えておきましょう。
自社の支払サイトを確かめる5ステップ
自社の支払サイトは、締め日を1日目にして60日目の日付を出し、支払日と比べるだけで確かめられます。BPとの契約が多い会社は、次の順番で点検しましょう。
取適法の対象になるBPを洗い出す:自社とBPの資本金・従業員数で判定する
注文書の支払条件を一覧にする:締め日、支払日、支払方法、振込手数料の負担を書き出す
締め日から60日目の日付を出す:締め日を1日目として数える
支払日が60日目より後の取引に印をつける:翌々月末払いなどを見つける
支払条件を直してBPに知らせる:新しい条件を注文書や基本契約書に反映する
表計算ソフトで数える場合は、「締め日+59日」が60日目です。10月31日に59日を足すと12月29日になります。
契約書の条項の直し方は、SESの基本契約書とは|テンプレートと個別契約の優先・印紙7号で確認できます。
手形払いの禁止で何が変わった?
取適法では、代金を手形で支払うことが禁止されました。あわせて、電子記録債権などの支払方法も、支払期日までに満額の現金に換えにくいものは使えません。
手形とは、決まった日に代金を払うことを約束する紙の証券のことです。受け取った会社は、満期日まで待つか、手数料を払って早く現金にするしかありませんでした。
電子記録債権とは、手形の代わりに電子的に記録して使う、代金を受け取る権利のことです。「でんさい」とも呼ばれます。一括決済方式とは、銀行などの金融機関を間に入れて代金を払う仕組みのことです。
| 支払方法 | 取適法での扱い |
|---|---|
| 銀行振込(現金) | 使える |
| 手形 | 禁止 |
| 電子記録債権・一括決済方式で、期日までに満額の現金に換えにくいもの | 禁止 |
| 電子記録債権などで、期日までに受け取る側の負担なしで満額を受け取れるもの | 使える |
SES業界では、BPへの支払いは銀行振込が中心です。それでも、会社によっては一部を手形やでんさいで払っていることがあります。支払方法の欄を確認し、振込に切り替えるのが一番シンプルです。
振込手数料を差し引くのは減額になる
取適法では、振込手数料を受ける側に負担させ、代金から差し引くことは減額に当たります。公正取引委員会の運用基準は、受ける側との合意の有無にかかわらず減額に当たるとしています。
たとえば、BPへの代金が60万円で、振込手数料が660円だったとします。599,340円を振り込むと、660円の減額です。金額は小さくても、毎月・全BPで続けていれば、まとめて指摘されるおそれがあります。
減額とは、発注時に決めた代金を、受ける側の責任がないのにあとから減らすことです。取適法では、減額した場合にも遅延利息を払う決まりが加わりました。計算例は下請法の遅延利息14.6%とは|計算方法と請求・支払いの手順で紹介しています。
振込手数料の見直しでやること
基本契約書と注文書の「振込手数料は乙の負担」といった条項を探す
経理の振込データで、手数料を引いて払っていないかを確かめる
振込手数料は自社で負担する運用に変える
BPに、新しい運用を書面かメールで知らせる
BPへ払う側の営業がやること
BPへ払う側は、支払条件・支払方法・振込手数料の3つを直すのが基本です。取適法の対象になるBPから先に進めましょう。営業は、条件を決めるときの窓口として動きます。
| 項目 | 直す前の例 | 直した後の例 |
|---|---|---|
| 支払サイト | 月末締め翌々月末払い | 月末締め翌月末払い |
| 支払方法 | 一部を手形・でんさい | 全額を銀行振込 |
| 振込手数料 | BPの負担(差し引き) | 自社の負担 |
| 注文書 | 支払条件の記載がない | 締め日・支払日・支払方法を明記 |
上位からの入金が遅い会社ほど資金繰りに注意
BPへの支払いを早めると、上位企業からの入金との間にずれが出ます。上位が翌々月払いで、BPへは翌月末払いにすると、約1か月分の立て替えが必要です。
取適法の対象になる取引では、「上位からの入金がまだだから」は、支払いを遅らせる理由になりません。資金の準備は、SESの黒字倒産を防ぐ資金繰り|支払いサイトの差と対策6つを参考にしてください。
BPへの連絡メール例文
支払条件を変えるときは、変更の理由と開始時期を短く伝えます。
件名:お支払い条件の変更のお知らせ(2026年11月分より) 株式会社〇〇 営業ご担当 〇〇様 いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。 取適法(中小受託取引適正化法)への対応として、 貴社へのお支払い条件を次のとおり変更いたします。 ・対象:2026年11月稼働分より ・支払条件:月末締め翌月末払い(従来:翌々月末払い) ・支払方法:銀行振込(振込手数料は弊社負担) 11月分は、2026年12月30日(水)にお支払いします。 (12月31日は銀行の休業日のため、前の営業日にお支払いします) ご不明な点がございましたら、□□までご連絡ください。 今後ともよろしくお願いいたします。
代金を受け取る側の営業がやること
受け取る側は、まず取適法の対象かを確かめ、問題があれば見直しを相談するのが基本です。60日を超える条件や手数料の差し引きがあれば、根拠を示して伝えます。
受け取る側がまず確認することは、次の5つです。
上位企業と自社が、資本金・従業員数で取適法の対象になるか
注文書に書かれた支払日が、締め日から60日以内か
手形や、期日までに満額を受け取れない支払方法が使われていないか
入金額が、請求額から振込手数料を引いた額になっていないか
支払日が遅れたことがあるか(遅れた日数と金額を記録する)
60日を超えて支払期日を決めていても、支払期日は法律上60日目になります。その日までに払われなければ、60日を過ぎた日から年14.6%の遅延利息の対象です。
相談するときの伝え方
いきなり「違反です」と伝えると、関係がこじれやすくなります。「法改正に合わせて、条件を確認させてください」と、確認の形で切り出しましょう。
件名:お支払い条件のご確認のお願い 〇〇株式会社 購買ご担当 〇〇様 いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。 2026年1月の取適法施行に合わせて、社内で取引条件を点検しております。 現在の「月末締め翌々月末払い」について、 締め日から60日以内のお支払いとなるよう、 ご調整いただけないかご相談させてください。 あわせて、振込手数料の差し引きがある月がございましたので、 今後のお取り扱いをご確認いただけますと幸いです。 よろしくお願いいたします。
話し合いで直らない場合は、公正取引委員会などの相談窓口に相談できます。支払いが遅れたときの督促の流れは、SESの支払い遅延への対応|督促メール例文と入金までの6ステップにまとめています。
チョータツで案件ごとの支払条件を管理する
自分で管理する場合は、Excelに案件ごと・BPごとの締め日、支払日、支払方法を書き、提案や発注のたびに見返します。ただ、案件が増えると「この取引は翌月末払いに直したか」がすぐにわからなくなります。
チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 案件の条件を残す | Excelやメールに散らばる | 案件の情報としてまとめて管理できる |
| 提案前に条件を確認する | メールを探して読み返す | 案件情報を開いて確認できる |
| 社内で共有する | ファイルを送り合う | チームで同じ情報を共有できる |
| 情報を入れる | 1件ずつ手で書き写す | AIが入力を手伝う |
支払条件が見えにくい案件は、提案前に確認しておくと、契約後の「聞いていない」を防げます。他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材もデータベースとして見られます。
よくある質問
- Q. 取適法の支払期日60日は、いつから数えますか?
- 役務の提供を受けた日から数え、その日を1日目にします。毎月続くSESの準委任で条件を満たせば、稼働月の末日を1日目にできます。10月分なら60日目は12月29日(火)です。
- Q. SESの月末締め翌々月末払いは取適法違反ですか?
- 取適法の対象取引なら、多くの月で61〜63日目になり、60日を超えるおそれがあります。2026年10月分なら、12月31日(木)は62日目です。翌月末払いか、翌々月20日払いまでに変えるのが安全です。
- Q. 取適法で手形払いは禁止されましたか?
- はい。2026年1月1日から、手形での支払いは禁止です。電子記録債権などでも、支払期日までに満額の現金に換えにくいものは使えません。
- Q. 取適法で振込手数料を差し引いてもいいですか?
- 振込手数料を受ける側に負担させて代金から差し引くと、減額に当たります。発注する側が負担する運用にしましょう。
- Q. 下請法のころの支払サイトのままで大丈夫ですか?
- 60日のルール自体は下請法から変わっていません。ただし、手形の禁止や、従業員数による対象の広がりがあるので、支払方法と対象のBPは見直しが必要です。
- Q. 取適法の対象外のBPなら、翌々月末払いでもよいですか?
- 取適法の対象外なら、この60日ルールはかかりません。ただし、BPが個人のフリーランスなら、フリーランス法の60日ルールがかかります。詳しくはフリーランス法の支払期日60日|月末締めの起算日と計算例をご覧ください。
- Q. 支払日が60日を過ぎたらどうなりますか?
- 60日を過ぎた日から実際に払う日まで、年14.6%の遅延利息を払う義務が生じます。公正取引委員会の勧告などの対象になることもあります。
まとめ
取適法の対象取引では、役務を受け取った日から60日以内に支払期日を決める
受け取った日を1日目に数える。毎月続くSESは、条件を満たせば稼働月の末日から数えられる
月末締めなら、翌月末払いと翌々月20日払いは収まる。翌々月末払いは多くの月で61日目以降になるので変えるのが安全
稼働報告書の受領日や検収日を、数え始めの日にはできない
手形は禁止。現金に換えにくい電子記録債権なども使えない
振込手数料を代金から差し引くのは減額。払う側が負担する
受け取る側は、60日を超える条件や差し引きを記録し、確認の形で見直しを相談する
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)」(支払期日、遵守事項、遅延利息)
公正取引委員会「中小受託取引適正化法の運用基準」(連続して提供される役務の締め期間の末日の扱い、振込手数料の差し引き、手形等の支払手段)
公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」
公正取引委員会「取適法リーフレット」(支払期日60日、手形払の禁止、遅延利息年率14.6%)
公正取引委員会「取適法 よくある質問(Q&A)」(支払期日の定め方、振込手数料)
公正取引委員会(中小企業庁 取適法セミナー資料)「下請代金支払遅延等防止法改正の背景・趣旨および委託事業者の義務」(令和8年4月28日。締切日からではなく受領から60日を超えないこと、振込手数料の差し引きは減額)
厚生労働省掲載「フリーランス・事業者間取引適正化等法 Q&A」(令和8年8月26日時点版。問48 月単位の締切制度で61・62日目になる場合)
政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」(手形払等の禁止、振込手数料の差し引きは減額、遅延利息)