SESの黒字倒産を防ぐ資金繰り|入金と給与・BP支払いのずれを数値例で解説、必要な運転資金の計算式と対策6つ

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SESの黒字倒産とは?

黒字倒産とは、帳簿の上では利益が出ているのに、支払いに使う現金が足りなくなって倒産することです。 売上と利益があっても、お金が入ってくる日が遅ければ、給与や取引先への支払いに間に合いません。

資金繰りとは、いつ・いくら入金があり、いつ・いくら支払うかを見ながら、お金が足りなくならないように調整することです。SES企業では、この資金繰りが特に重要になります。

理由は、SESの売上のほとんどが「エンジニアが働いた後」に入金されるからです。働いた月の給与は、入金より先に払うことが多くなります。

SESで黒字倒産が起きやすい3つの原因

SESで黒字倒産が起きやすい原因は、次の3つです。

  1. 入金が遅く、支払いが早い:客先の支払いサイトが長く、給与は毎月決まった日に出ていく

  2. 急に人を増やす:採用やBPの受け入れを増やすと、立て替えるお金も一気に増える

  3. 待機や未払いが重なる:待機中の給与や、取引先からの入金遅れで、現金が一時的に大きく減る

支払いサイトとは、締め日から支払日までの期間のことです。たとえば「月末締め翌月末払い」なら、約30日のサイトです。

入金と給与・BP支払いのずれを数値例で見る

入金と支払いのずれは、「働いた月の翌月に給与を払い、その翌月以降に入金される」形で起きます。 1人のエンジニアを例に、2026年の暦で見てみましょう。

計算の前提は次のとおりです(数字はわかりやすくするための仮の例です)。

項目金額・条件
客先への請求(売上)月60万円
給与と会社負担の社会保険料など月40万円
粗利月20万円
給与の支払日月末締め翌月25日払い

社会保険料は、国の決まりで納付対象月の翌月末日が期限です(日本年金機構)。ここでは、給与と同じ月に出ていく支出としてまとめています。

客先が「月末締め翌々月末払い」の場合

4月に働き始めたエンジニアの、お金の動きは次のようになります。

日付出ていくお金・入るお金手元の増減(累計)
5月25日4月分の給与など −40万円−40万円
6月25日5月分の給与など −40万円−80万円
6月末4月分の入金 +60万円−20万円
7月24日6月分の給与など −40万円−60万円
7月末5月分の入金 +60万円0円

※7月25日は土曜日のため、給与は前日の24日(金)払いとしています。

毎月20万円の粗利が出ているのに、6月25日には80万円の持ち出しになっています。入金が追いつくのは、働き始めてから4か月目です。

なお、4月30日締め・6月30日払いは、4月30日を1日目と数えると62日目です。取適法とは、2026年1月1日に下請法を改正・改名した「中小受託取引適正化法」のことです。支払期日は、役務の提供を受けた日から数えて60日以内と決められています(第3条)。

毎月続く役務で、月ごとの締めを前もって取り決めているなどの条件を満たせば、締め日を「提供を受けた日」として扱えます。それでも翌々月末払いは60日を超える日数になるため、取適法の対象取引では決まりに合わないおそれがあります。

フリーランスとの取引は扱いが違います。フリーランス法のQ&A(問48)によると、31日の月で61日目・62日目になる場合は「受領日から2か月以内」として運用されます。自社が払う側・受け取る側のどちらでも、日数の数え方は取適法の支払期日60日とSESの支払サイトで確認してください。

客先が「月末締め翌月末払い」の場合

同じエンジニアでも、客先の支払いサイトが1か月短いと、持ち出しは半分になります。

日付出ていくお金・入るお金手元の増減(累計)
5月25日4月分の給与など −40万円−40万円
5月末4月分の入金 +60万円+20万円
6月25日5月分の給与など −40万円−20万円
6月末5月分の入金 +60万円+40万円

※5月31日は日曜日のため、実際の入金日は客先との取り決めで前後の営業日になります。

一番へこむのは5月25日の40万円です。翌々月末払いの80万円と比べると、サイトの1か月の差が、1人あたり40万円の差になっています。

BPのエンジニアを使う場合

BP(ビジネスパートナー)の人材を客先に出すときも、同じずれが起きます。BPとは、案件や人材を紹介し合う取引先の会社のことです。

たとえば売上60万円、BPへの支払い52万円とします。客先が翌々月末払い、BPへの支払いが翌月末払いなら、4月分は5月末に52万円を先に払います。入金は6月末なので、1人あたり約1か月分の支払い額を立て替えることになります。

BPへの支払いを客先の入金日にそろえたくなりますが、法律の上限を必ず守ります。フリーランスへの再委託には例外があります。再委託であることや元の委託の支払期日などを先に伝えれば、元の支払期日から30日以内にできます(同法第4条第3項)。条件はフリーランス法の再委託30日ルールで確認してください。

急拡大のときに必要な運転資金の計算式

人を増やすときに必要な運転資金は、「1人あたりの月の支出 × 先に払う月数 × 増やす人数」でおおまかに出せます。 運転資金とは、仕入れや給与など、ふだんの事業を回すために手元に必要なお金のことです。

先に払う月数とは、入金が来る前に、何か月分の支出を払っているかのことです。給与が翌月25日払いの場合、客先が翌々月末払いなら2か月分、翌月末払いなら1か月分になります。

計算の手順

  1. 1人あたりの月の支出を出す:自社エンジニアなら給与と会社負担の保険料など、BPならBPへの支払い額

  2. 先に払う月数を数える:働き始めた月から、最初の入金日までに何回支払日が来るかを、カレンダーで数える

  3. 増やす人数をかける:今後3〜6か月で増やす予定の人数をかける

  4. 待機の予備を足す:待機になりそうな人数 × 月の支出 × 待機の月数を足す

  5. 手元の現金と比べる:足りない額が、融資などで準備すべき金額になる

計算例:3か月で自社エンジニアを10人増やす

1人あたりの月の支出40万円、客先は翌々月末払い(先に払う月数2か月)とします。

  • 増員分:40万円 × 2か月 × 10人 = 800万円

  • 待機の予備:2人が1か月待機すると仮定し、40万円 × 1か月 × 2人 = 80万円

  • 合計:約880万円

同じ10人でも、客先が翌月末払いなら増員分は400万円で済みます。採用計画を立てるときは、人数と一緒に「客先の支払いサイト」も見ることが大切です。

1人あたりの利益の見方は、SESの粗利率の平均は?利益率の計算式と計算例・上げる方法5つで整理しています。

支払いサイト交渉・融資・ファクタリングの比較

お金が足りないときの打ち手は、「サイトを短くする交渉」「融資」「ファクタリング」の3つです。おすすめの順番もこの順です。 違いを表にまとめます。

方法効き方コスト注意点
支払いサイト交渉ずれそのものが減るほぼかからない取引開始前が最も通りやすい
銀行・公庫の融資足りない期間を借りて埋める利息審査に時間がかかる。早めに相談する
ファクタリング入金前の売掛金を先に現金にする手数料年率に直すと高くなりやすい。違法業者に注意

支払いサイト交渉

支払いサイトの交渉は、口座開設や基本契約の段階で行うのが最もうまくいきます。取引が始まってから変えてもらうのは、相手の社内ルールを変えることになり、難しくなるためです。

交渉の手順と例文は、SESの支払いサイトの相場と短縮交渉のコツにまとめています。

融資

融資とは、金融機関からお金を借りることです。日本政策金融公庫の国民生活事業には、ほとんどの業種が使える「一般貸付」があります。事業を始めておおむね7年以内なら「新規開業・スタートアップ支援資金」も対象です(2026年9月時点)。

融資枠とは、必要なときに決まった金額まで借りられるよう、あらかじめ金融機関と決めておく枠のことです。お金が足りなくなってから相談すると、審査に間に合わないことがあります。余裕のあるうちに相談するのが鉄則です。

融資の相談では、数字の根拠を聞かれます。書き方はSESの事業計画書の書き方を参考にしてください。

ファクタリング

ファクタリングとは、まだ入金されていない売掛金を専門の会社に売り、先に現金にすることです。 売掛金とは、請求したけれどまだ入金されていないお金のことです。

SESの売掛金もファクタリングに使えます。ただし、次の点に注意します。

  • 手数料を年率に直して比べる:手数料5%で2か月早く現金にすると、年率では約30%です(5% × 12か月 ÷ 2か月)

  • 違法な業者を避ける:金融庁は、ファクタリングをよそおった高金利の貸付け(ヤミ金融)に注意を呼びかけています。買取額が売掛金に比べて著しく低い契約は、偽装ファクタリングの疑いがあります。客先から回収できないときに自社が買い戻す義務がある契約は、貸金業(お金の貸付け)にあたるおそれがあります

  • 客先との関係を考える:客先に通知する方式では、資金繰りが苦しいと受け取られることがあります

手数料の年率は、ここに挙げた計算例の数字です。実際の手数料は業者や条件で大きく変わるため、必ず複数社の見積もりをとり、融資の利息と比べてから決めましょう。

SESの黒字倒産を防ぐ資金繰り対策6つ

黒字倒産を防ぐには、「ずれを小さくする」「ずれを見える化する」「足りない分を先に準備する」の3つを組み合わせます。 今日からできる対策を6つにまとめました。

  1. 新規の客先とは、支払いサイトを契約前に交渉する:「翌月末払い」を第一希望にし、60日を超える条件はそのまま受けない

  2. 請求を締め後すぐに出す:稼働報告書を月末の翌日に集め、請求書を早く送る。請求の遅れで入金が1か月ずれるのを防ぐ(手順はSESの稼働報告書が遅れる・出ないときの対応)

  3. BPへの支払日を、法律の範囲で客先の入金に近づける:法律の上限を守りつつ、上流と下流のずれを小さくする

  4. 3か月先までの資金繰り表を毎月つくる:入金予定と支払予定を日付ごとに並べ、一番へこむ日と金額を先に知っておく

  5. 採用計画と融資の相談をセットにする:増やす人数が決まったら、必要な運転資金を計算し、余裕のあるうちに融資枠を作る

  6. 待機を減らす:待機中は売上ゼロで給与だけが出ていく。案件終了の1〜2か月前から次の案件を探し始める

資金繰り表のつくり方

資金繰り表とは、月ごと・日付ごとに、入るお金と出ていくお金を並べた表のことです。Excelで十分つくれます。

日付入金(客先名・金額)支払い(給与・BP・税など)残高
10月10日源泉所得税
10月25日9月分の給与
10月末A社 8月分社会保険料・BP支払い

給与から天引きした源泉所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに納めます(国税庁)。こうした税や保険料の支払日も、忘れずに表に入れましょう。

※期限が土日祝日にあたると、源泉所得税と社会保険料は次の営業日が期限になります。2026年10月なら、10日(土)の源泉所得税は13日(火)、31日(土)の社会保険料は11月2日(月)が期限です。25日(日)の給与は、規程で前の営業日の23日(金)に払う会社が多いです。表には実際にお金が動く日付を入れます。

営業が気をつけること

資金繰りは経営者や経理だけの仕事ではありません。営業が契約条件を決める時点で、資金繰りの大部分が決まるからです。

  • 新しい客先の話が来たら、単価と一緒に支払条件を必ず聞く(聞き方の例は下にあります)

  • 支払条件が長い客先に、たくさんの人数を一度に出すときは、経営者に先に相談する

  • 入金が約束の日に来ないときは、すぐに連絡する(SESの支払い遅延への対応)

  • 取引先の支払いが遅れがちなら、倒産の前兆を確認する(取引先の危ないサイン10個)

新しい客先に支払条件を聞くときは、単価の話と同じメールで確かめると角が立ちません。

例文・テンプレート
〇〇様

ご提案の機会をいただき、ありがとうございます。
参画に向けて、契約条件を次の4点でご確認させてください。

1.単価:月〇〇万円(精算幅 140〜180時間)
2.締め日と支払日:月末締め・翌月末払いで可能でしょうか
3.請求書の送付先と締切日
4.稼働報告書の提出方法と期限

弊社は給与を翌月25日に支払っているため、
翌月末払いでお願いできると大変助かります。

「翌々月末払いしかできない」と言われたら、その場で受けずに持ち帰ります。人数と月数から立て替え額を出し、経営者と相談してから返事をします。

待機を減らして資金繰りを楽にする方法(チョータツ)

待機を短くすることは、立て替えるお金を直接減らす資金繰り対策です。 月の支出が40万円のエンジニアなら、待機が1か月続くだけで、1人あたり40万円が入金のないまま出ていきます。

自分でやる方法

まずは、次のことを自社でできる範囲から始めましょう。

  1. 案件の終了予定日を一覧にする:全員の契約終了日を並べ、1〜2か月前に次の提案を始める

  2. BPからの案件メールを毎日確認する:待機しそうな人のスキルに合う案件を探す

  3. よく決まるBPに、空く予定の人を先に知らせる:スキルシートを早めに共有する

ただ、案件メールは1日に何十通も届くことがあります。手作業で探すと見落としが出やすく、決まるまで時間がかかります。

チョータツでもっと楽にする

チョータツは、SES営業の案件・人材の管理・共有ツールです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。

  • 案件・人材の情報を管理・共有できる:待機になりそうな人と、今ある案件を社内で同じ画面で見られる

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる:メールを1通ずつ探さなくても、候補の案件を探しやすくなる

  • パートナーへのメール配信機能がある:空く予定の人の情報を、取引先へまとめて知らせられる

  • AIが入力を手伝う:案件や人材の登録にかかる手間を減らせる

次の案件が早く決まれば、待機中の給与の立て替えが減り、資金繰りにも余裕が出ます。

よくある質問

Q. SESで黒字倒産が起きる一番の原因は何ですか?
客先からの入金より先に、給与やBPへの支払いが来ることです。支払いサイトが長い客先に、多くの人数を一度に出すと、立て替えるお金が急に増えます。
Q. SESの資金繰りで、支払いサイトはどのくらいが安心ですか?
給与を翌月25日に払うなら、客先は「月末締め翌月末払い」だと立て替えが約1か月分で済みます。翌々月末払いだと約2か月分になり、人数が増えると負担が大きくなります。
Q. SESの売掛金にファクタリングは使えますか?
使えます。ただし手数料は年率に直すと高くなりやすく、違法な業者もいます。まず支払いサイトの交渉と融資を考え、ファクタリングは急ぎのときの最後の手段にしましょう。
Q. ファクタリングと融資はどちらがよいですか?
時間に余裕があるなら、まず融資を相談しましょう。どちらを使うかは、利息と手数料を年率でそろえて比べてから決めます。ファクタリングは審査が早い反面、コストが高くなりやすい点に注意してください。
Q. 採用を増やすとき、どのくらいの資金を用意すればいいですか?
「1人あたりの月の支出 × 先に払う月数 × 増やす人数」に、待機の予備を足した額が目安です。月の支出40万円、翌々月末払いで10人増やすなら、約800万円に待機の予備を足します。
Q. 取引先の支払いが遅れたら、まず何をしますか?
すぐに入金予定日を確認する連絡を入れます。あわせて資金繰り表を見直し、自社の給与や支払いに影響が出ないかを確認します。

まとめ

  • SESの黒字倒産は、利益があっても入金より支払いが先に来ることで起きる

  • 客先が翌々月末払いだと、1人あたり約2か月分の支出を立て替える。翌月末払いなら約1か月分

  • 必要な運転資金は「1人あたりの月の支出 × 先に払う月数 × 増やす人数」+待機の予備

  • 打ち手の順番は、支払いサイト交渉 → 融資 → ファクタリング

  • 3か月先までの資金繰り表を毎月つくり、一番へこむ日を先に知る

  • 待機を減らすことも資金繰り対策。チョータツで営業中の案件を探し、次の案件を早く決める

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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