SES企業の倒産の原因と前兆|営業が気づける取引先の危ないサイン10個と確認法5ステップ

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SES企業の倒産とは?前兆とは?

SES企業の倒産とは、給与やBPへの支払いができなくなり、事業を続けられなくなった状態のことです。倒産は法律の用語ではなく、破産・民事再生・私的整理などをまとめた呼び方です。

前兆とは、倒産の前に表に出てくる変化のことです。支払いの遅れや条件の変更など、ふだんの取引の中に現れます。

SES営業にとって倒産が怖いのは、売掛金がまとめて戻らなくなるからです。売掛金とは、仕事をしたのにまだ入金されていないお金のことです。

「月末締め翌月末払い」なら、つねに1〜2か月分の売上を取引先に預けている状態です。エンジニア5人・1人月60万円なら、最大で600万円が回収できなくなる計算です。

倒産はどのくらい起きている?

ソフトウェア業の倒産は、この10年で最も多い水準が続いており、倒れているのは小さな会社が中心です。帝国データバンクによると、2024年度は220件で過去10年の最多、2025年度も2月末までで195件と同じペースでした。SES営業がふだん取引するBPや二次請け・三次請けの会社と重なるため、前兆に早く気づくことが大切です。年ごとの件数の推移や月ごとの数字は、情報サービス業の倒産件数2026|SES倒産の理由と取引先の守り方で詳しく解説しています。

SES企業が倒産する主な原因5つ

SES企業が倒産する主な原因は、次の5つです。中でも「単価が上がらない」「人件費が上がる」「お金の出入りの時期がずれる」の3つが重なると危険です。仕事が少ないから倒れるのではない点が特徴です。

帝国データバンクは、情報サービス業は景気が良い業界だと述べています。景気の良し悪しを示す指数(景気DI)は、2021年10月以降、「良い」とされる50以上を保っています。それでも倒産が増えているのは、次の5つの理由からです。

1. 多重下請けで単価を上げにくい

多重下請けとは、エンドから元請け、一次請け、二次請けと、仕事が何社も通って流れる構造のことです。帝国データバンクは、下流の中小企業ほど価格交渉で不利になると指摘しています。単価が上がらないと、賃上げのお金を用意できません。

2. 人手不足で人件費が上がる

帝国データバンクによると、情報サービス業で正社員が足りないと答えた企業は、2026年1月時点で69.2%でした。エンジニアを採用・定着させるには給与を上げる必要があり、単価が上がらないと利益が削られます。

3. 入金より先に給与を払う(黒字倒産)

SESでは、エンジニアの給与を払った後に、取引先からの入金があります。この時期のずれを埋めるお金が足りないと、黒字でも倒産します。仕組みは次の見出しで計算例を使って説明します。

4. 売上が1社に集中している

売上の半分以上を1社に頼っていると、その1社の値下げや契約終了、倒産がそのまま自社の危機になります。取引先の倒産が次の倒産を呼ぶ「連鎖倒産」の多くは、この形です。

5. 待機が長引く

待機とは、エンジニアの次の案件が決まらず、売上がない状態のことです。自社で雇っているエンジニアには給与を払い続けるので、待機が重なると一気にお金が減ります。

SESの黒字倒産の仕組み|計算例

黒字倒産とは、帳簿の上では利益が出ているのに、支払いに使う現金が足りなくなって倒産することです。SESは「給与は先、入金は後」なので、人を増やしているときほど起きやすくなります。

たとえば、2026年10月に新しく5人を採用し、すぐに稼働したとします。

項目金額・日付
売上(1人60万円×5人)月300万円
給与・社会保険料(1人40万円×5人)月200万円
給与の支払日稼働月の翌月25日
取引先からの入金日月末締め翌々月末払い

10月分の給与200万円は、2026年11月25日(水)に払います。10月分の売上300万円が入るのは、12月31日(木)です。11月分の給与も12月25日(金)に先に出ていきます。

この間、最大で2か月分の給与400万円を、自社で立て替えることになります。毎月100万円の利益が出ていても、手元の現金が400万円に足りなければ払えません。

ここに取引先の支払いサイトの延長が加わると、立て替える期間がさらに1か月延びます。支払いサイトとは、締め日から入金日までの期間のことです。資金繰りの対策は、SESの黒字倒産を防ぐ資金繰り|支払いサイトの差と対策6つで詳しく解説しています。

取引先の危ないサイン10個【チェックリスト】

取引先の倒産の前兆は、お金・人・条件・連絡の4つの変化に出ます。次の10個のうち、当てはまるものに印をつけてください。

#サイン具体的な例危険度
1支払いサイトの延長依頼「翌月末払いを翌々月末払いにしてほしい」高
2入金の遅れ・分割入金日を過ぎる。一部だけ入る高
3手形・電子記録債権での支払いの提案「来月から手形で払いたい」高
4担当者・役員の頻繁な交代窓口が半年で2回以上変わる中
5急な値下げ・精算の厳しさ契約途中の単価引き下げ、控除の計算を急に厳しくする中
6請求先・振込元の変更請求書の宛先や、入金してくる口座の名義が変わる中
7本店移転・事務所の縮小住所が変わる、代表電話がつながらない中
8案件の急な打ち切り複数のエンジニアの契約を同時に更新しない中
9業界内のうわさBPへの支払い遅れ、社員の給与遅配の話が聞こえる中
10返信が遅く、答えがあいまい請求や契約の質問への回答が何日も来ない低

支払いサイトの延長依頼が危ないのは、手元のお金が足りない会社が、まず支払いを後ろにずらそうとするからです。取適法(旧下請法)の対象となる取引では、支払期日は役務の提供から60日以内と決まっています。延長の結果60日を超えるなら、法律の面でも問題です。

手形での支払いの提案も要注意です。取適法の対象になる取引では、手形での支払いは禁止されました。それでも手形を持ち出すのは、現金がない表れかもしれません。支払期日のルールは取適法の支払期日60日とSESの支払サイトにまとめています。

担当者や役員の頻繁な交代は、社内で人が辞めている表れです。役員が辞めた場合は、登記に記録が残ります。

案件の急な打ち切りが重なると、自社のエンジニアが同時に待機になります。複数の待機者の次の案件をどう決めるかは、待機エンジニアが複数いるときの営業の優先順位|決め方と進め方が参考になります。

サインが2つ以上重なったら、すぐに確認に動くのが私たちのおすすめです。1つだけなら、まずは理由を聞くところから始めましょう。

サインに気づいたときの確認法5ステップ

サインに気づいたら、「記録する→公的な情報を見る→売掛金を数える→話を聞く→条件を見直す」の順に進めます。感情的に取引を止めると、関係を壊すだけで終わることがあります。

  1. 事実を記録する:いつ、だれから、何を言われたかをメモに残します。入金の遅れなら、予定日と実際の入金日と金額を書きます。

  2. 公的な情報を確認する:国税庁の法人番号公表サイトで、社名や所在地の変更を見ます。登記情報では役員の交代を、官報では破産や解散の公告を確認します。

  3. 売掛金の残高を数える:まだ入金されていない請求額と、今月稼働している分を足します。この合計が、倒産したときに失うかもしれない額です。

  4. 担当者に理由を聞く:延長や変更の理由、いつまで続くかを聞きます。答えがあいまいなら、上司や経理の担当者にも確認します。

  5. 取引条件を見直す:新しいエンジニアの追加を止めます。必要なら、支払いサイトの短縮や、更新のタイミングでの縮小を相談します。

官報とは、国が法律や会社の手続きを知らせるために出している新聞のようなものです。直近90日分は無料で見られます。

取引前から続けるチェックの方法は、SESの取引先の与信チェック方法|反社チェックと確認手順5ステップで解説しています。与信とは、取引先がきちんと払える会社かを見極め、どこまで取引してよいかを決めることです。

サインの数と対応の目安

当てはまった数状態やること
0個通常月1回、入金日と金額を確認する
1個注意理由を聞き、記録を残す
2〜3個警戒新しい人の追加を止め、売掛金の残高を上司に報告する
4個以上危険更新時の縮小や撤退を検討し、弁護士への相談を準備する

撤退の伝え方と、稼働中の要員がいる場合の進め方は、BPとの取引停止の判断基準と伝え方|SESの連絡例文と注意点にまとめています。

支払いサイトの延長を頼まれたときの返信例文

延長の依頼には、その場で受けず、理由と期間を確認してから返事をします。断る場合も、関係を切らない言い方にしましょう。

例文・テンプレート
件名:お支払い条件のご相談について(株式会社△△)

株式会社〇〇
経理ご担当 □□様

いつもお世話になっております。株式会社△△の◇◇です。
2026年10月9日(金)にいただいた、お支払いサイト変更のご相談の件です。

社内で検討するため、以下の2点を教えていただけますでしょうか。
・変更をご希望の理由
・変更の期間(一時的なものか、今後ずっとか)

弊社もエンジニアへの給与を毎月お支払いしており、
現行の「月末締め翌月末払い」でのお取引を続けていただけると幸いです。

恐れ入りますが、10月16日(金)までにご回答をいただけますと助かります。
よろしくお願いいたします。

回答が来ない、または理由があいまいなときは、サインが1つ増えたと考えます。実際に支払いが遅れた場合の対応は、SESの支払い遅延への対応|督促メール例文と入金までの6ステップを見てください。

自分でできる倒産への備え4つ

倒産への備えは、「売掛金をためない」「1社に頼らない」「早く気づく」の3つが柱です。具体的には、次の4つをおすすめします。

  1. 取引先別の売上の割合を毎月見る:Excelで、取引先ごとの売上と全体に占める割合を出します。1社が大きな割合を占めていたら、分散を急ぎます。

  2. 支払いサイトを短くする:新しい取引先とは「月末締め翌月末払い」を基本にします。長いサイトは、そのまま倒産時の損失額になります。

  3. 入金の確認を仕組みにする:入金予定日に、経理と営業の両方が入金を確認します。遅れはその日のうちに営業から連絡します。

  4. 経営セーフティ共済を検討する:取引先が倒産したときに、無担保・無保証人でお金を借りられる国の制度です。

経営セーフティ共済とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する中小企業倒産防止共済のことです。掛金は月5,000円〜20万円で選べます。掛金を6か月以上払っていれば、取引先が倒産したときに借りられます。借りられる額は、回収できなくなった売掛金と、払った掛金の10倍(最高8,000万円)の少ないほうです。

チョータツとチョータツブーストで、取引先を分散する

取引先を分散するには、危ない取引先から離れる前に「次の取引先の候補」を持っておくことが大切です。自分でやる場合は、交流会や問い合わせフォームで1社ずつ新しいBPを探します。ただ、日々の営業と並行して進めるのは簡単ではありません。

チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。チョータツブーストとは、チョータツの中で新しいパートナー企業を開拓できる機能のことです。

場面自分でやる場合DrivenXのツールを使う場合
新しい取引先を増やす交流会や問い合わせで1社ずつチョータツブーストで新しいパートナーを開拓する
別の会社の案件を探す届いたメールを1通ずつ読む他社と連携すると、他社の営業中案件をデータベース化できる
案件ごとの条件を残すExcelやメールに散らばる案件・人材の情報をまとめて管理・共有できる

危ないサインが出た取引先にエンジニアを出している場合、更新をしないと待機が生まれます。連携している会社の営業中案件を見られれば、次の現場の候補を早く探せます。取引先の数が増えるほど、1社の倒産で失う売上の割合は小さくなります。

よくある質問

Q. SES企業が倒産する一番の原因は何ですか?
帝国データバンクは、多重下請けで単価を上げにくく、人手不足で人件費が上がっていることを挙げています。そこに、給与を先に払い入金が後になる資金繰りのずれが重なると、黒字でも倒産します。
Q. 取引先から支払いサイトの延長を頼まれたら、倒産の前兆ですか?
必ず倒産するわけではありませんが、手元のお金が足りない表れであることが多いです。理由と期間を確認し、新しいエンジニアの追加は答えが出るまで止めましょう。
Q. SESの黒字倒産はなぜ起きるのですか?
エンジニアの給与を先に払い、取引先からの入金が1〜2か月後になるからです。人を増やしているときほど、立て替えるお金が大きくなります。
Q. 取引先の危ないサインに気づいたら、すぐ取引を止めるべきですか?
1つだけなら、まず理由を聞いて記録します。2つ以上重なったら、新しい人の追加を止めて売掛金の残高を確認します。契約の途中で一方的に止めると、自社が責任を問われることもあるので注意しましょう。
Q. 取引先が本当に倒産してしまったら、何をすればいいですか?
事実の確認、稼働を続けるかの判断、債権額の確定の順に動きます。詳しくはSESの取引先が倒産したら売掛金は?回収の手順と今すぐやることで解説しています。

まとめ

  • ソフトウェア業の倒産は過去10年で最多の水準。倒れているのは小さな会社が中心

  • 主な原因は、多重下請けで単価が上がらないこと、人件費の上昇、給与と入金の時期のずれ(黒字倒産)

  • 前兆は、支払いサイトの延長依頼、入金の遅れ、手形の提案、担当者の頻繁な交代など10個

  • サインが2つ以上重なったら、記録→公的情報→売掛金→ヒアリング→条件見直しの5ステップで確認する

  • 一番の備えは、1社に頼らないこと。チョータツブーストで取引先の候補を増やしておく

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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