SESの取引先の与信チェック方法|無料でできる5ステップと反社チェックの記録・契約条項

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SESの与信チェックとは?

与信とは、相手を信用して、代金を後で受け取る約束で取引することです。与信チェックとは、その相手が約束どおり払える会社かを、取引の前に確かめることです。

SESでは、エンジニアが1か月働いたあとに請求し、翌月末などに入金されます。つまり、ほぼすべての取引が「後払い」です。そのため、新しいエンドやBPと契約するたびに、与信チェックが必要です。BP(ビジネスパートナー)とは、案件や人材を紹介し合う取引先のことです。

反社チェックとは、取引先が暴力団などの反社会的勢力と関係がないかを確かめることです。反社会的勢力とは、暴力や脅しで利益を得ようとする集団や、その関係者のことです。お金の安全を見る与信チェックと、会社の信用を守る反社チェックは、同じタイミングで行うと手間が減ります。

SESで与信チェックが必要な理由3つ

SESで与信チェックが欠かせない理由は3つです。「売上の回収が遅い」「BPへの支払いは待ってくれない」「反社との関係は取引全体を止める」です。

1. 最大2か月分の売上が未回収になる
月末締め翌月末払いの場合、10月の稼働分が入金されるのは11月末です。11月末の時点では、11月分もまだ請求前です。取引先が倒産すると、この2か月分がまとめて回収できなくなるおそれがあります。

2. BPやエンジニアへの支払いは先に来る
自社の社員の給与や、BPへの支払いは、取引先からの入金を待ってくれません。回収できなくても、支払いの義務は残ります。1社の未払いが、自社の資金繰りを一気に苦しくします。

3. 反社との関係は、ほかの取引も止める
政府の指針は、企業に反社会的勢力と一切の関係を持たないことを求めています。関係があるとわかれば、エンドから契約を切られることがあります。自社が審査を受ける側になったときにも、信用を失います。

資金繰りへの影響はSESの黒字倒産を防ぐ資金繰り|支払いサイトの差と対策6つで詳しく解説しています。

与信チェックの確認手順5ステップ

与信チェックは、次の5ステップで進めます。ステップ1〜4は、慣れれば1社30分ほどが目安です。

  1. 法人番号公表サイトで、会社が実在するかを確認する

  2. 登記情報で、役員・資本金・本店の移り変わりを確認する

  3. 官報・派遣許可・インボイス登録を確認する

  4. 反社チェックをして、結果を記録に残す

  5. 取引の上限(与信限度額)を決め、定期的に見直す

ステップ1:法人番号公表サイトで実在を確認する

最初に、国税庁の法人番号公表サイトで、相手の会社名を検索します。法人番号とは、国が法人ごとに付けている13桁の番号のことです。

このサイトでは、正式な社名・本店の所在地・法人番号がわかります。検索の設定で、社名や所在地の変更履歴や、登記が閉じられた法人も表示できます。

見るポイントは次の3つです。

  • 名刺やメールの社名・住所と、表示される内容が一致するか

  • 最近、社名や本店所在地が何度も変わっていないか

  • 法人番号が出てこない、または閉鎖済みになっていないか

あわせて、経済産業省のgBizINFOも見ておくと便利です。資本金・設立年・従業員数や、補助金・表彰などの公的な記録が載っていることがあります。

ステップ2:登記情報で会社の中身を確認する

次に、会社の登記情報を見ます。登記とは、会社の名前・住所・役員・資本金などを、法務局の記録に載せることです。

登記は、登記情報提供サービスを使えばパソコンで見られます。商業・法人登記の全部事項は1件330円です(2026年9月時点)。証明書として相手に出す必要がないなら、この方法で十分です。

見る項目確認するポイント
設立年月日設立して間もない会社は、支払いの実績が少ない
資本金急な減資(資本金を減らすこと)がないか
役員短い期間に役員が何人も入れ替わっていないか
本店本店の移転が何度も続いていないか
目的「ソフトウェアの開発」「労働者派遣事業」など、取引の内容に合う事業が書かれているか

変化が多いこと自体は、悪いことではありません。ただし、役員の交代と本店の移転が短期間に重なっている場合は、取引の前に理由を聞いておきましょう。

ステップ3:官報・派遣許可・インボイスを確認する

3つ目は、国が出している情報で「問題が起きていないか」を確かめます。

官報とは、国が法律や会社の手続きなどを知らせるために出している新聞のようなものです。破産や解散、決算の公告などが載ります。官報のサイトでは、直近90日分を無料で見られます。有料の官報情報検索サービスを使うと、社名で検索できます。

派遣許可は、相手が派遣もしている会社なら確認します。厚生労働省の人材サービス総合サイトで、許可番号や事業所を検索できます。派遣会社には、許可証を事業所ごとに備え付け、求められたら示す義務があります(労働者派遣法第8条第2項)。

インボイス登録は、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで確認します。登録番号は「T」と13桁の数字です。相手の請求書に書かれた番号と、登録の状態が合っているかを見ます。

派遣許可の調べ方は労働者派遣の許可番号を検索する方法|取引前の確認手順3つで画面の流れを解説しています。

ステップ4:反社チェックをして記録を残す

4つ目は反社チェックです。社名と代表者名で、次の順に調べます。

  1. インターネット検索で、社名・代表者名と「逮捕」「詐欺」「暴力団」などの言葉を組み合わせて調べる

  2. 新聞記事のデータベースがあれば、同じ組み合わせで調べる

  3. 気になる情報が出たら、都道府県の暴力追放運動推進センターや警察に相談する

調べた結果は、何も出なかった場合も必ず記録します。記録の残し方は、この記事の後半で詳しく説明します。

ステップ5:与信限度額を決めて見直す

最後に、その取引先とどこまで取引するかを決めます。与信限度額とは、「この会社には、未回収の売上をここまでなら持ってよい」という上限額のことです。

SESの場合は、次の式で考えるとわかりやすくなります。

未回収になりうる最大額 = 月額単価 × 人数 × 回収までの月数

計算例:月額70万円のエンジニアを2名、月末締め翌月末払いで出す場合
70万円 × 2名 × 2か月 = 最大280万円

この280万円が回収できなくても、自社がつぶれないかを考えます。耐えられない額なら、最初は1名から始める、支払いサイト(締め日から入金日までの期間)を短くしてもらう、などで調整します。見直しは、年1回と、人数や単価が増えるときに行いましょう。

無料でできる確認方法の一覧

ステップ1〜4で使う公的サイトをまとめました。すべてインターネットで調べられます。

確認すること使うサイト費用わかること
会社の実在国税庁 法人番号公表サイト無料正式な社名・所在地・変更履歴
会社の基本情報経済産業省 gBizINFO無料資本金・設立年・補助金などの記録
登記登記情報提供サービス330円役員・資本金・本店の移り変わり
破産・解散など官報直近90日は無料破産・解散・決算の公告
派遣の許可厚生労働省 人材サービス総合サイト無料許可番号・事業所
インボイス登録国税庁 適格請求書発行事業者公表サイト無料登録の有無と登録番号

※費用と無料の範囲は2026年9月時点のものです。

信用調査会社を使うかどうかの判断基準

信用調査会社のレポートは、使う相手を絞るのがおすすめです。取引の額が大きい相手と、無料の確認で気になる点が出た相手です。すべての取引先に使うと、費用と時間がかかりすぎます。

信用調査会社とは、企業の財務や支払いの評判を調べ、点数やレポートにして売る会社のことです。帝国データバンクや東京商工リサーチなどがあります。料金は、調べる内容や契約の形で変わるので、各社に確認してください。

状況無料の確認で進める信用調査会社を使う
取引の規模1〜2名、最大未回収額が小さい複数名、最大未回収額が大きい
相手の情報公的サイトで問題なし登記の変化が多い、情報が少ない
取引の形自社が発注する側(BPから人材をもらう)自社が受注する側(売上を回収する)
相手の立場上場企業、官公庁の関連設立から間もない、紹介なしの新規

当研究所の考え方:迷ったら「最大未回収額が、自社の1か月分の粗利を超えるか」で決めましょう。超えるなら、レポートの費用より、未回収になったときの損の方が大きくなりやすいからです。

反社チェックの記録の残し方

反社チェックは、調べるだけでなく調べたことを記録に残すことが大切です。記録があれば、あとで問題がわかったときに「必要な確認をしていた」と示せます。

政府は2007年6月19日に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」を出しました。この指針も、反社の情報を集めたデータベースを作り、取引先の審査に使うよう勧めています。

記録シートに入れる8項目

#項目記入例
1調べた日2026年10月5日(月)
2調べた人営業部 山田
3相手の社名・法人番号株式会社〇〇(法人番号 13桁)
4調べた相手の役員代表取締役・取締役 各1名
5使った方法ネット検索、新聞記事データベース
6検索した言葉社名+逮捕/詐欺/暴力団 など
7結果該当なし(画面を保存)
8次に見直す日2027年10月

記録のコツ

  • 検索結果の画面は、PDFや画像で保存して、記録シートと同じ場所に置く

  • 「該当なし」の結果も必ず残す

  • 役員が変わったとき、商号が変わったときは、その場で調べ直す

  • 見直しは、少なくとも年1回。契約の更新月に合わせると忘れにくい

反社チェックの詳しい手順と条項例は、SESの反社チェックの方法|新規取引の前にやる手順と条項例で解説しています。

契約書の反社条項で確認する5点

反社チェックで問題がなくても、契約書に反社条項を入れておく必要があります。反社条項(暴力団排除条項)とは、相手が反社だとわかったときに、すぐ契約を解除できるようにする約束のことです。

政府の指針も、契約書や取引約款に暴力団排除条項を入れることを勧めています。すべての都道府県には暴力団排除条例もあり、事業者に同じような努力を求めています。

基本契約書を結ぶ前に、次の5点を確認しましょう。

#確認すること見るポイント
1お互いが表明・確約しているか自社だけでなく、相手も反社でないと約束しているか
2対象の範囲会社だけでなく、役員や実質的に経営を動かす人も入っているか
3催告なしの解除事前の通知なしに、すぐ解除できるか
4損害の扱い解除された側は損害賠償を求められない、となっているか
5再委託先への適用相手がさらに別の会社に出すとき、その会社にも同じ約束を求めているか

SESでは、BPのさらに先の会社からエンジニアが来ることがあります。そのため、5の再委託先への適用は特に見落とさないようにしましょう。

条項全体のチェックはSESの基本契約書とは|テンプレートと個別契約の優先・印紙7号で確認できます。

倒産リスクの見分け方:取引が始まった後に見るサイン

与信チェックは、取引を始めた後も続きます。支払いが遅れる、条件を急に変えてくるといった変化が、倒産のリスクを見分ける一番の手がかりです。

サイン具体的な例すぐやること
支払いの遅れ入金日を過ぎても入らない。一部だけ入るその日のうちに連絡し、記録を残す
支払いサイトの延長の相談「翌月末を翌々月末にしてほしい」理由を聞き、新しい人の追加を止める
担当者や役員の急な交代窓口が何度も変わる登記を見直す
本店の移転・事務所の縮小住所が変わる、電話がつながりにくい法人番号公表サイトと官報を見直す

気になるサインが2つ以上重なったら、新しいエンジニアの追加を止めるのが基本です。すでに出している分は、契約の終わりに合わせて減らすことも考えましょう。

支払いサイト延長を相談されたときの返信例

ご相談ありがとうございます。弊社もエンジニアへの給与を毎月払っているため、現在の「月末締め翌月末払い」でお願いできればと存じます。事情がおありでしたら、背景と期間を伺ったうえで社内で検討いたします。新しい要員のご提案は、条件が固まってから再開させてください。

返信の目的は、断ることではなく理由を聞き出すことです。答えを記録し、与信限度額を見直します。倒産してしまったときの動き方はSESの取引先が倒産したら売掛金は?回収の手順と今すぐやることを見てください。

チョータツで「1社に頼らない」取引先づくりをする

与信チェックの一番の目的は、1社の未払いで自社が傾かないようにすることです。そのためには、確認に加えて、取引先を分散させておくことが効果的です。

なお、チョータツに与信チェックそのものの機能があるわけではありません。チョータツが役に立つのは、安心して付き合える取引先を増やし、1社への偏りを減らす場面です。

場面自分でやる場合DrivenXのツールを使う場合
新しい取引先を探す検索・交流会・紹介で1社ずつチョータツブーストで新しいパートナーを開拓
取引先の案件・人材を見るメールを読んでExcelに転記チョータツで連携すると、相手の営業中案件・営業中人材がデータベースになる
自社の案件・人材を届けるBCCで一斉送信チョータツのメール配信機能でパートナーに配信

使い方の流れ

  1. チョータツに無料で登録する

  2. チョータツブーストで、新しいパートナー企業の候補を探す

  3. 候補が見つかったら、この記事の5ステップで与信・反社チェックをする

  4. 問題がなければ連携し、お互いの営業中案件・人材を共有する

取引先が増えるほど、1社との取引をしぼる判断もしやすくなります。危ないサインが出た相手から離れても、ほかの取引先で案件や人材を補えるからです。取引を縮める手順はBPとの取引停止の判断基準と伝え方|SESの連絡例文と注意点で解説しています。

よくある質問

Q. SESの与信チェックは、取引先がBPでも必要ですか?
必要です。BPが売上を払う側なら未回収のリスクがあります。人材をもらう側でも、反社チェックと派遣許可・インボイスの確認はしておきましょう。
Q. 中小企業の与信管理は、何から始めればいいですか?
まずは無料の公的サイトでの確認と、与信限度額の計算から始めましょう。「月額単価×人数×回収までの月数」で最大未回収額を出すだけでも、取引の上限が決めやすくなります。
Q. 反社チェックはどのくらいの頻度で行えばいいですか?
新しく取引を始める前と、その後は少なくとも年1回がおすすめです。役員や社名が変わったときは、その時点で調べ直しましょう。
Q. SESの取引先の倒産リスクは、どう見分ければいいですか?
一番の手がかりは支払いの変化です。入金の遅れや、支払いサイトを延ばしてほしいという相談が出たら、新しい人の追加を止めて状況を確認しましょう。
Q. 信用調査会社のレポートは、必ず買うべきですか?
必ずではありません。最大未回収額が大きい相手や、公的サイトで気になる点が出た相手に絞って使うのが効率的です。
Q. 与信チェックで不安が残った相手とは、どうすればいいですか?
最初は1名から始める、支払いサイトを短くしてもらう、などで小さく始めましょう。無理に取引せず、ほかの取引先を探すのも有効です。

まとめ

  • SESはほぼすべてが後払いの取引なので、新しい相手には与信チェックが必要

  • 手順は「実在→登記→官報・許可・インボイス→反社チェック→与信限度額」の5ステップ

  • ステップ1〜4は公的サイトでほぼ無料。登記情報は1件330円(2026年9月時点)

  • 信用調査会社は、取引額が大きい相手と、気になる点が出た相手に絞って使う

  • 反社チェックは結果を記録に残し、契約書の反社条項5点とセットで守る

  • 取引開始後は、支払いの遅れやサイト延長の相談を見逃さない

  • 取引先を増やして分散させると、危ない相手から離れやすくなる

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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