SESの収支管理の方法|案件別粗利の計算と原価に入れる費用一覧|法定福利費・待機分まで入れた計算例と月次収支表テンプレ

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SESの収支管理とは?

収支管理とは、入ってくるお金(売上)と出ていくお金(費用)を比べ、利益が出ているかを確かめることです。SESでは、会社全体の数字だけ見ても、どの案件がもうかっているかはわかりません。そのため、案件ごとに管理します。

SESの収支管理で使う主な言葉は、次のとおりです。

言葉意味SESでの例
売上取引先に請求する金額単価×1か月+精算の増減
原価その案件を回すために直接かかる費用社員の給与・法定福利費、BPへの支払い
粗利売上から原価を引いた残り700,000円-551,207円
販管費会社全体を回す費用営業の人件費、事務所の家賃、採用費

粗利とは、売上から原価を引いた金額のことです。粗利を売上で割ったものを粗利率と呼びます。粗利率の相場や、業界の平均についてはSESの粗利率の平均は?利益率の計算式と計算例・上げる方法5つで解説しています。

売上管理・予実管理との違い

  • 売上管理:誰が、どこで、いくら稼いだかを追う(売上管理のやり方)

  • 予実管理:予算と実績を比べ、差の原因を探す(予実管理とは)

  • 収支管理:売上から原価を引き、案件ごとの利益を確かめる

3つは同じ表でつなげて管理できます。ここでは、そのうち「原価を正しく出す」部分に絞って説明します。

案件別の粗利の計算式

案件別の粗利は「売上-原価」で出します。式は簡単ですが、SESでは売上も原価も毎月少しずつ変わります。

項目計算式変わる理由
売上単価+超過精算-控除精算稼働時間が精算幅を出入りする
原価(社員)給与+法定福利費+通勤費+賞与月割+待機按分+その他残業代・賞与・料率改定
原価(BP)仕入れ単価+精算の増減+交通費などBP側の精算条件
粗利率粗利÷売上×100売上と原価の両方

精算幅とは、単価の対象になる月の稼働時間の範囲(例:140〜180時間)のことです。範囲を外れると売上が増減します。控除の計算はSESの精算幅を下回ったときの計算方法で確認できます。

原価に入れる費用一覧

社員エンジニアの案件原価には、給与のほかに6種類の費用を入れます。入れ忘れが多いのは、法定福利費・賞与・待機分です。

費用案件原価に入れるか入れる理由月額の出し方
給与(基本給・手当)入れる案件で働く人の対価給与明細の総支給額
残業代入れる精算の超過とセットで動く実績の時間外手当
法定福利費(会社負担分)入れる給与を払うと必ずかかる標準報酬月額×料率
通勤費入れる客先に通うためにかかる定期代の月割り
賞与・退職金の積立入れる年単位で必ず払う年額÷12+その法定福利費
待機分の按分入れる待機コストも稼働者が稼ぐ年間待機コスト÷稼働人月
PC・ツール・資格支援入れる(小さければ一律)案件のための備品月額か一律の金額
営業の人件費・家賃・採用費入れない(販管費)案件に直接ひもづかない会社全体で管理

BPの案件なら、原価はほぼ仕入れ単価です。BPへの精算の増減、立て替えた交通費があれば足します。

なお、税務・会計上の「売上原価」にどれを入れるかは、会社ごとに決め方があります。ここで説明するのは、営業が案件を判断するための「管理用の原価」です。決算書の区分は税理士と決めてください。

法定福利費とは?2026年度の料率

法定福利費とは、法律で会社に負担が決められている社会保険料などのことです。社員の給与に上乗せしてかかるため、案件原価で最も漏れやすい費用です。

東京都の協会けんぽに加入する、40歳未満の社員の場合の料率は次のとおりです(2026年9月時点)。

保険全体の料率会社の負担計算の元
健康保険(協会けんぽ東京都)9.85%4.925%標準報酬月額
子ども・子育て支援金0.23%0.115%標準報酬月額
厚生年金18.3%9.15%標準報酬月額
雇用保険(一般の事業)1.35%0.85%実際の賃金

合計すると、会社の負担は給与のおよそ15%です。これに労災保険料と子ども・子育て拠出金(どちらも全額会社負担)が少し加わります。

40歳以上の社員には、介護保険料(全体1.62%、会社負担0.81%)も加わります。健康保険の料率は都道府県や加入する健康保険組合で違うため、自社の料率を使ってください。

標準報酬月額とは、社会保険料を計算するために、月の給与を区切りのよい金額に当てはめたものです。通勤手当などを含めた給与で決まり、日本年金機構の保険料額表で確認できます。

計算例:単価70万円の社員案件の粗利を出す

単価70万円・月給40万円の社員案件の粗利は、約14.9万円(粗利率21.3%)でした。「単価-給与」で考えた30万円の半分ほどです。

前提は次のとおりです(2026年10月分、東京都・協会けんぽ・35歳の社員)。

  • 単価:月700,000円(精算幅140〜180時間、10月は160時間で精算なし)

  • 月給:400,000円、通勤手当:15,000円(取引先には請求しない)

  • 標準報酬月額:410,000円(給与+通勤手当415,000円が当てはまる等級)

  • 賞与:年600,000円

  • 会社全体の待機:昨年、エンジニア10人で合計3人月

手順1:法定福利費を出す

  1. 健康保険:410,000円×4.925%=約20,193円

  2. 子ども・子育て支援金:410,000円×0.115%=約472円

  3. 厚生年金:410,000円×9.15%=37,515円

  4. 雇用保険:415,000円×0.85%=約3,528円

  5. 合計:約61,707円(労災保険料・拠出金は別途少額)

手順2:賞与と待機分を月割りにする

  1. 賞与の月割り:600,000円÷12=50,000円

  2. 賞与にかかる法定福利費:50,000円×約15%=約7,500円

  3. 待機コスト:1人月あたり、給与と法定福利費で約46.2万円

  4. 年間の待機コスト:約46.2万円×3人月=約138.5万円

  5. 待機按分:約138.5万円÷年間稼働117人月=約12,000円

待機とは、エンジニアが案件に入っておらず、売上が立たない期間のことです。待機中も給与は払うため、そのコストは稼働中の案件で取り戻す必要があります。待機中の給与の考え方はSESの待機期間の給与と対応で解説しています。

手順3:粗利を出す

項目金額売上に対する割合メモ
売上700,000円100%精算なし
給与+通勤手当415,000円59.3%―
法定福利費61,707円8.8%手順1
賞与月割+その法定福利費57,500円8.2%手順2
待機按分12,000円1.7%手順2
PC・ツールなど5,000円0.7%一律
原価の合計551,207円78.7%―
粗利148,793円21.3%―

「700,000円-400,000円=300,000円(42.9%)」と見ていると、実際との差は約15万円です。この差に気づかないまま単価を下げると、すぐ赤字になります。

BP案件の場合

BP案件は計算が簡単です。単価650,000円、BPへの仕入れ560,000円なら、粗利は90,000円(13.8%)です。

ただし、BPの精算幅と自社の精算幅がずれていると、粗利が月ごとに動きます。取引先との条件とBPとの条件を同じにそろえるのが基本です。

月次の収支表テンプレートの作り方

月次の収支表は、「1行=1案件(要員×取引先)」、列は売上・原価・粗利・粗利率にします。Excelやスプレッドシートで十分作れます。

入れる列(原価の内訳シート)

列の名前入れる内容入力する人更新のタイミング
案件ID・要員名・取引先案件を特定する情報営業契約時
契約形態・単価・精算幅社員/BP、月額、時間の範囲営業契約・更新時
実稼働時間・精算額当月の稼働と増減営業事務月末締め後
給与・法定福利費・通勤費社員の固定費経理・労務給与確定後
賞与月割・待機按分・その他社内で決めた一律の金額経理年1回見直し
仕入れ単価・BP精算BP案件の原価営業事務月末締め後

集計シート(毎月の報告用)

案件売上原価粗利(粗利率)
A社/山田(社員)700,000円539,207円160,793円(23.0%)
B社/佐々木(BP)650,000円560,000円90,000円(13.8%)
待機/田中(社員)0円約462,000円-約462,000円
合計1,350,000円約1,561,207円-約211,207円

この集計シートは会社全体の報告用です。そのため、A社の原価から待機按分12,000円を外しています(551,207円-12,000円=539,207円)。

待機中の要員も必ず行に残します。待機の行を消すと、会社全体の赤字が見えなくなるからです。

待機按分を原価に入れたうえで待機者の行も足すと、待機を二重に数えます。月次の報告では、次のどちらかに決めてください。

  • 案件ごとの判断用:待機按分を入れた粗利を見る

  • 会社全体の報告用:待機按分は入れず、待機者の行で赤字を見る

月次の回し方5ステップ

  1. 月末締め後3営業日以内に、稼働時間と精算額を入れる

  2. 給与の確定後に、給与・法定福利費・通勤費を入れる

  3. 案件ごとの粗利と粗利率を出す

  4. 粗利率が社内の基準を下回る案件に、赤い印をつける

  5. 営業会議で赤い印の案件について、単価交渉・更新時の見直し・入れ替えを決める

営業が提案時点で粗利を確かめる運用

収支管理で最も大事なのは、契約前に粗利を確かめることです。契約後に赤字とわかっても、単価は次の更新までほぼ変えられません。

提案前の粗利チェック5つ

  1. 単価:取引先に出す単価は、原価の合計から逆算したか

  2. 精算幅:取引先とBP(または社員の勤務)の条件はそろっているか

  3. 交通費:単価に含むのか、別に請求できるのか

  4. 法定福利費:社員なら、給与の約15%を原価に足したか

  5. 粗利の基準:社内で決めた粗利額・粗利率を超えているか

粗利の基準は会社ごとに決め、営業全員が同じ物差しを使える形にします。たとえば「社員案件は粗利率20%以上」「BP案件は粗利額5万円以上」です。基準を下回る提案は、責任者の承認を必須にするとよいでしょう。

承認を求めるときは、次の形でチャットに送るルールにすると、判断が早くなります。

例文・テンプレート
【粗利基準割れの提案承認のお願い】
案件:C社 インフラ運用(二次請け)/要員:BP 鈴木さん
単価:62万円 仕入れ:58万円 粗利:4万円(6.5%)
基準:BP案件は粗利5万円以上 → 1万円不足
提案したい理由:C社の新規口座。3か月後に2名追加の見込み
次の更新での対応:単価64万円への交渉を予定

粗利に連動した営業の評価や報酬の決め方は、SES営業のインセンティブ設計|粗利連動の計算式と失敗例で紹介しています。

単価の逆算方法はSESの提案単価の決め方で詳しく解説しています。

やってはいけないこと

  • 「単価-給与」だけで粗利を判断する

  • 交通費を単価に含めたのに、社員には別に通勤手当を払っていることを忘れる

  • 待機のコストを「会社の問題」として、案件の粗利から外す

  • 料率が変わる3〜4月に、原価を見直さない

チョータツで提案前の確認を楽にする

粗利チェックの手間の多くは、案件の単価や条件を探して見返す作業です。メールやExcelに情報が散らばっていると、提案前に確認しきれません。

チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。

  • 案件・人材の情報を一か所で管理・共有できるので、提案前に単価や条件を見返しやすくなります

  • AIが入力を手伝うため、案件情報の登録の手間を減らせます

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できます。待機中の要員の行き先や、BP人材を探しやすくなります

  • パートナーへのメール配信機能で、要員の提案をまとめて送れます

粗利の計算そのものは、ここで紹介した収支表で行います。チョータツは、その元になる案件情報をそろえ、待機を減らすために使うのがおすすめです。

よくある質問

Q. 法定福利費は、案件原価と販管費のどちらに入れますか?
案件で働く社員の法定福利費は、案件原価に入れます。営業や管理部門の社員の分は販管費です。決算書での区分は、税理士と相談して決めてください。
Q. 交通費を取引先に請求している場合はどう計算しますか?
請求する交通費は売上に、社員に払う通勤費は原価に入れます。両方同じ額なら、粗利への影響はほぼありません。
Q. 待機の按分は、毎月計算し直す必要がありますか?
毎月でなくてかまいません。前の年の実績から年1回、一律の金額を決めます。待機が大きく増えたときだけ見直します。
Q. 精算で売上が増えた月は、粗利も増えますか?
増えるとは限りません。超過した時間の分、社員に残業代を払うことがあるからです。超過精算の単価と残業代の単価を比べておきましょう。
Q. 粗利率はどのくらいあればよいですか?
公的な平均の統計はありません。自社の販管費をまかなえる水準から逆算して決めます。

まとめ

  • SESの収支管理は、案件ごとに「売上-原価=粗利」を毎月出すことから始める

  • 原価には、給与のほか法定福利費・通勤費・賞与月割・待機按分まで入れる

  • 2026年度の東京都・協会けんぽの場合、法定福利費の会社負担は給与のおよそ15%

  • 計算例では、単価70万円・月給40万円の社員の粗利は約14.9万円(21.3%)だった

  • 収支表は「1行=1案件」で作り、待機中の要員も必ず載せる

  • 提案する前に、営業が粗利を確かめる運用が一番効く

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

関連する記事