予実管理とは?SES会社の売上・粗利を月次で予算と比べるやり方|要員別の予実管理表と差異を4つに分ける計算例
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
予実管理とは?
予実管理とは、「予算」と「実績」を定期的に比べ、差の原因を調べて行動を直す仕組みのことです。「予算実績管理」を短くした言葉です。
言葉を3つ整理しておきます。
予算とは、ある期間に「これだけ売り上げ、これだけ利益を残す」と決めた目標の数字のことです。
実績とは、その期間に実際に出た売上や利益の数字のことです。
予実差異とは、予算と実績の差のことです。「予実差」とも呼びます。
似た言葉との違いは、次の表のとおりです。
| 言葉 | 何をするか | SESでの例 |
|---|---|---|
| 予算管理 | 予算を作り、使い方を決める | 来期の売上目標を要員別に決める |
| 実績管理 | 実際の数字を記録する | 毎月の請求額・支払額を記録する |
| 予実管理 | 予算と実績を比べ、差の原因を探す | 10月の粗利が予算より少ない理由を調べる |
| 収支管理 | 案件ごとの売上と費用をまとめる | 案件別の粗利を計算する |
つまり、予算を作るだけ、実績を記録するだけでは予実管理になりません。比べて、原因を見つけて、翌月の行動を変えるところまでが予実管理です。
案件ごとの売上と費用のまとめ方は、SESの収支管理の方法|案件別粗利の計算と原価に入れる費用一覧で詳しく解説しています。
SES会社で予実管理が大事な理由
SESの売上は「稼働人数×単価±精算」で決まるため、1人の契約終了や参画の遅れがそのまま売上の穴になります。物を売る会社と違い、「来月がんばって多く売る」ことで取り戻しにくいのが特徴です。
SESの予算が崩れやすい理由は、主に3つです。
契約終了・参画の遅れで人数が減る:1人が1か月待機すると、その人の単価ぶんの売上がまるごと消えます。
自社社員は待機中も給与が出る:売上はゼロでも原価(給与・社会保険料)は残るため、粗利はマイナスになります。会社の都合で休ませる場合も、労働基準法第26条により平均賃金の60%以上の休業手当が必要です。
精算で毎月の売上が動く:稼働時間が精算幅を下回ると控除、上回ると超過で、請求額が月ごとに変わります。
精算幅とは、「月140〜180時間」のように、単価のまま請求できる稼働時間の幅のことです。幅を外れた時間は、契約で決めた単価で差し引いたり足したりします。
だからこそSESでは、会社全体の数字より、要員1人ずつの予定と実績を見る予実管理が合っています。待機が粗利をどれだけ削るかは、SESの粗利率の平均は?利益率の計算式と計算例で数字を使って説明しています。
SESの予算の作り方|要員ごとの稼働予定から積み上げる
SESの予算は、要員1人ずつの「単価・原価・稼働月」を並べて足し上げる、積み上げ式で作ります。「前年比110%」のように会社全体から決める方法だけでは、どの要員で達成するのかが見えません。
作り方の手順は次のとおりです。
要員の一覧を作る:自社社員とBP(取引先の会社のエンジニア)を分けて、全員を並べます。
月ごとの稼働予定を入れる:契約期間、更新の見込み、終了予定日を確認し、稼働する月に印をつけます。
単価と原価を入れる:単価は客先への請求額です。原価は、自社社員なら給与・社会保険料・交通費、BPなら支払額です。
確度をつける:まだ決まっていない参画には「確定」「内定」「提案中」のランクをつけます。
確度ごとに足し上げる:月ごと・確度ごとに売上と粗利を合計します。
待機の予定も原価に入れる:終了予定のあと次が未定の自社社員は、売上ゼロ・原価ありで入れます。
確度の扱い方は、社内でルールを決めておくと数字がぶれません。当研究所がおすすめする例は次のとおりです。
| 確度 | 状態 | 予算への入れ方(例) |
|---|---|---|
| 確定 | 契約書・注文書が届いた | 100%入れる |
| 内定 | 面談に通り、開始日が決まった | 100%入れ、別の列で印をつける |
| 提案中 | 提案・面談の途中 | 予算には入れず「上ぶれ」として別に見る |
| 未定 | 次の案件がまだない | 売上ゼロ、原価だけ入れる |
提案中の案件を予算に入れると、決まらなかったときに毎月「未達」が続きます。予算は固く、上ぶれは別の列でと分けておくと、会議での話が早くなります。
精算の見込みは営業日数で考える
精算幅がある契約では、月の営業日数で稼働時間の見込みが変わります。2026年の祝日をもとに、平日の数を数えると次のとおりです。
| 月(2026年) | 平日の数 | 8時間×平日の目安 |
|---|---|---|
| 10月 | 21日(10月12日スポーツの日を除く) | 168時間 |
| 11月 | 19日(11月3日・23日を除く) | 152時間 |
| 12月 | 23日(年末休みは含む) | 184時間(年末休み分は減る) |
たとえば11月は平日が19日しかありません。1日8時間で152時間なので、精算幅の下限が150時間の要員は、有給を1日取るだけで控除になる可能性があります。平日が少ない月は、予算の段階で控除のリスクに印をつけておくと安心です。
SES用の予実管理表の作り方|入れる列項目
SESの予実管理表は、要員を1行ずつ並べ、「予算」「実績」「差異」の3つの列のまとまりを横に置く形がおすすめです。1枚のシートを1か月分として、月ごとにシートを分けます。
入れる列項目は次のとおりです。
| 列のまとまり | 入れる項目 | メモ |
|---|---|---|
| 要員の情報 | 氏名、自社/BP、客先名、契約期間 | アサイン表と同じ表記にそろえる |
| 予算 | 予定単価、予定原価、予定粗利、確度 | 期初に決めたら書き換えない |
| 実績 | 稼働時間、請求額、支払額・給与、粗利 | 精算が終わってから入れる |
| 差異 | 売上の差、粗利の差、差の原因 | 原因は4つの区分から選ぶ |
表の一番下には、次の合計行を入れます。
売上の予算合計・実績合計・差異
粗利の予算合計・実績合計・差異
達成率(実績÷予算×100)
稼働人数(予算の人数と実績の人数)
達成率とは、予算に対して実績がどれだけ届いたかを%で表した数字のことです。100%を超えれば予算以上、下回れば予算未達です。
予算の列を毎月書き換えてしまうと、何と比べているのかわからなくなります。予定が変わったときは予算を直さず、別の列に着地見込みを書きます。着地見込みとは、今わかっている情報から「今月の最終的な数字」を予想したもののことです。
要員の稼働予定は、SESのアサイン表の作り方で管理すると、予実管理表と同じ要員一覧を使い回せます。
計算例:2026年10月の売上・粗利の予実を比べる
ここでは、要員5人の小さなSES会社を例に、10月の予算と実績を比べます。数字はわかりやすくするための例です。
予算(10月1日時点)
| 要員 | 予定単価 | 予定原価 | 予定粗利 |
|---|---|---|---|
| Aさん(自社) | 70万円 | 48万円 | 22万円 |
| Bさん(自社) | 65万円 | 45万円 | 20万円 |
| Cさん(自社) | 60万円 | 42万円 | 18万円 |
| Dさん(BP) | 75万円 | 68万円 | 7万円 |
| Eさん(自社・10月参画予定) | 55万円 | 40万円 | 15万円 |
| 合計 | 325万円 | 243万円 | 82万円 |
実績(10月末の精算後)
10月には、次の3つのことが起きたとします。
Aさん:精算幅140〜180時間に対し、稼働135時間。5時間分が控除になった。
Cさん:稼働190時間。10時間分が超過になり、残業代も1万円増えた。
Eさん:客先の都合で参画が11月1日にずれ、10月は待機になった。
控除と超過は、次のように計算しました。
Aさんの控除単価:70万円÷140時間=5,000円。5時間で2万5,000円を差し引く。
Cさんの超過単価:60万円÷180時間=約3,333円。10円未満を切り捨てて3,330円。10時間で3万3,300円を足す。
| 要員 | 実績の売上 | 実績の原価 | 実績の粗利 |
|---|---|---|---|
| Aさん | 67.5万円 | 48万円 | 19.5万円 |
| Bさん | 65万円 | 45万円 | 20万円 |
| Cさん | 63.3万円 | 43万円 | 20.3万円 |
| Dさん | 75万円 | 68万円 | 7万円 |
| Eさん | 0円 | 40万円 | −40万円 |
| 合計 | 270.8万円 | 244万円 | 26.8万円 |
予算と実績の差
売上:予算325万円 → 実績270.8万円。差は−54.2万円、達成率は約83%。
粗利:予算82万円 → 実績26.8万円。差は−55.2万円、達成率は約33%。
売上は8割以上届いているのに、粗利は3分の1しか残っていません。待機の1人が、粗利を大きく削っていることがわかります。控除や超過の単価の出し方は、SESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法と有給・固定の扱いで詳しく解説しています。
予実差異は4つの原因に分けて見る
SESの予実差異は、「人数」「単価」「精算」「原価」の4つに分けると、誰が何をすればよいかがはっきりします。合計の差だけを見ても、打ち手は決まりません。
| 差異の区分 | 何が起きたか | 主な打ち手 |
|---|---|---|
| 人数差異 | 契約終了・参画の遅れ・待機 | 終了前から次の案件を探す |
| 単価差異 | 単価が予定より上下した | 更新時の単価交渉 |
| 精算差異 | 控除・超過で請求額が動いた | 稼働時間を月中に確認する |
| 原価差異 | 給与・残業代・BP支払額が動いた | 残業の見込みを早めに共有 |
2026年10月の例を、この4つに分けると次のようになります。
| 区分 | 対象 | 粗利への影響 |
|---|---|---|
| 人数差異 | Eさんの参画遅れ | −55万円(予定+15万円→実績−40万円) |
| 精算差異 | Aさんの控除 | −2.5万円 |
| 精算差異・原価差異 | Cさんの超過と残業代 | +2.3万円(超過+3.3万円、残業代−1万円) |
| 合計 | −55.2万円 |
差の99%以上が人数差異、つまりEさんの待機です。この会社がまずやるべきことは、精算の細かい管理より参画日の確認と、ずれたときの代わりの案件探しだとわかります。
待機中の給与の扱いと早く案件に入る手順は、SESの待機期間の給与と対応にまとめています。
月次の予実管理の回し方|毎月の5ステップ
予実管理は、「月末に締める→翌月初めに差を見る→翌月以降の予定を直す」を毎月同じ日程でくり返すことが大切です。日程が毎月ずれると、比べるタイミングもずれてしまいます。
当研究所がおすすめする毎月の流れは次のとおりです。
月末〜翌月1営業日目:稼働時間を集める。要員の勤務表をそろえ、精算の対象になる時間を確定します。
翌月2〜3営業日目:実績を入れる。請求額・支払額・給与を予実管理表の実績の列に入れます。
翌月3〜4営業日目:差異の原因を書く。差が出た要員の行に、4つの区分のどれかと一言メモを書きます。
翌月5営業日目までに:予実会議をする。経営者と営業で15〜30分、人数差異の大きい順に話します。
会議の後:着地見込みを直す。翌月以降の終了予定・参画予定を更新し、3か月先までの見込みを出し直します。
会議では「なぜ未達だったか」を責めるより、「来月と再来月の穴をどう埋めるか」に時間を使います。
営業責任者が会議の前に書いておくメモの型です。5行で足ります。
【10月 予実メモ】営業部 粗利:予算82万円/実績26.8万円(達成率33%) 最大の差:Eさんの参画遅れ(人数差異 −55万円) 11月の穴:Aさん 11月末終了予定、次は2社に提案中 12月の穴:なし(全員更新確定) お願い:Eさんの待機中に社内案件を1件回したい
待機しそうな人が何人もいるときは、SESの待機エンジニアが複数いるときの営業の優先順位で動く順番を決めます。SESでは、契約更新の判断が1〜2か月前に来ることが多いためです。更新が決まる時期は、SESの契約更新はいつ決まる?通知時期と更新しない時の4手順を参考にしてください。
工数の予実管理|稼働時間は月中にも確認する
SESでの工数の予実管理とは、要員ごとの稼働時間の予定と実績を比べることです。目的は、精算幅を外れそうな要員を月の途中で見つけることです。月末になってから控除に気づいても、もう手は打てません。
工数とは、仕事にかかる作業量を「時間」や「人月」で表したもののことです。SESでは、要員の月の稼働時間が工数にあたります。
月中の確認は、次のように進めます。
毎月15日前後に、要員ごとの「ここまでの稼働時間」を集める。
残りの平日の数×1日の予定時間を足して、月末の見込み時間を出す。
見込みが精算幅の下限を下回りそうな要員に印をつける。
印がついた要員は、本人と客先の担当者に予定を確認する。
たとえば精算幅140〜180時間で、10月15日時点の稼働が70時間だったとします。10月16日〜30日の平日は11日なので、8時間×11日で88時間を足すと、見込みは158時間です。この場合は幅の中に入るので問題ありません。
反対に、上限を超えそうな要員は、長時間労働にならないよう社内でも早めに共有します。超過は売上が増えても、残業代で原価も増えることを忘れないようにしましょう。
稼働時間を記録する表は、工数管理表の作り方の列項目をそのまま使えます。
予実管理でよくある失敗と防ぎ方
よくある失敗は、「予算を毎月書き換える」「会社全体の数字しか見ない」「表を作るだけで会議をしない」の3つです。どれも、予実管理が「差の原因を見つける」役目を果たせなくなります。
| よくある失敗 | 起きる問題 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 予算を毎月書き換える | 何と比べているかわからない | 予算は固定し、着地見込みを別の列に書く |
| 会社全体の数字しか見ない | どの要員が原因かわからない | 要員1人ずつの行で管理する |
| 提案中の案件を予算に入れる | 毎月未達が続き、数字を信じなくなる | 確度で分け、上ぶれは別に見る |
| 表だけ作って会議をしない | 差がわかっても行動が変わらない | 月5営業日目までに15分でも話す |
もう1つよくあるのが、案件と人材の情報がメールやExcelに散らばり、予定が更新されないことです。予実管理表の予定は、営業が持っている「終了予定」「次の提案先」の情報が正しくて初めて意味を持ちます。
チョータツで予実管理の「予定」を正しく保つ
予実管理の精度は、要員ごとの稼働予定がどれだけ新しいかで決まります。チョータツを使うと、予定の元になる案件・人材の情報を1か所で管理し、チームで共有できます。
チョータツは、SES営業の案件・人材を管理・共有するツールです。予実管理そのものをする会計ツールではありませんが、次の点で予実管理を楽にします。
案件・人材の情報を1か所で管理・共有できる:営業ごとにExcelやメールに散らばっていた情報をまとめられます。終了予定や次の提案先を、予実会議の前に探し回らずに済みます。
他社と連携すると、他社の営業中案件をデータベース化できる:終了予定の要員に合う案件を、連携先からも探せます。人数差異の原因になる待機を減らす助けになります。
パートナーへのメール配信ができる:空く予定の要員の情報を、取引先にまとめて届けられます。
AIが入力を手伝う:案件・人材の登録の手間を減らせます。
予実管理表は自分でExcelで作ります。そのうえで「予定の元の情報」をチョータツで整えると、表の数字が古くなりにくくなります。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。
よくある質問
- Q. 予実管理とは簡単に言うと何ですか?
- 予算(目標の数字)と実績(実際の数字)を比べて、差の原因を調べ、次の行動を直すことです。比べるだけでなく、行動を変えるところまでが予実管理です。
- Q. SESの予実管理は月次と四半期、どちらでやるべきですか?
- 月次がおすすめです。SESは毎月の精算で売上が決まり、契約更新も月単位で動くためです。月次で見たうえで、四半期ごとに累計の達成率も確認しましょう。
- Q. 予実管理表はExcelで作れますか?
- 作れます。要員を1行ずつ並べ、予算・実績・差異の列を横に置くだけで始められます。要員の数が増えてきたら、アサイン表と同じ要員一覧を使い回すと管理が楽です。
- Q. 売上と利益、どちらの予実を見ればいいですか?
- 両方を見ます。SESでは、待機の自社社員がいると、売上は届いていても粗利が大きく減ります。例では売上の達成率が約83%でも、粗利は約33%でした。
- Q. 予算を途中で修正してもいいですか?
- 予算の数字そのものは期の途中で変えないのが基本です。予定が変わったときは、別の列に着地見込みを書いて、予算・着地見込み・実績の3つを並べて見ます。
- Q. 工数の予実管理はSES営業にも必要ですか?
- 必要です。SESでは稼働時間が精算幅を外れると請求額が変わるためです。月の15日前後に稼働時間を確認し、控除になりそうな要員を早めに見つけましょう。
まとめ
予実管理とは、予算と実績を比べ、差の原因を探して次の行動を直す仕組み
SESの売上は「稼働人数×単価±精算」で決まるため、要員1人ずつの稼働予定から予算を積み上げる
予算は確度で分け、提案中の案件は「上ぶれ」として別に見る
予実管理表は、要員の行×「予算・実績・差異」の列で作る。予算は書き換えず、着地見込みを別の列に書く
差異は人数・単価・精算・原価の4つに分ける。例では、差の99%以上が待機による人数差異だった
毎月5営業日目までに予実会議をし、3か月先までの着地見込みを直す
予定の元になる案件・人材の情報を新しく保つことが、予実管理の精度を上げる近道
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)