SESの精算幅を下回ったら?控除・超過の計算方法と有給・日割りの扱い|計算例と対応5ステップ

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

精算幅の控除額・超過額をすぐ計算できるツール

月額単価・精算幅・実稼働を入れると、控除額か超過額と請求額がすぐにわかります。上下割と中間割、精算単位、月の途中の日割りにも対応しています。

計算ツール精算幅の控除・超過 計算ツール

月の途中の入場・退場(日割り)や、単価が契約で決まっている場合
判定
下限を下回る(控除)
精算に使う稼働時間
130時間
その月の精算幅
140時間〜180時間
控除単価/超過単価
4,285円/3,333円
控除額(10時間分)
−42,850円
請求額(税抜)
557,150円

単価と金額は1円未満を切り捨てています。日割りは営業日で割る方法です。実際の計算は、契約書の条項を必ず確認してください。

SESの精算幅とは?

精算幅とは、月額単価で契約したときに、追加の請求も値引きもしない稼働時間の範囲のことです。「140〜180時間」のように、下限と上限で決めます。

稼働時間がこの範囲に収まれば、請求額は月額単価のままです。範囲を上に超えると超過、下に割ると控除が発生します。

稼働時間起きること請求額
下限より少ない控除月額単価 − 控除額
下限〜上限の間何も起きない月額単価のまま
上限より多い超過月額単価 + 超過額

精算幅は、SESでよく使われる準委任契約の中で決めます。準委任契約とは、成果物の完成ではなく、決まった業務を行うことに対して報酬を払う契約のことです。

この記事は、精算幅を外れたときの計算と対応に絞っています。140〜180時間が多い理由や決め方は、SESの稼働時間の上限・下限の決め方で解説しています。

精算幅を下回ったときの控除額の出し方

控除額は「下限時間 − 実際の稼働時間」で足りない時間を出し、控除単価をかけて求めます。控除単価とは、足りない1時間あたりに差し引く金額のことです。

控除額を出す手順は、次の4つです。

  1. 稼働報告書で、その月の実際の稼働時間を確認する

  2. 契約の精算単位(15分・30分・1時間など)で時間を丸める

  3. 下限時間から実際の稼働時間を引き、足りない時間を出す

  4. 足りない時間に控除単価をかけ、端数処理をする

控除単価の出し方は、契約で決めた割り方で変わります。代表的な割り方は「上下割」と「中間割」の2つです。

上下割と中間割の違い

上下割とは、月額単価を下限時間で割って控除単価を、上限時間で割って超過単価を出す方法のことです。中間割とは、月額単価を下限と上限の真ん中の時間で割り、控除も超過も同じ単価にする方法のことです。

月額60万円・精算幅140〜180時間の場合、単価は次のようになります(1円未満切り捨て)。

割り方控除単価超過単価特徴
上下割600,000÷140=4,285円600,000÷180=3,333円控除が重く、超過が軽い
中間割600,000÷160=3,750円600,000÷160=3,750円控除も超過も同じ

上下割は、SES企業にとって下回ったときの控除が重く、超えたときの超過が軽い割り方です。中間割は控除が軽く超過が重いので、同じ稼働でもSES企業の受け取る額が多くなります。

数字で見る控除額の計算例

月額60万円・精算幅140〜180時間で、稼働が130時間の月を考えます。請求額は、上下割なら557,150円、中間割なら562,500円です。

項目上下割中間割
足りない時間140−130=10時間140−130=10時間
控除単価4,285円3,750円
控除額42,850円37,500円
請求額(税抜)557,150円562,500円

同じ10時間の不足でも、割り方の違いだけで5,350円の差が出ます。エンジニア1人で毎月下限を割る案件なら、1年で6万円を超える差になります。

精算単位で控除額が変わる例

同じ条件で、実際の稼働が131時間20分だった場合を考えます。精算単位を15分にして、端数を切り捨てる契約とします。

  1. 131時間20分を15分単位で切り捨てると、131時間15分(131.25時間)

  2. 足りない時間は、140−131.25=8.75時間

  3. 上下割の控除額は、8.75×4,285円=37,493.75円

  4. 1円未満を切り捨てて、控除額は37,493円

精算単位を1時間にすると、131時間20分は131時間と扱われます。足りない時間は9時間、控除額は38,565円です。精算単位が粗いほど、下回ったときの控除が大きくなりやすい点に注意しましょう。

超過したときの計算例

反対に、稼働が190時間だった月は、上限を10時間超えています。上下割なら超過額は33,330円、中間割なら37,500円です。

超過と控除はセットで考えます。営業は「下回ったときの控除」と「超えたときの超過」の両方で、自社にとって無理のない割り方かを確かめましょう。

有給や祝日で精算幅を下回ったときの扱い

有給休暇や祝日で稼働時間が減っても、契約に特別な定めがなければ、実際に働いた時間で精算するのが一般的です。つまり、下限を割れば控除の対象になります。

たとえば、営業日が18日しかない月に、エンジニアが有給を2日取ったとします。1日8時間で働くと、稼働は16日×8時間=128時間です。下限140時間を12時間下回るので、上下割なら51,420円(12時間×4,285円)が控除されます。

有給は、SES企業とエンジニアの間の雇用のルールです。一方、精算は、SES企業と客先の間の取引のルールです。この2つは別の約束なので、有給を取ったからといって客先への請求額が守られるわけではありません。

有給を取ったときの精算の扱いは、SESで有給を取ると稼働時間はどうなる?精算の扱い3パターンでも詳しく整理しています。

下限が「営業日数×8時間」の契約なら控除はどう変わる?

下限を営業日数で変える契約なら、同じ128時間でも控除額は大きく下がります。たとえば下限を「営業日数×8時間×0.9」と決めていれば、営業日18日の月の下限は129.6時間です。

足りない時間は129.6−128=1.6時間です。控除単価4,285円なら、控除額は6,856円です。下限140時間のままの51,420円と比べると、4万円以上の差になります。

下限の決め方そのものは、精算幅140-180hの決め方で解説しています。

精算幅を下回ったとき、エンジニアの給与はどうなる?

客先から控除されても、雇用しているエンジニアの給与を同じ額だけ自動で減らすことはできません。給与は、雇用契約や就業規則で決まるからです。

労働基準法第24条では、賃金は原則として全額を払うことになっています。客先との精算で減った売上は、SES企業が負担すると考えておきましょう。

一方、フリーランスや他社(BP)のエンジニアは事情が違います。発注する契約に同じ「精算幅と控除」を入れておけば、控除を合わせられます。上流の契約と下流の契約で、精算条件をそろえるのが基本です。

SESの精算幅に法律の決まりはある?

精算幅について、決まった時間や割り方を定めた法律はありません。精算幅は、当事者どうしの合意(契約)で決めるものです。

ただし、次の法律は精算と関係します。

法律精算との関係
民法(準委任)報酬の決め方や、支払いの時期の基本ルールになる
労働基準法雇っているエンジニアの給与は、客先の控除と別に払う
取適法(旧下請法)対象の取引では、給付を受け取った日から60日以内に支払う
フリーランス法フリーランスへの発注で、条件を示す・期日に払う

取適法とは、2026年1月1日に下請法が改正されてできた「中小受託取引適正化法」のことです。対象になる取引では、受注側から価格の協議を求められたのに応じず、一方的に代金を決めることが禁止されています。

精算の条件を急に厳しくされたときは、SESの単価を下げたいと言われたら?減額交渉の対応6ステップも参考にしてください。

固定精算や日割りの月はどう計算する?

固定精算とは、稼働時間が多くても少なくても、毎月同じ金額で精算する方法のことです。固定精算の契約なら、精算幅を下回っても控除はありません。

固定精算にするかどうかの選び方は、精算幅の決め方の記事で比べています。この記事では、控除の計算だけを扱います。

月の途中で入場・退場した月の計算例

月の途中で入場・退場した月は、月額単価と精算幅の両方を日割りにしてから計算するのが一般的です。ただし、精算幅を日割りにするかは契約によって違います。

月額60万円・精算幅140〜180時間で、営業日20日のうち10日だけ働き、稼働が65時間だった例です。営業日で日割りする契約とします。

  1. 基本料金を日割りする:600,000円×10日÷20日=300,000円

  2. 精算幅を日割りする:下限140×10÷20=70時間、上限180×10÷20=90時間

  3. 足りない時間を出す:70−65=5時間

  4. 控除額を出す:5時間×4,285円=21,425円(上下割の控除単価)

  5. 請求額(税抜):300,000円−21,425円=278,575円

精算幅を日割りしない契約だと、下限140時間との差75時間がそのまま控除になりかねません。初月と最終月は、日割りの式を契約書で必ず確認しましょう。条項の全体像は、SES基本契約書のテンプレートと条項チェック15で確認できます。

下回った・超えたときに営業がやる対応5ステップ

精算幅を外れた月は、請求書を出す前に客先と時間を確定し、下流の契約にも同じ計算を当てるのが対応の基本です。控除や超過を請求書で初めて伝えると、客先もBPも驚きます。

  1. 稼働報告書で時間を確定する:精算単位で丸めた時間を、客先の担当者に確認してもらう

  2. 控除額・超過額を計算して先に伝える:「今月は10時間不足で、控除は42,850円です」と数字で連絡する

  3. 理由を一言添える:有給・祝日・体調不良など、下回った理由を短く伝える

  4. BP・フリーランスの請求にも当てる:下流の契約に同じ精算条件があれば、同じ時間で控除・超過を計算する

  5. 翌月の見込みを共有する:続きそうなら、翌月の稼働見込みを早めに伝える

月の途中で「下回りそう」と気づいたときの連絡の例文は、稼働時間の上限・下限の記事にあります。稼働報告書の回収の流れは、稼働報告書のテンプレート|SES・業務委託の書き方と精算前チェックで解説しています。

下限を埋めるための残業を、客先に頼まない

下限に届かせるために、客先の担当者からエンジニアへ直接「残業して」と頼んでもらうのは避けましょう。準委任契約では、客先がエンジニアに働く時間を直接指示すると、偽装請負を疑われることがあります。

残業が必要かどうかは、エンジニアを雇っている自社が、36協定の範囲で判断します。どこまでがNGかは、偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選で確認できます。

超過の請求を忘れない

上限を超えた月は、超過額を請求しないと、そのまま自社の損になります。超過の時間も客先に確認してもらい、控除と同じく「時間×超過単価=金額」で請求書に書きましょう。

控除・超過の書き方は、SESの請求書テンプレートと精算の記載例で紹介しています。

チョータツで案件ごとの精算条件を管理する

自分で管理する場合は、Excelに案件ごとの精算幅・割り方・精算単位を書き、提案のたびに見返します。ただ、案件が増えると「この案件は上下割だったか」がすぐにわからなくなります。

チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の条件を残すExcelやメールに散らばる案件の情報としてまとめて管理できる
提案前に条件を確認するメールを探して読み返す案件情報を開いて確認できる
社内で共有するファイルを送り合うチームで同じ情報を共有できる
情報を入れる1件ずつ手で書き写すAIが入力を手伝う

精算の条件が見えにくい案件は、提案前に確認しておくと、契約後に「聞いていない」を防げます。他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材もデータベースとして見られます。

よくある質問

Q. SESで精算幅を下回ったら、必ず控除されますか?
契約に精算幅と控除の定めがあれば、控除されるのが一般的です。固定精算の契約なら、下回っても控除はありません。まず個別契約書の精算条件を確認しましょう。
Q. SESの精算幅の計算方法は?
控除額は「下限時間−実際の稼働時間」に控除単価をかけて出します。控除単価は、上下割なら月額単価÷下限時間、中間割なら月額単価÷中間の時間です。この記事の冒頭にある計算ツールでも、すぐに計算できます。
Q. 有給を取った月も、SESの精算幅から控除されますか?
契約に定めがなければ、有給の日は稼働に含めないのが一般的です。有給で下限を割れば控除されます。有給を8時間の稼働とみなす約束を、客先と結ぶ方法もあります。
Q. SESの精算幅に法律の決まりはありますか?
精算幅の時間や割り方を定めた法律はありません。当事者の合意で決めます。ただし、支払いの期日などは取適法やフリーランス法の対象になることがあります。
Q. SESで精算幅を超えたら、超過額はどう計算しますか?
「実際の稼働時間−上限時間」に超過単価をかけます。上下割なら超過単価は月額単価÷上限時間です。月額60万円・上限180時間で190時間なら、10時間×3,333円=33,330円です。
Q. 月の途中から入場した月の精算幅はどうなりますか?
営業日で日割りする契約なら、精算幅も同じ割合で縮めるのが一般的です。20営業日のうち10日なら、140〜180時間は70〜90時間になります。日割りの式は契約書で確認しましょう。
Q. 固定精算の契約でも控除されますか?
固定精算は稼働時間で金額を変えない契約なので、下回っても控除はありません。固定にするかどうかの選び方は、精算幅の決め方の記事で比べています。
Q. 客先から控除された分を、エンジニアの給与から引けますか?
雇用しているエンジニアの給与は、雇用契約や就業規則で決まります。客先の控除と同じ額を、自動で給与から引くことはできません。

まとめ

  • 精算幅を下回ったら、足りない時間×控除単価を月額単価から引く

  • 月額60万円・140〜180時間・130時間稼働なら、上下割で42,850円、中間割で37,500円の控除

  • 精算単位が粗いほど、控除が大きくなりやすい

  • 有給や祝日で下限を割っても、特別な定めがなければ控除の対象になる

  • 上限を超えたら、超えた時間×超過単価を上乗せして請求する

  • 月の途中の入場・退場は、月額単価と精算幅を日割りしてから計算する

  • 外れた月は、請求前に客先と時間を確定し、BPへの支払いにも同じ計算を当てる

  • 客先から控除されても、雇っているエンジニアの給与は自動では減らせない

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料(2026年9月28日確認)

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