請求書の値引きの書き方|SESの精算控除・出精値引き・日割りの記載例と消費税の計算順

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

請求書の値引きとは?控除・出精値引き・割引の違い

請求書の値引きとは、本来の金額から一部を減らして請求することです。SESの請求書では、減らす理由によって呼び方が変わります。

呼び方意味SESでよくある場面
控除契約で決めた計算式にそって差し引くこと精算幅の下限を下回った月
出精値引き「勉強しました」という気持ちで端数などを減らすこと合計を切りのよい金額にそろえる
日割り月額を働いた日数の割合で減らすこと月の途中の入場・退場
割引早く払ってもらう代わりに減らす約束のことSESではあまり使わない

出精値引きとは、売り手が努力して安くした、という意味で入れる値引きのことです。建設業やIT業界の見積書・請求書でよく見かけます。

ここからは、SES営業が客先に出す請求書に値引きを書く方法を中心に説明します。BPから受け取る請求書で値引きを求める場面の注意は、後半の取適法の章で扱います。

請求書に値引きを書く基本ルール5つ

値引きは、元の金額を消さずに、別の行でマイナスとして書くのが基本です。元の金額と値引き額の両方が見えると、客先は「何からいくら減ったか」をすぐに確認できます。

  1. 元の金額の行を先に書く:月額単価や作業費を、値引き前の金額のまま書く

  2. すぐ下に値引きの行を作る:品目は「精算控除」「出精値引き」など、理由がわかる名前にする

  3. 金額はマイナスで書く:「−42,850」か「△42,850」と書き、赤字にするとさらに見やすい

  4. 小計は値引き後の金額にする:小計=元の金額の合計−値引きの合計

  5. 消費税は小計に対して最後に計算する:行ごとに税を出さず、小計にまとめて1回かける

「△」は、日本の帳票でマイナスを表す記号です。Excelでは表示形式を「△#,##0」にすると、マイナスの数字が自動で△付きになります。

値引きの行の品目名の付け方

品目名には、何の値引きかと計算の根拠を書きます。「値引き」だけだと、客先の経理から問い合わせが来やすくなります。

場面品目名の例数量・単価の書き方
精算幅の控除精算控除(下限140h−実績130h)10時間 × −4,285円
出精値引き出精値引き1式 × −3,330円
日割り作業費(10/15〜10/31 12/21営業日)日割り後の金額を1行で
前月分の訂正9月分 精算控除の訂正1式 × −金額

値引きの行は、明細の最後にまとめて書くより、対象の行のすぐ下に書くほうが、要員が多い請求書でも読み違いが起きません。要員ごとの明細の作り方は、請求書の明細の書き方|SESの要員別・精算内訳の記載例と数量・単位で解説しています。

記載例1:精算幅を下回ったときの控除

精算幅を下回った月は、月額単価の行の下に「精算控除」の行を作り、足りない時間×控除単価をマイナスで書きます。控除額の計算そのものは、SESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法と有給・固定の扱いで詳しく説明しています。

条件は、月額60万円・精算幅140〜180時間・上下割(控除単価は60万円÷140時間=4,285円)です。2026年9月の実績が130時間だった場合の請求書は、次のようになります。

品目数量単価金額
SES作業費 2026年9月分(山田)1か月600,000600,000
精算控除(下限140h−実績130h)10時間−4,285−42,850
小計(税抜)557,150
消費税(10%)55,715
合計(税込)612,865

精算幅とは、月額単価のまま請求できる稼働時間の範囲のことです。範囲の下限を割った時間だけ、控除を差し引きます。

控除を単価の行に入れてしまわない

「SES作業費 557,150円」と、控除後の金額だけを1行で書く方法もあります。ただ、この書き方だと客先は控除が正しく計算されたかを確かめられません。

月額単価の行と控除の行を分けておけば、客先は稼働報告書の時間と見比べるだけで確認できます。超過の月も同じ形で、「精算超過(実績190h−上限180h)10時間 × 3,333円」のようにプラスの行を足します。

記載例2:端数をそろえる出精値引き

出精値引きは、小計の端数を切りのよい金額にそろえるときに、「出精値引き」の行をマイナスで入れる書き方です。値引きを入れたあとの小計に、消費税をかけます。

月額60万円・上下割で、稼働190時間だった月を例にします。超過額は10時間×3,333円=33,330円です。自社の判断で、端数の3,330円を出精値引きにする場合の書き方は次のとおりです。

品目数量単価金額
SES作業費 2026年9月分(山田)1か月600,000600,000
精算超過(実績190h−上限180h)10時間3,33333,330
出精値引き1式−3,330−3,330
小計(税抜)630,000
消費税(10%)63,000
合計(税込)693,000

出精値引きを入れる前に確認すること

出精値引きは、自社が売り手として、自分の判断で入れる値引きです。一度入れると、翌月以降も同じ値引きを期待されることがあります。

入れる前に、次の3点を営業責任者と確認しておきましょう。

  • 毎月入れるのか、今月だけなのかを決めたか

  • BPへの支払いは値引きしない前提で、自社の粗利が残るか

  • 客先から「毎月値引きして」と求められた形になっていないか

3つ目は、取引の立場によっては取適法の問題になります。くわしくは後半の「値引きと不当な減額の線引き」で説明します。

記載例3:月の途中で入場したときの日割り

月の途中で入場・退場した月は、日割り後の金額を1行にし、品目名に期間と日数の割合を書くのがわかりやすい書き方です。月額の行と「日割り控除」のマイナス行に分ける書き方もあります。

条件は、月額60万円・営業日で日割りする契約です。2026年10月の営業日は21日(10月12日のスポーツの日を除く)で、10月15日に入場し、12営業日働いたとします。

600,000円×12日÷21日=342,857.14…円なので、1円未満を切り捨てて342,857円です。

書き方A:日割り後の金額を1行で書く(おすすめ)

品目数量単価金額
SES作業費 10/15〜10/31(12/21営業日)1式342,857342,857
小計(税抜)342,857
消費税(10%)34,285
合計(税込)377,142

書き方B:月額と日割り控除に分ける

品目数量単価金額
SES作業費 2026年10月分1か月600,000600,000
日割り控除(未稼働9/21営業日)1式−257,143−257,143
小計(税抜)342,857

書き方Bは、控除額を「600,000−342,857」で逆算しています。未稼働日から直接「600,000×9÷21」と計算すると257,142.85…円になり、切り捨て方で1円ずれます。日割りは働いた日から計算し、控除は差額で出すと金額がそろいます。

日割りの月に精算幅がある場合は、精算幅も同じ割合で縮めるかを契約書で確認します。10月15日入場の例なら、140〜180時間は80〜約102.9時間(12/21の割合)になります。

値引きと消費税の計算順序:値引き後に1回だけ

消費税は、すべての値引きを差し引いた税抜の小計に、税率ごとに1回だけかけます。行ごとに税込金額を出してから値引きすると、端数処理の回数が増えて金額がずれます。

インボイス制度の適格請求書とは、登録番号や税率ごとの消費税額などを書いた請求書のことです。国税庁のQ&Aでは、適格請求書の消費税額の端数処理は「一の適格請求書につき、税率ごとに1回」とされています。

税込で値引きすると1円ずれる例

月額60万円で、控除額が37,493円だった月で比べます。正しい順序では、税込の合計は618,757円です。

計算の順序計算税込の合計
正しい順序(値引き→税)(600,000−37,493)×1.1=618,757.7 → 切り捨て618,757円
ずれる順序(税→値引き)660,000−(37,493×1.1=41,242.3→41,242)618,758円

たった1円でも、客先の経理では「請求書と支払額が合わない」として差し戻しの原因になります。消費税の端数処理の考え方は、請求書の消費税の書き方|税込・税抜と端数処理をSESの例で解説で整理しています。

同じ請求書で値引きするならインボイスの要件も満たせる

国税庁のQ&A(問62)は、値引き後の金額とその消費税額を税率ごとに書く方法を認めています。この書き方を継続して行えば、適格請求書と返還インボイスの両方の記載事項を満たせます。

返還インボイスとは、値引きや返品で代金を返したときに、売り手が買い手に渡す書類のことです。値引きを請求書の中で差し引いておけば、返還インボイスを別の書類として作らずに、1枚の請求書で済ませられます。

前月分を翌月の請求書で値引きするとき

前月の請求が多すぎたと後でわかったら、翌月の請求書に「〇月分 精算控除の訂正」のマイナス行を入れます。前月の請求書を訂正して出し直す方法もあります。どちらにするかは、客先の経理のやり方に合わせます。

翌月の請求書で差し引く場合は、どの月の何の値引きかを品目名に必ず書きます。書き方の例は「2026年9月分 精算控除の訂正(稼働報告書の訂正による)−8,570円」です。

前月分の値引きは、消費税の上では売上に係る対価の返還等という扱いになります。国税庁のQ&A(問28)では、値引き額が税込1万円未満なら、返還インボイスを渡す義務が免除されるとされています。1万円以上になるときは、返還インボイスの記載事項も満たしているかを経理担当と確認しましょう。

振込手数料を差し引かれたとき

客先が振込手数料を差し引いて入金してきた場合、売り手側での扱いは国税庁のQ&A(問29・問30)で説明されています。請求書に「振込手数料は貴社負担でお願いします」と書くかどうかは、契約の支払条件に合わせます。

反対に、自社が発注する側としてBPへの支払いから振込手数料を差し引く場合は注意が必要です。取適法の対象取引では、合意の有無にかかわらず減額にあたると運用基準に書かれています。

値引きと不当な減額の線引き:取適法・フリーランス法

SES営業が気をつけたいのは、発注したあとで代金を減らすことです。取適法の対象取引では、受注側に責任がないのに代金を減らすことは禁止です。「出精値引き」などの名目や金額の多少は問いません。

取適法とは、下請法の改正法が2026年1月1日に施行され、名前が変わった「中小受託取引適正化法」のことです。減額の禁止は、取適法第5条第1項第3号に定められています。公正取引委員会の運用基準では、減額の例として次のようなものが挙げられています。

  • 「歩引き」「出精値引き」「金利引き」などの名目で差し引く

  • 1円以上の端数を切り捨てて支払う

  • 振込手数料を代金から差し引く

  • 単価を下げる合意をしたあと、合意前の発注分にも新しい単価を当てる

  • 消費税相当分を支払わない

SESの場面ごとの判断の目安

同じ「値引き」でも、いつ・だれが・何にもとづいて決めたかで扱いが変わります。

場面立場判断の目安
契約の精算幅にそった控除受注側・発注側どちらも発注時に決めた計算式どおりなら、代金の決め方そのもの
自社が自分の判断で入れる出精値引き受注側(売り手)自社の判断。ただし毎月続けると単価の実質値下げになる
客先から後で「端数を切って」と言われた受注側(売り手)対象取引なら、客先の減額にあたるおそれがある
BPの請求から出精値引きを求める発注側(買い手)対象取引なら、自社が減額禁止に違反するおそれがある

SES企業は、客先に対しては受注側、BPに対しては発注側という2つの立場を持っています。客先から値引きを求められたときも、BPに値引きを求めたくなったときも、同じルールで考えましょう。

減額の禁止をふくむ禁止事項の全体は、下請法の禁止事項11個|SESの減額・買いたたき・発注取消の例で確認できます。フリーランスのBPへの発注では、フリーランス法でも報酬の減額が禁止されています。くわしくはフリーランス法の禁止行為7つ|SESの減額・買いたたきOK・NG例をご覧ください。

客先から値引きを求められたときの伝え方

客先から請求後に値引きを求められたら、まずは契約書の精算条件と、値引きの理由を確認します。そのうえで、今月の請求は契約どおりとし、単価の見直しは翌月以降の条件として協議するよう提案するのが安全です。

例文:「ご相談ありがとうございます。9月分は個別契約書の精算条件どおりにご請求させていただけますと幸いです。単価のご相談は、11月以降の契約条件として別途お打ち合わせをお願いできますでしょうか。」

単価の引き下げを求められたときの進め方は、SESの単価を下げたいと言われたら?減額交渉の対応6ステップで解説しています。支払いから一方的に差し引かれたときは、下請法の相殺・減額は違反?SESで支払いから差し引かれた時の対応を確認してください。

請求書を出す前の値引きチェックリスト

値引きのある請求書は、客先に出す前に次の8項目を確認するとミスを防げます。

  1. 元の金額の行と、値引きの行を分けて書いたか

  2. 値引きの品目名に、理由と計算の根拠(時間・日数)を書いたか

  3. 値引きの金額に「−」か「△」を付けたか

  4. 小計が「元の金額−値引き」になっているか

  5. 消費税を、値引き後の小計に1回だけかけたか

  6. 控除の時間が、客先が確認した稼働報告書と合っているか

  7. 日割りの日数と、1円未満の端数処理が契約どおりか

  8. BPへの支払いにも、同じ控除・日割りの計算を当てたか

8つ目は忘れやすい項目です。客先への請求で控除したのに、BPへの支払いは満額のままだと、差額がそのまま自社の負担になります。BPの請求書で確認する点は、フリーランスの請求書チェック8項目|SESで不備を差し戻す例文付きにまとめています。

チョータツで案件ごとの精算条件を管理する

自分で管理する場合は、Excelの案件管理表に「精算幅」「割り方」「日割りの方法」「精算単位」の列を作ります。請求のたびに、その表を見返します。月末に要員の数だけ条件を探すのは、案件が10件を超えると大きな手間になります。

チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
精算条件を残すExcelやメールに散らばる案件の情報としてまとめて管理できる
請求前に条件を確認する契約時のメールを探して読み返す案件情報を開いて確認できる
営業事務と共有するファイルを送り合うチームで同じ情報を共有できる
情報を入れる1件ずつ手で書き写すAIが入力を手伝う

請求書そのものを作る機能ではありませんが、控除や日割りの行を書く前の「条件の確認」が早くなります。他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材もデータベースとして見られるので、途中入場の代わりの要員探しにも使えます。

よくある質問

Q. 請求書の値引きはマイナスと△のどちらで書けばいいですか?
どちらでも問題ありません。社内で1つに決めて、毎月同じ書き方にしましょう。客先の経理が見落とさないよう、赤字にするとさらに見やすくなります。
Q. 請求書の値引きの項目名は何と書けばいいですか?
「精算控除」「出精値引き」「日割り控除」など、理由がわかる名前にします。精算控除なら「下限140h−実績130h」のように、計算の根拠も品目名に書くと確認が早く済みます。
Q. 出精値引きは請求書にどう書きますか?
元の金額の行の下に「出精値引き」の行を作り、数量1式・金額をマイナスで書きます。小計は値引き後の金額にして、その小計に消費税をかけます。
Q. 値引きは税込と税抜のどちらで書けばいいですか?
税抜で書き、値引き後の小計に消費税をかけるのが基本です。税込で値引きすると端数処理の回数が増え、合計が1円ずれることがあります。
Q. 請求書の割引と値引きの違いは何ですか?
値引きは、代金そのものを減らすことです。割引は、支払期日より早く払ってもらう代わりに減らす約束のことです。SESの請求書では、値引きや控除を使う場面がほとんどです。
Q. 客先から請求後に出精値引きを求められました。応じるべきですか?
まず契約書の精算条件を確認しましょう。取適法の対象取引なら、発注後の出精値引きの要求は減額禁止にあたるおそれがあります。単価の相談は翌月以降の条件として協議するのが安全です。

まとめ

  • 値引きは、元の金額の行の下にマイナスの行を作って書く

  • 品目名には「精算控除(下限140h−実績130h)」のように、理由と根拠を書く

  • 消費税は、値引き後の税抜の小計に、税率ごとに1回だけかける

  • 日割りは働いた日から計算し、控除の形にするなら差額で出す

  • 同じ請求書の中で値引きを済ませれば、返還インボイスを別に作らずに済む

  • 取適法の対象取引では、発注後の「出精値引き」名目の減額は禁止されている

  • 客先への控除と同じ計算を、BPへの支払いにも当てる

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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