フリーランス法の禁止行為7つ|SESの減額・買いたたき・やり直しのOK・NG判定と精算幅控除の条件

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

フリーランス法の禁止行為とは?

フリーランス法の禁止行為とは、発注する会社がフリーランスに不利な取引をしてはいけない7つの行為のことです。フリーランス法の第5条に定められています。

フリーランス法とは、個人で働くフリーランスと取引する会社に、守るべきことを定めた法律のことです。正式な名前は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、2024年11月1日に施行されました。

禁止行為がかかるのは、次の3つがそろったときです。

条件中身
発注する側従業員を使っている会社・個人、または役員が2人以上いる会社(特定業務委託事業者)
受ける側従業員のいない個人事業主、一人社長の会社(特定受託事業者)
期間1か月以上の業務委託(更新で1か月以上になる場合を含む)

SES企業が個人のエンジニアに1か月以上の案件を出す場合は、ほぼ当てはまります。対象かどうかの判定はフリーランス法の適用対象は法人も?一人社長・従業員の判定で解説しています。発注者の義務の全体像はフリーランス法のSES対応|発注者の義務7つと実務チェック表で整理しています。

禁止行為7つの一覧とSESでの当てはまり

7つの禁止行為のうち、SESの準委任契約で気をつけるのは5つです。受領拒否と返品は、物や成果物を納める取引が対象だからです。

禁止行為中身SESの準委任
① 受領拒否発注した成果物を受け取らない対象外
② 報酬の減額決めた報酬を後から減らす対象
③ 返品受け取った成果物を返す対象外
④ 買いたたき相場より著しく低い報酬を不当に決める対象
⑤ 購入・利用強制指定した物やサービスを買わせる対象
⑥ 不当な経済上の利益の提供要請お金や無償の作業を提供させる対象
⑦ 不当な給付内容の変更・やり直し費用を払わずに内容を変えさせる対象

①〜⑤は第5条1項、⑥⑦は第5条2項にあります。⑥⑦は「フリーランスの利益を不当に害する」場合に違反です。

受領拒否・返品が対象外になる理由

役務提供委託とは、作業やサービスをしてもらう業務委託のことです。SESの準委任は、エンジニアに作業をしてもらう契約なので、役務提供委託に当たるのが一般的です。フリーランス法は、役務提供委託について受領拒否と返品を禁止行為から外しています(第5条1項の本文)。

ただし、プログラムの完成を約束する請負契約や、成果物を納める成果完成型の準委任では話が違います。どちらも「情報成果物の作成」の委託になりえるので、7つすべてがかかります。

② 報酬の減額:SESで最も気をつける禁止行為

報酬の減額とは、フリーランスに責任がないのに、業務委託のときに決めた報酬を後から減らして支払うことです。名目や理由にかかわらず、決めた額より少なく払えば減額に当たります。

公取委・中小企業庁・厚労省のパンフレットでは、次のような例が示されています。

  • 業績の悪化を理由に報酬を減らす

  • 協力金や協賛金として、一定の割合を差し引く

  • 振込手数料をフリーランスに負担させて差し引く

  • 単価の引き下げを、さかのぼって適用する

SESの減額 OK・NG判定表

場面判定理由
エンドの単価が下がったので、今月から報酬を下げるNGフリーランスに責任がない
振込手数料を報酬から差し引くNG合意の有無にかかわらず減額(Q&A問78)
「管理費」「事務手数料」を毎月差し引くNG契約時に決めた報酬を減らしている
計算の途中で端数を切り捨て、合計で1円以上少なく払うNG1円を超える切り捨ては減額(Q&A問77)
稼働が下限に届かず、契約どおりに控除するOK決めた計算方法どおりに払っている
更新のときに、協議して翌月以降の単価を下げるOK次の契約の条件を話し合って決めている

特に多いのが振込手数料です。公取委などのQ&A(問78)は、振込手数料の差し引きを減額と説明しています。合意の有無は関係ありません。支払いのときは、振込手数料を自社で負担しましょう。

振込手数料の差し引きは、実際に勧告の対象になっています。2026年8月26日には、家電の運送・設置を委託していた会社が勧告を受けました。振込手数料にかかわる差し引きなどで、フリーランス138名から計481,031円を減額していました。事例はフリーランス法の違反と罰則|勧告・公表の事例と営業の注意点にまとめています。

契約途中の単価引き下げはなぜNGか

契約期間の途中で単価を下げると、すでに決めた報酬を減らすことになるからです。たとえば、10月1日(木)〜12月31日(木)の3か月契約で、月額70万円と決めていたとします。

11月から月額65万円に下げると、11月と12月の2か月で計10万円の減額になります。エンドから値下げを求められても、フリーランスとの契約期間中は元の単価で払う必要があります。

値下げをするなら、次の更新のタイミングで、フリーランスと協議して決めます。客先から値下げを求められたときの進め方はSESの単価を下げたいと言われたら?減額交渉の対応6ステップで解説しています。

エンジニア本人には、次のように伝えます。

例文・テンプレート
〇〇さん、客先から来年1月以降の単価を下げたいと相談がありました。
現在の契約(12月31日まで)の報酬は、約束どおり月額70万円でお支払いします。
1月からの条件は、〇〇さんのご意見も聞いて決めたいので、
11月中に30分ほどお時間をいただけますか。

精算幅による控除が減額に当たらないための条件

精算幅による控除は、最初に決めた計算方法どおりに報酬を出しているなら、減額には当たらないと考えられます。報酬の「決め方」そのものが、稼働時間に応じて変わる形だからです。

精算幅とは、月額単価で契約したときに、追加の請求も控除もしない稼働時間の範囲のことです。「140〜180時間」のように決めます。計算の方法はSESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法と有給・固定の扱いで詳しく解説しています。週3・週4稼働の案件では、精算幅を日数に合わせて按分し、その計算方法も3条通知に書きます。

契約で満たしておきたい5つの条件

  1. 3条通知に計算方法を書く:月額単価、精算幅、控除単価と超過単価の出し方を、発注のときに明示します。

  2. 精算単位と端数処理を書く:15分単位か30分単位か、1円未満をどうするかを決めておきます。

  3. 稼働時間の数え方を決める:有給や祝日の扱い、稼働報告の締め日を書いておきます。

  4. 契約の途中で計算方法を変えない:発注済みの業務に新しい計算方法を使って報酬を下げると、減額です(Q&A問75)。変えるなら次の契約期間の分から、協議して変えます。

  5. 稼働の記録を残す:控除の根拠になる稼働報告を、フリーランス本人に確認してもらいます。

3条通知の記載例

例文・テンプレート
業務の内容:〇〇システムの開発支援(詳細設計・実装・単体テスト)
報酬の額:月額700,000円(税抜)
  精算幅140時間〜180時間
  140時間未満は、不足時間×5,000円(700,000円÷140時間)を控除
  180時間超は、超過時間×3,888円(700,000円÷180時間、1円未満切り捨て)を加算
  精算単位は15分、1円未満は切り捨て
役務の提供期間:2026年10月1日(木)〜2026年12月31日(木)
支払期日:毎月末日締め、翌月末日払い(10月分は2026年11月30日(月))

この条件で10月の稼働が130時間なら、控除は(140−130)×5,000円=50,000円です。報酬は650,000円になります。計算方法を先に明示しているので、決めた報酬を後から減らしたことにはならないと考えられます。

反対に、3条通知に精算幅を書かず、月の終わりに「今月は少なかったので」と差し引くのは危険です。書いていない控除は減額と見られるおそれがあります。3条通知の書き方はフリーランス法の3条通知ひな形|SESの発注書・メール記載例にまとめています。

④ 買いたたき:単価の決め方で違反になる

買いたたきとは、同じような仕事に通常払われる対価より著しく低い報酬を不当に決めることです。報酬を決める前の段階の問題なので、減額とは別の禁止行為です。

公取委は、買いたたきかどうかを次の4つで判断するとしています。

判断のポイントSESでの見方
協議の状況単価を決める前に、エンジニアと話し合ったか
ほかの人との差同じスキルの人と比べて、特定の人だけ低くないか
相場との差同じ職種・スキルの相場とどれだけ離れているか
コストの動き物価や経費の上昇を考えたか

公取委の発表では、令和7年度に見つかった違反のうち、買いたたきが250件(全体の9.2%)ありました。支払期日と条件明示の違反に次ぐ多さです。

SESの買いたたき OK・NG

  • NG:協議せず、「うちはこの単価で全員決めている」と一方的に低い単価を通知する

  • NG:急な参画で作業量が増えたのに、当初の見積もりのまま発注する

  • OK:相場を示して話し合い、双方が納得した単価で契約する

協議した記録は、メールで残すのが確実です。相場の資料を見せて話し合った日時と、決まった単価を1通のメールにまとめておきます。

⑤ 購入・利用強制:研修や機器の押しつけ

購入・利用強制とは、正当な理由がないのに、発注する会社が指定した物やサービスを買わせたり使わせたりすることです。形の上では任意でも、事実上断れない場合は当てはまります。

SESで気をつけたい例は次のとおりです。

  • 自社の有料研修を受けないと案件に入れないとする

  • 業務に必要のない指定のPCやソフトを自費で買わせる

  • 関連会社のサービスへの加入を、参画の条件にする

客先のセキュリティ上、決まった機器が必要な場合は、正当な理由になりえます。その場合でも、費用をだれが負担するかを3条通知や契約で決めておきましょう。

⑥ 不当な経済上の利益の提供要請:無償の作業

不当な経済上の利益の提供要請とは、フリーランスにお金や無償の作業を提供させ、利益を不当に害することです。契約にない作業をタダでさせるのが典型です。

SESでは次のような場面に注意します。

場面判定の目安
契約前に、数日間の「お試し稼働」を無償でさせるNG
契約外の資料作成や、ほかの案件の手伝いを無償で頼むNG
報酬に含まれない営業同行を、毎回無償で頼むNGになりうる
契約で決めた作業の範囲内で、作業を頼むOK

音楽教室の事例では、体験レッスンを無償でさせたことが勧告の対象になりました(2025年6月25日、2026年5月19日)。SESの「お試し稼働」も同じ構造なので、稼働した分は報酬を払いましょう。

⑦ 不当な給付内容の変更・やり直し:範囲の追加

不当な給付内容の変更・やり直しとは、費用を払わずに作業内容を変えさせたり、やり直させたりすることです。フリーランスに責任がない場合が対象です。

SESでよくあるのは、作業範囲が途中で広がるケースです。

  • NG:テスト担当として契約したのに、設計書の作成も追加し、報酬は変えない

  • NG:客先都合で仕様が変わり、作り直しの時間を精算幅の外として扱わない

  • OK:範囲を追加するときに、追加の報酬や精算幅の見直しを協議して合意する

範囲外の作業かどうかの見分け方はSESで追加作業の報酬は請求できる?範囲外業務の見分け方と例文が参考になります。

禁止行為とは別の「報復措置」の禁止

7つの禁止行為とは別に、違反を申し出たフリーランスへの不利益な扱いも禁止されています(第6条3項)。フリーランスが公取委などに申し出たことを理由に、取引を減らしたり打ち切ったりしてはいけません。

報復措置の禁止は期間に関係なく、すべての業務委託にかかります。現場で「役所に言うなら次の更新はない」と伝えることは、絶対に避けましょう。

取適法(旧下請法)との関係:BP法人への減額

SESの減額は、相手がフリーランスならフリーランス法、BPの法人なら取適法で判断します。取適法でも、減額や買いたたきは禁止されています。

取適法とは、2026年1月1日に下請法を改正して施行された法律のことです。正式な名前は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。会社の資本金や従業員数で対象かどうかが決まります。

取引の相手かかる法律減額の扱い
従業員のいない個人・一人社長の会社フリーランス法(取適法も重なることがある)禁止
取適法の条件に当たるBP法人取適法禁止
どちらの条件にも当たらないBP法人民法・契約契約違反になりうる

1つの取引に両方の法律がかかることもあります。整理は取適法とフリーランス法の違い|SESで両方かかる取引を表で整理で確認できます。

単価や報酬を変える前のチェックリスト

報酬を変えたり差し引いたりする前に、次の6つを確認しましょう。1つでも「いいえ」があれば、上司や管理部に相談します。

  1. 差し引く金額と計算方法は、3条通知に書いてあるか

  2. 差し引く理由は、フリーランス本人の責任によるものか

  3. 単価の変更は、次の契約期間から適用するものか

  4. 単価を決めるときに、協議してメールで記録を残したか

  5. 振込手数料や「管理費」を、報酬から引いていないか

  6. 契約外の作業を頼むときに、追加の報酬を決めたか

私たちのおすすめは、まず振込手数料と「管理費」の差し引きをやめることです。すぐに直せるうえ、実際に勧告の対象になっているからです。

チョータツで案件の条件をそろえて管理する

禁止行為を防ぐには、案件ごとの単価・精算幅・期間を、営業全員が同じ情報で確認できることが大切です。条件が担当者の頭の中にしかないと、途中の値下げや書き漏れが起きやすくなります。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の条件を確認するメールやExcelを探す案件情報を1か所で管理し、提案前に確認
チームで共有する担当者ごとにファイルがばらばら案件・人材の情報をチームで共有
情報を入力する1件ずつ手で転記AIが入力を手伝う
他社の案件・人材を探す届いたメールを1通ずつ読む連携した他社の営業中案件・人材をデータベース化

チョータツは、3,000社以上が使うSES営業向けの案件・人材の管理・共有ツールです。無料で始められます。

ただし、3条通知の作成や報酬の計算そのものは自社で行う必要があります。チョータツは、その前提になる案件の条件をそろえて共有するために使いましょう。

よくある質問

Q. フリーランス法の禁止行為は何ですか?
受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、利益の提供要請、変更・やり直しの7つです。従業員を使う会社などが、1か月以上の業務委託をした場合にかかります。
Q. フリーランス法で報酬の減額は、合意があれば許されますか?
フリーランスに責任がないのに、決めた報酬を後から減らすことは、合意があっても減額に当たりえます。振込手数料については、合意の有無にかかわらず問題になるとQ&A(問78)で説明されています。
Q. SESの精算幅で稼働不足分を控除するのは、減額になりますか?
3条通知で精算幅と控除の計算方法を明示し、そのとおりに計算していれば、減額には当たらないと考えられます。書いていない控除や、途中で計算方法を変えることは避けましょう。
Q. SESで報酬を減額すると、下請法(取適法)違反になりますか?
相手がBPの法人で、資本金や従業員数の条件に当たれば、取適法の減額の禁止にかかります。相手が個人のエンジニアならフリーランス法です。どちらも、相手に責任がないのに報酬を減らすことは禁止です。
Q. 契約期間の途中で単価を下げてもいいですか?
契約期間中に単価を下げると、減額に当たるおそれがあります。単価を見直すなら、次の更新のときにフリーランスと協議して決めましょう。
Q. 1か月未満の短期案件なら、禁止行為は関係ありませんか?
禁止行為は1か月以上の業務委託にかかります。ただし、更新して1か月以上続く場合は対象です。また、条件の明示や支払期日の義務は、期間に関係なくかかります。

まとめ

  • 禁止行為は、受領拒否・減額・返品・買いたたき・購入利用強制・利益提供要請・変更やり直しの7つ

  • 1か月以上の業務委託が対象。SESの準委任では受領拒否と返品は対象外

  • 契約途中の値下げ、振込手数料や「管理費」の差し引きは減額としてNG

  • 精算幅の控除は、3条通知で計算方法を明示し、そのとおり計算すれば減額に当たらないと考えられる

  • 単価は協議して決め、記録を残す。お試し稼働や範囲外の作業を無償でさせない

  • BP法人との取引は、取適法の減額の禁止もあわせて確認する

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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