SESで有給を取ると稼働時間はどうなる?客先との精算3パターンと控除額の計算例

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

SESで有給を取ると稼働時間はどうなる?

SESのエンジニアが有給を取ったら、自社の勤怠では「有給」と記録します。客先への稼働報告では、契約に合わせて扱います。同じ1日の有給でも、社内と客先で扱いが変わる点がポイントです。

年次有給休暇とは、働いた日と同じように給料が支払われる休みのことです。一定の条件を満たした労働者に、法律で与えられます。

SESでは、エンジニアを雇っているのは自社(SES企業)です。客先はエンジニアの雇い主ではありません。そのため、次のように2つの関係を分けて考えます。

関係決めているもの有給の扱い
自社とエンジニア労働基準法・就業規則取る権利があり、給与は減らせない
自社と客先準委任契約・注文書稼働時間に数えるかは契約しだい

準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決まった業務を行うことに報酬を払う契約のことです。SESの多くは準委任契約で結ばれます。客先への請求額は、この契約の精算の決まりで決まります。

社内での有給の扱い:労働基準法39条の権利

社内では、有給はエンジニアの権利です。会社は、6か月続けて働き、8割以上出勤した人に10日以上の有給を与えます(労働基準法第39条第1項)。

有給の日数は、働いた年数に応じて増え、6年6か月以上で年20日になります。取らなかった有給は、2年で時効になります(第115条)。

SES営業が知っておきたい社内のルールは、次の4つです。

  1. 有給を取った日の給与は減らせない
    有給の日にも、平均賃金や通常の賃金などを払う必要があります(第39条第9項)。さらに労働基準法附則第136条は、有給を取った人に「賃金の減額その他不利益な取扱い」をしないよう定めています。客先から控除されても、エンジニアの給与を減らしてはいけません。

  2. 年5日は必ず取らせる
    年10日以上の有給がある人には、会社が年5日を取らせる義務があります(第39条第7項)。違反すると30万円以下の罰金の対象です(第120条)。

  3. 時季の変更ができるのは自社だけ
    時季変更権とは、会社が有給の日を別の日に変えてもらえる権利のことです。使えるのは、休みの日が事業の正常な運営を妨げるときだけです(第39条第5項)。この権利を持つのは、客先ではなく雇い主である自社です。

  4. 客先の許可をとる形にしない
    客先がエンジニアの休みを許可・却下すると、指揮命令をしていると見られるおそれがあります。厚生労働省の「37号告示」も、休暇などの管理は請け負う側が自ら行うこととしています。

→ 準委任契約の指揮命令はどこまで?SES現場のOK・NG具体例20 / 偽装請負の37号告示をやさしく解説

つまり、エンジニアの有給について客先に伝えるのは「お知らせ」です。「許可をもらう」ものではありません。

下限割れしそうでも、有給を断ることはできない

精算幅の下限を割りそうだという理由だけで、エンジニアの有給を断るのは避けるべきです。時季変更権を使えるのは「事業の正常な運営を妨げる」場合に限られます。客先からの控除で売上が減ることは、この場合に当たりにくいと考えられます。

営業が「今月は下限が厳しいので有給はやめて」と伝えると、トラブルや離職のもとになります。控除は、次の2つの方法で契約と計画の側で防ぎます。

  1. 契約で防ぐ:次の章の「パターン2」か「パターン3」を、提案の段階で客先と決めておく

  2. 計画的付与で防ぐ:労使協定を結べば、5日を超える分の有給は、会社が取る日を決められます(第39条第6項)。これを計画的付与といいます。営業日の多い月に計画的付与の日を置くと、下限割れが起きにくくなります

計画的付与は、就業規則と労使協定が必要です。導入するときは、社内の労務担当や社会保険労務士に相談しましょう。

客先との精算で有給はどう扱う?3つのパターン

客先との精算で有給をどう扱うかは、契約で決めた3つのパターンのどれかになります。法律で決まった扱いはないため、提案の前に確認しておくことが大切です。

パターン有給の時間の扱い下限割れしたとき自社への影響
1. 数えない稼働時間に入れない控除になる売上が減る
2. 数える1日8時間などとして入れる控除になりにくい売上が守られる
3. 下限を下げる入れないが、下限を減らす控除になりにくい売上が守られる

パターン1:有給は稼働時間に数えない

パターン1とは、有給の日は働いていないので、稼働時間に1時間も入れない扱いのことです。客先から見ると「働いた時間に払う」という考え方に合うため、よく見られる扱いです。

このパターンでは、営業日の少ない月に有給が重なると、精算幅の下限を割りやすくなります。下限を割れば、差の時間について控除を受けます。

パターン2:有給を8時間として数える

パターン2とは、有給の日を「1日の所定時間(例:8時間)働いた」ものとして稼働時間に入れる扱いのことです。控除が起きにくく、SES企業にとって有利です。

ただし、客先から見ると、働いていない時間にも払うことになります。そのため、提案の段階で交渉しないと入りにくい条件です。

パターン3:有給の日数分だけ下限を下げる

パターン3とは、有給の時間は稼働時間に入れず、代わりに有給1日につき下限を8時間下げる扱いのことです。

働いた時間だけに払うという客先の考え方を守りながら、有給による控除を防げます。客先とSES企業の両方が受け入れやすい、中間の方法です。

固定精算の場合

固定精算とは、稼働時間に関係なく、毎月同じ金額を払う契約のことです。固定精算なら、有給を取っても請求額は変わりません。有給の扱いを気にする必要がないのが利点です。

有給を取った月の控除額の計算例

控除額は、「下限時間−実際の稼働時間」に1時間あたりの控除単価をかけて出します。ここでは、月額60万円・精算幅140〜180時間・1日8時間・1円未満切り捨ての案件で計算します。

控除単価とは、足りない1時間あたりに差し引く金額のことです。

  • 上下割の控除単価:60万円÷140時間=4,285円

  • 中間割の控除単価:60万円÷160時間(140と180の真ん中)=3,750円

2026年の営業日(土日と国民の祝日を除く)で計算すると、次のようになります。

ケース稼働時間上下割の控除中間割の控除
2月(18日)有給1日・パターン117日×8=136時間4時間×4,285=17,140円4時間×3,750=15,000円
5月(18日)有給2日・パターン116日×8=128時間12時間×4,285=51,420円12時間×3,750=45,000円
2月(18日)有給1日・パターン2144時間控除なし控除なし
5月(18日)有給2日・パターン3128時間(下限124時間)控除なし控除なし

同じ有給1日でも、営業日が21日ある月(3月など)なら、20日×8=160時間になり、控除は起きません。有給で控除になるかは、有給の日数と、その月の営業日の組み合わせで決まります。

→ SESの精算幅を下回ったときの控除の計算方法 / SESの稼働時間の上限・下限の決め方

有給で控除になっても、給与は減らせない

客先から控除を受けても、エンジニアの有給の日の給与は減らせません。控除の分は、自社の粗利が減るという形で自社が負担します。

たとえば、2月に有給1日で17,140円の控除を受けた場合、自社の売上は17,140円減ります。一方で、エンジニアには有給の日の賃金を払います。この差が、その月の粗利から引かれます。

営業としてできる対策は、次の3つです。

  1. 提案の段階でパターン2か3を交渉する:単価の交渉と同じタイミングで、有給の扱いも相談します。

  2. 有給を営業日の多い月に取ってもらえるよう相談する:あくまでお願いです。エンジニアが取りたい日を変えさせることはできません(時季変更権は、事業の正常な運営を妨げる場合だけ)。

  3. 年間の有給の予定を早めに聞く:取る日が早くわかれば、控除の見込みも立てやすくなります。

粗利への影響の考え方は、SESの粗利率の平均と利益率の計算式も参考にしてください。

有給を取るときの連絡の流れと例文

有給の連絡は、エンジニア→自社の営業→客先の営業窓口の順に流します。エンジニアが現場の担当者だけに伝えて終わると、精算で食い違いが起きます。

連絡の流れ

  1. エンジニアが自社に有給を申請する:自社の勤怠のルールで申請します。1か月前、遅くとも2週間前を目安にしてもらうと調整しやすくなります(法律上の期限ではありません)。

  2. 営業がその月の稼働見込みを計算する:有給を入れて、精算幅の下限を割るかを確認します。

  3. 営業が客先の窓口にお知らせする:日付と、稼働時間への影響を伝えます。

  4. エンジニアが現場のチームに伝える:作業の引き継ぎや予定の共有をします。

  5. 月末の稼働報告書に有給として書く:契約のパターンに合わせて、時間を入れるか入れないかを決めます。

客先へのお知らせの例文(控除が出る見込みの場合)

例文・テンプレート
件名:〇月〇日の休暇のお知らせ(△△・□□プロジェクト)

株式会社〇〇
ご担当 〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
弊社△△が、〇月〇日(〇)に有給休暇を取得いたします。

現場の作業は、前日までに〇〇様へ共有するよう申し伝えております。
なお、〇月は営業日が18日のため、稼働時間は136時間の見込みです。
精算幅の下限140時間を4時間下回るため、契約のとおり控除として精算いたします。

ご不明な点があれば、私までご連絡ください。
よろしくお願いいたします。

エンジニアへの返信の例文

例文・テンプレート
〇〇さん

有給の申請、承知しました。〇月〇日で登録します。
客先の〇〇様には、私からお知らせしておきます。

現場のチームへの作業の共有だけ、前日までにお願いします。
月末の稼働報告書では、〇日を「有給」と書いてください。

自分で有給と精算を管理する方法(Excel)

エンジニアが少ないうちは、Excelで有給と精算の見込みを管理できます。1行に1人・1か月とし、契約の条件と有給の予定を同じ行に並べます。

管理表には、次の列を用意します。

  • エンジニア名・案件名・客先名

  • 精算幅(下限・上限)・割り方・有給の扱い(パターン1〜3)

  • その月の営業日・有給の予定日数

  • 見込みの稼働時間((営業日−有給日数)×8時間)

  • 見込みの控除額

見込みの控除額がプラスになったら、客先へのお知らせを忘れないように印をつけます。時間の計算式は、エクセルの工数計算の関数で紹介しています。

ただ、案件が増えると、「この案件は有給をどう扱う契約だったか」を探す時間が増えていきます。

チョータツで案件ごとの精算条件を管理する

有給の相談にすぐ答えるには、案件ごとの精算条件を、提案の段階から1か所に残しておくことが近道です。DrivenXのSES営業向けツールを使うと、この管理が楽になります。

チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の条件を残す注文書やメールを探して転記チョータツに案件ごとに登録し、チームで共有
案件メールを整理する1通ずつ読んで仕分けチョータツメールAIが案件メールと人材メールに切り分け
担当者が休んだとき条件を知っている人を探すチームで案件の情報を見られる

チョータツメールAIは、届いたメールをAIが処理し、案件メールと人材メールに切り分ける機能です。転送設定で取り込めて、案件・人材以外のメールはデータに残りません。

こんな会社に向いています

  • 有給の扱いを聞かれても、契約書を探さないと答えられない

  • 精算条件を知っているのが、担当の営業1人だけになっている

  • 案件メールが多く、条件の書かれたメールを見失うことがある

よくある質問

Q. SESで有給を取ると、稼働時間から引かれますか?
客先との契約しだいです。有給の時間を稼働時間に数えない契約なら、その分だけ稼働時間は少なくなります。下限を割ると控除になります。
Q. 客先から控除されたら、エンジニアの給与を減らしてもいいですか?
減らせません。有給の日にも賃金を払うことは、労働基準法第39条第9項で決まっています。附則第136条も、有給を取った人への賃金の減額などの不利益な取扱いを戒めています。
Q. 客先が「その日は休まないで」と言ってきたら?
休みの日を変えてもらえる権利(時季変更権)を持つのは、雇い主である自社だけです。客先の要望は営業が受け、自社の判断としてエンジニアと相談します。
Q. 精算幅の下限を割りそうなとき、有給を断ってもいいですか?
避けるべきです。時季変更権は、事業の正常な運営を妨げる場合にしか使えません。控除は、契約のパターンや計画的付与で防ぎましょう。
Q. 有給は客先に何日前に伝えればいいですか?
法律で決まった期限はありません。現場の作業の引き継ぎを考えると、1か月前、遅くとも2週間前を目安にすると調整しやすくなります。
Q. 半日有給はどう扱いますか?
社内では、半日単位の有給を認めるかは会社の決まりによります。客先との精算では、半日分(例:4時間)を数えるかどうかを、ほかの有給と同じ契約のパターンで扱います。
Q. 有給の扱いを契約に入れるには、どう伝えればいいですか?
単価や精算幅を決めるときに、具体的な案を出します。「有給の日は下限を8時間ずつ下げる扱いでよいか」と聞くと、話が進みやすくなります。

まとめ

  • SESの有給は「社内(労働基準法)」と「客先(契約)」の2つに分けて考える

  • 社内では有給は権利。有給の日の給与は減らせず、年5日は必ず取らせる

  • 下限割れを理由に有給を断らない。控除は契約のパターンと計画的付与で防ぐ

  • 客先との精算は「数えない」「8時間として数える」「下限を下げる」の3パターン

  • 月額60万円・140〜180時間で、2026年2月に有給1日なら控除は上下割17,140円

  • 控除になっても給与は減らせないため、自社の粗利で負担する

  • 連絡はエンジニア→自社の営業→客先の窓口の順。客先には「お知らせ」として伝える

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料

関連する記事