偽装請負の37号告示をやさしく解説|条文の読み方と厚労省Q&AのSES該当箇所

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

37号告示とは

37号告示とは、ある仕事が「労働者派遣」か「請負」かを分けるために、国が定めた基準のことです。正式名は「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」です。

1986年(昭和61年)に、労働省告示第37号として出されました。最終改正は2012年(平成24年)の厚生労働省告示第518号です。告示とは、国の機関が決めたことを広く知らせる形式の文書のことです。

厚生労働省は、派遣か請負かは契約の名前ではなく、実態に即して判断すると説明しています。その判断のものさしが37号告示です。

準委任(SES)にも使われる

37号告示の文言は「請負」ですが、準委任にも同じ基準が使われます。厚生労働省の疑義応答集(第3集)Q1が、その根拠です。準委任契約でも、実態として発注者の指揮命令があれば、労働者派遣にあたると回答しています。

準委任契約とは、成果物の完成ではなく、決まった仕事をきちんと行うことを約束する契約のことです。SESの契約は、ふつう準委任契約です。

原典はどこにある?資料の一覧と構成

37号告示に関する原典は、厚生労働省の「37号告示関係疑義応答集」のページにまとまっています。読む順番は「告示本文→疑義応答集→ガイド」がおすすめです。

資料中身SES営業にとっての使い道
告示本文(全3条)派遣と請負を分ける基準そのもの判断の根拠として引用する
疑義応答集 第1集(2009年)製造現場を中心に15問技術指導・混在・精算の考え方
疑義応答集 第2集(2013年)打合せ・メール・面談など15問客先常駐の場面にそのまま使える
疑義応答集 第3集(2021年)アジャイル開発などの8問システム開発全般の考え方
事務連絡(2021年5月13日)第1集Q10・Q11はシステム開発にも当てはまる仕様説明の範囲の根拠
労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド上の資料と具体的判断基準をまとめた冊子1冊で全体を確認する

疑義応答集とは、厚生労働省が37号告示についての質問と回答をまとめた資料のことです。「Q&A」とも呼ばれます。なお、疑義応答集にない事例は、各都道府県労働局が実態に即して個別に判断するとされています。

条文の読み方:第2条の「2つの柱」

37号告示の本体は第2条です。「次の各号のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする」と書かれています。つまり、全部の項目を満たさない限り派遣と判断されるという読み方になります。

柱1:自社の社員を自社で管理する(第2条第1号)

第1号は、自社が雇う人の労働力を「自ら直接利用する」ことを求めています。イ・ロ・ハに2つずつ、合計6項目です。

条文原文の要点やさしく言うとSESの現場では
イ(1)業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行う仕事のやり方は自社が指示するタスクの割り振りは自社の責任者が行う
イ(2)業務の遂行に関する評価等の指示その他の管理を自ら行う仕事の評価は自社がする客先がエンジニア個人を評価・注意しない
ロ(1)始業・終業、休憩、休日、休暇等の指示その他の管理を自ら行う(単なる把握を除く)勤務時間は自社が決める客先は勤怠を「知る」だけにとどめる
ロ(2)残業・休日労働の指示その他の管理を自ら行う(単なる把握を除く)残業は自社が命じる客先が残業を直接命じない
ハ(1)服務上の規律に関する指示その他の管理を自ら行う職場のルールは自社が指示する服装やルールの注意は自社から伝える
ハ(2)労働者の配置等の決定及び変更を自ら行う誰を入れるかは自社が決める客先が人を指名・交代させない

ロ(1)と(2)にある「単なる把握を除く」がポイントです。客先が勤務時間を知っておくこと自体は、管理にはあたりません。客先が出退勤や残業を決める・命じると、管理にあたります。

柱2:仕事を自社で独立して処理する(第2条第2号)

第2号は、請け負った仕事を「自己の業務として相手方から独立して処理する」ことを求めています。イ・ロ・ハの3つです。

条文原文の要点やさしく言うとSESの現場では
イ業務の処理に必要な資金を自らの責任で調達し、支払うお金は自社でまかなう自社の経費は自社で負担する
ロ民法・商法などの事業主としての責任をすべて負う会社として責任を負う契約上の責任を自社が引き受ける
ハ単に肉体的な労働力を提供するものでない人手を貸すだけにしない次の(1)か(2)のどちらかを満たす
ハ(1)自社で用意した機械・設備・材料で処理する道具を自社で用意するSESでは当てはまらないことが多い
ハ(2)自社の企画や専門的な技術・経験で処理する自社のノウハウで仕事をする自社の技術力で業務を行う

SESは、客先の端末や設備を使うことが多い仕事です。そのため、ハは(2)の「企画や専門的な技術・経験」で満たす形が一般的です。

第3条:形を整えても、目的が派遣ならアウト

第3条は、第2条をすべて満たす場合の例外です。法律を免れるために故意に偽装したもので、本当の目的が派遣なら、派遣とみなします。書類だけ整える対策は通用しないということです。

疑義応答集(Q&A)の読み方のコツ

疑義応答集の回答は、ほぼ同じ型で書かれています。型を知っておくと、原典を自分で読めるようになります。

  1. 前提:「適正な請負と判断されるためには、〜が必要です」(37号告示の要件を確認)

  2. 許される範囲:「〜のみをもって、直ちに偽装請負と判断されることはありません」

  3. アウトになる条件:「ただし、〜の場合は、偽装請負と判断されることになります」

大事なのは3の「ただし」です。2だけを読んで「OKと書いてある」と取引先に説明すると、誤解を招きます。「それだけではアウトにならないが、実態によってはアウト」という意味で読みます。

SES営業に関係する項目の抜き出し

疑義応答集のうち、SESの客先常駐に関係する項目を5つのテーマに分けました。NG行為の一覧は偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選にまとめています。ここでは原典が何と言っているかに絞ります。

テーマ1:管理責任者

管理責任者は、客先に常駐していなくても構いません。ただし、エンジニアが1人だけの現場では、その本人は管理責任者を兼ねられません。

出典原典の要点SESでの読みかえ
第1集 Q4責任者が作業者を兼ねても、責任を果たせれば問題ない。作業者が1人で責任者を兼ねる場合は偽装請負1人常駐の本人を「責任者」にしても意味がない
第2集 Q81人の現場では別の責任者が必要。常駐していないことだけで直ちに派遣とはならない自社の責任者が巡回・連絡で管理すればよい
第2集 Q8確実な連絡体制と、出退勤を含む労働時間の管理を自社で行う必要がある勤怠の管理は必ず自社で行う
第3集 Q3責任者がすべての会議に同席しなくても、それだけで偽装請負ではない指示が必要な場面では、自社の責任者が指示する

テーマ2:打合せ・メール・チャット

エンジニアが客先の会議やチャットに参加すること自体は、問題になりません。問題は、その場で客先からエンジニアに直接、作業の指示が出ているかです。

出典原典の要点SESでの読みかえ
第2集 Q9責任者の判断で作業者が打合せや朝礼に同席しても、それだけで派遣ではない朝会への参加は可。ただし作業の割り振りをその場で受けない
第2集 Q10責任者の了解の下、依頼メールを作業者にccで送っても、それだけで派遣ではないccは可。作業者に直接返信を求めるメールは不可
第3集 Q6双方の全員が参加する会議・チャット・プロジェクト管理ツールも、それだけで偽装請負ではないSlackなどの共有は可。そこで直接指示が出ていれば不可

第2集 Q10には、個人情報の注意点も書かれています。作業者のメールアドレスを客先に渡すときは、本人の同意を得るなどの適正な扱いが必要です。

テーマ3:事前面談・スキルシート・氏名の提出

客先が人を選ぶ形になると、配置の決定に関わったと判断されます。 氏名の事前提出や、個人を特定しないスキルシートは、それだけでは問題になりません。

出典原典の要点SESでの読みかえ
第2集 Q12セキュリティ上の理由で、入館者の氏名を事前に提出させても、それだけで派遣ではない入館手続きのための氏名提出は可
第2集 Q13職務経歴書の提出や事前面談は、一般的に配置の決定に影響するので、派遣と判断されることがある客先による「選考」になる面談は避ける
第2集 Q13面談の結果、特定の人を指名したり就業を拒否したりすると、配置に関与したと判断される「この人を」「この人は不可」を客先に言わせない
第3集 Q7個人を特定できず、指名や拒否ができないスキルシートなら、提出を求めても直ちに偽装請負ではない技術力を示す資料として、個人を特定しない形で出す

面談の進め方はSESの事前面談は違法?営業が守りたい適法な進め方7つとNG例で詳しく解説しています。

テーマ4:仕様の説明・技術指導

仕様の説明や情報提供は、指示とは区別されます。 ただし、作業のやり方や順番まで客先が直接決めると、指示にあたります。

出典原典の要点SESでの読みかえ
第1集 Q7客先が作業の順序・方法を指示したり、一人ひとりに仕事を割り振ったりすると偽装請負。文書での詳細な指示も同じ客先作成の手順書どおりに作業させるだけの形は不可
第1集 Q10設備の操作説明、新製品の仕様の補足説明、安全衛生の緊急指示は、それだけで偽装請負ではない仕様の補足説明を受けるのは可
第1集 Q11業務内容の変更を客先が作業者に直接指示すると偽装請負。受注者への説明・指示なら問題ない仕様変更は自社の責任者経由で受ける
事務連絡(2021年)Q10・Q11の考え方は、システム開発を請負で行う場合にも当てはまるシステム開発でも同じ線引き
第3集 Q4開発の前提となる要求の詳細説明や情報提供は、直ちに偽装請負ではない要件の説明を聞くのは可。やり方の指示は不可

テーマ5:精算のしかた・勤務時間のルール

「何人を何時間出したか」だけで料金が決まる形は、単なる人手の提供と見られやすくなります。 一方で、仕事の性質上、人数や時間で料金を決める合理的な理由がある場合もあると示されています。

出典原典の要点SESでの読みかえ
第1集 Q8完成品ではなく投入した人数の単価で精算していると、単なる労働力の提供で偽装請負請負契約で人数精算にするのは危ない
第2集 Q7完成物を引き渡す形でない業務は、人数や時間に比例した料金に合理的理由がある場合もある準委任の時間精算そのものは直ちに問題ではない
第2集 Q11合理的な理由があり、結果として客先と同じ就業時間・服務規律になっても、それだけで派遣ではない客先と同じ勤務時間でも、自社のルールとして決める

第2集 Q7の回答には、「自社が労働者を直接利用し、独立して業務を処理していること」が前提だと書かれています。本記事では、次のように読むのが安全と考えます。SESの準委任で時間精算にするなら、テーマ1〜4の管理ができていることが条件です。

アジャイル・システム開発の第3集で押さえること

第3集の結論は、対等な関係で協働し、受注者のエンジニアが自律的に開発しているなら、偽装請負ではないというものです。第3集は、2021年に実務者へのヒアリングを3回行ったうえでまとめられました。

アジャイル型開発とは、要件を最初にすべて固めずに進める開発手法のことです。短い期間で開発とリリースをくり返し、システムをつくります。

第3集が示すポイントは次の4つです。

  1. 契約の名前は関係ない:準委任でも、実態として指揮命令があれば派遣にあたる(Q1)

  2. 密な連携は問題ない:情報共有や技術的な助言・提案をしていても、対等で自律的なら偽装請負ではない(Q2・Q5)

  3. 事前の取り決めが重要:役割や権限、チーム内の進め方を事前に決めて合意し、研修などで認識をそろえる(Q2)

  4. アジャイル以外にも使える:Q1〜Q7の考え方は、ほかのシステム開発にも当てはまる(Q8)

Q8の追加で、ふつうのSESのシステム開発案件でも第3集を根拠にできることがはっきりしました。客先に説明するときの根拠として使えます。

原典を使って自社の案件を確認する手順

原典を読んだら、自社の案件に当てはめて確認します。次の5つの手順で進めます。

  1. 場面を1つに絞る:「朝会でタスクを振られている」など、気になる場面を具体的に書き出す

  2. 告示のどの項目か決める:作業の指示ならイ(1)、勤務時間ならロ、面談ならハ(2)のように対応させる

  3. 疑義応答集の近いQを探す:上の5テーマの表から、似た質問を探す

  4. 「ただし」の条件に当てはまらないか確認する:当てはまれば、指示の流れを見直す

  5. 判断に迷ったら労働局に相談する:疑義応答集にない事例は、労働局が個別に判断する

指示の流れを見直すときの具体例は、準委任契約の指揮命令はどこまで?SES現場のOK・NG具体例20が参考になります。SESと派遣の違いから整理したい場合は、SES契約と派遣契約の違い|指揮命令など営業の確認ポイント7つを読んでください。

37号告示に反するとどうなる?罰則と客先のリスク

37号告示に照らして派遣と判断されると、SES企業は許可のない派遣として罰則の対象になります。客先も、指導や社名の公表、直接雇用のリスクを負います(2026年9月時点)。

立場主なリスク根拠
SES企業1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金労働者派遣法 第59条
客先許可のない会社から受け入れ、勧告に従わないと社名が公表されることがある労働者派遣法 第49条の2
客先法律を免れる目的があれば、エンジニアに直接雇用を申し込んだとみなされる労働者派遣法 第40条の6

東京労働局は、偽装請負の典型を「代表型」「形式だけ責任者型」「使用者不明型」「一人請負型」の4つに分けています。4つのパターンとSESでの現れ方は、偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選で解説しています。

罰則を立場別に確認するなら偽装請負の罰則はどちらに?を読んでください。37号告示が裁判でどう使われたかは、偽装請負の判例・摘発事例で紹介しています。

チョータツで案件情報をまとめ、確認の抜けを減らす

37号告示の確認は、案件を受けた時点で行うのが一番効果的です。稼働が始まってから指示の流れを変えるのは、客先にとっても負担が大きいからです。

自分で行うなら、案件一覧に「責任者」「指示の流れ」「面談の形」「精算方法」の4項目を足します。空欄の案件は提案しないルールにします。ただ、案件メールが多いと、一覧への転記が追いつかなくなりがちです。

チョータツを使うと、案件と人材の情報を1か所で管理し、社内やパートナーと共有できます。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件情報を集めるメールからExcelに転記案件情報をチョータツで管理。入力はAIが手伝う
社内で共有するファイルを送り合う同じ案件情報を社内で共有できる
パートナーの案件を見るメールを1通ずつ探す連携した会社の営業中案件をデータベースとして見られる

案件情報が1か所にあれば、「この案件は責任者と指示の流れを確認したか」をチームで共有しやすくなります。

よくある質問

Q. 37号告示は法律ですか?
法律ではなく、厚生労働省(当時は労働省)の告示です。ただし、労働局が派遣か請負かを判断するときの基準であり、裁判でも判断の材料として使われています。
Q. 厚生労働省の偽装請負のガイドラインはどれですか?
一般に「ガイドライン」と呼ばれるのは、37号告示と疑義応答集(第1〜3集)です。それらをまとめた「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」もあります。いずれも厚生労働省のサイトで無料で読めます。
Q. 疑義応答集で「直ちに偽装請負と判断されない」とあれば、安心してよいですか?
安心はできません。「それだけでは」という意味で、多くの回答に「ただし〜の場合は偽装請負」という条件が続きます。必ず後半まで読んでください。
Q. SESのエンジニアが客先の朝会に出るのは37号告示に違反しますか?
出席するだけなら、直ちに違反とはされません(第2集 Q9)。ただし、朝会で客先から作業の順序や割り振りを直接指示されると、偽装請負と判断されます。
Q. 37号告示はSESの準委任契約にも適用されますか?
適用されます。第3集Q1は、準委任契約でも実態に即して37号告示で判断すると明記しています。

まとめ

  • 37号告示は、派遣と請負(準委任を含む)を分ける厚生労働省の基準

  • 第2条の「自社で管理する(6項目)」と「独立して処理する(3項目)」を、すべて満たさないと派遣と判断される

  • 「単なる把握」は管理にあたらない。客先が勤務時間を決める・命じると管理にあたる

  • 疑義応答集は「それだけでは直ちにアウトではない。ただし〜ならアウト」の型で読む

  • SESに関係が深いのは、管理責任者・打合せとチャット・面談とスキルシート・仕様説明・精算の5テーマ

  • 第3集は2026年5月25日のQ8追加で、アジャイル以外のシステム開発にも当てはまることが明確になった

  • 案件情報をチョータツにまとめると、提案前の確認を習慣にしやすい

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料(2026年9月28日確認)

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