SESの準委任・派遣・請負の違い|比較表と、案件を受けた時に営業が確認する5項目

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

準委任・派遣・請負とは?3つの定義

準委任・派遣・請負は、いずれも「外の会社の人に仕事をしてもらう」ときの契約です。違いは、何を約束するかと、誰が指示を出すかにあります。

準委任契約とは、法律行為ではない事務(作業)を行うことを約束する契約のことです。民法656条で、委任の決まりをそのまま使うと定められています。SES(システムエンジニアリングサービス)の契約は、ふつう準委任契約です。

請負契約とは、ある仕事を完成させることを約束し、その結果に対して報酬を払う契約のことです(民法632条)。「システムを作って納める」契約が典型です。

労働者派遣とは、自社で雇う人を、ほかの会社の指揮命令のもとで働かせることです(労働者派遣法2条1号)。指揮命令とは、仕事のやり方・順番・時間などを具体的に指示し、管理することです。

契約約束すること根拠となる法律
準委任(SES)作業をきちんと行う民法656条(委任の規定を準用)
請負仕事を完成させる民法632条
派遣派遣先の指示のもとで働かせる労働者派遣法

「業務委託」という言葉は、法律で決められた契約の名前ではありません。業務委託契約書の中身が、準委任なのか請負なのかを見る必要があります。見分け方は「準委任と請負の違い|契約書で見分ける6点」で詳しく説明しています。

準委任・派遣・請負の比較表

3つの契約の違いは、次の表でひと目でわかります。SES営業が特に気にするのは、指揮命令・成果責任・必要な許可・単価の決まり方の4つです。

比べる点準委任(SES)派遣請負
指揮命令する人SES企業(自社)派遣先(お客さん)請負会社(自社)
成果責任原則なし(ていねいに作業する義務)なし(派遣元は人を送る)あり(完成と不具合の責任)
必要な許可不要労働者派遣事業の許可不要
単価の決まり方月額+精算幅が多い時間単価が多い一式の見積金額
報酬がもらえる時作業をした後(期間ごと)契約で決めた期間ごと完成・引き渡しの時
途中でやめるいつでも解除できる(条件あり)契約と法律の手続きが必要完成前なら注文者が解除できる(賠償あり)
期間の制限法律上の上限なし原則3年まで法律上の上限なし

表の「成果責任」と「報酬がもらえる時」は、民法の原則です。契約書に特約があれば、特約が優先されます。

準委任にも、成果に報酬を払う「成果完成型」があります。成果完成型の注意点は「準委任契約の成果完成型とは」で解説しています。

違い1:指揮命令する人

エンジニアに仕事の指示を出せるのは、準委任と請負では自社、派遣では派遣先です。3つの契約を分ける、いちばん大事な基準です。

準委任や請負なのに、お客さんがエンジニアに直接指示を出している状態を偽装請負といいます。厚生労働省は、派遣か請負かを「契約の形式ではなく実態」で判断するとしています。

判断の基準は、昭和61年労働省告示第37号(通称:37号告示)です。37号告示の読み方は「偽装請負の37号告示をやさしく解説」にまとめています。

37号告示の疑義応答集(第3集)には、委任・準委任も同じ基準で判断すると書かれています。「準委任と書いてあるから大丈夫」とはなりません。

現場でどこまでの指示が許されるかは「準委任契約の指揮命令はどこまで?OK・NG具体例20」にまとめています。

違い2:成果責任

仕事の完成に責任を負うのは、原則として請負だけです。準委任は「完成させること」ではなく「作業をきちんと行うこと」を約束します。

準委任の受け手には善管注意義務があります(民法644条)。善管注意義務とは、その仕事のプロとして当然求められる注意を払って作業する義務のことです。手を抜いて損害が出れば、責任を問われます。

請負は、完成した物が契約の内容に合っていなければ、契約不適合責任を負います。契約不適合責任とは、納めた物の種類や品質が約束と違うときに、直す・代金を減らす・損害を賠償するなどの責任のことです。注文者が不具合を知ってから1年以内に通知すれば、責任を追及できます(民法637条)。

派遣では、派遣元が約束するのは「人を送ること」です。仕事の結果は、指示を出す派遣先の責任で管理します。

違い3:必要な許可

派遣を事業として行うには、厚生労働大臣の許可が必要です(労働者派遣法5条1項)。準委任と請負には、この許可は必要ありません。

無許可で派遣事業を行うと、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です(労働者派遣法59条)。偽装請負は、実態が派遣なので、この無許可派遣にあたるおそれがあります。

発注者にもリスクがあります。法律の規定を免れる目的で偽装請負の状態にすると、発注者は直接雇用を申し込んだとみなされることがあります。根拠は労働者派遣法40条の6です。

お客さん側にもリスクがあるため、営業が契約形態をはっきりさせることは、お客さんを守ることにもなります。

取引先が派遣の許可を持っているかは、厚生労働省のサイトで調べられます。やり方は「労働者派遣の許可番号を検索する方法」で紹介しています。

違い4:単価の決まり方

単価の決まり方は、実務では契約ごとに型があります。準委任は月額+精算幅、派遣は時間単価、請負は一式の見積金額が一般的です。法律で決まっているわけではないので、契約書で必ず確かめます。

契約よくある単価の形例
準委任(SES)月額単価+精算幅月70万円、140〜180時間
派遣時間単価×働いた時間1時間4,000円×実働時間
請負仕事ひとつの金額画面開発一式300万円

準委任では、決めた時間の幅(精算幅)を下回ると減額、上回ると増額するのが一般的です。精算幅とは、月額単価のままで精算する稼働時間の上限と下限のことです。決め方は「SESの稼働時間の上限・下限|精算幅の決め方」で解説しています。

派遣元には、派遣料金と賃金の差の割合(マージン率)などを公開する義務があります(労働者派遣法23条5項)。準委任には同じ公開義務はありません。

請負は、完成させた仕事に払うお金です。作業した時間や人数で精算していると、実態は「人を出しているだけ」と見られやすくなります。

37号告示の考え方では、請負の会社が自分の責任で仕事を処理していることが求められます。人数や時間で精算する形は、その点を疑われる材料になります。

違い5:働ける期間の制限

期間の制限があるのは派遣だけで、原則として3年までです。準委任と請負には、法律上の期間の上限はありません。

派遣には2つの「3年」があります。派遣先の同じ事業所が派遣を受けられるのは原則3年です(労働者派遣法40条の2)。労働組合などの意見を聴けば、延長できます。

もう1つは、同じ派遣社員を同じ課などの組織で働かせられるのも3年まで、という制限です(35条の3)。派遣元に無期雇用されている派遣社員などは、2つの制限の例外です。

営業としては、「長く常駐してほしい」という案件ほど、派遣か準委任かを最初に確かめておきます。

準委任には期間の上限がない一方で、指示を出すのは自社という条件は何年たっても変わりません。長く同じ現場にいると、お客さんの指示を直接受ける状態になりやすいので注意します。

システム開発では3つをどう使い分ける?

システム開発では、工程ごとに向いている契約が変わります。やることが決まっている工程は請負、決まっていない工程は準委任が基本の考え方です。

工程向いている契約理由
要件定義準委任何を作るかを一緒に決める段階で、完成物を決めにくい
設計・開発・テスト請負または準委任仕様が固まっていれば請負にしやすい
運用・保守準委任日々の作業を続けることが中心
お客さんのチームに入って指示を受けて働く派遣派遣先の指示で働く形なので派遣の許可が必要

IPA(情報処理推進機構)の「情報システム・モデル取引・契約書」も、工程ごとに契約を選ぶ考え方です。2020年12月の第二版では、民法改正にあわせて成果完成型の準委任も整理されました。

SESの現場で多いのは、お客さんのチームに入って開発する形です。この形で準委任契約を結ぶなら、指示は自社の責任者から出す体制が欠かせません。

案件を受けた時点で営業が確認する5項目

案件の紹介メールには、契約形態が書かれていないことがよくあります。提案する前に、次の5項目を確認すると、契約形態を見分けられます。

  1. 契約形態の記載:案件情報に「準委任」「請負」「派遣」のどれが書かれているか。「業務委託」とだけ書かれていたら、準委任か請負かを聞く

  2. 指示を出す人と現場の体制:誰がエンジニアに作業の指示を出すか。お客さんの社員が直接出すなら、準委任や請負では受けられない

  3. 成果物と検収の有無:納品物・完成の定義・検収(受け入れ検査)があるか。あれば請負か成果完成型の準委任の可能性が高い

  4. 単価の決め方:月額+精算幅か、時間単価か、一式金額か。単価の形と契約形態が合っているかを見る

  5. 商流と派遣の許可:自社が何次請けか。派遣契約なら、自社と上位の会社が派遣の許可を持っているか

5項目のうち1つでもあいまいなら、提案前に確認します。特に2番は、あとで偽装請負と言われないために一番大事です。

確認するときのメール例文

件名:【ご確認】〇〇案件の契約条件について

〇〇株式会社 〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
ご紹介いただいた〇〇案件について、提案前に次の点を確認させてください。

  1. 契約形態(準委任・請負・派遣のいずれか)

  2. 現場での作業指示の流れ(貴社またはエンド様の責任者の有無)

  3. 成果物・検収の有無

  4. 単価の形(月額と精算幅、または時間単価)

  5. 商流(エンド様から何社目か)

お手数ですが、ご教示いただけますと幸いです。

商流の見方は「SESの一次請け・二次請けの違い」も参考にしてください。

契約形態を取り違えると何が起きる?

契約形態を取り違えると、偽装請負や無許可派遣になるおそれがあります。自社だけでなく、上位の会社やお客さんにもリスクが広がります。

起きること誰のリスク根拠
無許可で派遣事業をしたとみなされるSES企業労働者派遣法5条・59条
エンジニアに直接雇用を申し込んだとみなされる発注者(お客さん)労働者派遣法40条の6
行政の指導・改善命令を受ける双方労働者派遣法

もう1つのリスクは、お金と責任の食い違いです。準委任のつもりで受けたのに、お客さんが「完成まで責任を持つ請負だ」と考えていると、支払いや不具合の対応で揉めます。

派遣契約の人材を、さらに別の会社へ派遣する形も違法です。

詳しくは「SESの二重派遣(多重派遣)は違法?」で解説しています。罰則の詳しい整理は「偽装請負の罰則はどちらに?」を見てください。

自社でやるなら:契約形態の確認を仕組みにする方法

契約形態の確認は、仕組みにすると抜けが減ります。自社でできる方法は、次の3つです。

  1. 案件管理表に「契約形態」の列を作る:Excelなどの案件一覧に、契約形態・指示を出す人・精算幅の列を足す

  2. 提案前チェックのルールを決める:5項目がそろわない案件は提案しない、と社内で決める

  3. 契約書を受け取ったら条文を見る:「業務委託」という題名でも、目的・報酬・検収の条文で中身を確かめる

Excelでの管理方法は「SESの案件・人材管理をExcelで行う方法」で紹介しています。

契約形態によって、契約書に印紙が要るかも変わります。判定は「準委任契約の印紙は必要?」を見てください。

チョータツで案件の条件をまとめて管理する

案件が増えると、契約形態や精算幅の情報がメールのあちこちに散らばります。チョータツを使うと、案件の情報を1か所で管理・共有できます。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の条件をまとめるメールを読んでExcelに転記案件情報をチョータツで管理。AIが入力を手伝う
社内で共有するファイルを回す・口頭で伝える案件・人材の情報を社内で共有
パートナーの案件を把握する届くメールを1通ずつ確認連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化
自社の人材を紹介するBCCでメールを一斉送信メール配信機能でパートナーに配信

契約形態の判断そのものは、人が契約書と現場の実態を見て行います。チョータツは、その判断に必要な案件の情報を集めて見やすくするための道具です。チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。

よくある質問

Q. SESは準委任と派遣のどちらですか?
SESは、ふつう準委任契約で結びます。ただし、お客さんがエンジニアに直接指示を出していれば、実態は派遣と判断されます。
Q. 派遣と準委任で単価はどう違いますか?
準委任は月額+精算幅、派遣は時間単価で決めることが多いです。法律で決まった形ではないので、契約書で確認します。単価の目安は「SESの単価相場」を参考にしてください。
Q. 準委任なら派遣の許可はいりませんか?
実態が準委任であれば、派遣の許可は要りません。実態が派遣になっていると、許可なしでは違法になるおそれがあります。
Q. 派遣と準委任で、働ける期間に違いはありますか?
あります。派遣は原則3年までという期間制限があります。準委任には法律上の期間の上限はありません。
Q. システム開発は請負と準委任のどちらが多いですか?
工程によります。要件定義や運用・保守は準委任、仕様が固まった開発は請負にすることが一般的です。
Q. 請負契約で、お客さんの会社に常駐してもいいですか?
常駐そのものは問題ありません。ただし、お客さんがエンジニアに直接指示を出すと偽装請負になります。請負会社の責任者が指示を出す体制が必要です。
Q. 契約書のタイトルが「業務委託契約書」の場合はどれですか?
タイトルだけでは決まりません。目的・報酬・検収などの条文を見て、準委任か請負かを判断します。

まとめ

  • 3つの違いの軸は、指揮命令・成果責任・必要な許可・単価の決まり方の4つ

  • 指示を出せるのは、準委任と請負では自社、派遣では派遣先だけ

  • 成果物に責任を負うのは原則として請負。準委任は善管注意義務を負う

  • 派遣は厚生労働大臣の許可が必要で、原則3年の期間制限がある。偽装請負は無許可派遣になるおそれがある

  • 案件を受けた時点で、契約形態・指示を出す人・成果物・単価・商流の5項目を確認する

  • 案件の条件はチョータツで1か所に集めると、提案前の確認がしやすい

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料(2026年9月28日確認)

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