準委任契約と請負契約の違い|SES営業が契約書で見分ける6つのチェック点

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

委任・準委任・請負とは?民法の定義

委任・準委任・請負は、どれも民法に書かれている契約です。違いは「何を頼むか」と「何に対してお金を払うか」にあります。

委任契約とは、法律行為(契約を結ぶ、訴訟をするなど)を相手に頼む契約のことです(民法643条)。弁護士に裁判を頼むのが典型です。

準委任契約とは、法律行為ではない事務(作業)を頼む契約のことです。民法656条で、委任の決まりをそのまま使うと定められています。システムの開発作業や運用作業を頼むSESは、準委任にあたります。

請負契約とは、ある仕事を完成させることを約束し、その結果に報酬を払う契約のことです(民法632条)。家を建てる、システムを作って納めるといった契約が典型です。

契約頼むこと報酬を払う対象
委任法律行為(契約・訴訟など)事務を処理したこと
準委任法律行為ではない事務(作業)事務を処理したこと(成果に払う型もある)
請負仕事の完成完成した仕事の結果

準委任と請負の違いを表で比較

準委任と請負のいちばん大きな違いは、完成させる義務があるかどうかです。義務の違いから、報酬・責任・解除のルールも変わります。

比べる点準委任請負
受け手の義務善管注意義務(民法644条)仕事の完成(民法632条)
報酬をもらえる時作業をした後。期間で決めたら期間ごと(648条)完成した物の引き渡しと同時(633条)
途中で終わったときやった割合に応じて請求できる(648条3項)注文者が得る利益の割合で請求できる(634条)
不具合の責任注意義務違反なら債務不履行の責任契約不適合責任(559条・562条など)
途中解除双方いつでも解除できる(651条)完成前なら注文者が賠償して解除できる(641条)
状況の報告求められたら報告する義務(645条)法律上の報告義務の規定はない
再委託(下請け)委任者の許諾などが必要(644条の2)原則として自由(契約で制限できる)

善管注意義務とは、その仕事のプロとして当然求められる注意を払って作業する義務のことです。結果が出なくても、きちんと作業していれば責任は問われにくくなります。

契約不適合責任とは、納めた物の種類や品質が約束と違うときに負う責任のことです。注文者は、直すこと・代金を減らすこと・損害賠償・解除を求められます。2020年4月の民法改正前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていました。

表は民法の原則です。契約書に特約があれば、特約の内容が優先されます。だからこそ、契約書の条文を読むことが大切です。

準委任と請負で再委託のルールはどう違う?

準委任では、発注者の許諾がなければ再委託できないのが原則です。請負は、完成さえすれば下請けに出すのは原則として自由です。

再委託とは、受けた仕事を、さらに別の会社に任せることです。民法644条の2は、受任者は委任者の許諾かやむを得ない事由がなければ、代わりの人(復受任者)を選べないとしています。準委任にもこの決まりが使われます(656条)。

SESでは、二次請け・三次請けと商流が深くなることがよくあります。準委任の契約で自社のパートナーの人材を出すときは、基本契約書の再委託の条文と、上位の会社の許諾を先に確かめます。商流の考え方は「SESの一次請け・二次請けの違い」で解説しています。

「業務委託」という名前だけでは判断できない理由

「業務委託」は、法律で決められた契約の名前ではありません。業務委託契約書の中身は、準委任のことも請負のこともあります。

実際には、同じ「業務委託契約書」でも次のように分かれます。

  • 「〇〇システムの開発業務を行う」「月額〇円」→ 準委任に近い

  • 「〇〇システムを完成させ納品する」「検収後に〇円」→ 請負に近い

  • 両方の要素がまざっている → 混合的な契約。条文ごとに確認が必要

契約の種類は、題名ではなく条文と実際の働き方から判断する、というのが一般的な考え方です。厚生労働省も、派遣か請負かは「契約の形式ではなく実態」で判断するとしています。題名に安心せず、次の6点を順番に見てください。

契約書で準委任か請負かを見分ける6つのチェック点

準委任か請負かは、契約書の6つの条文でほぼ見分けられます。上から順に見ると、迷いにくくなります。

#見る条文準委任らしい書き方請負らしい書き方
1目的・業務内容「〇〇業務を行う」「支援する」「〇〇を完成させる」「納品する」
2報酬・支払い月額・時間単価・精算幅一式金額・検収後に支払い
3成果物・検収成果物なし、または作業報告の確認納品物と検収の手順がある
4契約不適合責任規定なし(善管注意義務)修補・代金減額などの規定
5解除各当事者がいつでも解除できる完成前の解除と賠償の規定
6報告稼働報告・作業報告の義務進捗報告より納品が中心

1. 目的・業務内容の条文

最初に見るのは、第1条あたりにある目的と業務内容です。「作業を行う」なら準委任、「完成させる」なら請負の可能性が高くなります。

国税庁も、プログラムの作成を頼み、完成に対して報酬を払う契約は請負にあたると回答しています。一方で、相手の指示のもとで労務だけを提供する支援業務などは委任にあたる、と補足しています。

2. 報酬と支払い条件の条文

報酬が期間や時間で決まっていれば準委任、完成した物に払うなら請負に近いと考えます。SESでよくある「月額70万円、精算幅140〜180時間」は準委任の形です。

「検収に合格した後に支払う」と書かれていれば、請負か成果完成型の準委任です。精算幅の考え方は「SESの稼働時間の上限・下限|精算幅の決め方」で解説しています。

3. 成果物と検収の条文

検収とは、納められた物が約束どおりかを受け取る側が確かめることです。検収の手順(期間・合格基準・不合格時の対応)があれば、請負の性格が強い契約です。

準委任にも、成果に報酬を払う成果完成型があります(民法648条の2)。成果完成型の注意点は「準委任契約の成果完成型とは」を見てください。

4. 契約不適合責任の条文

「納品後〇か月以内に不具合が見つかったら無償で直す」という条文は、請負の契約不適合責任の書き方です。準委任の契約書に入っていたら、要注意です。

準委任なのに無償修正の義務まで負うと、作業に対してお金をもらう準委任の考え方と合いません。SESでの責任の考え方は「SESに瑕疵担保責任はある?契約不適合責任との違い」で詳しく説明しています。

5. 解除の条文

準委任は、民法上双方がいつでも解除できます(651条)。ただし、相手に不利な時期の解除は、やむを得ない理由がなければ損害賠償が必要です。

請負は、仕事が完成する前なら注文者が損害を賠償して解除できます(641条)。SESの契約書では、民法の原則とは別に「1か月前までに通知」などの特約を置くことが多いです。

6. 報告の条文

準委任には、求められたら作業の状況を報告する義務があります(645条)。契約書に「毎月、稼働報告書を提出する」とあれば、準委任らしい条文です。

稼働報告書の書き方は「稼働報告書のテンプレート」で紹介しています。

システム開発では準委任と請負をどう使い分ける?

システム開発では、工程によって契約を分けるのが一般的です。やることが固まった工程は請負、固まっていない工程は準委任が向いています。

工程向いている契約理由
要件定義準委任何を作るかを一緒に決める段階
設計・開発・テスト請負(仕様が固まっていれば)完成物をはっきり決められる
運用・保守準委任作業を続けることが中心

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は、この考え方に沿った「情報システム・モデル取引・契約書」を公開しています。2020年12月の第二版では、民法改正を受けて成果完成型の準委任も整理されました。

SES営業が準委任か請負かを確かめる手順

契約書を受け取ったら、次の順番で確認すると抜けがありません。

  1. 案件情報と見比べる:案件紹介のときに聞いた契約形態・単価・精算幅と、契約書の内容が同じかを見る

  2. 6つの条文に印をつける:目的・報酬・検収・契約不適合責任・解除・報告の条文を探す

  3. 食い違いを書き出す:「準委任と聞いたのに検収条項がある」など、気になる点をメモする

  4. 相手に質問する:食い違いは、契約を結ぶ前にメールで確認する

  5. 専門家に相談する:責任が重い条文が残るときは、弁護士に見てもらう

基本契約書の条文の見方は「SES基本契約書のテンプレート|条項チェック15」でも紹介しています。

相手に確認するときのメール例文

件名:【ご確認】業務委託契約書の条項について

〇〇株式会社 〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
業務委託契約書(案)をお送りいただき、ありがとうございます。
事前のお話では準委任契約と伺っておりましたが、第〇条に検収と無償修補の定めがございます。
準委任契約として、第〇条を削除または修正いただくことは可能でしょうか。
ご確認のほど、よろしくお願いいたします。

準委任と請負を取り違えると何が起きる?

取り違えると、お金と責任で揉めやすくなります。よくあるのは次の3つです。

よくある食い違い起きること
準委任のつもりが、検収に合格しないと支払われない作業したのに入金が遅れる・減る
準委任のつもりが、無償修正の義務がある契約終了後も修正対応を求められる
請負なのに、お客さんがエンジニアに直接指示している偽装請負と判断されるおそれがある

3つ目の偽装請負は、準委任でも同じように問題になります。現場の指示の線引きは「準委任契約の指揮命令はどこまで?」と「偽装請負の判断基準」を見てください。

契約の種類によって、印紙が要るかどうかも変わります。請負の契約書は印紙税の課税文書です。

詳しくは「準委任契約の印紙は必要?」で判定表にまとめています。

チョータツで案件の条件と契約書を見比べやすくする

契約書の確認で時間がかかるのは、案件紹介のときの条件を探し直す作業です。チョータツを使うと、案件の情報を1か所で管理・共有できます。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の条件を残すメールを探してExcelに転記案件情報をチョータツで管理。AIが入力を手伝う
契約書と見比べる過去のメールを検索し直す案件の条件をすぐ開いて確認
社内で共有する担当者に聞いて回る案件・人材の情報を社内で共有
パートナーの案件を把握する届くメールを1通ずつ確認連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化

契約書の条文を読んで判断するのは、人の仕事です。チョータツは、判断に必要な案件の条件を見つけやすくする道具として使えます。無料で始められます。

よくある質問

Q. 準委任契約と請負契約の一番の違いは何ですか?
仕事を完成させる義務があるかどうかです。請負は完成が義務で、準委任はきちんと作業することが義務です。
Q. 業務委託契約と準委任契約は違うものですか?
業務委託は法律上の契約名ではなく、よく使われる呼び方です。業務委託契約の中身が、準委任のことも請負のこともあります。
Q. 委任と準委任の違いは何ですか?
頼む内容が法律行為かどうかです。契約締結や訴訟などの法律行為なら委任、それ以外の作業なら準委任です。
Q. SESの契約は準委任と請負のどちらですか?
ふつうは準委任です。ただし、契約書に完成義務や検収が書かれていれば、請負に近い契約になっている可能性があります。
Q. 準委任契約でも成果物の責任を負いますか?
原則として、請負のような契約不適合責任は負いません。ただし、善管注意義務に違反すれば損害賠償の責任を負います。特約があれば特約に従います。
Q. 準委任契約で、パートナー企業に再委託してもいいですか?
発注者の許諾があれば再委託できます。民法の原則では、許諾かやむを得ない事由がなければ再委託できません。基本契約書の再委託の条文も確認します。
Q. 契約書に準委任と書いてあれば、指示を受けても大丈夫ですか?
大丈夫ではありません。お客さんがエンジニアに直接指示を出していれば、契約書の名前に関係なく偽装請負と判断されるおそれがあります。

まとめ

  • 準委任は作業をきちんと行う契約、請負は仕事を完成させる契約

  • 委任は法律行為、準委任は法律行為ではない作業を頼む契約

  • 「業務委託」という名前だけでは判断できない。条文の中身で決まる

  • 目的・報酬・検収・契約不適合責任・解除・報告の6条文で見分ける

  • 準委任の再委託には、原則として発注者の許諾が必要

  • 食い違いは契約を結ぶ前に確認し、重い条文は専門家に相談する

  • 案件の条件はチョータツに集めておくと、契約書と見比べやすい

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料(2026年9月28日確認)

関連する記事