SESに瑕疵担保責任はある?契約不適合責任との違いと準委任・請負の比較表|答え方の例文つき
公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日
瑕疵担保責任とは?契約不適合責任に変わった理由
瑕疵担保責任とは、売ったものや仕上げたものに隠れた欠陥(瑕疵)があった時に、売主や請負人が負う責任のことです。2020年3月までの民法で使われていた言葉です。
2017年6月2日に公布された改正民法(平成29年法律第44号)が、2020年4月1日に施行されました。この改正で、瑕疵担保責任は契約不適合責任に整理し直されました。
契約不適合責任とは、引き渡したものが契約の内容に合っていない時に、売主や請負人が負う責任のことです。種類・品質・数量が合っているかで判断します。
名前が変わった一番の理由は、判断の基準を変えたことです。「隠れた欠陥かどうか」ではなく、「契約で約束した内容に合っているか」で判断します。そのため、契約書に何を書いたかが、以前よりも大切になりました。
瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い
瑕疵担保責任と契約不適合責任の大きな違いは、判断の基準と求められることの種類、そして期間の数え方の3つです。
| 比べる点 | 瑕疵担保責任(改正前) | 契約不適合責任(改正後) |
|---|---|---|
| 判断の基準 | 隠れた瑕疵(欠陥)があるか | 契約の内容に合っているか |
| 求められること | 修補・損害賠償・解除 | 追完(修正など)・代金や報酬の減額・損害賠償・解除 |
| 期間(請負) | 引き渡しから1年以内に請求(改正前637条) | 不適合を知った時から1年以内に通知 |
| 使う場面 | 売買・請負 | 売買・請負(ほかの有償契約にも準用) |
改正後は、注文者が不適合を知った時から1年以内に通知すればよくなりました(民法637条)。引き渡しから何年もたってから不具合が見つかった場合でも、知ってから1年以内に通知すれば責任を問える形です。
ただし、別に消滅時効のルールもあります。権利を使えると知った時から5年、使える時から10年で、権利は時効で消えます(民法166条)。
SES(準委任)と請負の責任の違い
SES(準委任)と請負の責任の違いは、「働くこと」を約束するか、「完成」を約束するかです。この違いが、不具合の責任の中身を分けます。
請負契約とは、仕事を完成させることを約束し、その結果に対して報酬を受け取る契約のことです(民法632条)。準委任契約とは、法律行為でない事務(仕事)を任せる契約のことです(民法656条)。
| 比べる点 | 準委任(SES) | 請負 |
|---|---|---|
| 約束すること | 業務をきちんと行うこと | 仕事を完成させること |
| 不具合の責任 | 善管注意義務違反なら債務不履行 | 契約不適合責任(追完・減額・賠償・解除) |
| 報酬の条件 | 業務を行ったこと(成果完成型は成果の引き渡し) | 仕事の完成(目的物の引き渡しと同時) |
| 途中でやめる時 | いつでも解除できる(不利な時期は賠償あり) | 完成前は注文者が損害を賠償して解除できる |
請負で不具合があった場合、民法559条により売買のルール(562条〜564条)が準用されます。注文者は修正(追完)・報酬の減額・損害賠償・解除を求められます。準委任には、こうした準用の規定がありません。
→ 契約書での見分け方は準委任と請負の違い|SES・システム開発の契約書で見分ける6点
善管注意義務とは?SESで責任が問われる場面
善管注意義務とは、「善良な管理者の注意」をもって、任された仕事を処理する義務のことです(民法644条)。その仕事の専門家として、ふつう求められる注意を払って働くことを意味します。
SESでは、不具合があっただけでは、ただちに善管注意義務違反にはなりません。ふつうの専門家なら防げたミスかどうかが、判断の分かれ目になります。
| 場面 | 善管注意義務違反になりうるか |
|---|---|
| 仕様どおりに作ったが、仕様そのものに誤りがあった | なりにくい(仕様を決めたのは顧客側) |
| テスト手順を守らず、重大な不具合を見逃した | なりうる |
| 気づいた危険を、顧客に報告しなかった | なりうる |
| スキルシートと実力が大きく違い、作業が進まない | なりうる |
善管注意義務を守らなかった時は、民法415条の債務不履行として損害賠償を求められることがあります。債務不履行とは、契約で約束したことを守らないことです。
ただし、415条には「責めに帰することができない事由」なら賠償しなくてよいという定めもあります。顧客側の指示や情報の誤りが原因なら、その事情を説明できるよう記録を残します。
成果完成型の準委任には注意
準委任でも、成果完成型の場合は、報酬が成果の引き渡しと結びつきます。成果完成型の準委任とは、業務の結果として得られる成果に対して報酬を払う形の準委任のことです(民法648条の2)。
成果完成型では、成果の引き渡しと同時に報酬を払うと定められています。途中で終わった時は、注文者が受ける利益の割合で報酬を請求できます(634条の準用)。
一方、648条の2には、契約不適合責任の規定を準用する定めはありません。ただし、有償契約に売買のルールを準用する民法559条が使えるとする見方もあります。争いになりそうな時は、弁護士に相談しましょう。
ただし、契約書で「成果物に不具合があれば無償で修正する」などと決めていれば、その特約が適用されます。成果完成型では、こうした条項が入っていることが多いので、よく確認しましょう。
→ 詳しくは準委任契約の成果完成型とは|履行割合型との違いと検収の注意点
不具合の責任を問われた時に契約書で見る6か所
顧客から不具合の責任を問われた時は、まず契約書の6か所を確認します。口頭でその場の回答をせず、契約書を見てから答えるのが基本です。
契約の種類:「準委任」「請負」のどちらと書かれているか。書かれていなければ、業務の中身と報酬の決め方で判断します。
業務の範囲:要員が担当する作業として何が書かれているか。テストやレビューが含まれるか。
報酬の決め方:時間や月額での精算か、成果物の納品と引き換えか。
成果物と検収:「成果物」「納品」「検収」という言葉があるか。あれば請負や成果完成型に近い内容です。
責任・保証の条項:「契約不適合」「瑕疵」「保証期間」「無償修補」の言葉があるか。あれば、その期間と範囲。
損害賠償の上限:「委託料の〇か月分まで」など、上限額が書かれているか。
準委任の契約書に契約不適合責任の条項が入っていることもあります。ひな形を使い回した結果であることが多いため、契約の前に外すか、範囲を決めるよう交渉します。
「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」は、改正民法に合わせた契約書の見本です。IPA(情報処理推進機構)が2020年12月22日に公表しました。自社のひな形を見直す時の参考になります。
→ 条項の確認リストはSES基本契約書のテンプレート|個別契約・注文書と条項チェック15
請負・成果完成型で責任の範囲を決める条項4つ
請負や成果完成型の契約を結ぶ時は、責任の期間・上限・原因・範囲の4つを契約書で決めておきます。民法のルールは、契約書の特約で変えられる部分が多いからです。
| 条項 | 決めておくこと | 根拠・注意点 |
|---|---|---|
| 責任の期間 | 「検収から6か月以内に通知」など | 決めなければ、知った時から1年以内の通知(民法637条) |
| 賠償の上限 | 「その個別契約の委託料まで」など | 上限がないと、通常生ずべき損害まで広がる(民法416条) |
| 顧客側の原因 | 顧客の指示や資料による不具合は対象外 | 民法636条にも同じ趣旨の定めがある |
| 修正の範囲 | 無償で直す範囲と、有償になる作業 | 仕様変更は別の見積りにすると明記する |
ただし、特約で責任を軽くしても、知りながら顧客に告げなかった不具合は免れません(民法572条を559条で準用)。気づいた不具合は、記録に残して顧客へ報告しましょう。
営業としてのおすすめは、請負の案件を準委任と同じ感覚で提案しないことです。案件を受けた時点で契約の種類と成果物の有無を確認し、責任の条項を開発責任者と一緒に読みます。
営業の答え方|例文3つ
顧客への答えは、謝意・事実の確認・契約にもとづく対応の順で伝えます。「準委任なので責任はありません」と最初に言い切ると、関係がこじれます。
例文1:まず事実を確かめたい時
件名:〇〇システムの不具合の件(株式会社△△ □□) 株式会社〇〇 ××様 いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。 〇〇システムの不具合について、ご連絡ありがとうございます。 ご迷惑をおかけしており、申し訳ございません。 現在、弊社〇〇から作業の経緯を確認しております。 〇月〇日(〇)までに、発生の経緯と、 弊社として対応できる内容をご報告いたします。
例文2:準委任の契約であることを伝える時
先日の不具合の件につき、契約内容を確認いたしました。 本件の個別契約は準委任契約であり、 弊社は業務の遂行についてお引き受けしております。 弊社〇〇の作業の中で、注意が足りなかった点がないかを 引き続き確認し、再発防止策をご提案いたします。 修正作業につきましては、契約期間内の業務として 対応させていただきます。
例文3:契約の範囲を超える対応を求められた時
ご依頼いただいた無償での追加修正につきまして、 現在の契約は準委任契約で、成果物の保証は含まれておりません。 追加の作業が必要な場合は、作業の範囲と時間を お見積りのうえ、あらためてご提案いたします。 ご不明な点がございましたら、お気軽にお申し付けください。
例文2では、修正を「契約期間内の業務」として受けています。準委任では、稼働時間の中で修正作業をすること自体は、通常の業務として対応できます。
責任の話で偽装請負にならないために
不具合の責任を話し合う時は、顧客が要員に直接やり直しを指示しないようにすることも大切です。厚生労働省の疑義応答集では、発注者が作業者に直接やり直しを指示すると、偽装請負と判断されうるとしています。
準委任なのに「完成まで責任を持て」「現場の指示どおりに直せ」と求められる状態は、契約の形と実態がずれているサインです。修正の依頼は、営業や管理責任者を通して受けましょう。
→ 詳しくは偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選
→ 疑義応答集の読み方は偽装請負の37号告示をやさしく解説|厚労省Q&AのSES該当箇所
チョータツで案件ごとの契約条件を管理する
自分で管理する場合、案件の契約形態や条件は、メールやExcel、紙の契約書にばらばらに残りがちです。不具合の連絡が来てから探すと、答えるまでに時間がかかります。
チョータツとは、SES営業の案件・人材を管理・共有するツールのことです。3,000社以上が使っており、無料で始められます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 案件の条件を残す | メールやExcelに分かれて保存 | 案件の情報をまとめて管理できる |
| 提案前に確認する | 過去のメールを探し直す | 案件情報を見て、提案前に条件を確認できる |
| 社内で共有する | 担当者しか知らない | 案件・人材の情報を社内で共有できる |
| 入力の手間 | 手で転記する | AIが入力を手伝う |
案件の段階で「準委任か請負か」「成果物の納品があるか」を確かめて記録しておけば、提案時に条件のずれに気づけます。責任のトラブルの多くは、提案前の確認で防げます。
よくある質問
- Q. SESに瑕疵担保責任はありますか?
- 瑕疵担保責任は2020年4月1日の改正民法の施行で契約不適合責任に変わりました。SESで多い準委任契約には、民法上の契約不適合責任の規定がありません。受ける側が負うのは善管注意義務です。
- Q. 準委任契約で、バグの修正を無償で求められたら応じる必要がありますか?
- 契約書に無償修補や保証の特約がなければ、民法上の義務としては定められていません。ただし、契約期間内の稼働時間で修正作業をすることは、通常の業務として対応できます。
- Q. 善管注意義務違反になると、どうなりますか?
- 債務不履行として、損害賠償を求められたり、契約を解除されたりすることがあります。ふつうの専門家なら防げたミスかどうかが判断の分かれ目です。
- Q. SESの契約書に「契約不適合責任」の条項が入っていたら?
- 特約として、その条項に従う可能性があります。ひな形の使い回しで入っていることも多いため、契約前に外すか、期間と範囲を決めるよう交渉しましょう。
- Q. 請負の契約不適合責任は、いつまで問われますか?
- 民法637条では、注文者が不適合を知った時から1年以内に通知しなければ、責任を問えなくなります。別に民法166条の消滅時効もあります。契約書で期間を決めていれば、その定めも確認します。
- Q. 請負契約で、不具合の責任期間を短くできますか?
- できます。民法637条の「知った時から1年以内の通知」は、契約書の特約で「検収から6か月以内」などに変えられます。ただし、知りながら告げなかった不具合は、特約があっても責任を免れません。
- Q. SESの成果物に対する責任はだれが負いますか?
- 準委任では、成果物の完成そのものを約束していないのが基本です。成果物の責任を負うのは、請負契約の場合や、契約書で特約を定めた場合です。
まとめ
瑕疵担保責任は、2020年4月1日施行の改正民法で契約不適合責任に変わった
契約不適合責任は売買と請負のルールで、準委任(SES)には民法上の規定がない
準委任で問われるのは善管注意義務。守れなければ債務不履行として賠償を求められることがある
成果完成型や、契約書に保証・無償修補の特約がある場合は、その条項に従う
請負・成果完成型では、責任の期間・上限・原因・範囲の4つを特約で決めておく
不具合の責任を問われたら、契約書の6か所を確認してから、例文の順で答える
チョータツで案件の条件を管理し、提案前に契約形態を確かめておくと、責任トラブルを防げる
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日
参考資料
e-Gov法令検索「民法」(第166条、第415条、第559条、第562条〜第564条、第572条、第632条〜第634条、第636条、第637条、第641条、第644条、第648条の2、第651条、第656条)
法務省「民法(債権関係)改正の重要日程」
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」
厚生労働省「37号告示に関する疑義応答集(第1集)」(2. 発注者からの注文(クレーム対応))