SESのクレーム対応|スキル不足で退場を求められた時に営業がやる5手順と例文(代わりの要員の出し方つき)

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

SESのクレーム対応で最初に押さえる3つの前提

SESのクレーム対応の前提は、「契約の中身」「窓口はだれか」「要員を決めるのはだれか」の3つです。この3つを間違えると、対応がこじれます。

SESのクレーム対応とは、顧客から要員の仕事ぶりに不満を伝えられた時に、取引を立て直す営業の動きのことです。事実を確かめ、改善や交代を提案します。

前提1:SESは「完成」ではなく「きちんと働くこと」を約束する契約

準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決められた業務を行うこと自体を引き受ける契約のことです。SESの多くは準委任契約で結ばれています。

準委任契約で受ける側は、善管注意義務を負います。善管注意義務とは、その仕事の専門家として当然求められる注意を払って働く義務のことです(民法644条・656条)。

つまり「成果物が完成していない」だけでは、ただちに契約違反にはなりません。ただし、約束したスキルと実際の力が大きく違うと、善管注意義務を果たしていないと言われるおそれがあります。

前提2:クレームの窓口は営業

顧客の不満は、SES企業の営業や管理責任者が受けるのが基本です。厚生労働省の疑義応答集は、発注者から受注者への「作業のやり直し」の注文を認めています。会社同士のやりとりなので、問題ないという考え方です。

一方で、発注者が現場の作業者に直接やり直しを指示すると、指揮命令にあたり偽装請負と判断されうるとしています。クレームを要員本人にだけ伝えさせないよう、営業が間に入ります。

→ 詳しくは準委任契約の指揮命令はどこまで?SES現場のOK・NG具体例20

前提3:交代するかどうかを決めるのは自社

厚生労働省の疑義応答集(第3集)は、発注者による要員の指名や就業の拒否に触れています。こうした行為があると、適正な請負等とは認められないとしています。

そのため「この人を外して」という要望は、顧客の意見として受け止め、交代するかどうかは自社が判断する形で進めます。実際には顧客の意向を尊重しますが、決めるのは自社という筋を通しておきます。

スキル不足のクレームでよくある4つのパターン

スキル不足のクレームは、「技術」「スピード」「報告・相談」「勤務態度」の4つに分かれます。どれに当たるかで、打つ手が変わります。

パターン顧客の言い方の例主な原因最初に打つ手
技術が足りない「言語の基本がわかっていない」スキルシートと実力の差担当業務の見直しか交代
スピードが遅い「1週間の作業に3週間かかる」現場の慣れ・仕様の理解不足期限つきの改善計画
報告・相談がない「困っているのに言わない」遠慮・関係づくりの不足報告のルールを決める
勤務態度「遅刻が多い」「返事がない」体調・やる気・人間関係本人面談と勤怠の確認

4つのうち、報告・相談と勤務態度は改善しやすいです。技術の差が大きい時は、改善より交代を早めに考えたほうが、顧客との関係を守れます。

クレーム対応の5手順

クレーム対応は、次の5手順で進めます。1〜3は当日から3営業日以内に終えるのが目安です。

  1. 事実確認(当日)

  2. 要員へのヒアリング(当日〜翌日)

  3. 顧客への一次回答(当日〜3営業日以内)

  4. 改善案か交代の提案(1週間以内)

  5. 再発防止(提案が決まった後)

手順1:顧客から事実を聞く

最初にやることは、顧客の不満を具体的な出来事に直して聞くことです。「スキルが足りない」という言葉のままでは、改善も交代の判断もできません。

聞く項目は次の6つです。

  1. いつ・どの作業で起きたか

  2. 期待していた水準はどれくらいか

  3. 実際はどうだったか(遅れた日数、ミスの件数など)

  4. 顧客側でどんな支援をしたか

  5. 同じことが何回あったか

  6. 顧客が望むのは改善か、交代か、終了か

聞いた内容は、日付つきでメモに残します。あとで契約の話になった時の記録になります。

手順2:要員に話を聞く

次に、要員本人から話を聞きます。顧客の話だけで判断せず、両方の事実をそろえることが大切です。

要員に聞く時は、責めずに「何が起きているか」を聞きます。

  • 任されている作業の中身と期限

  • つまずいている部分と、その理由

  • 現場で相談できる相手がいるか

  • 体調や生活面で困っていることはないか

  • 今の現場を続けたいかどうか

実は、仕様の説明が足りない、相談相手がいないなど、現場側の事情が見つかることもあります。その場合も、顧客を責める言い方はせず、改善案に入れて伝えます。

手順3:顧客へ一次回答する

一次回答では、謝意・事実の受け止め・次の回答日の3つを伝えます。原因や結論を急いで言い切る必要はありません。

悪い知らせほど、一次回答はまず電話で伝えます。そのあと、同じ内容をメールで送り、記録に残します。

例文・テンプレート
件名:〇〇様の件のご連絡(株式会社△△ □□)

株式会社〇〇
××様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
本日は、弊社〇〇の業務の状況についてご連絡をいただき、
ありがとうございました。
ご迷惑をおかけしており、申し訳ございません。

いただいた内容をもとに、本人からも事情を確認いたしました。
現在、改善の方法と体制の見直しを社内で検討しております。

〇月〇日(〇)までに、今後の対応案をご提案いたします。
それまでの間に気になる点がございましたら、
本人ではなく私(□□)までご連絡ください。

引き続きよろしくお願いいたします。

最後の一文で、連絡の窓口を営業にそろえるのがポイントです。顧客が要員に直接指示を出し続ける状態を避けられます。

手順4:改善案か交代を提案する

提案では、改善案と交代案の両方を用意し、顧客に選んでもらうのが基本です。どちらを先に出すかは、次の表で判断します。

状況先に出す案理由
報告・相談や態度の問題改善案ルールを決めれば直りやすい
現場の仕様に慣れていない改善案(期限つき)期限を決めて様子を見られる
スキルシートと実力の差が大きい交代案改善を待つと信頼を失う
顧客がすでに交代を決めている交代案改善案は押しつけになる

改善案には、期限と確認方法を入れます。「がんばります」ではなく、「2週間、毎日夕方に進みを報告し、〇月〇日に営業が面談して判断する」のように書きます。

例文・テンプレート
【改善案】
・期間:〇月〇日〜〇月〇日(2週間)
・内容:毎日17時に、その日の作業と翌日の予定を報告
・支援:弊社の技術担当が週1回、進め方を確認
・判断:〇月〇日に、××様と弊社で状況を確認

【交代案】
・候補:〇名(スキルシートを添付します)
・参画できる日:〇月〇日から
・引き継ぎ:現担当と〇日間、並行して作業

手順5:再発を防ぐ

手順5では、なぜスキルの差が起きたのかを社内で振り返ります。多くの原因は、提案と面談の段階にあります。

  • スキルシートに「触ったことがある」程度の技術を書いていなかったか

  • 面談で、実際の作業レベルを確認したか

  • 参画後1か月の間に、営業が様子を聞いたか

参画後は、1週目・2週目・1か月目に要員と顧客の両方へ様子を聞くと、クレームになる前に気づけます。

→ 面談での確かめ方はSES面談の質問内容|営業が聞くべき深掘り質問27
→ スキルの書き方はSESスキルシートのフォーマットと書き方

退場を求められた時に取引を続ける動き方

退場を求められた時に取引を続けるコツは、解約予告の期間内に代わりの要員を出すことです。要員は替わっても、会社としての取引は続けられます。

契約書で確認する3つの条項

退場の話が出たら、個別契約書と基本契約書で次の3つを確認します。

確認する条項見るポイント
解約予告何日前に、どの方法(書面・メール)で伝えるか
中途解約途中で終える時の精算や費用の決まり
要員の交代交代を申し出る手続き、交代の費用の扱い

準委任契約は、民法651条で各当事者がいつでも解除できるとされています。ただし、相手に不利な時期に解除した場合などは、やむを得ない事由がない限り損害賠償が必要になることがあります。

→ 途中終了の進め方はSESの契約途中の退場|営業がやるべき対応5ステップ

代わりの要員を出すまでの流れ

代わりの要員は、退場の話が出た日から探し始めるのが鉄則です。次の流れで進めます。

  1. 顧客に、代わりの要員に求めるスキルを聞き直す(前任で足りなかった点を明確にする)

  2. 自社の待機中・まもなく空く要員を確認する

  3. パートナー(BP)の営業中人材を探す

  4. フリーランスにも声をかける

  5. 候補のスキルシートを2〜3名分そろえて提案する

  6. 前任と数日間重ねて引き継ぐ

前任で足りなかった点は、代わりの要員選びの一番大事な条件になります。同じ失敗をくり返さないよう、面談ではその点を重点的に確かめます。

退場する要員へのフォロー

退場する要員が自社の社員なら、雇用は続いています。現場を離れても、すぐに給与が止まるわけではありません。

次の現場探しと並行して、足りなかったスキルの学び直しの計画を一緒に立てます。要員が自信をなくして退職につながらないよう、事実だけを伝え、人格を責めないことが大切です。

→ 待機中の扱いはSESの待機期間の給与と対応

商流の途中にいる時のクレームの受け方

自社が二次請け以下の時は、クレームを上位の会社経由で受け、同じ経路で返すのが基本です。エンドの担当者に直接連絡すると、商流飛ばしを疑われるおそれがあります。

自社の立場クレームの受け方気をつけること
自社の社員を出している上位の会社の営業から受ける返事も上位の会社を通す
BPの要員を自社経由で出している上位から受け、同じ日にBPの営業へ伝えるBPにも回答の期限を守ってもらう
顧客と直接契約している顧客の担当者から受ける窓口を営業1人にそろえる

商流が深いほど、伝言の途中で話がずれやすくなります。いつ・だれが・何を言ったかをメールで残し、上位の会社とBPに同じ文面で共有しましょう。

BPの要員を交代する時は、BPとの契約の解約予告も確認します。顧客との予告より長いと、代わりを出す前に費用だけが残ることがあります。

→ 商流の考え方はSESの一次請け・二次請けの違い|単価差と商流を上げる方法
→ 直接連絡のリスクはSESの商流飛ばしは違法?営業が知るべきリスクと防ぎ方5つ

代わりの要員を自分で探す方法

代わりの要員を自分で探す方法は、「自社」「パートナー」「フリーランス」の3つです。早さを重視するなら、3つを同時に進めます。

探し先自分でやる方法かかる時間の目安注意点
自社の要員待機中・契約終了が近い人を確認すぐ空いている人がいるとは限らない
パートナー(BP)届いた人材メールを探す、電話で聞く数日メールが多く見落としやすい
フリーランスエージェントや知人に声をかける数日〜数週間条件のすり合わせに時間がかかる

パートナーを探す場合は、過去に届いた人材メールをさかのぼるのが一般的です。ただ、メールは毎日大量に届くため、条件に合う人を見つけるのに時間がかかります。

→ 取引先を増やしたい場合はSESパートナー募集企業の一覧と探し方7選

チョータツとxhoursで代わりの要員探しを早くする

自分で探す方法は、どれも「探す→連絡する→空きを確かめる」をくり返すため時間がかかります。DrivenXのツールを使うと、代わりの要員探しをふだんから準備しておけるようになります。

場面自分でやる場合DrivenXのツールを使う場合
BPの人材を探す届いたメールを1通ずつ読み返すチョータツで連携した会社の営業中人材を、データベースで探せる
自社の人材を把握するExcelで空き状況を管理チョータツで案件・人材の情報を管理・共有できる
候補を集めるBCCで一斉にメールを送るチョータツのメール配信機能でパートナーに配信できる
フリーランスに声をかけるエージェントに依頼して待つxhoursでITフリーランスに直接スカウトできる

チョータツでできること

チョータツとは、SES営業の案件・人材を管理・共有するツールのことです。3,000社以上が使っており、無料で始められます。

  • 他社と連携すると、相手の営業中人材が自社のデータベースになる

  • 自社の案件・人材の情報を管理・共有できる(AIが入力を手伝う)

  • パートナーへメールで案件・人材情報を配信できる

退場の連絡が来た日に、連携先の営業中人材から候補を探し始められます。解約予告の期間を、候補探しではなく面談と引き継ぎに使えるようになります。

xhoursでフリーランスに直接声をかける

xhours(エックスアワーズ)とは、企業がITフリーランスに直接スカウトを送れるサービスです。数千名のフリーランスのデータベースから探せます。

BPの人材で見つからない時は、xhoursでITフリーランスに直接スカウトする方法もあります。

クレーム対応でやってはいけない5つのこと

クレーム対応で一番やってはいけないのは、回答を遅らせることです。ほかにも、次の5つは顧客の信頼を大きく下げます。

  1. 返事を数日放置する:顧客は「軽く見られている」と感じます。当日中に一次回答します。

  2. 要員をかばうだけ・責めるだけ:どちらかの話だけで判断すると、事実がずれます。

  3. 顧客と要員の直接のやりとりに任せる:顧客の直接指示が続くと、偽装請負と見られるおそれがあります。

  4. 単価の値引きだけで収めようとする:スキルの問題が残ったままでは、同じクレームがくり返されます。

  5. 経歴を盛った代わりの要員を出す:2回目の失敗は、取引の終了に直結します。

→ 経歴の問題が見つかった時はSESの経歴詐称がバレたら?営業がやる対応6ステップ

よくある質問

Q. SESでスキル不足のクレームが来たら、すぐに退場になりますか?
すぐに退場になるとは限りません。報告の不足や現場への慣れが原因なら、期限つきの改善案で続けられることもあります。まず事実を確かめ、改善案と交代案の両方を出しましょう。
Q. 顧客から「明日から来なくていい」と言われたら?
まず個別契約書の解約予告と中途解約の条項を確認します。そのうえで、契約の終わらせ方と精算を顧客と書面でそろえます。同時に代わりの要員を提案すると、取引を続けやすくなります。
Q. スキル不足を理由に、顧客から損害賠償を求められることはありますか?
準委任契約は完成を約束しないため、成果が出ないだけでは請求は通りにくいです。ただし、約束したスキルと大きく違うと、善管注意義務違反を問われることがあります。詳しくは準委任で負う責任と契約不適合責任の違いで解説しています。
Q. 顧客が要員に直接「やり直して」と言うのは問題ですか?
厚生労働省の疑義応答集では、発注者が作業者に直接やり直しを指示すると、偽装請負と判断されうるとしています。やり直しの注文は、営業や管理責任者を通してもらうようにしましょう。
Q. 交代の要員は、どれくらいの期間で出せばいいですか?
契約書の解約予告の期間が基準です。1か月前予告の契約なら、その1か月の中で候補の提案・面談・引き継ぎまで終えるのが理想です。
Q. 二次請けの立場で、エンドから直接クレームを受けたら?
内容を聞いたうえで、上位の会社にもその日のうちに共有します。回答は上位の会社を通して返すのが基本です。
Q. 退場になった要員の給与はどうなりますか?
自社の社員なら、現場を離れても雇用は続きます。次の現場が決まるまでの待機中の扱いは、就業規則と労働基準法にそって決めます。

まとめ

  • クレーム対応は、事実確認・要員へのヒアリング・一次回答・改善か交代の提案・再発防止の5手順

  • 一次回答は当日中。結論より「次にいつ何を返すか」を伝える

  • クレームの窓口は営業。顧客から要員への直接指示が続かないようにする

  • 二次請け以下なら、クレームは上位の会社を通して受け、同じ経路で返す

  • 交代するかどうかは自社が判断し、顧客の意向を尊重して進める

  • 退場になっても、解約予告の期間内に代わりの要員を出せば取引は続けやすい

  • ふだんからチョータツで連携先の営業中人材を探せる状態にしておくと、退場の日から動ける

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料

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