SESの経歴詐称がバレたら?営業の対応6ステップと見抜くチェックリスト12

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

SESの経歴詐称とは?

SESの経歴詐称とは、エンジニアの経験や資格を、事実と違う内容でお客さんに伝えることです。経験年数・担当工程・使える技術・資格などが対象です。スキルシートの書き換えだけでなく、面談での口頭の説明も含みます。

よくある詐称は、次の4つです。

種類例
経験年数の水増し実務1年を「Java 5年」と書く
担当工程の水増しテストだけの経験を「設計から担当」と書く
技術の水増し研修で触っただけの技術を「実務経験あり」と書く
資格・学歴の偽り持っていない資格や、卒業していない学校を書く

詐称した人が誰かで、営業の動き方が変わります。自社の社員なら自社の問題として、パートナー企業(BP)の要員ならパートナーと一緒に対応します。BPとは、案件や人材を紹介し合う取引先の会社のことです。

SESで経歴詐称が起きる理由

SESで経歴詐称が起きる一番の理由は、案件の条件と人材の経験の差を、書類で埋めようとすることです。営業が理由を知っておくと、どこで盛りすぎが起きやすいかがわかります。

  1. 案件の必須条件が高い:「経験3年以上」などの条件に届かない人を、無理に通そうとする

  2. 商流が深い:間に何社も入ると、途中で書き換えられても気づきにくい

  3. 待機を減らしたい:売上ゼロの期間を避けるため、会社が本人に書き換えを求める

  4. 本人が確認されない:営業がスキルシートだけを見て、本人と話さずに提案する

2と4は、提案する側の営業が防げる理由です。商流の確認と本人との会話は、後のチェックリストにも入れています。

→ 商流の深さの考え方は、SESの一次請け・二次請けの違いで解説しています。

経歴詐称はなぜバレる?

経歴詐称は、現場に入ってから早い段階でバレることが多いです。書類と実際の仕事ぶりの差は、毎日一緒に働く人にすぐ見えるからです。

バレるきっかけは、主に次の4つです。

  1. 作業のスピードや質が、書かれた経験年数に見合わない

  2. 基本的な用語や手順を知らない

  3. 前の現場の話が、スキルシートの内容と合わない

  4. 資格の証明書を求められて出せない

お客さんは、「スキル不足」として営業に連絡してくることがほとんどです。最初から「詐称では」と言われることは多くありません。スキル不足のクレームへの基本の対応は、スキル不足で退場を求められた時の5手順で解説しています。

SESで経歴詐称はどのくらいある?割合のデータ

SESの経歴詐称の割合を示す公的な統計はありません(2026年9月時点)。業界の記事で見かける割合の数字は、調査の方法がわからないものが多く、そのまま信じるのは危険です。

一方で、経歴詐称が裁判で問題になった例はあります。東京地方裁判所は2024年7月19日、SES企業の経営者らに賠償を命じました。未経験の社員に経歴詐称をさせ、客先に出していた事件です。

報道によると、判決はその事業を「取引先に対する詐欺行為により利益を得ようとするもの」と述べています。

報道によると、東京高等裁判所は2025年2月6日に賠償額を約769万円に増やしました。2026年2月6日には、最高裁判所が経営者側の上告を退け、判決が確定しています。

経歴詐称がバレた時に営業がやる対応6ステップ

経歴詐称がバレたら、次の6ステップで動きます。ステップ1〜2は当日中、ステップ4は1週間以内を目安にします。

  1. 事実を確認する(当日)

  2. お客さんに第一報を入れ、謝罪する(当日)

  3. 本人とパートナー企業から話を聞く(1〜3日)

  4. 交代要員を提案する(1週間以内)

  5. 契約と精算を整理する(交代が決まったら)

  6. パートナー企業への責任追及と再発防止(1か月以内)

ステップ1:事実を確認する

最初にやるのは、何が、どの程度、事実と違うのかを確かめることです。お客さんから聞いた内容と、提案したスキルシートを並べて比べます。

確認するのは、次の3点です。

  • スキルシートのどの項目が、事実と違うのか

  • 面談で、誰が、どう説明したのか

  • 詐称を知っていたのは誰か(本人・パートナー・自社の営業)

この段階では、本人を責めないことが大切です。事実と違う内容を書いたのが本人か、会社かはまだわかりません。

ステップ2:お客さんに第一報を入れ、謝罪する

お客さんには、当日中に電話で第一報を入れます。そのうえで、メールでも同じ内容を送り、記録を残します。

第一報で伝えるのは、次の4つです。

  1. 提案した内容と実際に差があったことへのお詫び

  2. 現時点でわかっている事実

  3. これから確認すること

  4. 次に連絡する日時

事実がわからないうちに「本人が勝手にやった」と言うのは避けます。後で違っていたときに、信用をさらに失います。

例文・テンプレート
件名:〇〇案件 要員〇〇の件(お詫びとご報告)

株式会社△△
〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社□□の■■です。
本日ご連絡いただいた要員〇〇の件、ご提案内容と実際のご経験に
差があり、大変ご迷惑をおかけしております。深くお詫び申し上げます。

現在、本人および所属企業に経緯を確認しております。
〇月〇日(〇)の〇時までに、確認結果と今後のご提案をご報告いたします。

取り急ぎ、お詫びとご報告を申し上げます。

ステップ3:本人とパートナー企業から話を聞く

次に、本人とパートナー企業の両方から話を聞きます。聞いた内容は、日時と一緒にメモに残します。

聞くことは、次の4つです。

  • スキルシートを誰が書いたか

  • 実際の経験(期間・工程・技術)

  • 詐称を指示した人がいるか

  • 今の現場を続けたいか

先ほど紹介した判決のように、会社が本人に詐称をさせていた例もあります。本人だけの責任と決めつけず、書いた経緯を確かめましょう。

ステップ4:交代要員を提案する

取引を続けるには、1週間以内に交代要員を提案するのが目安です。お客さんの現場は、人が抜けると止まってしまうからです。

交代要員を出すときは、次の3点を守ります。

  1. スキルシートの内容を、営業が本人に直接確認してから出す

  2. 詐称のあった項目(例:Java経験)は、証拠となる実績を添える

  3. 提案メールに「今回の反省を踏まえ、確認した内容です」と一言添える

交代が間に合わない場合は、いつまでに出せるかを正直に伝えます。自分で探す方法とツールを使う方法は、後の章で紹介します。

→ 途中で抜ける時の契約の扱いは、SESの契約途中の退場|営業がやるべき対応5ステップで解説しています。

ステップ5:契約と精算を整理する

交代が決まったら、契約書と精算の扱いを整理します。基本契約書と個別契約書で、次の条項を確認しましょう。

条項確認すること
要員の交代交代の申し出の方法と、交代までの期間
契約の解除解除できる条件と、予告の期間
損害賠償賠償の範囲と上限(「委託料の〇か月分まで」など)
表明保証要員の経歴・スキルを保証する文言があるか

表明保証とは、契約の相手に「この内容は事実です」と約束する条項のことです。パートナーとの契約にこの条項があると、責任を問いやすくなります。

→ 基本契約書で見ておく条項は、SES基本契約書のテンプレート|条項チェック15で確認できます。

すでに働いた分の委託料を減らしてほしいと言われることもあります。応じるかどうかは、詐称の程度と契約の内容で決まります。その場で即答せず、社内で決めてから返事をしましょう。

ステップ6:パートナー企業への責任追及と再発防止

要員がパートナー企業の所属なら、パートナーに経緯の説明と責任を求めます。求める内容は、次の3段階で考えます。

  1. 書面での経緯の説明と再発防止策を求める

  2. お客さんに払う減額分や賠償分を、パートナーに請求できるかを契約書で確かめる

  3. 詐称を会社ぐるみで行っていた場合は、取引の停止を検討する

請求するかどうかは、契約書の条項と損害の大きさで決まります。金額が大きい場合は、弁護士に相談してから動きましょう。

訴訟になりうる場面

経歴詐称で訴訟になりうるのは、お客さんに実際の損害が出た時と、会社が詐称をさせていた時です。誰が誰を訴えるかで、使われる法律が変わります。

誰が誰に起こりうること主な根拠
お客さん → 自社契約の解除、損害賠償の請求民法415条(債務不履行)、651条・656条(準委任の解除)
お客さん → 自社だまされて結んだ契約の取消し民法96条(詐欺による意思表示)
自社 → パートナー損害分の請求、契約の解除民法415条、契約書の表明保証条項
社員 → 会社・経営者詐称を強いられたことへの賠償民法709条(不法行為)など

債務不履行とは、契約で約束したことを果たさないことです。準委任では、受注者は「善良な管理者の注意」をもって仕事をする義務を負います(民法644条)。この義務を善管注意義務と呼びます。

悪質な場合は、刑法246条の詐欺罪が問題になることもあります。詐欺罪の罰則は、10年以下の拘禁刑です。ただし、実際に刑事事件になるかは個別の事情によります。

提案前にスキルシートの盛りすぎを見抜くチェックリスト

経歴詐称への一番の対策は、提案する前に盛りすぎを見抜くことです。次の12項目で確認しましょう。3つ以上当てはまったら、提案を止めて本人に確かめます。

#確認すること盛りすぎのサイン
1経験年数の合計年齢や社会人歴に対して長すぎる
2案件ごとの期間期間が重なっている、空白が不自然に少ない
3担当工程1年目から要件定義・設計を担当している
4技術の数短い期間に言語・技術が多すぎる
5役割経験3年未満でリーダー・PMが続いている
6業務の説明「〇〇システムの開発」だけで中身がない
7案件の規模チームの人数や自分の担当範囲が書かれていない
8資格証明書のコピーを出せない
9研修研修期間が実務の年数に入っている
10単価経験年数に対して、希望単価が低すぎる
11所属パートナーの社員か、さらに別の会社の人かが不明
12事前の会話営業との会話で、技術の中身を説明できない

特に12番が大切です。提案前に10分でも本人と話し、「その案件で一番大変だったことは?」と聞いてみましょう。実際に経験した人は、具体的な場面をすぐ話せます。

→ 正しい形はSESスキルシートのフォーマットと書き方で確認できます。記入例はエンジニアのスキルシート書き方例にあります。面談で聞く質問は、SES面談の質問内容|営業が聞くべき深掘り質問27が役立ちます。

交代要員をすぐ見つける方法

交代要員は、自社の待機者、既存のパートナー、フリーランスの順に探すのが早いです。

自分でやる場合

  1. 自社で待機中、または近く契約が終わる社員を確認する

  2. 取引のあるパートナーに、条件をまとめたメールを送る

  3. 届いた人材メールの中から、条件に合う人を探す

  4. 候補が決まったら、営業が本人と話して経歴を確かめる

自分で探すと、パートナーからの返事を待つ時間がかかります。届いたメールを1通ずつ読むのも手間です。

チョータツで営業中人材から探す

チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有するツールのことです。3,000社以上が利用していて、無料で始められます。

  • 他社と連携すると、他社の営業中人材をデータベース化できる

  • 案件・人材の情報を管理・共有できる。AIが入力を手伝う

  • パートナーへのメール配信機能で、交代要員を探している案件を知らせられる

連携した会社の営業中人材を一覧で探せるので、メールの返事を待たずに候補を絞れます。

xhoursでフリーランスに直接声をかける

xhours(エックスアワーズ)とは、企業がITフリーランスに直接スカウトを送れるサービスです。数千名のフリーランスのデータベースから探せます。

パートナー経由の人材だけでは見つからない場合に、フリーランスに直接声をかける方法として使えます。直接やり取りするので、経歴を本人に確かめやすいのも利点です。

→ xhoursでITフリーランスを探す

経歴詐称の対応でやってはいけないこと

経歴詐称の対応では、次の4つを避けます。どれも、お客さんの信用をさらに失う行動です。

  • 事実を確かめる前に、本人だけのせいにする

  • 詐称を隠したまま、交代の理由を「体調不良」などにする

  • 確かめていないスキルシートで、交代要員を出す

  • その場で減額や賠償に即答する

よくある質問

Q. SESで経歴詐称がバレたら、すぐ契約解除になりますか?
すぐ解除になるとは限りません。多くの場合、お客さんはまず交代を求めます。早く交代要員を出せれば、取引を続けられることもあります。
Q. 経歴詐称で訴訟になることはありますか?
あります。お客さんに損害が出れば、債務不履行(民法415条)などで賠償を求められることがあります。会社が社員に詐称をさせた例では、経営者に賠償を命じる判決が2026年2月に確定しています。
Q. パートナー企業の要員が詐称していた場合、責任は誰にありますか?
お客さんとの契約の当事者である自社が、まずお客さんに対応します。そのうえで、パートナーとの契約書にもとづき、パートナーに説明や損害分の負担を求めます。
Q. SESの経歴詐称の割合はどのくらいですか?
割合を示す公的な統計はありません(2026年9月時点)。数字をうのみにせず、自社の提案前チェックを強くするのが現実的です。
Q. 経歴詐称をしている企業はどう見分けますか?
スキルシートの盛りすぎのサインが続く会社は要注意です。経験の中身を聞いても答えられない要員が多い会社とは、取引を見直しましょう。
Q. 詐称した本人を、そのまま別の現場に出してもいいですか?
経歴を正しく書き直し、実際のスキルに合う案件に出すなら問題ありません。同じ内容のまま別の現場に出すのは、同じトラブルをくり返すことになります。

まとめ

  • 経歴詐称がバレたら、事実確認→第一報と謝罪→聞き取り→交代要員→契約と精算→パートナーへの責任追及の6ステップ

  • 当日中に事実を確かめ、お客さんに電話とメールで第一報を入れる

  • 取引を続けられるかは、交代要員を1週間以内に出せるかで決まる

  • 損害が出れば債務不履行、悪質なら詐欺罪が問題になることもある

  • 一番の対策は、提案前の12項目チェックと、営業による本人への確認

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料(2026年9月28日確認)

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