SESの商流飛ばしは違法?契約違反になる線引きと損害賠償のリスク、商流を正しく上げる方法5つ【Q&A】

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

Q1. SESの商流飛ばしとは何ですか?

商流飛ばしとは、ほかの会社を通して知った案件やエンジニアについて、間にいる会社を抜かして直接契約することです。「中抜き」「頭越し」と呼ばれることもあります。

商流とは、SESの仕事がエンド(システムを使う発注元)から、いくつもの会社を通って流れてくる経路のことです。たとえば「エンド → 元請け → A社 → 自社」という流れがあるとします。自社がA社を抜かし、元請けと直接契約するのが典型的な商流飛ばしです。

IT業界の商流飛ばしには、主に3つの形があります。

形何をするか例
上を飛ばす案件をくれた会社を抜かし、その上の会社と直接契約するA社経由の案件を、元請けと直接契約する
下を飛ばす人材をくれた会社を抜かし、エンジニア本人と直接契約するB社所属のフリーランスと、自社が直接契約する
横に流す知った案件を、紹介元に黙って別ルートで提案するA社から聞いた案件に、別の会社経由で人を出す

どの形も、「紹介してくれた会社の取り分を奪う」点が共通しています。

→ 商流の階層ごとの違いはSESの一次請け・二次請けの違い|単価差と商流を上げる方法で解説しています。

Q2. 商流飛ばしは違法ですか?

商流飛ばしそのものを禁止する法律はないため、それだけで刑事罰を受けることはありません。ただし、契約で禁止されていれば契約違反になり、民事上の責任を問われます。

日本の民法では、誰と契約するか、どんな内容で契約するかは原則として自由です(民法第521条)。そのため、法律だけを見れば、元請けと直接取引することは自由です。

一方で、多くのSESの基本契約書には「紹介された相手と直接取引しない」という約束が入っています。この約束を破ると、民法の債務不履行(契約で約束したことを守らないこと)にあたります。相手は、生じた損害の賠償を求められます(民法第415条)。

場面法律上の扱い
契約に禁止条項がない原則として自由。ただし信用を失うリスクは残る
禁止条項があり、期間内に直接取引した契約違反。損害賠償・違約金の対象になりうる
禁止条項があるが、相手の書面の了承を得た了承の範囲内なら、契約違反にならないのが原則
秘密の情報(単価・顧客名)を使って奪った秘密保持の約束に反する可能性もある

「違法ではない」と「やってよい」は別の話です。契約書を確認せずに動くのが、いちばん危険です。

Q3. 契約書のどの条項を見ればいいですか?

見るべき条項は、直接取引禁止条項・秘密保持条項・違約金条項の3つです。この3つは、多くの場合「基本契約書」に書かれています。

直接取引禁止条項とは、紹介された相手と直接契約しないと決めた約束のことです。紹介された取引先やエンジニアと、紹介元を通さずに契約することを禁じます。「引き抜き禁止条項」「中抜き禁止条項」と呼ぶ会社もあります。

直接取引禁止条項では、次の4点を確認します。

  1. 対象:案件の上位会社(エンド・元請け)か、エンジニア本人か、その両方か

  2. 期間:契約中だけか、契約終了後も続くか。続くなら「終了後〇か月」の具体的な長さ

  3. 例外:「書面による事前の承諾がある場合を除く」といった抜け道があるか

  4. ペナルティ:違約金の金額や計算方法(「月額単価の〇か月分」など)

違約金とは、約束を破ったときに払うお金を、あらかじめ決めておいたものです。民法では、違約金は「損害賠償の額の予定」と推定されます(民法第420条)。そのため、実際の損害額を細かく証明しなくても、決めた金額を求められることがあります。

→ 条項の全体像はSES基本契約書のテンプレート|個別契約・注文書と条項チェック15で確認できます。

Q4. 商流飛ばしで損害賠償はいくら請求されますか?

請求される金額は、契約に違約金の定めがあるかどうかで大きく変わります。定めがあれば、その金額が基準になります。

契約の中身請求されやすい金額の考え方
違約金の定めがある契約書に書いた金額(例:月額単価の数か月分)
違約金の定めがない実際に失った利益(本来もらえたマージンなど)を相手が示して請求
禁止条項がない契約違反を理由とした請求は難しい

ただし、違約金が高すぎる場合や、禁止の期間・範囲が広すぎる場合は、裁判で一部が認められないこともあります。民法では、社会のルールに大きく反する約束は無効とされるためです(民法第90条)。どこからが「広すぎる」かは個別の事情で決まるため、実際に揉めたときは弁護士に相談してください。

損害賠償より重いのは、取引の打ち切りです。紹介元の会社だけでなく、その会社とつながる複数の会社から情報が来なくなることがあります。

→ エンジニアの引き抜きで紹介料を受け取る方法はSESの引き抜きに紹介料は取れる?相場と契約条項の書き方で解説しています。

Q5. 「飛ばし」と見なされないための線引きはどこですか?

線引きは、その取引のきっかけが紹介元にあるかどうかです。紹介元とは関係なく、自社の営業で始まった取引であれば、飛ばしにはあたりません。

判断に迷ったら、次の表で確かめてください。

状況飛ばしにあたるか理由
A社経由の案件で知った元請けに、終了後すぐ直接提案したあたる可能性が高いきっかけがA社。禁止期間内の可能性が高い
A社と取引する前から、元請けと自社が取引していたあたらないことが多いきっかけが自社。取引の記録を残しておく
交流会で元請けの担当者と知り合い、別の案件で取引を始めたあたらないことが多い紹介元が関わっていない案件である
禁止期間が終わった後に、元請けから声がかかった契約上はあたらないことが多いただし、A社に一言伝えると関係を保てる
エンジニア本人から「直接契約したい」と言われた契約次第人材側の禁止条項を確認する

線引きをはっきりさせるため、ふだんから次の2つを記録しておきましょう。

  • いつ・どこでその会社と知り合ったか(名刺交換の日、最初のメールの日付)

  • どの案件・人材がどの会社経由だったか

Q6. 間の会社の了承は、どうやって取ればいいですか?

了承は、直接取引を始める前に、メールか書面で取ります。口頭の「いいですよ」だけでは、あとで「言っていない」と言われたときに証明できません。

了承を取る手順は、次の5ステップです。

  1. 基本契約書の直接取引禁止条項を読み、対象と期間を確認する

  2. 紹介元の担当者に、電話か対面で事情を先に伝える

  3. 紹介元の意向を聞く(紹介料を払う、商流に残ってもらう、など)

  4. 合意した内容をメールで送り、返信で了承をもらう

  5. 必要なら覚書(契約を補う書面)を結び、紹介料などの条件を残す

了承メールの例文です。

例文・テンプレート
件名:〇〇社様との取引についてのご相談(株式会社△△)

株式会社□□
〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の××です。

先日お電話でお伝えした件について、確認のためご連絡いたします。
〇〇社様より、弊社と直接の取引を検討したいとのお話がありました。

貴社との基本契約書第〇条(直接取引の禁止)に基づき、
事前にご相談させてください。

ご提案:
・本件は貴社に商流へ残っていただく形を第一に考えております
・直接取引となる場合は、紹介料として〇〇をお支払いします

ご意向をお聞かせいただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。

大切なのは、紹介元の取り分を守る提案をセットにすることです。相手の利益を守る姿勢を見せると、了承も得やすくなります。

Q7. 自社が飛ばされないためには、どう防げばいいですか?

防ぐ方法は、契約で約束を決めることと、飛ばす理由をなくすことの2つです。商流飛ばしを防ぐ方法として、次の5つをおすすめします。

#防ぎ方具体的にやること
1禁止条項を入れる基本契約書に、対象・期間・違約金をはっきり書く
2秘密保持を結ぶエンドの社名や単価を渡す前に、秘密保持契約を結ぶ
3出す情報を絞る提案の初期はエンド名を伏せ、決まりそうになってから開示する
4取引先を記録するどの会社に、いつ、どの案件を出したかを残す
5付加価値を出す素早い人材提案や面談の調整で「間にいてほしい会社」になる

最後の5番目が、いちばん効き目があります。間にいる会社が役に立っていれば、飛ばす理由がなくなるからです。契約だけで縛る関係は、禁止期間が終わった瞬間に切れてしまいます。

Q8. 商流飛ばしをせずに商流を上げるには、どうすればいいですか?

商流を上げる正攻法は、上位の会社と、自社の営業で新しく取引を始めることです。既存の紹介ルートを使わないので、飛ばしの心配がありません。

具体的な方法は次の5つです。

  1. 元請け・一次請けの企業に直接営業する:パートナー募集ページや問い合わせフォームから連絡する

  2. 交流会で上位の会社の担当者とつながる:その場で案件を聞き、自社のルートとして取引を始める

  3. 実績を資料にまとめる:稼働中の人数、得意な技術、継続率などを見せ、取引審査に備える

  4. 強い人材を育てて提案する:「この人を出せる会社」として上位の会社から声がかかる

  5. 案件・人材の情報量を増やす:提案のスピードが上がると、上位の会社から選ばれやすくなる

→ SESのエンド開拓のやり方|元請け・直案件を取る7ステップ
→ SESの元請けとは|一次請けとの違いと元請け企業の見分け方

チョータツで「飛ばさずに」商流を上げる

飛ばさずに上位の会社との取引を増やすなら、チョータツブーストで新しいパートナー企業を開拓する方法があります。

自分で上位の会社を探す場合、「募集ページを探す → 問い合わせる → 返事を待つ」を1社ずつくり返します。取引が始まっても、届く案件・人材の情報をメールで追いかけるのは手間がかかります。DrivenXのツールを使うと、この流れを正面からの取引でまとめて進められます。

場面自分でやる場合DrivenXのツールを使う場合
上位の会社を探す検索・交流会で1社ずつチョータツブーストで新しいパートナー企業を開拓
相手の案件・人材を知る届いたメールを読んで転記チョータツで連携すると、相手の営業中案件・営業中人材がデータベースになる
自社の人材を知らせるBCCでメールを一斉送信チョータツのメール配信機能でパートナーに配信

チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有するツールのことです。3,000社以上が使っており、無料で始められます。チョータツブーストとは、チョータツの中で新しいパートナー企業を開拓する機能のことです。

新しくつながった会社とは、最初から自社のルートで取引できます。紹介元を抜かす必要がないので、商流飛ばしの心配をせずに取引先を増やせます。

使い始める流れは次のとおりです。

  1. チョータツに無料で登録する

  2. 自社の案件・人材の情報を登録する(AIが入力を手伝う)

  3. チョータツブーストで、新しいパートナー企業を開拓する

  4. つながった会社と連携し、お互いの営業中案件・人材を共有する

Q9. 深い商流には、ほかにどんな問題がありますか?

深い商流には、単価が下がる問題に加えて、偽装請負や二重派遣のリスクが見えにくくなる問題があります。

公正取引委員会は2022年6月に、ソフトウェア業の取引の調査結果を公表しました(資本金3億円以下の4,321社が回答)。「中抜き」をする事業者がいると感じた企業は全体の25.9%です。元請けでは18.5%、最終下請けでは33.5%で、階層が下になるほど高くなります。

出典:公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」

また、他社から送られた労働者を自社の指揮命令で働かせることは、原則として禁止です(職業安定法第44条)。商流が深いと、現場で誰が指示を出しているかが見えにくくなります。

→ SESの二重派遣(多重派遣)は違法?罰則と避ける契約の組み方

よくある質問

Q. 商流飛ばしはバレますか?
バレることが多いです。エンジニアの現場での会話、エンドの担当者の発言、同じ業界の会社同士のつながりから伝わります。隠すより、先に了承を取る方が安全です。
Q. 契約書に禁止条項がなければ、直接取引しても大丈夫ですか?
契約違反にはならないのが原則です。ただし、紹介元との信頼は失います。今後も取引を続けたいなら、事前に相談しましょう。
Q. 禁止期間はどれくらいが一般的ですか?
法律で決まった期間はなく、会社ごとに契約で決めます。長すぎる期間は争いになりやすいので、自社の契約書で「終了後〇か月」の長さを必ず確認してください。
Q. フリーランスのエンジニア本人から直接契約を持ちかけられたら?
人材を紹介してくれた会社との契約を確認し、禁止条項があれば紹介元に相談します。黙って契約すると、違約金を求められることがあります。
Q. 商流飛ばしで違約金を請求されたら、払わないといけませんか?
契約で決めた違約金は、原則として払う必要があります。ただし、金額や期間が極端な場合は争える余地もあります。請求を受けたら、すぐに弁護士に相談してください。
Q. 商流を上げたいとき、まず何をすればいいですか?
今の取引先の商流を書き出し、どこが深いかを確認します。そのうえで、元請け・一次請けの会社に自社の営業で新しく取引を申し込みましょう。

まとめ

  • 商流飛ばしを直接禁止する法律はないが、直接取引禁止条項に反すると契約違反になる

  • 契約書では、直接取引禁止条項・秘密保持条項・違約金条項の3つを確認する

  • 違約金は「損害賠償額の予定」と推定され、決めた金額を求められることがある

  • 線引きは「きっかけ・禁止期間・了承」の3つ。了承はメールか書面で残す

  • 自社が飛ばされないためには、契約で約束を決め、「間にいてほしい会社」になる

  • 商流は飛ばさずに上げる。上位の会社と自社のルートで新しく取引を始める

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士などの専門家にご相談ください。法令・調査結果の記述は2026年9月時点で確認した情報です。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料

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