SESの二重派遣(多重派遣)は違法?多重下請けとの違い、陥りやすい6パターン、罰則と避ける契約の組み方

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

二重派遣(多重派遣)とは

二重派遣とは、派遣先が、派遣元から派遣を受けた労働者を、さらに業として別の会社へ派遣することです。SESの現場では「多重派遣」とも呼ばれます。

厚生労働省の「労働者供給事業業務取扱要領」は、二重派遣を次のように説明しています。派遣先はその派遣労働者を雇っていないので、労働者派遣とはいえない。形としては労働者供給にあたり、職業安定法第44条で禁止される、という整理です。

労働者派遣とは、自社が雇っている労働者を、他社の指揮命令を受けて働かせることです(労働者派遣法第2条第1号)。労働者供給とは、契約に基づいて、労働者を他人の指揮命令の下で働かせることです。ただし、労働者派遣にあたるものは除きます(職業安定法第4条第8項)。

用語人を出す会社と、その人の関係法律上の扱い
労働者派遣自社が雇っている許可を受ければ適法
労働者供給自社が雇っていない原則禁止(職業安定法第44条)
二重派遣派遣で受け入れただけで、雇っていない労働者供給として禁止

つまり、二重派遣が違法になる理由は「雇っていない人を、他社の指示の下で働かせている」ことにあります。

多重下請けは違法ではない。違法になるのは「指示」がずれたとき

SESの商流が深いこと自体は、違法ではありません。それぞれの会社が自社で雇った人に、自社で指示を出している限り、二重派遣にも偽装請負にもなりません。

違法になるのは、指示を出す会社と、その人を雇っている会社が違うときです。図で比べると、違いがはっきりします。

例文・テンプレート
【適法】多重下請け(準委任の再委託)
エンド企業 ─準委任→ A社 ─準委任→ B社(エンジニアを雇用)
                                    └ 指示:B社の責任者 → B社のエンジニア

【違法】指示が下の会社の人に及ぶ(偽装請負)
エンド企業 ─準委任→ A社 ─準委任→ B社(エンジニアを雇用)
  └ 指示:エンド企業の社員 → B社のエンジニア(直接)

【違法】二重派遣(労働者供給)
派遣元C社 ─派遣→ A社 ─派遣または準委任→ エンド企業
(C社が雇用)       └ A社はエンジニアを雇っていない
形雇っている会社指示を出す会社判断
多重下請け(適法)B社B社問題なし
偽装請負B社エンド企業労働者派遣法違反のおそれ
二重派遣C社エンド企業職業安定法第44条違反

偽装請負と二重派遣は、別の問題です。ただし、商流が深い案件では両方が同時に起きやすいので注意します。偽装請負の判断方法は、偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選で解説しています。

指示が「誰から誰へ」出ているかの判断は、厚生労働省の37号告示が基準です。読み方は偽装請負の37号告示をやさしく解説|厚労省Q&AのSES該当箇所にまとめています。

「仲介」するだけなら二重派遣ではない

厚生労働省の要領は、二重派遣にあたらない場合も示しています。派遣労働者を雇う会社と、直接指示を出す会社の間で派遣契約を結んでいる場合です。派遣契約を単に仲介する会社がいても、通常は二重派遣とは判断されません。

ただし、仲介のやり方によっては職業紹介など別の許可が問題になることもあります。仲介の形をとる場合は、事前に労働局や専門家へ確認してください。

SES営業が陥りやすい二重派遣の6パターン

SES営業が二重派遣に近づくのは、BPから届いた人材の「所属」と「雇用形態」を確認しないまま提案するときです。よくある6つのパターンを整理します。

#パターン何が問題か判断
1自社が派遣で受け入れた人を、客先に準委任で再提案する自社は雇っていない二重派遣のおそれ大
2BPが派遣で受け入れている人を、BP経由で客先に入れるBPも雇っていない二重派遣のおそれ大
3BPの社員(準委任で受けた人)を、自社から客先へ「派遣」する自社は雇っていない人を派遣できない労働者供給のおそれ
4個人事業主(フリーランス)を客先に「派遣」する雇用関係がないため派遣できない実態次第で労働者供給のおそれ
5準委任の商流で、エンドが下位の会社のエンジニアに直接指示する指示する会社と雇う会社がずれる偽装請負のおそれ
6自社の正社員を、派遣許可を持って客先に派遣する雇用も許可もある適法

パターン1:派遣社員を準委任で再提案する

営業現場で起きやすいのが、このパターンです。他社から派遣で受け入れているエンジニアを、自社のSES案件として客先に出してしまいます。

「契約書は準委任だから派遣ではない」と考えがちです。しかし、自社はその人を雇っていません。客先の指示で働く形になれば、二重派遣(労働者供給)にあたります。

また、派遣契約で決めた就業場所や業務の外で働かせることにもなります。派遣元との契約違反にもなりうるので、派遣社員の再提案は避けます。

パターン2:BPの向こう側が派遣社員

BPから届いたスキルシートの人が、実はBPの社員ではなく、BPが派遣で受け入れている人という場合があります。この場合、BPも自社も、その人を雇っていません。

スキルシートに「所属:BP社」と書かれていても、雇用形態まではわかりません。提案前に「御社で雇用している方ですか」と必ず確認します。

パターン3:BPの社員を自社から「派遣」する

自社が客先と派遣契約を結んでいる案件に、BPから準委任で受けた人を入れるパターンです。労働者派遣は「自社が雇っている労働者」を出すものなので、自社はBPの社員を派遣できません。

派遣の案件をBPの人材で埋めたいときは、BP(派遣許可あり)と客先が直接、派遣契約を結ぶ形にします。

パターン4:フリーランスを客先の指示下に置く

厚生労働省の「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」は、次のように説明しています。フリーランスに再委託し、雇用関係がない限り、労働者派遣法との関係では問題にならない。ただし、実態から労働者性があると認められる場合は、労働基準法などが適用される「労働者」になる、という整理です。

労働者性があるフリーランスが客先の指示で働いていれば、偽装請負や労働者供給が問題になるおそれがあります。フリーランスの場合の責任は、偽装請負の罰則はどちらに?発注者・SES企業・個人別に整理で詳しく扱っています。

二重派遣の罰則:派遣元・中間の会社・派遣先別

二重派遣の罰則は、人を出した会社と、受け入れて指示した会社の両方に及びます。中心になるのは職業安定法第44条です。

職業安定法第44条は、「何人も」労働者供給事業を行ってはならないと定めています。供給された労働者を、自社の指揮命令の下で働かせることも禁止です。

違反した人には、第64条第10号で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金があります。会社の業務として行った場合は、第67条で会社にも罰金が科されます。

立場主な法律主な罰則・処分
中間の会社(雇っていない人を出した会社)職業安定法第44条・第64条1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
最終の受入れ先(指示した会社)職業安定法第44条・第64条1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
中間の会社・受入れ先の会社(法人)職業安定法第67条(両罰規定)会社にも罰金
派遣元(許可を持つ会社)労働者派遣法第14条・第49条許可取消し、事業停止命令、改善命令
人を出して利益を得た会社労働基準法第6条・第118条1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金になりうる

両罰規定とは、社員が会社の業務として違反をしたとき、社員本人だけでなく会社にも罰金を科す仕組みのことです。

労働基準法第6条(中間搾取の排除)は、法律で許される場合以外に、他人の就業に入り込んで利益を得ることを禁じています。二重派遣のように、雇っていない人を出して手数料を得る形は、この条文の問題にもなりえます。

※ 2025年6月1日の刑法改正で、「懲役」は「拘禁刑」に変わりました。古い記事では「1年以下の懲役」と書かれていることがあります。2025年5月31日以前の行為には、改正前の刑(懲役)が適用されます。

派遣元への処分の実例

大阪労働局は2018年3月29日、二重派遣を行った派遣元事業主に事業停止命令と改善命令を出しました。事業停止の期間は、2018年3月30日から5月29日までの2か月間です。

処分を受けた会社は、請負と称する契約で客先の指揮命令の下に人を出していました。そのうち32名は、別の派遣元から派遣を受けた人でした。期間は2016年6月6日から2017年11月22日までで、2,640人日にのぼります。

大阪労働局の処分事例の詳細や、ほかの判例は偽装請負の判例・摘発事例|IT・SES業界の事例と営業の教訓にまとめています。

派遣先(客先)は直接雇用のリスクも負うか

偽装請負では、客先が作業者に直接雇用を申し込んだとみなされる制度があります(労働者派遣法第40条の6)。ただし、会社が2社重なる「二重の偽装請負」では、最上位の注文者には適用しないとした裁判例があります。竹中工務店ほか2社事件(大阪高裁・2023年4月20日)です。

直接雇用のリスクが小さくても、客先は職業安定法の罰則や行政指導の対象です。「客先には関係ない」とは説明しないようにします。

二重派遣を避ける契約の組み方5つ

二重派遣を避ける契約の組み方は、「人を出す会社=その人を雇っている会社」という原則を守ることです。具体的には次の5つです。

  1. 派遣で出せるのは自社の雇用者だけにする:派遣契約の案件には、自社が雇っている社員だけを出す。派遣の許可も必ず確認する

  2. 派遣で受け入れた人は外に出さない:自社が派遣で受け入れている人を、他社の案件に提案しない

  3. 準委任の再委託は、再委託先が自社の社員に指示する形にする:個別契約書に、再委託先の責任者と指示の流れを書く

  4. 派遣案件をBPで埋めるなら、BPと客先が直接派遣契約を結ぶ:自社が間に入る形は、事前に労働局や専門家へ確認する

  5. 基本契約書に再委託の条件を書く:再委託の可否、事前承諾、再委託先の雇用形態の確認義務を入れる

契約の組み方二重派遣のリスクポイント
客先 ─派遣→ 自社(自社の社員)低い自社に派遣の許可が必要
客先 ─派遣→ BP(BPの社員)低いBPに派遣の許可が必要
客先 ─準委任→ 自社 ─準委任→ BP(BPの社員)指示の流れ次第BPの責任者が指示する体制にする
客先 ─派遣→ 自社 ← BPの社員高い自社は雇っていないので派遣できない
客先 ─準委任→ 自社 ← 派遣社員高い雇っていない人を出すことになる

準委任・派遣・請負の違いそのものは、SESの準委任・派遣・請負の違い|比較表と営業が確認する5項目で比較しています。基本契約書の条項は、SES基本契約書のテンプレート|個別契約・注文書と条項チェック15を参考にしてください。

提案前に確認すること:チェックリストとメール例

二重派遣は、提案する前の確認でほぼ防げます。BPから人材の紹介を受けたら、次の5項目を確認します。

#確認すること確認のしかた
1その人を雇っている会社「御社で直接雇用している方ですか」と聞く
2雇用形態正社員・契約社員・派遣社員・個人事業主のどれか
3自社と客先の契約形態準委任か派遣か。派遣なら誰が派遣元になるか
4商流自社の上と下に何社いるか
5派遣の許可派遣で出す会社の許可番号を公的サイトで確認する

派遣の許可番号は、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で調べられます。手順は労働者派遣の許可番号を検索する方法|取引前の確認手順3つで紹介しています。商流の見方はSESの一次請け・二次請けの違い|単価差と商流を上げる方法を参照してください。

BPへの確認メール例

例文・テンプレート
件名:ご紹介いただいた〇〇様の所属について(株式会社△△)

株式会社〇〇
□□様

いつもお世話になっております。株式会社△△の◇◇です。
ご紹介いただいた〇〇様について、提案前に2点確認させてください。

1. 〇〇様は、貴社で直接雇用されている方でしょうか。
  (正社員・契約社員・個人事業主などの別をお教えください)
2. 貴社の上位に、ほかの会社は入っておりますでしょうか。

二重派遣とならないよう、社内で確認をしております。
お手数ですが、よろしくお願いいたします。

稼働中の案件で二重派遣に気づいたときの対応

稼働中の案件で二重派遣に気づいたら、新しい提案を止めたうえで、契約の組み直しを急ぎます。 違反の状態を続けるほど、処分や罰則のリスクが大きくなるからです。

  1. 事実を確認する:エンジニアを雇っている会社、各社の間の契約形態、現場で指示を出している人を書き出す

  2. 社内で共有する:営業の判断だけで進めず、上司と法務(顧問弁護士)に報告する

  3. 組み直し方を決める:雇用している会社と客先の直接契約に切り替えるか、準委任に切り替えて指示の流れを直す

  4. 関係する会社と話す:BPと客先に、契約を組み直す理由と時期を説明する

  5. 迷ったら労働局に相談する:都道府県労働局の需給調整事業部(課・室)が、派遣や請負の相談を受け付けている

営業として避けたいのは、エンジニア本人に説明なく契約を終わらせることです。組み直しの間も、エンジニアの仕事と収入が途切れないように段取りします。

なお、客先がエンジニアを選ぶための事前面談も、派遣や準委任では問題になりやすい論点です。進め方はSESの事前面談は違法?営業が守りたい適法な進め方7つとNG例で解説しています。

自分でできる管理方法と、チョータツで楽にする方法

自分で管理するなら、人材一覧に「雇用している会社」「雇用形態」「確認日」の3列を足すのが第一歩です。空欄のままの人材は提案しない、というルールにします。Excelでの管理はSESの案件・人材管理をExcelで無料で行う方法|テンプレ付きが参考になります。

ただ、BPからの人材メールが毎日届くと、Excelへの転記が追いつきません。確認が抜けるのは、多くの場合この転記の段階です。

チョータツを使うと、案件と人材の情報を1か所で管理し、社内やパートナーと共有できます。

  • 人材・案件の管理と共有:BPから届いた人材情報と自社の案件を、1か所で見られる

  • 他社との連携:連携した会社の営業中案件・営業中人材を、自社のデータベースとして見られる

  • AIによる入力の手伝い:情報の登録にかかる手間を減らせる

  • メール配信:自社の案件・人材情報を、パートナーへまとめて配信できる

情報が1か所にあれば、「この人材は所属を確認したか」をチームで共有しやすくなります。確認の抜けを減らすことが、二重派遣を防ぐいちばんの近道です。

よくある質問

Q. SESの多重下請けは違法ですか?
多重下請けそのものは違法ではありません。それぞれの会社が自社で雇った人に自社で指示を出していれば、問題になりません。違法になるのは、指示を出す会社と雇っている会社がずれたときです。
Q. 二重派遣の罰則は、派遣元と派遣先のどちらにありますか?
両方にあります。雇っていない人を出した会社も、受け入れて指示した会社も対象です。職業安定法第64条で、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。会社にも罰金が科されます。
Q. 準委任契約なら、派遣社員を客先に出しても二重派遣になりませんか?
なる可能性があります。自社はその派遣社員を雇っていないので、客先の指示で働く形になれば労働者供給にあたります。契約書の名前では判断されません。
Q. 業務委託のフリーランスを客先に派遣できますか?
できません。労働者派遣は、自社が雇っている労働者を出すものだからです。業務委託でフリーランスに入ってもらう場合は、客先が直接指示しない体制が必要です。
Q. 二重派遣かどうか迷ったら、どこに相談できますか?
都道府県労働局の需給調整事業部(課・室)に相談できます。個別の契約の判断は、顧問弁護士や社会保険労務士にも確認しましょう。
Q. 商流の「3次請けまで」なら大丈夫ですか?
何次請けかで違法かどうかは決まりません。問題は、雇っている会社と指示を出す会社が一致しているかです。ただし、商流が深いほど指示の流れが見えにくくなるので、確認を増やしましょう。

まとめ

  • 二重派遣は、雇っていない人を他社の指示の下で働かせる「労働者供給」にあたり、職業安定法第44条で禁止されている

  • 多重下請けそのものは違法ではない。違法になるのは、指示を出す会社と雇っている会社がずれたとき

  • 営業が陥りやすいのは、派遣社員を準委任で再提案するパターンと、BPの向こう側が派遣社員のパターン

  • 罰則は出した会社と受け入れた会社の両方にあり、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。会社にも罰金がある

  • 「人を出す会社=雇っている会社」の原則で契約を組み、提案前に所属・雇用形態・商流・許可を確認する

  • 稼働中に気づいたら、新しい提案を止めて社内と労働局に相談し、契約を組み直す

  • 人材と案件の情報をチョータツにまとめると、確認の抜けを減らしやすい

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料(2026年9月28日確認)

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