偽装出向とは?判例と判断基準、出向者の派遣などSESで危ない形5つと「出向で」と言われたときの確認手順

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

偽装出向とは?出向・労働者供給との関係

偽装出向とは、「出向」の名前で人を送りながら、実態は派遣や労働者供給になっている状態のことです。 法律の用語ではありませんが、労働局の指導や裁判の場面で使われる言葉です。

まず、関係する言葉を整理します。

  • 出向とは、今の会社との関係を保ったまま、別の会社で長い期間働くことです。

  • 在籍型出向とは、出向元と出向先の両方と雇用契約を結んで働く形のことです。ふつう「出向」といえば、この形を指します。

  • 移籍型出向(転籍)とは、元の会社との雇用契約を終わらせ、移った先とだけ雇用契約を結ぶ形のことです。

  • 労働者供給とは、契約にもとづいて、自社の人を他社の指揮命令のもとで働かせることです。ただし労働者派遣にあたるものは除きます(職業安定法4条8項)。

出向と派遣の基本的な違いは、出向と派遣の違いとは?在籍出向の条件とSESで使うときの注意点で詳しく解説しています。本記事では、どこからが「偽装」になるのかの判断基準と判例、SESで起きやすい危ない形、出向形式を提案されたときの確認に絞ります。

なぜ出向が問題になるのか

労働者派遣法は、在籍型出向を「派遣ではない」と定めています。派遣法2条1号が、相手の会社に雇用させる約束をしたものを派遣から除いているためです。

一方で厚生労働省は、在籍型出向の形は労働者供給にあたると整理しています。労働者供給を事業として行うことは、職業安定法44条で禁止されています。つまり、出向は「やり方しだいで違法になる」働かせ方です。

在籍型出向と労働者派遣の違い(厚生労働省の区分)

在籍型出向と労働者派遣の違いは、「働く先の会社と雇用契約があるか」です。 在籍型出向は出向先とも雇用契約があり、派遣は派遣先と雇用契約がありません。

比べる点在籍型出向労働者派遣
働く先との関係雇用関係がある指揮命令の関係だけ
事業として行う条件業として行うことは原則できない厚生労働大臣の許可が必要
根拠のルール職業安定法・労働契約法など労働者派遣法
違反したとき労働者供給事業の禁止に触れる無許可派遣などになる
例文・テンプレート
【労働者派遣】  派遣元 ─雇用─ 本人 ─指揮命令─ 派遣先
【在籍型出向】  出向元 ─雇用─ 本人 ─雇用+指揮命令─ 出向先
【偽装出向】    出向元 ─雇用─ 本人 ─雇用(名目)+指揮命令─ 客先
                 └── 客先から「出向料」として単価を受け取る ──┘

出向先との雇用関係を見る5つの目安

厚生労働省の「労働者派遣事業関係業務取扱要領」は、名前ではなく実態で判断すると書いています。具体的には、出向先と働く人の間の次の5点を見ます。

#見るところ在籍型出向らしい状態
1賃金の支払い出向先も賃金を払う(全部または一部)
2社会保険・労働保険出向先で加入している
3懲戒権出向先が懲戒できる
4就業規則出向先の就業規則がそのまま適用される
5労働条件の変更出向先が独自に労働条件を変えられる

5点がほとんど当てはまらないなら、出向先との雇用関係は名ばかりです。この場合は実質的に労働者派遣とみられます。要領も「出向という名称が用いられたとしても、実質的に労働者派遣とみられるケースがある」と注意しています。

偽装出向と判断される2つの基準

偽装出向かどうかは、「雇用関係の実態」と「業として行っているか」の2段階で考えます。 どちらか一方でも問題があれば、違法になるおそれがあります。

基準1:出向先と本当に雇用関係があるか

5つの目安で、出向先との雇用関係が実態としてあるかを確認します。雇用関係がなく、出向先が指示だけ出しているなら、中身は派遣です。出向元が派遣の許可を持っていなければ、無許可の労働者派遣になります。

基準2:「業として」出向させていないか

雇用関係があっても、出向を事業としてくり返すと労働者供給事業になります。業として行うとは、一定の目的をもって同じ行為を反復継続して行うことです(業務取扱要領)。1回だけでも、くり返すつもりがあれば事業性があるとされます。

在籍出向が違法にならない4つの目的

在籍出向は、「業として」行わなければ違法ではありません。厚生労働省は、次の4つの目的の出向なら、形のうえでくり返されても、ふつうは業として行うものではないと整理しています。

  1. 離職させず、関係会社で雇用の機会を確保するため

  2. 経営指導・技術指導をするため

  3. 職業能力開発の一環として行うため

  4. 企業グループ内の人事交流の一環として行うため

それぞれのよくある例は次のとおりです。

目的よくある例
①雇用の機会を守る仕事が減った会社が、関係会社で社員の雇用を続ける
②経営指導・技術指導親会社の技術者が子会社で指導する
③職業能力の開発研修の一環として別会社で経験を積ませる
④グループ内の人事交流グループ会社間で人を入れかえる

SES会社が客先に技術者を出すのは、客先の業務を支援して代金を得るためです。4つの目的のどれにもあてはまりにくい点を押さえておきましょう。

偽装出向を疑うべきサイン

4つの目的から外れ、次のような特徴があると、偽装出向とみられやすくなります。

  1. 出向させることを目的に、人を雇ってすぐ出向させている

  2. 出向1人あたりの「出向料」で、出向元が利益を得ている

  3. グループ外の多くの会社に、人を出しつづけている

  4. 出向先の就業規則も社会保険も適用されず、指示だけを受けている

  5. 派遣の期間制限(3年ルール)を避けるために出向へ切り替えている

京都労働局の在籍型出向ハンドブックも、この形に注意をうながしています。「当初から出向させることを目的として雇い入れて出向を命じ」る形です。

偽装出向の判例・裁判例

偽装出向そのものを主な争点にした判例は多くありません。実務では、労働局の指導と地裁の裁判例が参考になります。 ここでは、裁判所のサイトで確認できる3つを紹介します。

事件裁判所・日付ポイント
日野自動車雇止事件東京地裁立川支部・2010年9月30日人材派遣会社からの「出向」が、労働局の指導で派遣契約へ切り替えられた
日本トムソン事件神戸地裁姫路支部・2011年2月23日出向協定などで働いていた人について、違法な労働者派遣を認めた
新日本製鐵(日鐵運輸第2)事件最高裁・2003年4月18日業務委託にともなう在籍出向を、有効な出向と認めた

日野自動車雇止事件(東京地裁立川支部 2010年9月30日)

この事件は、期間従業員の雇止め(契約を更新しないこと)が主な争点でした。判決の事実の部分に、偽装出向の経緯が書かれています。

  • 原告らは人材派遣会社に雇われ、はじめは出向の形で工場で働いていました。

  • 2006年7月26日、会社は東京労働局長から派遣法にもとづく指導を受けました。「出向を中止して、適正な労働者派遣契約」か「適正な請負」にするよう求められました。

  • 会社は2006年9月1日、出向の形から労働者派遣契約に切り替えました。

判決は、この出向を「グループ会社等の緊密な関係にない人材派遣会社から業としてされたもの」と記しています。そのうえで、派遣期間の制限を避ける目的でされ、労働者供給事業に該当する疑いの強いものと認定しています。なお、雇止めの無効を求めた請求自体は棄却されています。

日本トムソン事件(神戸地裁姫路支部 2011年2月23日)

この事件では、別会社に雇われた人が、出向協定・業務請負契約・労働者派遣契約にもとづいて工場で働いていました。裁判所は、会社との直接の雇用関係は認めませんでした。

一方で、違法な労働者派遣がされていたことを認め、慰謝料の請求を一部認めました。「出向」「請負」の名前で人を受け入れていても、受け入れた会社が責任を問われることがある例です。

新日本製鐵(日鐵運輸第2)事件(最高裁 2003年4月18日)

反対に、正当な在籍出向と認められた例です。会社が一部の業務を協力会社へ業務委託し、その業務をしていた社員に協力会社への在籍出向を命じました。

この会社では、就業規則と労働協約に出向の定めがありました。出向期間や処遇についても、社員に配慮した細かい規定がありました。最高裁は、この事情のもとでは本人の個別の同意がなくても出向を命じられるとしました。自社の業務の見直しにともなう出向は、人を出すこと自体でもうけを得る形とは性質が違います。

判例で押さえる3つの判断軸

「出向と派遣・労働者供給の線引き」と「出向の目的」については、次の3つの判決が役に立ちます。どれも「誰と誰に雇用契約があるか」「出向は何のためか」を軸にしています。

判決何が示されたか営業への教訓
最高裁 2009年12月18日(松下プラズマディスプレイ(パスコ)事件)働く先と雇用契約がない以上、違法でも「派遣」であり、労働者供給ではない雇用契約を結ぶ出向は、供給の側に入る
最高裁 1985年4月5日(古河電気工業・原子燃料工業事件)出向中も出向元は、原則として本人の同意なく復帰を命じられる出向元と本人のつながりは残る
東京地裁 2013年11月12日必要性や人選の合理性がない出向命令は、権利の濫用で無効になりうる出向には「目的」が必要

判断軸1:働く先と雇用契約があれば「労働者供給」

最高裁2009年12月18日判決(松下プラズマディスプレイ(パスコ)事件)は、偽装請負の事件です。判決は、働く先と雇用契約が結ばれていない以上は労働者派遣にあたると判断しました。労働者供給(当時の職業安定法4条6項)に該当する余地はない、という結論です。

言いかえると、働く先と雇用契約がなければ派遣、あれば労働者供給という線引きです。在籍型出向は出向先と雇用契約を結ぶため、形としては労働者供給にあたります。

派遣は許可を取れば事業にできます。一方、労働者供給は労働組合などを除き、事業として行う道がありません(職業安定法44条・45条)。ここが偽装出向の重さです。

判断軸2:出向中も出向元との関係は続く

古河電気工業・原子燃料工業事件の最高裁判決(1985年4月5日)は、出向元が本人の同意なく復帰を命じられるとしました。京都労働局のハンドブックも、この判決を出向のルールとして紹介しています。

出向は、出向元の人事の一部として行うものだということです。出向元が人事として管理せず、客先に「貸しっぱなし」にしている形は、本来の出向からかけ離れます。

判断軸3:出向には目的と必要性が要る

東京地裁2013年11月12日判決は、必要性も人選の合理性もない出向命令を、権利の濫用で無効になりうるとしました。労働契約法14条も、権利の濫用にあたる出向命令は無効と定めています。

この判決は本人と会社の争いです。ただし「出向には会社として説明できる目的が必要」という点は、偽装出向を見分けるときにもそのまま使えます。

判例から営業が学べること

3つの事件を並べると、見られているのは名前ではなく目的と実態だとわかります。

  • 人材会社が人を出すこと自体を商売にしている出向は、偽装出向と見られやすい

  • 受け入れた側(客先)も、違法な派遣として責任を問われることがある

  • 自社の事業再編や業務委託にともなう出向は、正当な出向と認められやすい

  • 働く先と雇用契約を結ぶ出向は「労働者供給」の側に入り、事業として行う道がない

偽装出向の罰則とリスク

偽装出向が労働者供給事業にあたると、出向させた側も受け入れた側も、職業安定法違反になりえます。 実質が派遣なら、派遣法の無許可派遣の問題にもなります。

違反の形根拠罰則など
労働者供給事業を行う・受け入れる職業安定法44条・64条10号1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
会社そのものへの罰金職業安定法67条(両罰規定)行為者に加えて会社にも罰金
許可なく労働者派遣事業を行う労働者派遣法59条2号1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
派遣以外の名目で派遣を受ける労働者派遣法40条の6第1項5号受け入れ先が直接雇用を申し込んだとみなされる

両罰規定とは、従業員が違反したときに、本人だけでなく会社にも罰金を科すしくみのことです。2025年6月1日に施行された改正刑法で、「懲役」は「拘禁刑」に変わっています。

職業安定法44条は、労働者供給事業を行うことを禁止しています。あわせて、供給された人を自社の指揮命令のもとで働かせることも禁止しています。つまり、客先側も違反になりえます。

労働契約申込みみなし制度とは、違法な派遣を受け入れた会社が、その人に労働契約を申し込んだとみなされる仕組みのことです。条文は「請負その他労働者派遣以外の名目」と書いています。出向の名目で実質派遣を受け入れた場合も、対象になりうると考えておくのが安全です。

罰則以上に大きいのが、客先からの信用を失うことです。客先も違反の当事者になるため、発覚すれば取引の見直しにつながります。罰則の全体像は偽装請負の罰則はどちらに?発注者・SES企業・個人別に整理で整理しています。

SESで起きやすい「危ない出向」の形5つ

SESで偽装出向になりやすいのは、次の5つの形です。どれも「出向」という言葉は使っていても、中身は人を出して単価を得る取引になっています。

#危ない形なぜ危ないか危険度
1自社の技術者を客先へ「出向」させ、出向料として単価を受け取る4つの目的にあたらず、人を出して稼ぐ事業になる高
2客先から「出向」で受け入れた人を、さらに別の客先へ出す出向と供給・派遣が重なり、雇い主の責任がわからなくなる高
3グループ会社に出向させ、そのグループ会社が外部の客先へ出す「グループ内の人事交流」の名目で外部へ供給している高
4BPの技術者を自社に「出向」扱いで受け入れ、自社社員として客先へ出す出向の名目で商流を隠す。二重派遣と同じ構造になる高
5派遣の許可がない会社が、「派遣はできないので出向で」と提案する許可のいらない形に言いかえただけ高

形1:客先への「出向」で単価をもらう

最も多いのが、客先の求めで技術者を「出向者」として出し、毎月の出向料を受け取る形です。雇用の確保や技術指導が目的ではなく、単価をもらう取引そのものになっています。

出向料の名前でも、中身は技術者の時間を売る対価です。複数の客先にくり返し出していれば、業として行っていると見られやすくなります。

形2:出向者をさらに客先へ出す二重構造

「出向者の派遣」が問題になるのが、この形です。出向で受け入れた人を、出向先がさらに別の会社へ派遣したり常駐させたりします。

例文・テンプレート
【二重構造の例】
A社(出向元)─出向─ B社(出向先)─派遣・常駐─ C社(客先)
                              ↑ 本人の指示を出すのはC社

出向者はB社とも雇用契約があるため、形のうえではB社から派遣できそうに見えます。しかし、B社は出向を受けた目的(人事交流や技術指導)で本人を使っていません。出向が「人を回すための通り道」になっていると見られ、労働者供給事業と判断される危険が高まります。

二重に人を回す構造の問題は、SESの二重派遣(多重派遣)は違法?罰則と避ける契約の組み方でも解説しています。

形3:グループ会社を経由した出向

グループ会社間の出向は、人事交流の目的なら認められやすい形です。ただし、グループ会社が受け入れた人を外部の客先へ出すと、人事交流の目的から外れます。

たとえば「SES子会社に出向させ、子会社名義で客先に常駐させる」形です。グループ内の出向を、外部へ人を出すための名目に使っていないか確認しましょう。

形4:BPの技術者を「出向者」として自社社員扱いにする

BPの技術者を「うちに出向してきている社員」と客先に説明する形も危険です。商流を短く見せるための言いかえで、実態は二重の供給になります。

所属を偽る問題はSESで所属を偽る名刺はNG?BPを自社社員扱いするリスクで詳しく扱っています。

形5:派遣の許可がない会社の「出向なら大丈夫」

「派遣の許可がないので、出向の形で出しましょう」という提案は、許可のいらない言葉に置きかえただけです。出向は許可の制度がない代わりに、事業として行うこと自体が禁止されています。

相手が派遣の許可を持っているかは、労働者派遣の許可番号を検索する方法|取引前の確認手順3つで確認できます。

SES取引で「出向形式」はどこまで使える?形ごとの早見表

SES会社が、客先へ自社の技術者を「出向」で出し続ける形は、偽装出向と見られるおそれが高い形です。 SESの本業は技術者を客先で働かせることなので、4つの目的にあてはめにくいからです。

よくある形判断の目安営業のおすすめ対応
グループ会社間の人事交流の出向4つの目的にあたりやすい出向契約と規程を確認して進める
客先の業務を受託し、その社員を自社へ出向で受け入れ業務委託にともなう出向なら認められやすい法務・社労士に契約を確認してもらう
SES会社が複数の客先へ技術者を出向させる業として行う労働者供給と見られやすい準委任か、許可のある派遣で組む
出向で受け入れた人を、さらに別の客先へ出す二重の供給構造でNG受けない
派遣の3年ルールが近いので出向へ切り替える期間制限の回避と見られやすい受けない。直接雇用などを相談する

出向者をさらに別の会社へ出す形は、上の「形2」で見た二重派遣と同じ問題を含みます。準委任・派遣・請負のどれで組むか迷ったら、SESと派遣の違い|準委任・派遣・請負の比較表と確認5項目で比べてください。

「出向で来てほしい」と言われたときの確認手順

客先やBP(取引先の会社)から「出向」という言葉が出たら、まず5ステップで実態を確かめ、本当に出向契約を結ぶなら確認点10をチェックします。 1つでも「いいえ」や「わからない」があれば、その場で受けずに社内で相談します。

最初に確認する5ステップ

言葉だけで判断せず、実際の契約と指示の出し方を確かめるのがポイントです。

  1. 呼び方か契約かを確かめる:社内で常駐者を「出向者」と呼んでいるだけか、本当に出向契約を結ぶつもりかを聞く

  2. 雇用契約の相手を確かめる:客先が本人と雇用契約を結ぶ前提か、自社の雇用のままかを確認する

  3. 指示を出す人を確かめる:客先の社員が本人に直接作業指示を出すなら、準委任では組めない

  4. 間に入る会社を確かめる:グループ会社や別のBPを経由して出向・常駐させる形になっていないかを確認する

  5. 契約形態を決める:準委任(SES契約)で組めるならそうする。指示が必要なら、派遣の許可がある会社との派遣契約にする

2の時点で「客先と雇用契約を結ぶ」なら、それは出向ではなく転籍や直接雇用の話です。客先が本人を直接雇いたい場合の対応は、SESの引き抜きに紹介料は取れる?相場と契約条項の書き方・例文付きで解説しています。

出向契約で進める前の確認点10

#確認すること見るもの・聞く相手
1出向の目的は4つ(雇用維持・指導・能力開発・グループ交流)のどれか先方の担当者
2出向元と出向先は同じグループか、緊密な関係があるか登記・会社概要
3出向契約書(出向協定)があるか契約書のひな形
4出向先が賃金の全部か一部を払うか出向契約・給与明細の扱い
5出向先で社会保険・労働保険に入るか先方の人事
6出向先の就業規則が適用されるか先方の人事
7出向先が懲戒や労働条件の変更をできるか出向契約
8出向料が「1人いくら」の人数×単価になっていないか見積・契約の金額欄
9本人の同意か、就業規則などの出向規程があるか本人・自社の人事
10出向先から、さらに別の会社で働かせないか先方の担当者

あてはまらない項目があれば、準委任か派遣での契約を提案します。どうしても出向で進めたい案件は、弁護士・社会保険労務士に契約書を見てもらいます。派遣で組む場合は、自社か相手先が労働者派遣事業の許可を持っている必要があります。許可の有無は、上の「形5」で紹介した許可番号の検索で確認できます。

返信例文1:理由を添えて準委任を提案する

先方から「10月から出向の形で来てほしい」と言われたときの返信例です。

件名:【ご確認】10月からのご支援の契約形態について

株式会社〇〇 〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
2026年10月5日(月)からのご支援について、ご提案ありがとうございます。

出向の形式をご希望と伺いましたが、弊社は複数のお客様先で技術支援を行っております。
そのため出向の形ですと、職業安定法で禁止される労働者供給事業と見られるおそれがございます。

つきましては、準委任契約(SES契約)でのご支援をご提案できればと存じます。
作業の指示は弊社の責任者を通して行う形で、体制案を10月1日(木)までにお送りします。

ご不明点があれば、お気軽にお申し付けください。
何卒よろしくお願いいたします。

返信例文2:短く断り、代わりの形を示す

出向での参画を断るときは、代わりの形をすぐに示すと話が進みます。

例文・テンプレート
件名:【ご確認】〇〇案件のご参画形態について

株式会社〇〇
〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
〇〇案件のご参画形態について、ご相談させてください。

弊社では、技術者の方は準委任契約にてご支援しております。
法令上の理由から、出向契約でのご参画は承っておりません。

作業のご指示は、弊社の業務責任者を通じて承る形になります。
直接のご指示が必要な場合は、派遣許可を持つ会社での
派遣契約をご提案いたします。

2026年10月2日(金)までにご希望をお知らせいただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。

準委任で受ける場合は、客先から技術者へ直接指示を出さない体制が前提です。指示の出し方の線引きは偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選と予防策で確認してください。

自分でできる「出向スキーム」の社内チェックリスト

自社やBPの取引に偽装出向がまぎれていないかは、次の8項目で点検できます。1つでも「はい」なら、契約形態を見直しましょう。

#確認することはいなら
1客先から「出向料」「出向負担金」の名目で単価を受け取っている見直し
2出向の目的を、4つの目的のどれかで説明できない見直し
3同じ技術者を、出向の形で複数の客先へくり返し出している見直し
4出向で受け入れた人を、さらに別の会社へ出しているすぐ見直し
5グループ会社への出向者が、外部の客先に常駐しているすぐ見直し
6BPの技術者を「自社への出向者」と説明しているすぐ見直し
7出向先の社員ではなく、客先の社員が作業を指示しているすぐ見直し
8出向契約書に、目的・期間・復帰の定めがない見直し

チェックは、提案の前に行うのがいちばん楽です。契約後に形を直すと、客先・BP・本人との調整が増えます。

契約形態の条件をチョータツで管理する

偽装出向を防ぐには、案件ごとの「契約形態の希望」を、提案前に社内で共有しておくことが大切です。 まずは自分たちでできる方法から始めましょう。

自分たちでやる方法

  • 案件管理のExcelに「契約形態(準委任/派遣/出向希望)」の列を足す

  • 「出向希望」の案件は、提案前に営業責任者が確認するルールにする

  • 10項目の確認結果を、案件の行にメモとして残す

Excelでも回りますが、担当者ごとにファイルが分かれると、条件の見落としが起きやすくなります。

もっと楽にするなら:チョータツ

チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。

  • 案件の情報をチームで共有できるので、「出向希望」などの条件を提案前に全員が確認できる

  • AIが入力を手伝うので、案件の条件を記録する手間が減る

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる。条件の合う案件を選んで提案しやすくなる

契約形態があいまいな案件を断るには、代わりに提案できる案件が手元にあることも大事です。

よくある質問

Q. 偽装出向と偽装請負の違いは何ですか?
使っている名前が違います。偽装出向は「出向」、偽装請負は「請負・準委任」の名前で、中身が派遣や労働者供給になっている状態です。偽装請負の基本は、偽装請負の入門記事で解説しています。
Q. 派遣法では、出向はどう扱われていますか?
派遣法2条1号は、相手の会社に雇用させる約束をしたものを派遣から除いています。そのため在籍型出向は派遣ではありません。ただし出向先との雇用関係が名ばかりなら、実質的な派遣とみられます。
Q. グループ会社への出向なら、何回くり返しても大丈夫ですか?
グループ内の人事交流が目的なら、業として行うとは判断されにくいとされています。ただし、人を出すこと自体でもうけを得る形や、期間制限を避ける目的なら問題になりえます。
Q. 客先側(出向先)も罰せられますか?
職業安定法44条は、労働者供給事業から供給された人を指揮命令のもとで働かせることも禁止しています。そのため、受け入れた客先側も違反になりえます。
Q. 出向者の派遣は違法ですか?
出向で受け入れた人を、出向先がさらに別の会社へ派遣する形は避けるべきです。出向が人を回すための通り道と見られ、労働者供給事業と判断されるおそれがあります。本人の雇用元と直接、準委任で契約できるかを確認しましょう。
Q. 派遣の許可があれば、出向の形でも大丈夫ですか?
大丈夫ではありません。派遣の許可は派遣事業のためのもので、出向による労働者供給を認めるものではありません。人を出すなら、許可にもとづく派遣契約として組みます。

まとめ

  • 偽装出向とは、「出向」の名前で、実態は派遣や労働者供給になっている働かせ方

  • 判断は2段階。出向先と本当に雇用関係があるか、業としてくり返していないか

  • 雇用関係は、賃金・社会保険・懲戒権・就業規則・労働条件の変更の5点で見る

  • 裁判例では、人材派遣会社からの「出向」が指導で派遣へ切り替えられた例や、違法な派遣と認められた例がある

  • 最高裁2009年12月18日判決により、働く先と雇用契約がある出向は「労働者供給」の側に入る

  • 労働者供給事業は、出す側も受け入れる側も職業安定法違反になりうる

  • SESで危ないのは、客先への出向、出向者をさらに出す二重構造、グループ会社経由、BPの自社社員扱い、許可なしの言いかえの5つ

  • 「出向で」と言われたら5ステップと確認点10で確かめ、準委任か許可のある派遣で組む

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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