SESで所属を偽る名刺はNG?BPを自社社員扱いする4つのリスクと社内ルール例・承諾依頼の例文【Q&A】

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SESの「所属偽装」とは?

所属偽装とは、BP(パートナー企業)に所属する要員を、自社の社員(プロパー)だと偽って客先に出すことです。 名刺の貸し出しや、自社ドメインのメールアドレスを渡すやり方がよく見られます。

用語を先に整理しておきます。

  • BP(ビジネスパートナー)とは、案件や人材を紹介し合う取引先の会社のことです。

  • プロパーとは、自社が直接雇っている社員のことです。

  • 商流とは、仕事がエンド(発注元)から何社を通って流れてくるかの経路のことです。

所属偽装には、いくつかの型があります。

型やり方客先から見えること
名刺の貸し出し自社の社名と肩書きを入れた名刺を渡す自社の社員に見える
メールの付与自社ドメインのアドレスを発行して使わせるやりとりも自社社員に見える
面談での口裏合わせ「弊社の〇〇です」と紹介し、所属を聞かれてもごまかす商流が1社短く見える
書類の書き換えスキルシートの所属欄を自社名にする書類の上でも自社社員になる

どの型も、客先が知らないうちに、自社とは別の会社の人が作業しているという点は同じです。プロパーとBPの使い分けはSESのプロパーとBPの違い|営業が使い分ける意味と提案時の注意点で解説しています。

なぜ所属を偽る慣行が生まれるのか

多くの場合、「商流制限を満たすため」に所属を偽ります。 案件の条件に合わない商流の要員を、条件に合うように見せかけるためです。

商流制限とは、案件を出す会社が「提案してよい会社の範囲」を決めることです。案件メールでは「貴社社員まで」「一社先まで」「プロパーのみ」などと書かれます。

所属を偽る理由として、現場でよく聞くのは次の3つです。

  1. 商流制限をすり抜けたい:「貴社社員まで」の案件に、BPの要員しか合う人がいない

  2. 単価を下げたくない:商流が深いと分かると、単価を下げられることがある

  3. 見栄えを良くしたい:「全員自社社員」の体制に見せて、客先に安心してもらいたい

どれも営業の気持ちとしては分かります。しかし、制限を決めた相手の判断をだましていることに変わりはありません。制限の表記の読み方はSESの商流制限の書き方|案件メールの表記例と意味・守らせ方で確認できます。

所属を偽ると何がまずいのか(4つのリスク)

一番大きなリスクは、再委託の承諾ルールを破る「契約違反」です。 さらに、商流飛ばしを招いたり、偽装請負・二重派遣の疑いを持たれたりと、あとから困る問題が重なります。

リスク起きること影響を受ける相手
1. 再委託の承諾違反契約解除・損害賠償を求められるおそれ自社と客先・上位会社
2. 信用の失墜発覚すると取引停止や口座の閉鎖につながる自社の営業全体
3. 商流飛ばしの誘発BPと客先が直接つながりやすくなる自社の売上
4. 偽装請負・二重派遣の疑い誰の指示で働いているかが分かりにくくなる自社・BP・客先

リスク1:再委託の承諾ルールを破る

SESでよく使う準委任契約では、発注元の許諾がないと、別の会社に仕事を任せられないのが原則です。 準委任とは、作業そのものを引き受ける契約の形のことです。

民法644条の2は、再委託に次の条件を付けています。

受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。(民法644条の2第1項)

民法656条により、このルールは準委任にも当てはまります。復受任者とは、引き受けた仕事をさらに任される人(再委託先)のことです。

基本契約書にも「再委託には事前の書面承諾が必要」という条項が入っていることがよくあります。所属を偽ってBPの要員を出すと、承諾を取らずに再委託したことになります。発覚すれば、契約解除や損害賠償を求められるおそれがあります。

リスク2:発覚したときに信用を失う

所属偽装は、思っているよりも簡単に発覚します。 入館証の申請、情報セキュリティの誓約書、社会保険の確認、雑談などで分かることがあります。参画前に客先へ出す書類はSESの参画初日までに営業がやる準備|入場チェックリストと案内文で一覧にしています。

発覚すると、客先は「ほかの要員もそうではないか」と疑います。その結果、その要員だけでなく、自社の要員全員が見直されることがあります。上位会社から、取引口座を閉じられることもあります。

情報漏えいなどの事故が起きたときも問題です。客先は「誰がどの会社の管理下で作業していたか」を把握できていません。そのため、責任の切り分けが難しくなり、自社がより重く責められやすくなります。

リスク3:商流飛ばしを招く

所属を偽ると、BPが客先と直接つながりやすくなります。 客先から見れば、その要員は「自社の社員」です。BPの会社名が見えないため、BPの営業が客先に直接アプローチしても、自社は気づきにくくなります。

商流飛ばしとは、間にいる会社を飛ばして、上の会社と直接取引することです。

所属を偽った状態で商流飛ばしや引き抜きが起きても、自社は強く抗議しにくくなります。「そもそも商流を隠していた」という弱みがあるからです。防ぎ方はSESの商流飛ばしは違法?営業が知るべきリスクと防ぎ方5つで解説しています。

リスク4:偽装請負・二重派遣の疑いを持たれる

所属偽装そのものがすぐに偽装請負になるわけではありません。 しかし、実際の雇い主と、名乗っている会社がずれている状態は、偽装請負や二重派遣を疑われやすい形です。

職業安定法44条は、法律で認められた場合を除き、労働者供給事業を禁止しています。労働者供給とは、供給契約にもとづいて、労働者を他人の指揮命令の下で働かせることです。労働者派遣に当たるものは除きます(職業安定法4条8項)。

所属を偽った要員が、客先から直接細かい指示を受けていたとします。この場合、BP→自社→客先と人を流しているだけに見え、違法な形を疑われる材料になります。罰則はSESの二重派遣(多重派遣)は違法?罰則と避ける契約の組み方で確認できます。

BPの要員を出すときの正しい手順(5ステップ)

正しい手順は「商流を確かめる→BPの要員だと伝える→書面で承諾を取る」の順です。 承諾が取れない案件は、所属を偽らずに見送ります。

  1. 商流と商流制限を確かめる:案件メールの「商流」「再委託」「所属」の書き方を読みます。はっきりしなければ、上位の会社に質問します。

  2. 提案の段階でBPの要員だと伝える:スキルシートの所属欄は、BPの会社名のまま出します。「弊社BP(一社先)の要員です」と一言添えます。

  3. 再委託の承諾を書面で取る:メールでもよいので、承諾の記録を残します。基本契約書で書式が決まっていれば、それに従います。

  4. BPと自社の契約を整える:BPとの間でも、再々委託の禁止や、客先との直接取引の禁止を契約書に入れます。

  5. 名刺と連絡先の扱いを決める:名刺はBPの会社のものを使います。プロジェクト内の呼び方は、客先のルールに合わせます。

再委託の承諾を依頼するメール例文

上位会社へ、BPの要員を提案するときの例文です。日付は2026年の暦に合わせています。

件名:【再委託のご承諾のお願い】〇〇案件(10月1日参画予定)

株式会社〇〇
営業部 〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。

〇〇案件にご提案している要員(イニシャル:T.K.)について、ご連絡です。
本要員は弊社社員ではなく、弊社のパートナー企業である株式会社××(一社先)に所属しています。

貴社との基本契約書 第〇条にもとづき、株式会社××への再委託について、ご承諾をいただけますでしょうか。
ご承諾いただける場合は、本メールへのご返信で承諾の旨をお知らせください。

商流:貴社 → 弊社 → 株式会社××(要員所属)
参画予定:2026年10月1日(木)

ご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。
どうぞよろしくお願いいたします。

商流の聞き方はSESの商流の確認方法|何次請けかの見分け方と質問例文も参考にしてください。

BPから「御社の名刺を貸して」と頼まれたときの返信例文

〇〇様

ご相談ありがとうございます。あいにく弊社の名刺は、弊社と雇用契約のある社員にだけ発行する決まりです。
今回は貴社所属の方として上位会社へご紹介し、再委託のご承諾をいただく形で進めさせてください。
承諾が得られない場合は、別の案件で改めてご提案させていただきます。

すでに所属を偽っている場合の直し方

すでに所属を偽って出している場合は、隠し続けるより、早めに正直に伝えるほうが傷は小さくなります。 時間がたつほど、発覚したときの影響が大きくなるからです。

  1. 社内で状況を洗い出す:どの要員が、どの客先で、どの名刺やメールを使っているかを一覧にします。

  2. 契約書を読み直す:上位会社との基本契約書の再委託条項と、違反したときの定めを確認します。

  3. 上位会社に相談する:いきなり客先に言わず、直接の契約相手に経緯を説明します。承諾を後から取れるかを相談します。

  4. 名刺・メールを切り替える:承諾が取れたら、BPの会社の名刺と連絡先に切り替えます。

  5. 再発防止のルールを伝える:社内ルールを文書にし、上位会社にも伝えます。

相手が承諾しない場合は、契約終了の時期と引き継ぎを話し合います。退場の進め方はSESの契約途中の退場|営業がやる対応5ステップと連絡例文で解説しています。迷うときは、早めに弁護士に相談しましょう。

自社のBPが無断で下の会社の要員を出していた場合は、SESでBPが無断で商流を増やしていたら|発覚時の対応と再発防止で解説しています。

そのまま使える社内ルール例(7か条)

社内ルールで一番大事なのは、「名刺を貸さない」「承諾を取ってから出す」を文書にすることです。 口頭の注意だけでは、忙しいときに守られなくなります。

次のルール例は、自社の規程に合わせて書き換えて使ってください。

SES要員の所属表示に関するルール(例)

第1条(名刺の貸し出し禁止)自社の名刺は、自社と雇用契約を結んでいる社員だけに発行する。BPの要員には貸し出さない。

第2条(所属の正しい表示)スキルシート・面談・客先の書類では、要員の実際の所属会社を記載する。

第3条(再委託の承諾)BPの要員を提案するときは、上位会社から書面(メールを含む)で再委託の承諾を得てから参画させる。

第4条(商流制限の遵守)案件の商流制限に合わない場合は、所属を変えて提案しない。条件の変更を相談するか、見送る。

第5条(BPとの契約)BPとの契約書に、再々委託の禁止と、客先との直接取引の禁止を定める。

第6条(メールアドレス等)BPの要員に自社ドメインのメールアドレスを発行する場合は、客先の承諾を得て、所属が分かる署名を付ける。

第7条(記録)再委託の承諾メール・商流・参画期間は、案件ごとに記録して保存する。

ルールを守らせる3つのコツ

  • 提案前チェックを1項目足す:提案メールを送る前に「所属と商流は正しいか」を確認させます。

  • 例外を作らない:「今回だけ」を認めると、すぐに元に戻ります。

  • 断った営業を評価する:条件に合わない案件を見送った判断を、上長が認めます。

チョータツで商流の条件と人材探しを楽にする

所属を偽る理由の多くは、「条件に合う人材がすぐ見つからない」ことです。 自社の手作業でも対応できますが、ツールを使うと手間を減らせます。

自分でやる場合は、案件ごとに商流制限をExcelに書き、提案前に必ず見るようにします。条件に合う人材は、BPへの一斉メールや交流会で探します。

もっと楽にするなら、チョータツが使えます。 チョータツは、SES営業の案件・人材を管理・共有するツールです。3,000社以上が利用していて、無料で始められます。

困りごとチョータツでできること
商流制限を見落とす案件の情報を管理・共有し、提案前に社内で確認できる
条件に合う人材が見つからない他社と連携すると、他社の営業中人材をデータベース化できる
BPへの声かけに時間がかかるパートナーへのメール配信機能で、まとめて連絡できる

「貴社社員まで」のように商流がきびしい案件もあります。その場合は、自社と直接契約するITフリーランスに声をかける方法もあります。ただし、フリーランスまで提案してよいかは案件ごとに違うので、必ず確認してください。

DrivenXのxhours(エックスアワーズ)なら、数千名のフリーランスから探して直接スカウトできます。

よくある質問

Q. SESで所属を偽る名刺を渡すのは違法ですか?
名刺を渡すこと自体を直接禁止する法律の条文は、一般的にはありません。ただし、無断の再委託として契約違反になるおそれがあります。働き方によっては、偽装請負や二重派遣を疑われる材料にもなります。
Q. BPの要員を「弊社の社員です」と紹介してと上位会社に言われたら?
断るのが基本です。「再委託のご承諾をいただいたうえで、BPの要員としてご紹介したい」と返しましょう。上位会社の指示でも、発覚したときの責任は自社にも及びます。
Q. 「一社先まで」の案件に、二社先の要員を出してもいいですか?
出してはいけません。商流を短く見せて出すのは、所属偽装と同じです。条件の変更を相談するか、見送りましょう。
Q. 名刺を貸さず、口頭で「弊社の者です」と言うだけならいいですか?
よくありません。名刺の有無ではなく、相手に誤った所属を伝えていることが問題です。所属は正しく伝えましょう。
Q. BP側から「御社の名刺を貸してほしい」と頼まれたら?
社内ルールを理由に断りましょう。「弊社の名刺は社員のみ発行しています。貴社所属としてご紹介し、承諾を取ります」と伝えれば角が立ちにくくなります。
Q. 商流を正直に伝えると、単価を下げられませんか?
下げられることもあります。それでも、発覚したときの取引停止や損害賠償のほうが、ずっと大きな損失になります。単価の交渉は、商流を開示したうえで行いましょう。

まとめ

  • 所属偽装とは、BPの要員を自社社員と偽って客先に出すこと。名刺の貸し出しやメールの付与が代表例

  • 準委任では、民法644条の2により、発注元の許諾なく再委託できないのが原則

  • リスクは「承諾違反」「信用の失墜」「商流飛ばしの誘発」「偽装請負・二重派遣の疑い」の4つ

  • 正しい手順は「商流を確かめる→BPの要員だと伝える→書面で承諾を取る」。条件に合わなければ見送る

  • すでに偽っている場合は、上位会社に早めに相談して切り替える

  • 社内ルール(7か条)を文書にし、提案前チェックに組み込む

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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