SESの商流制限の書き方|「貴社まで」「1社先まで」表記例10の意味とテンプレ
公開日:2026年10月1日更新日:2026年10月1日
SESの商流制限とは?案件メールに書く理由
商流制限とは、案件に要員を提案できる会社の範囲を、案件を出す側が決めたルールのことです。 案件メールの「条件」の欄に「商流:貴社まで」のように書きます。
商流とは、仕事がエンド(システムを使う発注元)から、いくつもの会社を通って届く経路のことです。 案件メールは転送されるたびに、この経路が1社ずつ長くなります。商流制限は、その長さに歯止めをかけるために書きます。
商流制限を書く理由は、次の3つです。
| 理由 | 制限がないと起きること |
|---|---|
| 契約を守るため | 上位の会社との契約で決めた再委託の範囲を超えてしまう |
| 法律のリスクを減らすため | 誰が雇っている人か確認しきれず、二重派遣(職業安定法第44条が禁じる労働者供給)のおそれが出る |
| 単価と品質を守るため | 間の会社が増えてエンジニアの単価が下がり、連絡も遅くなる |
受け取った案件の商流を確認する方法は、SESの商流の確認方法|何次請けかの見分け方と質問例文で解説しています。
商流制限の表記例と意味の一覧【10パターン】
案件メールでよく使う商流制限の表記は、次の10パターンです。 数える起点は、いつも「メールを受け取った会社(貴社)」です。
| # | 表記例 | 意味(提案できる人) | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 貴社まで/御社まで | 受け取った会社に所属する人まで | 個人事業主を含むかは解釈が分かれる |
| 2 | 貴社プロパーのみ/貴社社員まで | 受け取った会社の正社員・契約社員だけ | 最も狭い制限 |
| 3 | 貴社直個人まで | 受け取った会社の社員と、直接契約の個人事業主まで | 「直個人」の意味を補足すると安心 |
| 4 | 1社先まで/貴社1社先まで | 受け取った会社の取引先1社に所属する人まで | 1社先の会社のBPは不可 |
| 5 | 1社先プロパーまで | 1社先の会社の社員まで | 1社先の個人事業主は不可 |
| 6 | 2社先まで | 受け取った会社から数えて2社先に所属する人まで | 深い商流になりやすい |
| 7 | 個人事業主不可/個人不可 | 会社に雇われている人だけ | 商流の段数とは別の条件 |
| 8 | 個人事業主可 | フリーランスの提案も受け付ける | 何社先の個人までかを併記する |
| 9 | 商流制限なし | 範囲の制限なし | 実務では所属の確認がより大切になる |
| 10 | エンド直/元請け直 | 案件の出どころの位置を示す | 提案できる範囲の制限ではない |
プロパーとは、その会社に雇われている社員のことです。 反対に、取引先の会社に所属する人を「BP(ビジネスパートナー)の要員」と呼びます。違いはSESのプロパーとBPの違いで詳しく解説しています。
表の10の「エンド直」は、よく商流制限と混同されます。 エンド直とは、案件を出した会社がエンドと直接契約していることを示す言葉です。提案できる範囲は別に書く必要があります。
「貴社まで」「1社先まで」の数え方
商流制限は、メールを受け取った会社を「0」として、そこから何社先の人までかを数えます。 具体例で確認しましょう。
A社が案件メールを配信し、B社が受け取ったとします。B社の取引先がC社、C社の取引先がD社です。
| 制限の表記 | B社(貴社)の社員 | C社(1社先)の社員 | D社(2社先)の社員 |
|---|---|---|---|
| 貴社まで | 提案できる | 提案できない | 提案できない |
| 1社先まで | 提案できる | 提案できる | 提案できない |
| 2社先まで | 提案できる | 提案できる | 提案できる |
商流制限は受け取った会社から数えるので、エンドから見た位置はさらに深くなります。 A社がエンドから数えて2社目(二次請け)なら、B社は3社目、C社は4社目の会社です。「1社先まで」と書くと、エンドから4社目の会社の社員まで提案が来ます。配信する側は、自社の位置も足して制限を決めます。
「貴社まで」の解釈が分かれる理由
「貴社まで」は、個人事業主を含むかどうかで会社ごとに解釈が分かれます。 受け取った会社と直接契約するフリーランスを「貴社の人」と数える会社もあれば、数えない会社もあります。
解釈の違いは、提案が来てから揉める原因になります。配信する側は「貴社プロパーのみ」または「貴社直個人まで可」のように、個人事業主の扱いまで書き切るのが確実です。
案件メールでの商流制限の書き方テンプレ
商流制限は、「誰まで」「個人事業主の可否」「確認方法」の3行で書きます。 1語だけで済ませると、受け取った側の解釈に任せることになります。
テンプレ1:プロパーに限りたいとき
■商流:貴社プロパーのみ(個人事業主・BP所属の方は不可) ■確認:ご提案時にスキルシートへ所属企業と雇用形態をご記載ください
テンプレ2:1社先まで受け付けたいとき
■商流:貴社1社先まで(1社先のプロパーのみ) ■個人事業主:貴社直契約の方のみ可/1社先の個人事業主は不可 ■確認:ご提案時に「所属企業名・雇用形態・貴社との契約形態」をご記載ください
テンプレ3:案件メール全体の中での位置
件名:【案件】Java開発エンジニア|11月開始|リモート併用|商流:貴社1社先まで ■案件名:金融機関向け業務システム開発 ■場所:東京都港区(週2日リモート) ■期間:2026年11月2日(月)〜長期 ■契約形態:準委任 ■精算幅:140〜180時間 ■商流:貴社1社先まで(1社先のプロパーのみ) ■個人事業主:貴社直契約の方のみ可 ■外国籍:日本語ビジネスレベル以上で可 ■面談:1回(弊社同席) ■確認:ご提案時に所属企業名・雇用形態・貴社との契約形態をご記載ください
書くときのポイントは次の4つです。
件名にも商流制限を入れる:本文を開く前に対象外の会社がわかり、無駄な提案が減ります。
「〜まで」と「〜のみ」を使い分ける:「まで」は範囲、「のみ」は限定です。プロパーに限るなら「のみ」を使います。
確認方法をセットで書く:スキルシートに所属と雇用形態を書いてもらうと、制限を守っているかを確かめられます。
社内で表記をそろえる:営業ごとに書き方が違うと、受け取る側が混乱します。社内で10パターンの表を共有しましょう。
案件メールに入れるほかの条件は、SESの条件面の書き方|案件・人材メールに入れる項目14と記入例でまとめています。
商流制限を受け取った側が守るための確認
案件メールを受け取った側は、提案する要員が商流制限の範囲内かを、提案前に書面で確かめます。 口頭の「たぶん大丈夫」で出すと、あとで提案の取り消しになります。
提案する要員の所属企業と雇用形態を、スキルシートや所属企業のメールで確認する
自社を「0」として、要員の所属企業が何社先かを数える
個人事業主の場合は、自社との直接契約か、間に会社が入るかを確認する
範囲外なら、提案せずに送り主へ「範囲外の要員ならいる」と相談する
範囲外の要員を、所属を偽って提案するのは絶対に避けます。取引停止の原因になるうえ、契約違反を問われるおそれがあります。所属を偽るリスクはSESで所属を偽る名刺はNG?BPの自社社員扱いのリスクと社内ルールで解説しています。
商流制限を守らない相手への対応5ステップ
商流制限を守らない提案が来たら、受け付けずに理由を伝え、記録に残します。 くり返す相手は、配信先や取引先から外すことも検討します。
提案を受け付けない:範囲外とわかった時点で、面談に進めずに止めます。
理由を短く伝える:「商流制限(貴社1社先まで)の範囲外のため」と、書いた条件を示して断ります。
記録に残す:日付・相手・案件・どの制限に反したかを、取引先の記録に書きます。
2回目は取引の条件を確認する:同じ相手がくり返すなら、担当者の上司にも連絡し、今後の運用を確認します。
くり返すなら配信先から外す:改善しない相手には、案件メールの配信を止めます。
断るときの例文です。
〇〇様 お世話になっております。株式会社△△の□□です。 ご提案いただいた〇〇様の件、ありがとうございました。 恐れ入りますが、本案件は「貴社1社先まで(1社先のプロパーのみ)」 とさせていただいており、今回の方は範囲外となるため、 ご提案をお受けすることができません。 範囲内の方がいらっしゃいましたら、 10月9日(金)までにご提案いただけますと幸いです。
すでに参画した後で範囲外と判明したときは、すぐに上位の会社へ報告します。 自社だけで隠すと、上位の会社との契約違反が重くなるおそれがあります。発覚後の報告と再発防止の手順はSESでBPが無断で商流を増やしていたら|発覚時の対応と再発防止で解説しています。二重派遣の疑いがあるときは、SESの二重派遣(多重派遣)は違法?罰則と避ける契約の組み方で確認してください。
契約書の再委託条項との関係
案件メールの商流制限は、それだけでは契約の中身としてあいまいになりやすい約束です。 基本契約書の再委託条項と、個別契約・注文書の両方に書くことで、守らせる根拠がはっきりします。
再委託条項とは、受けた仕事をさらに別の会社や個人に任せてよいかを決める、契約書の条項のことです。 SESで多い準委任契約では、民法第644条の2(第656条で準委任にも準用)が再委託のルールを定めています。「委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるとき」でなければ、再委託はできません。
この民法のルールは、契約で別の定めをすることもできます。そのため、実際にどこまで再委託できるかは、契約書の書き方で決まります。
| 書く場所 | 何を決めるか | 例 |
|---|---|---|
| 基本契約書(再委託条項) | 再委託の原則と承諾の方法 | 「事前の書面による承諾なく再委託してはならない」 |
| 個別契約書・注文書 | その案件で認める範囲 | 「再委託は1社先まで。個人事業主への再委託は不可」 |
| 案件メール | 提案の段階での範囲 | 「商流:貴社1社先まで」 |
案件メールと契約書の範囲がずれないように、3か所の表記をそろえます。 メールで「1社先まで」と書いたのに、注文書で「再委託不可」だと、参画直前に揉めます。
個人事業主(フリーランス)に再委託する場合は、フリーランス法(2024年11月1日施行)も関係します。条件を明示すれば、報酬の支払期日を「元の発注者からの支払期日から30日以内」にできる特例があります(同法第4条第3項)。詳しくはフリーランス法の再委託30日ルール|SESの支払期日と例外条件を確認してください。
条項の具体的な書き方は、SESの再委託禁止条項の書き方|承諾条件と個人事業主の扱いで文例つきで解説しています。
チョータツとチョータツメールAIで、商流制限のある案件を整理する
商流制限を守る・守らせる仕組みは、自分でも作れます。 自分でやるなら、案件ごとに「商流制限」「個人事業主の可否」の列を持つExcelの表を作り、届いた案件メールを転記します。配信するときは、10パターンの表記をテンプレとして社内で共有します。
ただ、1日に何十通も届く案件メールを読み分けて転記するのは、手間がかかります。その手間を減らすのが、DrivenXのチョータツとチョータツメールAIです。
| 場面 | 自分でやる場合 | DrivenXのツールを使う場合 |
|---|---|---|
| 届いたメールを仕分ける | 案件か人材かを1通ずつ目で判断 | チョータツメールAIが案件メールと人材メールに切り分ける |
| 案件の条件を管理する | Excelに転記して社内で回す | チョータツで案件・人材の情報を管理・共有する |
| 自社の案件を配信する | BCCでメールを一斉送信 | チョータツのメール配信機能でパートナーに配信 |
| 取引先の案件を把握する | 各社のメールを読み比べる | チョータツで連携すると、相手の営業中案件・営業中人材がデータベースになる |
チョータツメールAIとは、届いたメールをAIが処理し、案件メールと人材メールに切り分ける機能のことです。メールに書かれた単価や商流などの条件も読み取ります。転送設定で取り込めて、案件・人材以外のメールはデータに残りません。
チョータツは、3,000社以上が利用する、SES営業の案件・人材の管理・共有ツールです。無料で始められ、情報の入力はAIが手伝います。
なお、商流制限の中身を読み取って判断するのは、営業の仕事です。メールの仕分けと管理をツールに任せると、商流制限の確認に使える時間が増えます。
よくある質問
- Q. SESの「貴社まで」とはどういう意味ですか?
- メールを受け取った会社に所属する人まで提案できる、という意味です。受け取った会社の取引先に所属する人は提案できません。個人事業主を含むかは解釈が分かれるので、書く側は「貴社プロパーのみ」などで明確にしましょう。
- Q. 「1社先まで」とはどういう意味ですか?
- メールを受け取った会社の、取引先1社に所属する人まで提案できるという意味です。その取引先のさらに先の会社の人は提案できません。
- Q. 商流制限と「エンド直」は何が違いますか?
- 商流制限は提案できる範囲のルールで、エンド直は案件を出した会社の位置を示す言葉です。エンド直の案件でも、提案できる範囲は別に「貴社まで」などと書く必要があります。
- Q. 「個人事業主不可」はなぜ書かれるのですか?
- 上位の会社との契約で、個人への再委託が認められていないことが多いためです。従業員を使わない個人事業主と取引すると、フリーランス法の義務(条件の明示や支払期日のルール)がかかる点も理由の1つです。
- Q. 商流制限を書かないとどうなりますか?
- 何社先の人でも提案が来るため、所属の確認に手間がかかります。上位の会社との契約で決めた再委託の範囲を超えるおそれもあります。案件メールには必ず書きましょう。
- Q. 商流制限は法律で決まっているルールですか?
- いいえ。商流制限は業界の慣習で、会社同士の約束です。ただし、準委任の再委託には民法第644条の2のルールがあり、契約書の再委託条項とあわせて守る必要があります。
まとめ
商流制限とは、案件に提案できる会社の範囲を、案件を出す側が決めたルール
数える起点は「メールを受け取った会社(貴社)」。貴社まで・1社先まで・2社先までと数える
「貴社まで」は個人事業主を含むかで解釈が分かれるので、書く側が明確にする
書き方は「誰まで」「個人事業主の可否」「確認方法」の3行。件名にも入れる
守らない相手には、受け付けない→理由を伝える→記録→上司に確認→配信停止の順で対応する
案件メール・基本契約書の再委託条項・注文書の3か所で表記をそろえる
案件メールの仕分けと管理は、チョータツメールAIとチョータツで手間を減らせる
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年10月1日|更新日:2026年10月1日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「民法」(第644条の2 復受任者の選任等、第656条 準委任)
e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)」(第4条 報酬の支払期日)
e-Gov法令検索「職業安定法」(第44条 労働者供給事業の禁止)