SESの再委託禁止条項の書き方|条項例3つと個人事業主を提案するときの承諾依頼メール例文
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
SESの再委託とは?
再委託とは、仕事を受けた会社が、その仕事の一部をさらに別の会社や個人に任せることです。SESでは、自社の社員ではなく、BP(取引先の会社)の社員やフリーランスを客先に出すときが再委託にあたります。
再々委託とは、再委託を受けた会社が、さらに別の会社に仕事を任せることです。商流が1つ深くなるたびに、客先から見て「誰が来ているのか」がわかりにくくなります。
| 登場する会社 | 立場 | 契約書での呼び方の例 |
|---|---|---|
| 客先(エンド・元請け) | 仕事を出す | 委託者・甲 |
| 自社 | 仕事を受け、BPに任せる | 受託者・乙 |
| BP・フリーランス | 自社から仕事を受ける | 再委託先 |
| BPのさらに先の会社 | BPから仕事を受ける | 再々委託先 |
営業の現場でいう「商流制限」は、この再委託・再々委託をどこまで認めるかの話です。「貴社プロパーまで」「一社先まで」といった案件メールの書き方は、SESの商流制限の書き方|案件メールの表記例と意味・守らせ方で解説しています。
再委託は法律ではどう扱われる?
準委任契約では、契約に何も書かなければ、発注者の許諾がない限り再委託はできません。民法第644条の2は、受任者(仕事を受けた側)が復受任者を選べる場面を限っています。「委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるとき」だけです。
復受任者とは、仕事を受けた人が、さらに仕事を任せる相手のことです。SESでいえば、再委託先のBPやフリーランスにあたります。
一方、請負契約では、受注した仕事を第三者に任せることは本来自由と考えられています。IPA(情報処理推進機構)と経済産業省の「情報システム・モデル取引・契約書」の解説でも、この違いが整理されています。同じ解説は、システム開発を準委任で行う場合に「再委託を一切禁止することは現実的ではない」とも述べています。
| 契約の形 | 何も書かないとき | 営業が気をつけること |
|---|---|---|
| 準委任契約 | 許諾がなければ再委託できない | 条項で承諾の方法を決めておく |
| 請負契約 | 再委託は本来自由 | 客先が条項で制限していないか見る |
| 労働者派遣契約 | 派遣先で別会社の人を働かせる形は不可 | 二重派遣にならない契約の組み方にする |
SESの多くは準委任契約です。つまり、再委託条項がない契約で、BPの人材を黙って入れるのは危ないということです。準委任と請負の違いは、準委任契約と請負契約の違い|業務委託契約書を見分ける判定シートで詳しく比べています。
再委託条項の3つの型と条項例
再委託条項は、全面禁止・事前承諾制・一社先まで可の3つに分けられます。下の条項例は、それぞれの型の書き方をわかりやすくするための例です。そのまま使う前に、自社の契約全体と合わせて確認してください。
型1:全面禁止の条項例
全面禁止とは、再委託を一切認めない書き方のことです。自社の社員(プロパー)しか客先に出せなくなります。
第○条(再委託の禁止)
乙は、本契約及び個別契約に基づく業務の全部又は一部を、第三者に再委託してはならない。
2 前項の第三者には、乙と雇用契約を結んでいない個人(個人事業主を含む。)を含むものとする。
2項がないと、「フリーランスは第三者に入るのか」で解釈が割れることがあります。全面禁止にするなら、個人事業主も含むのかを書いておくと明確です。
型2:事前承諾制の条項例
事前承諾制とは、発注者が前もって承諾した場合だけ再委託を認める書き方のことです。SESの基本契約書で最もよく見る型です。
第○条(再委託)
乙は、甲の事前の書面(電子メールを含む。以下同じ。)による承諾を得た場合に限り、個別業務の一部を第三者に再委託することができる。なお、甲は、合理的な理由がある場合を除き、承諾を拒まないものとする。
2 乙は、再委託先の名称、所在地、業務に従事する者の氏名その他甲が求める事項を、
再委託開始の○営業日前までに甲に通知する。
3 乙は、再委託先に対し、本契約に基づき乙が負う義務と同等の義務を負わせる。
4 乙は、再委託先の行為について、乙自身の行為と同様の責任を負う。
IPAと経済産業省のモデル契約書(第7条)でも、事前承諾制の案(A案)が用意されています。A案は、発注者が承諾を拒むには合理的な理由が必要とする形で、理由のない拒否を防ぐ考え方です。さらにA案の第2項には、承諾したものとみなすしくみも入っています。再委託先の名称・住所などを書面で申請し、○日以内に理由つきの拒否通知がなければ承諾とする形です。自社の契約にもこの「みなし承諾」を入れておくと、返事待ちで提案が止まりにくくなります。なお、同じモデル契約書は、業務の全部を再委託する「丸投げ」は認めていません。
型3:一社先まで可(再々委託禁止)の条項例
一社先まで可とは、自社が直接契約する相手までは再委託を認め、その先の再々委託を禁止する書き方のことです。
第○条(再委託)
乙は、甲の事前の書面による承諾を得て、個別業務の一部を、乙と直接契約を結ぶ第三者(以下「再委託先」という。)に再委託することができる。
2 再委託先は、当該業務をさらに第三者に再委託してはならない。
3 再委託先が個人事業主である場合、当該個人事業主を一の再委託先とみなす。
4 乙は、再委託先に対し、本条と同等の再委託の制限を課す。
3項がポイントです。BPに所属するフリーランス(BPが個人と契約している人)を出すと、客先から見れば二社先になります。「自社と直接契約した個人は一社先」と決めておけば、判断に迷いません。
3つの条項で提案できる人材はどう変わる?
条項の型によって、提案できる人材の範囲がはっきり変わります。全面禁止ならプロパーだけ、事前承諾制なら承諾がとれた人すべて、一社先までなら直接契約の相手までです。
| 人材の所属 | 全面禁止 | 事前承諾制 | 一社先まで可 |
|---|---|---|---|
| 自社のプロパー社員 | 提案できる | 提案できる | 提案できる |
| 自社と直接契約のフリーランス | 提案できない | 承諾があれば可 | 承諾があれば可 |
| BPのプロパー社員 | 提案できない | 承諾があれば可 | 承諾があれば可 |
| BPと契約するフリーランス | 提案できない | 承諾があれば可 | 提案できない |
| BPのさらに先の会社の社員 | 提案できない | 承諾があれば可 | 提案できない |
営業目線で見ると、事前承諾制が最も提案の幅が広い型です。ただし、承諾をとる手間がかかるので、承諾の方法(メールでよいか)と期限を決めておくことが大切です。
営業がおすすめする条項の選び方
自社が受ける側(客先との契約)なら、事前承諾制で、メールでの承諾を認める形を目指しましょう。全面禁止をそのまま受けると、プロパーが空いていない月に案件を落とすことになります。
自社が出す側(BPとの契約)なら、一社先まで可で結ぶのがおすすめです。BPの先の先まで人が流れると、客先への説明ができなくなります。
個人事業主(フリーランス)を再委託するときの扱い
個人事業主を客先に出すことも、再委託にあたります。会社ではなく個人でも、自社の社員でない以上は「第三者」です。
個人事業主とは、会社をつくらずに、個人で仕事を受けている人のことです。SESの現場では「フリーランス」「個人」「個人事業主」と呼ばれます。
客先が「個人事業主不可」とする理由
案件メールに「個人事業主不可」と書かれることがあります。主な理由は次の3つです。
| 理由 | 客先が心配していること | 営業ができる説明 |
|---|---|---|
| 情報の管理 | 秘密情報や個人データが守られるか | 秘密保持の誓約と、自社の管理体制を示す |
| 責任の所在 | 事故が起きたとき誰が責任を負うか | 自社が再委託先の行為に責任を負う条項を示す |
| 働き方の管理 | 客先が直接指示してしまわないか | 指示は自社を通すルールを示す |
個人情報保護法第25条は、個人データの取り扱いを任せる会社に、任せた先への必要かつ適切な監督を求めています。客先が再委託先を細かく知りたがるのは、この監督の責任があるからです。
個人事業主と契約するときはフリーランス法も確認する
自社が個人事業主と契約するときは、フリーランス法の対象になることがあります。正式名は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。従業員を使っていない個人や、代表者1人だけで他の役員も従業員もいない会社が対象です(第2条第1項)。
対象になると、自社は仕事の内容・報酬・支払期日などを書面やメールで明示する必要があります(第3条。発注者の規模を問わない義務です)。自社が特定業務委託事業者の場合は、支払期日にもルールがあります。特定業務委託事業者とは、従業員を使うか、役員が2人以上いる発注者のことです(第2条第6項)。報酬の支払期日は、原則として役務の提供を受けた日から60日以内で定めます(第4条第1項)。
客先から受けた仕事を再委託する場合は、例外があります。再委託であること、元の発注者の名前、元の支払期日などを明示する必要があります。そうすれば、支払期日を元の支払期日から30日以内で決められます(第4条第3項)。
30日ルールの条件はフリーランス法の再委託30日ルール|SESの支払期日と例外条件で解説しています。明示の書き方はフリーランス法の3条通知ひな形|SESの発注書・メール記載例を使ってください。
再委託の承諾を依頼するメール例文
事前承諾制の契約でBPやフリーランスを提案するときは、提案と同時に、承諾をお願いするメールを送りましょう。承諾をとらずに参画させると、契約違反になるおそれがあります。
例文1:フリーランスを提案するときの承諾依頼
件名:【再委託のご承諾のお願い】○○案件 要員(個人事業主)について
株式会社△△
開発部 □□様いつもお世話になっております。株式会社××の営業、■■です。
○○案件にご提案しております要員について、基本契約書第○条にもとづき、再委託のご承諾をお願いしたくご連絡しました。
・氏名:山田 太郎(個人事業主)
・当社との契約:当社と直接の準委任契約(再々委託はありません)
・作業開始予定:2026年10月5日(月)
・秘密保持:当社と秘密保持の誓約を締結済み
・情報の取り扱い:貴社のルールに従い、当社が管理・監督いたしますお手数ですが、2026年10月1日(木)までに、本メールへのご返信でご承諾の可否をお知らせいただけますと幸いです。
ご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。株式会社×× 営業部 ■■
例文2:BPの社員を提案するときの承諾依頼(短い形)
件名:【再委託のご承諾のお願い】○○案件 要員について
□□様
お世話になっております。株式会社××の■■です。
○○案件の要員につき、基本契約書第○条にもとづく再委託のご承諾をお願いいたします。・再委託先:株式会社◇◇(東京都港区)
・要員:佐藤 花子(株式会社◇◇ 正社員)
・商流:貴社 → 当社 → 株式会社◇◇(一社先まで)
・作業開始予定:2026年10月19日(月)2026年10月13日(火)までにご返信をいただけますと助かります。
よろしくお願いいたします。
メールで承諾をもらうときは、契約書で「書面には電子メールを含む」と決めているかを先に確認しましょう。決めていなければ、承諾書にサインをもらう形のほうが安全です。
再委託条項を結ぶ前に営業が確認する7項目
再委託条項は、提案できる人・承諾の手間・責任の範囲の3つを決める条項です。基本契約書を結ぶ前に、次の7項目を確認しましょう。
型はどれか:全面禁止・事前承諾制・一社先まで可のどれかを確かめる
承諾の方法:書面だけか、メールでもよいかを確かめる
承諾の期限:何営業日前までに通知するか、返事がないときの扱いを確かめる
個人事業主の扱い:個人を再委託先に含むか、一社と数えるかを確かめる
義務の引き継ぎ:秘密保持などの義務を、再委託先にも負わせる形になっているか確かめる
責任の範囲:再委託先の行為について、自社がどこまで責任を負うか確かめる
下の契約との一致:BP・フリーランスとの契約に、同じ条件を入れられるか確かめる
7つ目が特に大切です。客先との契約が「一社先まで」でも、BPとの契約で再々委託を禁止していないとします。その場合、自社が知らないうちに違反することがあります。BPが無断で商流を増やしていたと分かったときの動き方は、SESでBPが無断で商流を増やしていたら|発覚時の対応と再発防止にまとめています。
基本契約書全体の確認ポイントは、SESの基本契約書とは|テンプレートと個別契約の優先・印紙7号にまとめています。
再委託と二重派遣・偽装請負の関係
再委託の承諾をとっていても、客先が再委託先のエンジニアに直接指示を出すと、二重派遣や偽装請負を疑われます。承諾は「誰が作業するか」の問題で、「誰が指示を出すか」の問題とは別です。
二重派遣とは、派遣された人を、さらに別の会社に派遣して働かせることです。職業安定法第44条が禁止する「労働者供給」にあたるおそれがあります。
再委託先のエンジニアが客先で働くときは、作業の指示は自社とBPを通すのが原則です。どんな行為がNGかは、SESの二重派遣(多重派遣)は違法?罰則と避ける契約の組み方で確認できます。
チョータツで案件ごとの再委託条件を管理する
自分で管理する場合は、Excelの案件管理表に「再委託の型」「個人事業主の可否」「承諾の方法」の列を足しましょう。案件メールが届くたびに、商流制限の書き方を読みとって転記します。
ただ、案件が月に何十件も届くと、転記が追いつかなくなります。「この客先は一社先までだった」を思い出せず、提案後に断られることもあります。
チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 案件の条件を残す | Excelやメールに散らばる | 案件の情報としてまとめて管理できる |
| 提案前に条件を見る | メールを探して読み返す | 案件情報を開いて確認できる |
| チームで共有する | ファイルを送り合う | 同じ情報をチームで共有できる |
| 情報を入れる | 1件ずつ手で書き写す | AIが入力を手伝う |
他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材もデータベースとして見られます。再委託の条件に合う人材を、提案の前に絞り込みやすくなります。
よくある質問
- Q. SESの契約書に再委託の条項がないと、再委託はできませんか?
- 準委任契約なら、発注者の許諾がなければ原則できません(民法第644条の2)。条項がないときは、提案の前に客先から承諾をもらいましょう。
- Q. 再委託の承諾はメールでもよいですか?
- 契約書で「書面には電子メールを含む」と決めていれば、メールで足ります。決めていない場合は、承諾書に記名・押印をもらうほうが安全です。
- Q. 個人事業主は再委託先に含まれますか?
- 自社の社員でない以上、個人事業主も第三者として再委託先に含まれるのが一般的です。契約書に「個人事業主を含む」と書いておくと、解釈で揉めません。
- Q. 業務委託で再委託を全面禁止にするのは違法ですか?
- 違法ではありません。再委託をどこまで認めるかは、当事者の合意で決められます。ただ、SESで全面禁止を受けると、提案できる人材がプロパーだけになります。
- Q. システム開発の契約書で、再委託を禁止すべきですか?
- IPAと経済産業省のモデル契約書には、全面禁止の案はありません。事前承諾制(A案)と、原則ベンダの裁量にする案(B案)の2つです。解説は、準委任で開発するときに再委託を一切禁止するのは現実的ではないとしています。
- Q. 承諾なしで再委託したことがわかったら、どうなりますか?
- 契約違反として、契約の解除や損害賠償を求められるおそれがあります。気づいた時点で客先に事情を伝え、承諾をもらうか、要員の交代を相談しましょう。
まとめ
再委託条項は、全面禁止・事前承諾制・一社先まで可の3つの型がある
準委任契約は、何も書かなければ発注者の許諾がないと再委託できない(民法第644条の2)
提案の幅が最も広いのは事前承諾制。メールでの承諾と、合理的な理由なく拒まない旨を入れる
BPとの契約は「一社先まで可」にして、客先に説明できない商流をつくらない
個人事業主も再委託先に含まれる。一社と数えるかを契約書に書いておく
個人事業主と契約するときは、フリーランス法の明示と支払期日も確認する
承諾をとっても、客先が再委託先に直接指示すると二重派遣・偽装請負のおそれがある
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「民法」(第644条の2 復受任者の選任等)
IPA(情報処理推進機構)「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」(第二版・2025年4月更新版 ソフトウェア開発委託基本モデル契約書 第7条 再委託のA案・B案と解説)
e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)」(第2条 定義、第4条 報酬の支払期日等)
e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(第25条 委託先の監督)
e-Gov法令検索「職業安定法」(第44条 労働者供給事業の禁止)