SESの案件情報を無断で転送・再配信されたら|見つけ方、連絡例文、NDAで止められる範囲
公開日:2026年10月1日更新日:2026年10月1日
案件情報の「無断転送・再配信」とは?
案件情報の無断転送・再配信とは、受け取った案件メールを、許可なく別の会社に送ったり配信したりすることです。 自社の案件として配信し直す例もあります。 業界では「横流し」「転載」とも呼ばれます。
用語を先に整理します。
案件メールとは、募集中の仕事(案件)の内容・単価・条件を書いて、取引先に送るメールのことです。
BPとは、ビジネスパートナーの略で、案件や人材を紹介し合う取引先の会社のことです。使い方はITのBPとは?「BPさん」の意味とSES営業での使い方・注意点で解説しています。
商流とは、エンド(最終の発注者)から要員の所属会社まで、仕事と契約がつながる会社の並びのことです。
無断の再配信には、次のような形があります。
| 形 | 例 | 自社への影響 |
|---|---|---|
| そのまま転送 | BPが自社の案件メールを別の会社に転送 | 商流が増え、単価が下がる |
| 自社案件として再配信 | BPが社名を差し替えて一斉配信 | 知らない会社から提案が届き、混乱する |
| 条件を書き換えて再配信 | 単価や商流制限を変えて配信 | 条件の違う提案が集まり、客先との約束が崩れる |
| エンド名つきで拡散 | エンド名が入ったまま広く出回る | 上位を飛ばしてエンドに直接営業される |
無断で転送されると、何が困る?
困るのは、商流の約束が崩れることと、エンドや上位からの信用を失うことです。案件情報が広く出回るほど、自社が管理できない提案が増えます。
具体的には、次の4つの問題が起きます。
商流制限を守れなくなる:「貴社まで」の案件が何社も先に届き、条件外の提案が集まる
商流飛ばしを招く:エンド名や上位の会社名が知られると、直接営業されることがある
上位からの信用を失う:上位から「御社から出た情報が出回っている」と指摘される
案件がなくなる:上位が「情報管理ができない会社」と判断し、案件を出さなくなる
商流制限とは、案件に提案できる会社の範囲(「貴社まで」「1社先まで」など)を、案件を出す側が決めたルールのことです。表記の意味はSESの商流制限の書き方|案件メールの表記例と意味・守らせ方で確認できます。商流飛ばしのリスクと防ぎ方はSESの商流飛ばしは違法?営業が知るべきリスクと防ぎ方5つで解説しています。
転送されていることの見つけ方
転送は、知らない会社から自社の案件と同じ内容が届くことで気づくのが一般的です。気づきやすくするには、配信先ごとに案件情報に小さな違いを入れておく方法が役に立ちます。
| 見つけ方 | やり方 | わかること |
|---|---|---|
| 知らない会社からの提案・配信に気づく | 自社案件と同じ作業内容・単価・期間の案件メールを探す | 出回っている事実 |
| 配信先ごとに案件番号を変える | 同じ案件でも、A社には「K-1021-A」、B社には「K-1021-B」をつける | どの配信先から漏れたか |
| 配信先ごとに書き方を少し変える | 「開始時期:11月〜」「開始:11月から」のように表記を変える | 番号が消されても、漏れた先の手がかりになる |
| 提案を受けたときに経路を聞く | 「この案件はどちらからお聞きになりましたか」と確かめる | 転送した会社の名前 |
見つけたら、転送メールを削除せずに保存します。メールのヘッダー(送信元や日時の記録)も含めて残しておくと、送り主への連絡や話し合いの根拠になります。
見つけたときの対応5ステップ
見つけたら、次の順で動きます。証拠を残す → 配信記録と照らす → 契約を確かめる → 送り主に連絡 → 上位への報告を判断。
証拠を残す:転送・再配信されたメールを、ヘッダーごと保存する
自社の配信記録と照らす:いつ、どの会社に、どの案件番号で送ったかを確かめる
契約を確かめる:送り主とのNDA・基本契約に、案件情報の秘密保持や第三者への開示の制限があるか
送り主に連絡する:配信停止・削除と、転送先の範囲を聞く
上位への報告を判断する:上位との約束で案件情報を秘密にする義務があるなら、事実と対応を報告する
送り主への連絡の例文
件名:弊社案件(K-1021-B)の取り扱いについてのお願い
△△株式会社 □□様
いつもお世話になっております。株式会社〇〇の〇〇です。
10月8日に貴社へお送りした案件「K-1021-B(Java開発・港区)」について、ご連絡です。
同じ内容のメールが、10月10日に別の会社から配信されていることを確認しました。貴社とは、2025年4月1日付の秘密保持契約で、弊社から開示した案件情報を第三者に開示しないとお約束いただいております。
つきましては、次の点をお願いいたします。
本案件の再配信・転送の停止と、配信済みメールの削除のご依頼
転送された先の会社名と範囲のご教示
恐れ入りますが、10月17日までにご返信いただけますでしょうか。今後も良いお取引を続けたく、ご協力をお願い申し上げます。
最初の連絡では、「横流しした」と決めつけないのがコツです。社内の担当者が約束を知らずに転送した、ということも少なくありません。
NDA・基本契約・法律で止められる範囲
止められる範囲は、契約(NDA・基本契約)が最も広く、法律(不正競争防止法)は限られると考えます。
| 根拠 | 止められること | 条件・限界 |
|---|---|---|
| 秘密保持契約(NDA)・基本契約の秘密保持条項 | 約束に反する開示の停止、違反による損害の賠償 | 案件情報が秘密情報の定義に入っていること。契約がない相手には使えない |
| 案件メールに書いた「転送・転載禁止」 | 相手への注意・取引の見直しの根拠 | メールの一文だけでは契約として争いになりやすい |
| 不正競争防止法(営業秘密) | 差止め(第3条)・損害賠償(第4条) | 秘密として管理され、有用で、公然と知られていない情報であること(第2条第6項) |
| 民法(債務不履行) | 契約違反による損害の賠償(第415条) | 実際に生じた損害を示す必要がある |
秘密保持契約(NDA)とは、取引で知った情報を第三者に漏らさない約束を定めた契約のことです。案件情報を守るには、秘密情報の定義に「案件の内容・単価・エンド名・商流」が入っているかが大切です。NDAのひな形はSESの秘密保持契約(NDA)ひな形|BPと結ぶ条項と注意点8つにあります。
営業秘密とは、不正競争防止法で守られる会社の秘密情報のことです。条件は「秘密として管理」「事業に役立つ」「公然と知られていない」の3つすべてです(不正競争防止法第2条第6項)。
多くの取引先に一斉配信した案件メールは、秘密として管理しているとは言いにくいため、営業秘密と認められにくいのが実情です。一方、エンド名や単価を限られた相手にだけ、秘密と明示して渡した情報なら、守られる余地があります。営業秘密の要件は不正競争防止法の営業秘密とは|SESで顧客リストを持ち出されたらでくわしく解説しています。
損害賠償を求めるには、転送によって実際に失った利益を示す必要があります。案件1件の転送で大きな損害を示すのは難しいことが多いです。そのため実務では、配信停止のお願いと、配信先から外すなどの取引の見直しで対応する会社が多いです。
案件情報の書き方と配信先の絞り方
再発を防ぐ決め手は、漏れても困らない書き方にし、配信先を絞り、どこから漏れたかわかるようにすることです。
漏れても商流を飛ばされない書き方
| 項目 | 避けたい書き方 | おすすめの書き方 |
|---|---|---|
| エンド名 | 「〇〇銀行様」 | 「大手金融機関」 |
| 作業場所 | 「〇〇ビル12階」 | 「港区(最寄り:田町駅)」 |
| 上位の会社名 | 「△△システム経由」 | 書かない(商流の位置だけ書く) |
| 単価 | 上位の単価をそのまま | 自社から出せる単価(スキル見合いなど) |
| 注意書き | なし | 「本案件情報の転送・転載はご遠慮ください。商流:貴社社員まで」 |
エンド名や詳しい場所は、提案が決まって面談に進むときに、個別に伝えるのが基本です。案件メールの基本の形はSES営業メールの例文10選|案件・人材紹介の書き方とコツを参考にしてください。
配信先の絞り方
配信先は、案件の重要度でランクを分けると管理しやすくなります。
| 案件の種類 | 配信先 | 案件番号 |
|---|---|---|
| エンド直・一次請けの重要案件 | NDAを結び、実績のあるBP数社だけ | 配信先ごとに変える |
| 通常の案件 | NDAを結んだBP全体 | 配信先グループごとに変える |
| 急ぎの人数確保の案件 | 広く配信 | 1つでよい。エンド名は必ず伏せる |
自社の社内でも、案件情報の持ち出しルールを決めておくと、営業担当の退職時などの流出も防げます。社内規程の作り方は営業秘密管理規程のひな形|SESの案件・人材リストを守る管理方法にまとめています。
チョータツとチョータツメールAIで、配信と受信を管理する
自分で管理するなら、案件ごとに「配信日・配信先・案件番号」を表に記録し、届いた案件メールを定期的に見返すのが基本です。ただ、配信先が数十社、届く案件メールが1日数百通になると、手作業では追いつきません。
チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有するツールのことです。3,000社以上が利用し、無料で始められます。チョータツメールAIとは、届いたメールをAIが処理し、案件メールと人材メールに切り分けるメールインポート機能のことです。メールに書かれた単価や商流などの条件も読み取ります。
| やること | 自分でやる場合 | チョータツ・チョータツメールAIを使う場合 |
|---|---|---|
| 自社の案件情報をまとめる | 担当者ごとのExcelに散らばる | チョータツで案件・人材の情報を1か所で管理・共有できる |
| BPに案件を配信する | メールソフトで宛先を選んで送る | チョータツのパートナーへのメール配信機能で送れる |
| 届いた案件メールを見返す | 受信箱を1通ずつ開く | チョータツメールAIが案件メールと人材メールに切り分ける。転送設定で取り込める |
届いた案件メールが切り分けられて並ぶので、自社の案件と同じ内容のメールが他社から届いていないかを見返す手間を減らせます。案件・人材以外のメールはデータに残りません。
よくある質問
- Q. 案件メールを無断で転送するのは違法ですか?
- 多くは法律違反ではなく、契約違反の問題です。NDAや基本契約で案件情報の第三者への開示を禁止していれば、約束違反になります。営業秘密にあたれば、不正競争防止法の問題にもなります。
- Q. 案件メールに「転送禁止」と書いておけば、転送を止められますか?
- 注意の効果はありますが、メールの一文だけで法的に止めるのは難しいことがあります。取引を始めるときに、NDAか基本契約で案件情報の扱いを決めておくのが確実です。
- Q. 転送した会社に損害賠償を請求できますか?
- 契約違反があり、実際の損害を示せれば請求できます(民法第415条)。案件1件の転送で損害を示すのは難しいことが多く、配信停止の依頼と取引の見直しで対応する会社が多いです。
- Q. 案件情報は不正競争防止法の営業秘密になりますか?
- 秘密として管理し、限られた相手にだけ渡した情報なら、なる余地があります。多くの会社に一斉配信した案件情報は、秘密管理の要件を満たしにくいです(不正競争防止法第2条第6項)。
- Q. 自社の案件が出回ったら、上位に報告すべきですか?
- 上位との約束で案件情報を秘密にする義務があるなら、報告すべきです。事実、漏れた経路、停止の依頼の状況、再発防止策をそろえて伝えます。
まとめ
案件情報の無断転送を止められるかは、配信先とのNDA・基本契約があるかで決まる
見つけたら、証拠の保存→配信記録との照合→契約の確認→送り主への連絡→上位への報告の判断の順で動く
一斉配信した案件情報は、不正競争防止法の営業秘密と認められにくい
エンド名を伏せ、配信先をランク分けし、配信先ごとに案件番号を変えて防ぐ
配信先の記録と、届いた案件メールの見返しを仕組みにする
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年10月1日|更新日:2026年10月1日
参考資料(2026年9月30日確認)