偽装請負とは?適法なSES(準委任)との違いと違法になる仕組み|4つの型・IT現場の例・読む順番ガイド付き

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

偽装請負とは?意味と定義

偽装請負とは、書類上は請負や業務委託の契約なのに、実態は労働者派遣になっている状態のことです。東京労働局は「書類上、形式的には請負契約ですが、実態としては労働者派遣である」ものを違法と説明しています。

「偽装」と呼ぶのは、派遣なのに請負の形だけを借りているからです。発注者(客先)が作業者に直接指示を出していれば、契約書の名前に関係なく派遣と同じ扱いになります。

偽装派遣・偽装委託との違い

偽装請負には、いくつかの呼び方があります。偽装委託・偽装派遣は、「形は業務委託、中身は派遣」という同じ問題を指します。

呼び方使われる場面中身
偽装請負最も一般的な呼び方請負契約の形で、実態は派遣
偽装委託準委任・業務委託の契約で使う準委任契約の形で、実態は派遣
偽装派遣報道などで使われることがある派遣でないように見せた派遣
偽装フリーランス(近い問題)個人との契約で使われることがある業務委託の形で、実態は雇用

SESは準委任で結ぶことが多いので、正確には「偽装委託」と言うこともあります。ただ、法律上の扱いは偽装請負と同じです。本記事では、まとめて偽装請負と呼びます。

偽装請負が違法になる仕組み|職業安定法44条と労働者派遣法

偽装請負が違法になるのは、派遣として守るべきルールを守らずに、派遣と同じ働かせ方をしているからです。どの法律に違反するかは、SES企業が作業者を雇っているかどうかで変わります。

労働者派遣とは、自社で雇った人を、他社の指揮命令の下で働かせることです。労働者供給とは、自社で雇っていない人を、他社の指揮命令の下で働かせることです。

実態法律上の扱い主な違反
SES企業が雇っている社員に、客先が指示している労働者派遣許可なく派遣した(労働者派遣法5条)
SES企業が雇っていない人に、客先が指示している労働者供給労働者供給事業の禁止(職業安定法44条)
雇っていない人を出して手数料を得ている中間搾取労働基準法6条

なぜ派遣のルールが必要なのか

派遣には、働く人を守るためのルールが多くあります。派遣元の許可、派遣先の責任者の選任、労働時間の管理の分担などです。

偽装請負では、こうしたルールがすべて抜け落ちます。誰が働く人の安全や労働時間に責任を持つのかが、あいまいになります。これが、法律が偽装請負を認めない理由です。

職業安定法44条とは

職業安定法44条とは、労働者供給事業とその受入れを禁止する条文のことです。例外は、労働組合などが許可を受けて無料で行う場合だけです(45条)。二重派遣や、雇用していないフリーランスを客先の指示の下で働かせる形は、この条文の問題になります。

違反すると、送り出した会社も受け入れた会社も罰則の対象です。1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(64条)。2025年6月1日の刑法改正で、「懲役」は「拘禁刑」に変わりました。

適法なSES(準委任)との違いは「指示を出すのは誰か」

適法なSESと偽装請負の違いは、作業者に指示を出し、勤怠を管理しているのが誰かです。SES企業が自ら行っていれば適法、客先が直接行っていれば偽装請負です。

この境目は、厚生労働省の「37号告示」で決められています。37号告示とは、派遣と請負(業務委託)を区別するための厚生労働省の基準のことです。正式名は「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)です。

見るポイント適法なSES偽装請負
作業の指示・割り振りSES企業の責任者が行う客先の社員が作業者に直接行う
勤怠・残業の管理SES企業が決めて管理する客先が始業時刻や残業を命じる
作業者の選定・交代SES企業が決める客先が面接で選ぶ、指名する
仕事の評価・注意SES企業が行う客先が作業者個人を評価・注意する

37号告示は、もう1つの条件も求めています。仕事を自社で独立して処理していることです。資金を自社でまかない、事業主としての責任を負い、単に人手を貸すだけでないことが必要です。

客先常駐そのものは違法ではありません。常駐先でも、指示の流れがSES企業の中で閉じていれば適法です。

偽装請負の代表的な4つの型

東京労働局は、偽装請負の代表的な型を4つ挙げています。SESの現場に当てはめると、次のようになります。

型東京労働局の説明の要点SESでの例
代表型発注者が細かい指示や勤怠管理を行う客先のリーダーが毎朝タスクを割り振る
形式だけ責任者型責任者は発注者の指示を伝えるだけ自社の「責任者」が客先の指示を転送するだけ
使用者不明型受けた仕事をそのまま別の業者に出す商流の奥の会社のエンジニアが、元請けの指示で働く
一人請負型雇用を個人事業主との請負に見せかけるフリーランスが客先の社員と同じように指示を受ける

SESで特に多いのは、代表型と形式だけ責任者型です。1人だけで常駐する現場では、自社の責任者が遠くにいて、客先が指示するようになりがちです。

使用者不明型は、商流が深い案件で起こりやすい型です。二重派遣とも重なるので、商流の確認が欠かせません。

IT・SESの現場で起こりやすい偽装請負の例

IT・SESの現場では、毎日の小さなやりとりから偽装請負になりやすいです。次のような場面に心当たりがあれば、早めに見直しましょう。

  1. 客先のリーダーがチャットでタスクを直接振る:「このチケットを今日中に対応して」とエンジニアに直接依頼する。

  2. 客先が残業や休日出勤を直接頼む:リリース前に「今日は21時まで残って」と作業者に伝える。

  3. 客先が勤怠表で遅刻を注意する:出退勤の時刻を客先が決め、守れないと直接注意する。

  4. 事前面談で客先が人を選ぶ:複数の候補から「この人がいい」「この人は不可」と指名する。

  5. 客先の社員と同じ朝会で作業を割り振られる:朝会への参加自体はよいが、その場で個人に作業が割り当てられる。

どれも、現場では「当たり前」になっていることがあります。しかし、指示が客先から作業者へ直接流れている点で、偽装請負と判断されるおそれがあります。

場面ごとの線引きは、準委任契約の指揮命令はどこまで?SES現場のOK・NG具体例20で20の具体例を確認できます。

準委任(業務委託)でも偽装請負になる

「請負ではなく準委任で契約しているから大丈夫」という考えは誤りです。準委任でも、実態が派遣なら偽装請負です。

37号告示は、請負だけでなく、準委任などの業務委託にも同じ基準を当てはめます。厚生労働省の疑義応答集も、システム開発の業務委託を前提にした質問に答えています。

大切なのは契約書の名前ではなく、現場で誰が指示しているかです。準委任の契約書に「客先の指示に従い作業する」と書かれていれば、それ自体が危険なサインです。

偽装請負の罰則と判例の概要

偽装請負の罰則は、SES企業と客先の両方にかかります。さらに、客先がエンジニアを直接雇ったとみなされる制度もあります。

立場主なリスク根拠
SES企業(派遣の許可なし)1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金労働者派遣法59条
SES企業(派遣の許可あり)許可取消し・事業停止命令労働者派遣法14条
客先(発注者)直接雇用のみなし、勧告・社名の公表労働者派遣法40条の6・49条の2
雇っていない人を送り出した会社と受け入れた会社1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金職業安定法44条・64条

労働契約申込みみなし制度とは、偽装請負で人を受け入れた客先が、その人に雇用を申し込んだとみなす制度です。根拠は労働者派遣法40条の6で、2015年に始まりました。法律を免れる目的があったことが条件です。

判例では、最高裁の2009年12月18日の判決が、注文者が直接指示していた請負を違法な派遣と判断しました。東リ事件(大阪高裁・2021年11月4日)は、みなし制度による直接雇用の成立を認めています。

偽装請負を防ぐために営業ができる5つのステップ

偽装請負を防ぐ一番の方法は、提案する前に契約形態と指示の流れを確認することです。現場に入ってから直すのは、客先との関係もあって難しくなります。

  1. 契約形態を確認する:案件票や注文書で、準委任か請負か派遣かを確かめます。「客先の指示に従う」などの文言があれば直してもらいます。

  2. 指示の流れを確認する:客先からの依頼を、自社の誰が受けてエンジニアに伝えるかを決めます。1人常駐なら、自社の責任者が定期的に連絡・巡回する体制をつくります。

  3. 勤怠の管理者を決める:始業・終業、残業の指示は自社が行うことを客先と確認します。客先には勤怠を「知ってもらう」だけにします。

  4. 面談のやり方を決める:面談は、業務内容の説明や技術的な確認の場にします。客先が人を選ぶ「選考」にしないよう、事前に客先と合意します。

  5. 商流を確認する:自社の上に何社いるか、エンジニアが誰に雇われているかを確認します。雇用関係のない人を客先の指示の下に出さないようにします。

2の指示の流れと3の勤怠は、参画が決まった後の準備で客先と合わせて確認すると漏れません。手順はSESの参画初日までに営業がやる準備|入場チェックリストと案内文にまとめています。

提案前の3分チェック表

案件を受けたら、次の5問に「はい」で答えられるかを確認します。1つでも「いいえ」「不明」なら、提案前に上位の会社へ確認します。

#質問「いいえ」のときの対応
1契約形態は準委任(または請負)と書面で確認できたか案件票・注文書を取り寄せる
2作業の依頼は自社の責任者が受ける体制か責任者と連絡方法を客先と決める
3勤怠・残業の指示は自社が行うか契約書の条文を確認し、直してもらう
4面談は業務説明と技術確認の場になっているか「選考」にしないよう客先と合意する
5自社の上に何社いて、本人の雇用元はどこか商流と所属を書面で確認する

客先に確認するときの例文

契約前に、指示の流れを客先に確認するメールの例です。責める言い方ではなく、「法令に沿って進めたい」という形で伝えるのがコツです。

例文・テンプレート
件名:準委任契約での作業体制のご確認(株式会社△△)

株式会社〇〇
ご担当者様

お世話になっております。株式会社△△の□□です。
10月1日からの参画にあたり、作業体制を確認させてください。

・作業のご依頼は、弊社責任者(□□)が受けて、担当者へ伝えます
・勤怠と残業の指示は、弊社で管理いたします
・日々の仕様のご説明や情報共有は、これまでどおりお願いします

準委任契約として、法令に沿った体制で進めたく存じます。
ご不明な点があれば、お気軽にご連絡ください。

目的別|偽装請負について次に読む記事

本記事は、偽装請負の入口です。知りたいことに合わせて、次の記事へ進んでください。

チョータツで案件の条件をまとめ、提案前に気づく

自分でできる対策は、案件ごとに「契約形態・作業体制・商流」をメモし、提案前に見返すことです。Excelで管理する場合は、この3列を必ず作っておきましょう。

ただ、BPから届く案件が増えると、メールを読んで条件を転記するだけで時間がかかります。確認が漏れた案件ほど、偽装請負のリスクが残ります。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の条件を残すメールからExcelに転記案件情報として管理・共有(AIが入力を手伝う)
提案前に確認するファイルとメールを探して見返す案件ごとの条件を1か所で確認
社内で共有する担当者の頭の中にだけあるチームで同じ案件情報を見られる

チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。案件の条件を1か所にまとめておくと、契約形態や商流があいまいな案件に、提案前に気づきやすくなります。

よくある質問

Q. 偽装請負とは簡単に言うと何ですか?
契約は請負や業務委託なのに、客先が作業者に直接指示している状態のことです。実態が派遣なのに派遣のルールを守っていないため、違法になります。
Q. SESは偽装請負ですか?
SESそのものは偽装請負ではありません。SES企業が作業の指示と勤怠の管理を自ら行っていれば、適法な準委任契約です。客先が直接指示すると、偽装請負になります。
Q. 偽装請負と偽装派遣は違いますか?
どちらも「形は業務委託、中身は派遣」という同じ問題を指す言葉です。法律上の扱いに違いはありません。準委任契約の場合は、偽装委託と呼ぶこともあります。
Q. 偽装請負はどの法律に違反しますか?
主に労働者派遣法と職業安定法です。SES企業が雇っている人なら無許可派遣などの派遣法違反、雇っていない人なら職業安定法44条の労働者供給にあたります。労働基準法6条の中間搾取が問題になることもあります。
Q. 準委任契約なら偽装請負にならないのでは?
なりえます。37号告示は準委任などの業務委託にも当てはまります。契約書の名前ではなく、現場で誰が指示しているかで判断されます。
Q. 客先の朝会やチャットに参加するだけでも偽装請負ですか?
参加するだけで直ちに偽装請負になるわけではありません。厚生労働省の疑義応答集も同じ考え方です。ただし、その場で客先から作業者個人に作業が割り振られていれば問題になります。
Q. フリーランスを客先に常駐させるのは偽装請負ですか?
常駐させること自体は違法ではありません。ただし、客先がフリーランスに直接指示を出すと、職業安定法44条の労働者供給にあたるおそれがあります。自社の責任者を通して依頼を伝える体制にしましょう。

まとめ

  • 偽装請負とは、契約は請負・準委任なのに、実態が労働者派遣になっている違法な状態

  • 違法になるのは、派遣のルールを守らずに客先が直接指示しているから。主に労働者派遣法と職業安定法44条に違反する

  • 適法なSESとの境目は「作業の指示と勤怠管理をSES企業が自ら行っているか」の一点

  • 代表型・形式だけ責任者型・使用者不明型・一人請負型の4つの型がある

  • 準委任でも偽装請負になる。契約書の名前ではなく現場の実態で判断される

  • 営業は、提案前に契約形態・指示の流れ・勤怠の管理者・面談・商流の5点を確認する

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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