業務委託契約とは?請負・委任・準委任の3種類とSES・受託開発での使われ方|商流図と契約の流れ付き

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

業務委託契約とは?意味と民法での位置づけ

業務委託契約とは、自社の業務の一部または全部を、外部の会社や個人に任せる契約のことです。SESや受託開発、フリーランスへの発注は、どれも業務委託契約と呼ばれます。この記事では、契約としての業務委託(民法上の種類と結び方)を扱います。

ただし、民法には「業務委託契約」という名前の契約は出てきません。民法が定める13種類の典型的な契約(典型契約)に、この名前はないからです。実務では、請負・委任・準委任のどれか、またはその組み合わせを、まとめて業務委託契約と呼んでいます。

そのため、契約書のタイトルが「業務委託契約書」でも、それだけでは中身がわかりません。本文で何を約束しているかを読んで、3種類のどれに当たるかを判断します。

「委託」「受託」「受委託」の違い

「委託」と「受託」は、同じ契約をどちらの立場から見るかの違いです。仕事を任せる側から見れば委託、引き受ける側から見れば受託と言います。

言葉意味SESでの例
委託契約仕事を任せる側から見た呼び方客先がSES企業に作業を任せる
受託契約仕事を引き受ける側から見た呼び方SES企業が客先から作業を引き受ける
受委託契約委託者と受託者の間の契約を指す呼び方客先とSES企業の契約そのもの
委任契約民法643条に定められた契約の種類法律行為を任せる契約(SESでは少ない)

委任は民法の用語で、法律行為を任せる契約の名前です。委託は一般的な言葉で、仕事を任せること全体を広く指します。業務委託契約の中身が、法律上は委任や準委任に当たる、という関係です。

業務委託契約の3つの種類|請負・委任・準委任の違い

業務委託契約の種類は、請負・委任・準委任の3つです。違いは「仕事の完成を約束するか」と「任せる中身が法律行為か」の2点で決まります。

請負契約とは、仕事の完成を約束し、その結果に報酬を払う契約のことです(民法632条)。委任契約とは、法律行為を相手に任せる契約のことです(民法643条)。準委任契約とは、法律行為ではない事務を任せる契約のことで、委任のルールが使われます(民法656条)。

種類約束すること報酬の対象IT業界の主な例
請負仕事を完成させる完成した成果物受託開発、システム一括請負
委任法律行為を行う業務を行うこと弁護士への訴訟の依頼
準委任法律行為でない事務を行う業務を行った時間や成果SES、運用保守、PMO支援

IT業界で「委任」を使う場面はほとんどありません。システム開発や運用の作業は、契約を結ぶなどの法律行為ではないからです。SES営業が実際に使い分けるのは、請負と準委任の2つと考えてよいでしょう。

準委任には「履行割合型」と「成果完成型」がある

準委任の報酬の決め方には、2つの型があります。2020年4月1日に施行された改正民法で、成果完成型(民法648条の2)が明文化されました。

型報酬の決め方SESでの例
履行割合型働いた時間や期間に応じて払う月額単価+精算幅(140〜180時間など)
成果完成型成果が出たときに払う資料や調査結果の納品で支払う

SESのほとんどは履行割合型です。成果完成型でも、請負と違って仕事の完成義務はありません。詳しくは準委任契約の成果完成型とは|履行割合型との違いと検収の注意点で解説しています。

請負と準委任で変わる4つの点

請負と準委任では、責任の重さや途中解約のルールが変わります。営業が取引先に説明するときは、次の4点を押さえておけば十分です。

比べる点請負準委任
完成の義務あるない(注意を尽くして業務を行う義務)
不具合の責任契約不適合責任を負う契約不適合責任はない(注意を怠れば債務不履行の責任)
途中解約完成前なら注文者は損害を賠償して解除できる双方がいつでも解除できる(条件により損害賠償)
再委託原則として自由相手の許諾などが必要

善管注意義務とは、その立場の人に通常求められる注意を払って業務を行う義務のことです。準委任の受け手は、完成ではなくこの注意を尽くす責任を負います。

契約書の条文で2つを見分ける方法は、準委任契約と請負契約の違い|業務委託契約書を見分ける判定シートで解説しています。

業務委託契約と派遣・雇用の違い

業務委託契約は仕事を任せる契約で、派遣や雇用と違い、発注する側は作業する人に直接指示を出せません。準委任で契約しているのに客先が直接指示すると、実態は派遣と同じになります。この状態を偽装請負と呼びます。

雇用形態としての「業務委託」の意味や、雇用・派遣との違いは業務委託とは?意味と種類|SES営業が押さえる準委任と請負の違いで解説しています。3つの契約の比較表はSESと派遣の違い|準委任・派遣・請負の比較表と確認5項目にまとめています。

SES・受託開発・フリーランス活用での使われ方【商流図】

業務委託契約の種類は、ビジネスの形で決まります。SESは準委任、受託開発は請負、フリーランス活用は仕事の中身次第です。3つの場面を商流図で見てみましょう。

商流とは、仕事がエンド(発注元)から、いくつもの会社を通って流れてくる経路のことです。

パターン1:SES(準委任)

例文・テンプレート
エンド企業
  │ 請負 または 準委任
元請けSIer
  │ 準委任(基本契約+個別契約)
一次請けSES企業
  │ 準委任(基本契約+個別契約)
自社(SES企業) ── 雇用 ── 自社エンジニア

SESは、エンジニアの作業時間や業務の遂行に対して報酬をもらう形です。そのため、会社と会社の間は準委任で結ぶのが基本です。元請けとエンドの間だけ、請負になっていることもあります。

自社のエンジニアへの指示は、自社が行うのがルールです。客先の常駐先でも、作業の指示や勤怠の管理は自社の責任者が行います。

「SES契約と業務委託は何が違うの?」とエンジニアや客先に聞かれたときの答え方は、SES契約とは?業務委託との違いと契約書3点セットを解説で紹介しています。

パターン2:受託開発(請負)

例文・テンプレート
エンド企業
  │ 請負(システムの完成・納品)
元請けSIer
  │ 請負 または 準委任
自社(開発会社)
  │ 準委任(作業の一部を支援)
BP(取引先の会社)

受託開発とは、システムを完成させて納める約束で仕事を受けることです。完成品に対して報酬が払われるので、請負が基本です。

ただし、請負で受けた仕事の一部を、BPに準委任で手伝ってもらうことはよくあります。この場合、自社は完成の責任を負ったまま、BPには作業時間で払うことになります。

パターン3:フリーランス活用(準委任または請負)

例文・テンプレート
客先
  │ 準委任
自社(SES企業)
  │ 業務委託(準委任 または 請負)
フリーランスエンジニア(個人事業主)

フリーランスとの契約は、時間で払うなら準委任、成果物で払うなら請負を選びます。SESの案件に参画してもらう場合は、準委任がほとんどです。

フリーランスとの取引には、2024年11月1日に施行されたフリーランス法が関わります。取引条件をはっきり示すこと(3条)や、原則60日以内に報酬を払うこと(4条)などが決められています。3条の明示は、従業員がいない発注者も含めたすべての発注者の義務です。

業務委託契約の結び方|基本契約+個別契約の流れ

SESの業務委託契約は、基本契約書を1回結び、案件ごとに個別契約を結ぶのが一般的です。毎回すべての条件を書き直す手間を減らせます。

基本契約とは、取引全体に共通するルール(支払い、秘密保持、再委託、解除など)をまとめた契約のことです。個別契約とは、案件ごとの期間・単価・作業内容などを決める契約のことです。注文書と注文請書のやりとりで結ぶことが多いです。

書類決めることいつ結ぶか
秘密保持契約(NDA)案件・人材の情報の扱い情報をやりとりする前
基本契約書支払い条件、再委託、解除、損害賠償など最初の取引の前に1回
注文書(発注側が出す)期間、単価、精算幅、作業内容、場所案件ごと
注文請書(受注側が出す)注文書の内容を引き受けること注文書を受け取った後

取引開始までの6ステップ

SES営業が新しい取引先と取引を始めるときは、次の順番で進めます。SIerの協力会社として登録する場合も、流れはほぼ同じです(SIerの協力会社登録の条件と流れ|審査で見られる7項目)。

  1. 秘密保持契約(NDA)を結ぶ:案件情報や人材のスキルシートを渡す前に結びます。

  2. 基本契約書のひな形を決める:どちらの会社のひな形を使うかを決めます。「準委任」「請負」のどちらを前提にしているかも確認します。

  3. 基本契約書の条項を確認する:再委託の可否、支払いサイト、解約予告の期間、損害賠償の上限を読みます。

  4. 基本契約書を締結する:電子契約か紙かを決めます。紙の場合は、収入印紙が必要か確認します。

  5. 案件ごとに注文書を受け取る:期間・単価・精算幅・作業内容・作業場所・契約形態が書かれているか確認します。

  6. 注文請書を返す:内容に問題がなければ注文請書を返し、個別契約が成立します。

紙の契約書では、請負の契約書は「第2号文書」、請負を続けて行う基本契約書は「第7号文書」(1通4,000円)に当たる場合があります。準委任だけの契約書は、原則として2号・7号に当たりません。判定のしかたは、業務委託契約の印紙はいくら?準委任は必要?判定表と貼り方で確認してください。

取引先に説明するときの例文

取引開始のときに、契約形態を相手に確認するメールの例です。契約の種類と、指示を出す人の2点をはっきり書くのがコツです。

例文・テンプレート
件名:取引開始にあたっての契約形態のご確認(株式会社△△)

株式会社〇〇
ご担当者様

お世話になっております。株式会社△△の□□です。
取引開始にあたり、契約形態について確認させてください。

・契約の種類:準委任契約(SES)
・基本契約:貴社ひな形で締結、案件ごとに注文書・注文請書で個別契約
・作業の指示:弊社の責任者(□□)から弊社エンジニアへ行います
・精算:月額単価、精算幅140〜180時間

この内容で進めてよろしいでしょうか。
よろしくお願いいたします。

業務委託契約で営業が確認したい5つの点

業務委託契約を結ぶ前に、営業は次の5点を確認しましょう。どれも、あとで揉めやすいポイントです。

#確認すること見るポイント
1契約の種類準委任か請負か。契約書の本文と注文書で一致しているか
2指揮命令の担い手作業の指示を出すのが自社の責任者になっているか
3再委託の可否BPやフリーランスに再委託してよいか、事前承諾が要るか
4精算と支払い精算幅、支払いサイト、控除の計算方法
5解除と責任解約予告の期間、損害賠償の上限、契約不適合責任の有無

特に1と2は、偽装請負を防ぐうえで欠かせません。契約書は準委任でも、注文書に「客先の指示に従い作業」と書かれていることがあります。こうした文言は、提案前に直してもらいましょう。

注文書の文言を直してもらうときの例文

注文書に指示系統の問題があったときは、次のように返します。「直してほしい文言」と「代わりの文言」をセットで示すと、相手も社内で通しやすくなります。

例文・テンプレート
件名:Re: 注文書(〇〇案件)の記載についてのご相談

株式会社〇〇
ご担当者様

注文書をお送りいただき、ありがとうございます。
1点だけ、記載の修正をお願いできますでしょうか。

・現在の記載:作業内容「貴社担当者の指示に従い作業を行う」
・修正のお願い:作業内容「〇〇システムの設計・開発支援。
 作業の指示は弊社責任者(□□)が行う」

準委任契約のため、作業の指示は弊社から行う形にしております。
お手数ですが、ご確認をお願いいたします。

下請法(取適法)・フリーランス法にも注意

業務委託の取引には、民法のほかに取引を守る法律も関わります。2026年1月1日から、下請法は改正されて取適法(中小受託取引適正化法)になりました。

相手が資本金や従業員数の条件に当たる会社なら、発注内容を書面かメールで「直ちに」示すことや、受領日から60日以内の支払期日のルールを守ります。フリーランスが相手なら、フリーランス法の同じようなルールがかかります。SES企業は、発注側にも受注側にもなることを忘れないようにしましょう。

チョータツで案件ごとの契約条件をまとめる

自分で管理する場合は、案件ごとに契約の種類・再委託の可否・精算幅をExcelにまとめるのが基本です。ただ、BPから届く案件が増えると、条件を1件ずつ転記する手間が大きくなります。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の条件を記録するメールを読んでExcelに転記案件情報として管理・共有(AIが入力を手伝う)
提案前に条件を確認するファイルとメールを行き来して探す案件ごとの情報を1か所で確認
取引先の案件・人材を知る届く配信メールを1通ずつ読む連携した他社の営業中案件・人材をデータベース化
自社の案件・人材を届けるBCCで一斉送信パートナーへのメール配信機能で届ける

チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。「この案件は準委任か」「再委託できるか」を、提案する前に確認する習慣をつくれます。

よくある質問

Q. 業務委託契約とは、民法上どの契約ですか?
民法に「業務委託契約」という名前の契約はありません。中身によって、請負(632条)、委任(643条)、準委任(656条)のどれかに当たります。契約書の名前ではなく、約束した内容で判断します。
Q. SES契約は業務委託契約の種類のうちどれですか?
SESは、作業時間や業務の遂行に報酬を払う形なので、準委任契約が基本です。報酬の決め方は、月額単価と精算幅で払う履行割合型がほとんどです。
Q. 委任契約と委託契約の違いは何ですか?
委任は民法の用語で、法律行為を任せる契約の名前です。委託は仕事を任せること全体を指す一般的な言葉です。業務委託契約の中身が、法律上は委任や準委任に当たります。
Q. 受託契約とは何ですか?
受託契約とは、仕事を引き受ける側から見た業務委託契約の呼び方です。同じ契約を、任せる側は委託契約、引き受ける側は受託契約と呼びます。受委託契約は、両者の間の契約を指す言葉です。
Q. 業務委託の請負と準委任は、どう選べばいいですか?
完成品を納めて報酬をもらうなら請負、作業時間や業務の遂行で報酬をもらうなら準委任です。SESのように客先で作業する形は準委任、システムを完成させて納める形は請負が基本です。
Q. 業務委託契約なら、客先がエンジニアに直接指示してもよいですか?
いいえ。請負でも準委任でも、客先がエンジニアに直接指示すると偽装請負になります。作業の指示は、受けた会社の責任者が行う必要があります。
Q. 基本契約書だけで仕事を始めてもよいですか?
基本契約書には、案件ごとの期間や単価が書かれていないことが多いです。注文書と注文請書で個別契約を結んでから作業を始めましょう。単価が決まらないまま始める場合の扱いはSESで単価未定のまま参画するときの仮単価|取適法上の扱いを確認してください。

まとめ

  • 業務委託契約とは、仕事を外部に任せる契約の呼び名で、民法にその名前の契約はない

  • 中身は請負・委任・準委任の3種類。IT業界で使うのは、ほぼ請負と準委任の2つ

  • SESは準委任、受託開発は請負が基本。フリーランスへの発注は、時間払いか成果物払いかで選ぶ

  • 取引は、NDA→基本契約→注文書・注文請書(個別契約)の順に結ぶ

  • 契約の種類と「誰が指示するか」を確認し、偽装請負を防ぐ

  • 案件ごとの契約条件は、チョータツで1か所にまとめると提案前に確認しやすい

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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