準委任契約とは?意味と委任契約との違い|SES契約で営業が押さえる民法のルールと注意点6つ
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
準委任契約とは?意味と読み方
準委任契約(じゅんいにんけいやく)とは、法律行為ではない事務の処理を、相手に任せる契約のことです。民法656条に「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する」と書かれています。
準用とは、ある条文のルールを、似た別のことにも当てはめて使うことです。つまり準委任には、委任契約の条文(民法643条〜655条)がそのまま使われます。
事務とは、法律の世界では「何かの作業や業務をすること」の意味です。書類仕事だけを指すわけではありません。システムの設計・開発・テスト・運用も、法律上は「事務」にあたります。
「準委託契約」は正しい名前?
「準委託契約」という名前は、民法にはありません。準委任契約の言い間違いとして使われることが多い言葉です。
契約書や社内の文書では、「準委任契約」と書くのが正確です。取引先の書類に「準委託」とあったら、中身が準委任なのか請負なのかを確認しましょう。
委任契約と準委任契約の違い
委任と準委任の違いは、任せる中身が「法律行為」か「法律行為でない事務」かの1点だけです。適用される民法のルールは同じです。
法律行為とは、契約を結ぶ、財産を売る、訴訟を起こすなど、法律上の権利や義務を生み出す行為のことです。
| 比べる点 | 委任契約 | 準委任契約 |
|---|---|---|
| 根拠の条文 | 民法643条 | 民法656条 |
| 任せる中身 | 法律行為 | 法律行為でない事務 |
| 例 | 弁護士に訴訟を任せる/不動産の売買の代理を頼む | システム開発の支援/運用保守/医師の診療 |
| 適用されるルール | 委任の規定(643〜655条) | 委任の規定をそのまま使う |
SES営業が扱う契約は、ほぼすべて準委任です。エンジニアが客先で行う設計・開発・テストは、契約を結ぶような法律行為ではないためです。
実務では「委任契約」「業務委託契約」という名前の契約書でも、中身が準委任であることがよくあります。名前ではなく、任せる中身と報酬の決め方で判断します。
準委任契約に適用される民法のルール
準委任契約には、委任の条文がそのまま使われます。SES営業がよく関わるのは、次の6つのルールです。
| 条文 | ルールの中身 | SES契約での意味 |
|---|---|---|
| 644条 | 受け手は、善良な管理者の注意で業務をする | 完成の責任ではなく、きちんと業務をする責任 |
| 644条の2 | 任せた側の許諾がなければ、別の人に任せられない | 再委託には発注元の承諾が要る |
| 645条 | 求められたら状況を報告し、終わったら結果を報告する | 稼働報告書・作業報告書 |
| 648条 | 報酬は特約が必要。原則は業務の後に払う | 月額単価と支払日を契約で決める |
| 648条の2 | 成果に対して払う約束もできる | 成果完成型の準委任 |
| 651条 | どちらからでも、いつでも解除できる | 中途解約と解約予告の条項 |
善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)とは、その仕事の専門家として通常求められる注意を払う義務のことです。「善良な管理者の注意義務」の略です。責任がどこまで及ぶかはSESの善管注意義務はどこまで?準委任の責任範囲と具体例10で解説しています。
644条の2と648条の2は、2020年4月1日に施行された改正民法で新しく加わった条文です。古いひな形の契約書を使っている場合は、条文の番号や考え方が今の民法と合っているか確認しましょう。
SES契約が準委任契約で結ばれる理由
SES契約が準委任で結ばれるのは、「作業」に報酬を払い、完成の責任は負わないという取引の形に合うからです。
SES(システムエンジニアリングサービス)とは、エンジニアの技術力を提供するサービスのことです。作業した時間や期間に応じて報酬を受け取ります。
| 比べる点 | 準委任(SES) | 請負 | 派遣 |
|---|---|---|---|
| 何に報酬を払うか | 作業(時間・期間) | 完成した成果物 | 労働(時間) |
| 完成の責任 | なし | あり | なし |
| 作業の指示を出す人 | 受け手の会社 | 受け手の会社 | 派遣先 |
| 国の許可 | 不要 | 不要 | 必要 |
大事なのは「作業の指示を出す人」の行です。準委任では、客先がエンジニアに直接指示を出すことはできません。直接指示したいなら、許可を取った会社の派遣契約にする必要があります。
請負との細かい違いは準委任契約と請負契約の違い|業務委託契約書を見分ける判定シートで解説しています。
SES営業が押さえる準委任契約の注意点6つ
準委任契約の注意点は、民法のルールと、SESの実務の決め方がずれやすい6か所です。どれも、契約書にはっきり書いておけば防げます。
注意点1:報酬の決め方は契約書で決める(精算幅つきの時間精算)
民法648条では、準委任の報酬は特約がなければ請求できないとされています。SESでは、報酬の額と計算方法を必ず契約書で決めます。
SESで多いのは、月額単価+精算幅の決め方です。精算幅とは、月の稼働時間の上限と下限のことで、この範囲を外れたら報酬を増減させます。
計算例(月額60万円、精算幅140〜180時間、上下割の場合)
稼働が160時間 → 範囲内なので60万円
稼働が130時間 → 下限まで10時間足りない。控除単価は60万円÷140時間で4,285円(1円未満切り捨て)。控除額は42,850円
稼働が190時間 → 上限を10時間超えた。超過単価は60万円÷180時間で3,333円。超過額は33,330円
精算幅の決め方と計算はSESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法と有給・固定の扱いで詳しく解説しています。
注意点2:支払いは「業務の後」が原則
民法648条2項では、報酬は業務をした後でなければ請求できないとされています。期間で報酬を決めたときは、その期間が過ぎた後に請求できます。
SESでは「月末締め・翌月末払い」のように、締め日と支払日を契約書で決めます。BPへの支払いと入金のタイミングがずれないよう、支払サイトもそろえておきます。
支払サイトとは、締め日から実際に入金されるまでの期間のことです。
注意点3:報告の中身と頻度を決めておく
民法645条では、受け手は求められたらいつでも状況を報告し、終わったら結果を報告しなければなりません。SESでは、この報告を稼働報告書(作業報告書)で行うのが一般的です。
契約書では、報告の頻度(月1回など)、書式、誰に出すかを決めます。報告書は精算の根拠にもなるので、提出期限も決めておきましょう。報告書が遅れたときの対応はSESの稼働報告書が遅れる・出ないときの対応|請求を間に合わせる手順で紹介しています。
注意点4:中途解約は「いつでもできる」のが民法の原則
民法651条では、準委任はどちらからでも、いつでも解除できるとされています。ただし、相手に不利な時期に解除したときは、やむを得ない事情がなければ損害を賠償しなければなりません。
この条文は、契約で別のルールを決めることができます。SESでは、「1か月前までに書面で通知すれば解約できる」といった解約予告の条項を入れるのが一般的です。
解約予告の期間は、自社がBPと結ぶ契約とそろえることが大切です。客先からは1か月前に解約され、BPには2か月前の予告が必要だと、1か月分の支払いを自社がかぶることになります。
注意点5:再委託には発注元の承諾が要る
民法644条の2では、任せた側の許諾か、やむを得ない事情がなければ、受け手は別の人に仕事を任せられません。SESでいえば、BPのエンジニアを入れる再委託には、発注元の承諾が要るということです。
再委託とは、受けた仕事を、さらに別の会社や個人に任せることです。
多くの基本契約書には「再委託禁止」や「事前の書面承諾が必要」という条項があります。BPの人材を提案する前に、再委託の可否と、何社先まで認められるかを必ず確認しましょう。条項の書き方はSESの再委託禁止条項の書き方|承諾条件と個人事業主の扱いにまとめています。
注意点6:「準委任と書けば安全」ではない
契約書に「準委任契約」と書いてあっても、客先がエンジニアに直接指示を出していれば、偽装請負と判断されるおそれがあります。偽装請負かどうかは、契約の名前ではなく働き方の実態で判断されるためです。
偽装請負とは、契約は請負や準委任なのに、実態は派遣と同じように発注元が作業を指示している状態のことです。
判断の基準は、厚生労働省の「37号告示」(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)と疑義応答集に示されています。疑義応答集の第3集では、準委任でも実態として指揮命令関係があれば派遣に当たるとしています。営業は、客先で誰が指示を出すかを契約前に確かめましょう。現場の具体例は準委任契約の指揮命令はどこまで?SES現場のOK・NG具体例20にまとめています。
準委任契約を結ぶ前の確認手順
準委任契約を結ぶ前は、「中身の確認 → 条件の確認 → 体制の確認」の順で進めると漏れが出にくくなります。
任せる中身が準委任か確かめる:完成した成果物に報酬を払う形なら請負です。作業に払う形なら準委任です。
報酬の型を確かめる:時間・期間に払う履行割合型か、成果に払う成果完成型かを確認します。
単価と精算幅を決める:月額単価、精算幅、控除・超過の計算方法(上下割か中間割か)を書面にします。
締め日・支払日を決める:客先からの入金日が、自社がBPに払う日より後にならないか確認します。
報告書の書式と期限を決める:稼働報告書を誰に、いつまでに出すかを決めます。
解約予告の期間を確かめる:客先との契約とBPとの契約で、予告期間がそろっているか確認します。
再委託の可否を確かめる:BPの人材を入れてよいか、何社先まで認められるかを確認します。
指示を出す人を確かめる:客先の誰がエンジニアに指示を出すのか、自社の責任者を置くのかを確認します。
履行割合型とは、働いた時間や期間に応じて報酬を払う準委任のことです。成果完成型とは、業務で得られた成果に対して報酬を払う準委任のことです。違いは準委任契約の成果完成型とは|履行割合型との違いと検収の注意点で解説しています。
単価が決まらないまま参画日だけ先に決まることもあります。その場合の扱いはSESで単価未定のまま参画するときの仮単価|取適法上の扱いを確認してください。
客先への確認メールの例文
条件があいまいなときは、次のようなメールで確認すると、あとで揉めにくくなります。
件名:【ご確認】10月1日開始案件の契約条件について(株式会社△△) 株式会社〇〇 □□様 いつもお世話になっております。株式会社△△の■■です。 2026年10月1日(木)開始予定の案件について、 契約前に次の条件をご確認いただけますでしょうか。 ・契約形態:準委任契約(履行割合型) ・月額単価:〇〇万円 ・精算幅:140〜180時間(上下割) ・締め日・支払日:月末締め・翌月末払い ・稼働報告書:毎月末日に弊社よりご提出 ・解約予告:1か月前までに書面でご通知 ・再委託:弊社パートナー企業1社先まで可 作業の指示は、弊社の業務責任者を通して行う体制を予定しております。 相違がございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。 よろしくお願いいたします。
チョータツで準委任案件の条件をまとめて管理する
確認する条件が多いほど、案件ごとの管理は大変になります。自分で管理するなら、Excelに「単価・精算幅・支払サイト・再委託の可否」の列を作ります。案件が届くたびに書き込む方法です。
案件の数が増えて手が回らなくなったら、チョータツで案件情報をまとめる方法もあります。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 案件の条件を管理する | メールを読んでExcelに転記 | 案件・人材の情報を1か所で管理・共有 |
| 取引先の案件を集める | 1社ずつメールを確認 | 他社と連携すると、営業中案件・営業中人材をデータベース化 |
| 入力の手間 | すべて手入力 | AIが入力を手伝う |
| 自社の人材を届ける | BCCで一斉送信 | パートナーへのメール配信機能で送る |
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よくある質問
- Q. 準委任契約とは、簡単に言うと何ですか?
- 「作業や業務をきちんと行うこと」を任せる契約です。仕事の完成ではなく、注意を尽くして業務を行うことに責任を持ちます。SESの契約の多くは準委任契約です。
- Q. 委任と準委任の違いは何ですか?
- 任せる中身が法律行為(契約を結ぶ、訴訟を起こすなど)なら委任、それ以外の事務なら準委任です。適用される民法のルールは同じです。
- Q. SESの準委任契約は違法ではありませんか?
- 準委任契約そのものは適法です。ただし、客先がエンジニアに直接作業の指示を出すと、偽装請負と判断されるおそれがあります。指示は自社の責任者を通すようにします。
- Q. 準委任契約は途中で解約できますか?
- 民法では、どちらからでもいつでも解除できます。ただし、相手に不利な時期に解除すると、損害賠償が必要になることがあります。SESでは契約書で解約予告の期間を決めるのが一般的です。
- Q. 準委任契約で、エンジニアをBPに再委託してもいいですか?
- 発注元の許諾があるか、やむを得ない事情があるときに限られます。基本契約書の再委託の条項を確認し、必要なら事前に書面で承諾をもらいましょう。
- Q. 準委任契約書に印紙は必要ですか?
- 準委任だけの契約書なら、原則として不要です。ただし、請負の内容や著作権を譲渡する条文がまざると、印紙が必要になる場合があります。電子契約なら不要です。
まとめ
準委任契約とは、法律行為ではない事務を任せる契約。民法656条で委任のルールが使われる
委任との違いは、任せる中身が法律行為かどうかだけ。SESの契約はほぼ準委任
受け手は完成の責任ではなく、善管注意義務を負う
報酬・支払日・報告・解約予告・再委託は、民法の原則とSESの実務がずれやすいので契約書で決める
「準委任」と書いても、客先が直接指示すれば偽装請負のおそれがある。実態を確認する
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「民法」(624条・643条・644条・644条の2・645条・648条・648条の2・651条・656条)
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厚生労働省「37号告示関係疑義応答集」「同 第3集」
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