準委任契約の成果完成型とは?履行割合型・請負との違い、契約不適合責任の扱い、SES営業が検収・支払い条件で確認する7項目
公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日
準委任契約の成果完成型・履行割合型とは
準委任契約には、報酬の払い方で2つの型があります。成果に払うのが成果完成型、作業の量に払うのが履行割合型です。
準委任契約とは、法律行為ではない事務(作業)を行うことを約束する契約のことです(民法656条)。SESの契約は、ふつう準委任契約です。
履行割合型とは、作業をしたこと自体に報酬を払う準委任のことです。報酬は作業の後に請求でき、期間で決めたときは期間が終わるごとに請求できます(民法648条2項)。SESの「月額単価+精算幅」は、履行割合型の典型です。
成果完成型とは、作業によって得られる成果に対して報酬を払うと約束した準委任のことです(民法648条の2)。成果に引き渡しが必要なら、報酬は引き渡しと同時に払います。
| 型 | 報酬を払う対象 | SESでの例 |
|---|---|---|
| 履行割合型 | 作業をした時間・期間 | 月額70万円、精算幅140〜180時間 |
| 成果完成型 | 作業で得られた成果 | 調査レポート1本、移行作業の完了報告1件 |
2つの型は、2020年4月1日に施行された改正民法で、はっきり条文に書かれました。IPA(情報処理推進機構)のモデル契約書の第二版(2020年12月22日公開)も、成果報酬型の準委任を論点にしています。
成果完成型・履行割合型・請負の違いを表で比較
成果完成型は、報酬の払い方が請負に似ています。しかし、義務の中身と責任のルールは準委任のままです。3つを並べると違いがわかります。
| 比べる点 | 履行割合型(準委任) | 成果完成型(準委任) | 請負 |
|---|---|---|---|
| 受け手の義務 | 善管注意義務(644条) | 善管注意義務(644条) | 仕事の完成(632条) |
| 報酬の対象 | 作業した量 | 作業で得られた成果 | 完成した仕事の結果 |
| 報酬の支払い時期 | 作業の後・期間ごと(648条2項) | 成果の引き渡しと同時(648条の2第1項) | 目的物の引き渡しと同時(633条) |
| 途中で終わったとき | やった割合で請求(648条3項) | 相手が得た利益の割合で請求(648条の2第2項) | 相手が得た利益の割合で請求(634条) |
| 不具合の責任の根拠 | 注意義務違反による債務不履行 | 注意義務違反による債務不履行 | 契約不適合責任 |
| 途中解除 | 双方いつでも(651条。不利な時期などは賠償) | 双方いつでも(651条。不利な時期などは賠償) | 完成前に注文者が賠償して解除(641条) |
善管注意義務とは、その仕事のプロとして当然求められる注意を払って作業する義務のことです。成果完成型でも、受け手が約束するのは「ていねいに作業すること」です。成果が出なければ報酬はもらえませんが、成果を出せなかったこと自体で責任を負うわけではありません。
準委任と請負の違いをもっと詳しく知りたい方は「準委任と請負の違い|契約書で見分ける6点」を見てください。
成果完成型でも請負の契約不適合責任とは扱いが違う
成果完成型の準委任には、請負の契約不適合責任の条文はそのまま当てはまらないと一般に説明されています。民法648条の2が請負の条文を準用しているのは、途中で終わったときの報酬のルール(634条)だけだからです。
契約不適合責任とは、納めた物の種類や品質が約束と違うときに負う責任のことです。請負では、注文者は直すこと・代金を減らすこと・損害賠償・解除を求められます。注文者が不具合を知ってから1年以内に通知すれば、責任を追及できます(民法637条)。
成果完成型の準委任で不具合が出たときは、善管注意義務に違反したかどうかが問題になります。違反していれば、債務不履行として損害賠償などの責任を負います。ただし解釈が分かれうる点なので、争いになりそうなときは弁護士に相談してください。
| 比べる点 | 成果完成型(準委任) | 請負 |
|---|---|---|
| 責任を負う条件 | ていねいに作業しなかった(注意義務違反) | 納めた物が約束と合わない |
| 相手が求められること | 損害賠償・解除など | 直す・代金減額・損害賠償・解除 |
| 期間のルール | 債権の消滅時効(知った時から5年など) | 知ってから1年以内に通知 |
ただし、契約書に特約があれば特約が優先されます。 「成果物に不具合があれば無償で修正する」と書かれていれば、準委任でもその責任を負います。
SESで不具合の責任を求められたときの考え方は「SESに瑕疵担保責任はある?契約不適合責任との違い」で詳しく説明しています。
途中で終わったときの報酬はどうなる?
成果完成型で途中で終わっても、相手が利益を受けた部分があれば、その割合で報酬を請求できます。 民法648条の2第2項が、請負の634条を使うと定めているからです。
請求できるのは、次の2つの場合です。
委任者(頼んだ側)のせいではない理由で、成果を出せなくなったとき
成果を出す前に、契約が解除されたとき
条件は、すでにした作業の結果のうち分けられる部分があり、その部分で相手が利益を受けていることです。たとえば「5本の調査レポートのうち3本を納めた」なら、3本分の報酬を請求できる可能性があります。
委任者のせいで成果を出せなくなったときは、報酬の全額を請求できる場合があります(民法536条2項)。どちらのせいかで扱いが変わるので、途中終了時の精算方法は契約書で決めておくのが安全です。
成果完成型の検収で注意したい5つの点
成果完成型では、報酬を受け取れるかどうかが検収で決まります。 検収の決め方があいまいだと、入金が遅れたり減ったりします。
検収とは、納められた成果が約束どおりかを、受け取る側が確かめることです。
成果の定義:何を納めれば成果とするかを、数や形式まで具体的に書く(例:移行手順書1式と作業完了報告書)
検収の基準:合格・不合格を何で判断するかを決める。「発注者が満足したとき」のようなあいまいな基準は避ける
検収の期間:納品から何営業日以内に結果を知らせるかを決める(例:10営業日)
みなし検収:期間内に連絡がなければ合格とみなす、という条文を入れる。みなし検収とは、検収の期限を過ぎたら合格したものと扱う決まりのことです
不合格のとき:直す回数・直す期限・直す費用の負担を決める。無償で何度でも直す条文は避ける
条文の書き方の例
| 決めること | 条文の例 |
|---|---|
| 成果の定義 | 本契約の成果は、別紙記載の移行手順書1式および作業完了報告書とする。 |
| 検収の期間 | 甲は、成果の引渡しを受けた日から10営業日以内に検査し、結果を乙に書面で通知する。 |
| みなし検収 | 前項の期間内に通知がない場合、成果は検査に合格したものとみなす。 |
| 途中終了時の精算 | 本契約が中途で終了した場合、甲は、乙が既に引き渡した成果の割合に応じて報酬を支払う。 |
条文の例は、考え方を示すためのものです。実際の契約書は、弁護士に確認してから使ってください。
成果完成型の契約書で見落としやすい3つの条項
成果物を納める契約では、報酬と検収のほかに、再委託・著作権・印紙の3つを確認します。どれも「成果を納める」形だからこそ問題になりやすい条項です。
| 条項 | 何が問題か | 確認すること |
|---|---|---|
| 再委託 | 準委任では、頼んだ側の許可がないと再委託できない(民法644条の2) | BPやフリーランスに任せてよいか、契約書に書いてあるか |
| 著作権 | 契約に定めがないと、成果物の著作権は作った側に残る | 譲渡するか。譲渡するなら著作権法27条・28条の権利も書くか |
| 印紙 | 契約書の中身しだいで収入印紙が必要になる | 請負に近い書き方なら2号文書にあたらないか |
再委託とは、受けた仕事の一部または全部を、さらに別の会社や人に任せることです。SESではBPの人材を出すことが多いので、再委託の許可は必ず確認します。
著作権を譲渡するなら、翻案権など(27条・28条)も契約書に書きます。書かないと、渡した側に残ると推定されます(著作権法61条2項)。
印紙の判定は「準委任契約の印紙は必要?2号・7号文書の判定表」で確認できます。基本契約書の条項は「SES基本契約書のテンプレート|条項チェック15」も参考にしてください。
SES営業が成果完成型の案件を受けるときに確認する7項目
成果完成型の案件は、いつ・いくら入金されるかが成果と検収で決まります。提案の前に、次の7項目を確認してください。
報酬の型:成果完成型か、履行割合型か。契約書のどの条文に書かれているか
成果の中身:納めるものの数・形式・品質の基準
検収の基準と期間:合格の判断方法と、結果が出るまでの日数
支払いの時期:検収合格から何日後か。月末締め翌月末払いなど、支払いサイトも確認
途中終了時の精算:途中で終わったとき、どこまで報酬をもらえるか
不具合への対応:無償修正の義務があるか、期間と回数の上限はあるか
上位の契約との関係:上位の会社が請負で受けている場合、検収や責任の条件が自社にも回ってこないか
7番は、商流が深いSESで特に大事です。上位の会社がお客さんと請負で契約していると、検収の遅れがそのまま自社の入金の遅れになります。商流の見方は「SESの一次請け・二次請けの違い」を参考にしてください。
エンジニアへの説明も忘れずに
成果完成型でも、お客さんがエンジニアに直接指示を出してよいわけではありません。 指示は自社の責任者から出す体制が必要です。
現場の線引きは「準委任契約の指揮命令はどこまで?SES現場のOK・NG具体例20」にまとめています。
成果完成型と履行割合型、どちらを選ぶ?
SESで人を出す案件は、履行割合型が基本です。作業の量で報酬が決まるので、入金の見通しが立てやすいからです。
| 向いている案件 | 型 |
|---|---|
| 開発チームに入り、日々の作業を続ける | 履行割合型 |
| 運用・保守・問い合わせ対応 | 履行割合型 |
| 調査・分析など、決まった成果物を納める | 成果完成型 |
| 移行作業など、終わりがはっきりしている | 成果完成型 |
成果完成型を選ぶなら、成果をはっきり決められる案件だけにします。成果があいまいなまま成果完成型にすると、作業をしたのに報酬がもらえない事態が起きます。
チョータツで案件の報酬の型と条件を管理する
成果完成型と履行割合型がまざると、案件ごとの入金の条件を追うのが大変になります。チョータツを使うと、案件の情報を1か所で管理・共有できます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 報酬の型を残す | メールを読んでExcelに転記 | 案件情報をチョータツで管理。AIが入力を手伝う |
| 検収・支払い条件を確認する | 契約書と過去のメールを探す | 案件の条件をすぐ開いて確認 |
| 社内で共有する | 営業と経理で口頭のやりとり | 案件・人材の情報を社内で共有 |
| パートナーの案件を把握する | 届くメールを1通ずつ確認 | 連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化 |
どの型で受けるかを決めるのは、人の判断です。チョータツは、その判断に必要な案件の条件をいつでも見られる状態にするための道具です。無料で始められます。
請求のときの書き方は「SESの請求書テンプレート」も参考にしてください。
よくある質問
- Q. 成果完成型の準委任と請負は、何が違いますか?
- 請負は仕事を完成させる義務がありますが、成果完成型の準委任にはありません。成果完成型の受け手が負うのは、ていねいに作業する善管注意義務です。
- Q. 成果完成型の準委任に契約不適合責任はありますか?
- 民法には、請負の契約不適合責任を成果完成型に当てはめる条文はありません。ただし、契約書に無償修正などの特約があれば、その責任を負います。
- Q. 成果完成型で成果が出なかったら、報酬はゼロですか?
- 原則として成果に対する報酬は受け取れません。ただし、途中までの成果で相手が利益を受けていれば、その割合で請求できる場合があります。
- Q. 成果完成型の検収はどう決めればいいですか?
- 成果の定義・合格基準・検収期間・みなし検収・不合格時の対応の5つを、契約書に具体的に書きます。
- Q. 成果完成型の準委任で、BPやフリーランスに再委託できますか?
- 頼んだ側の許可があるときか、やむを得ない事情があるときだけです(民法644条の2)。再委託してよいかを契約書で確認してください。
- Q. SESの月額契約は、成果完成型と履行割合型のどちらですか?
- 月額単価と精算幅で決める契約は、作業の量に払うので履行割合型です。
- Q. 成果完成型なら、お客さんがエンジニアに指示を出してもいいですか?
- いいえ。成果完成型でも準委任なので、指示は自社の責任者から出す必要があります。お客さんが直接指示すると、偽装請負と判断されるおそれがあります。
まとめ
成果完成型は成果に、履行割合型は作業の量に報酬を払う準委任
どちらも2020年4月1日施行の改正民法で条文になった(648条・648条の2)
成果完成型でも完成義務はなく、受け手の義務は善管注意義務
請負の契約不適合責任の条文は、成果完成型にそのまま当てはまらない。特約には注意
成果完成型は、成果の定義・検収・途中終了時の精算を契約前に確認する
再委託の許可・著作権の扱い・印紙も、契約書で見落とさない
案件の報酬の型と条件はチョータツに集めておくと、入金の見通しが立てやすい
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日
参考資料(2026年9月28日確認)
e-Gov法令検索「民法」(166条・536条・632条〜634条・637条・641条・644条・644条の2・648条・648条の2・651条・656条)
e-Gov法令検索「著作権法」(27条・28条・61条)
IPA(情報処理推進機構)「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」