請負契約とは?民法632条の意味と4つの特徴、準委任との違い|SESが受ける前の確認点7つと見積例

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

請負契約とは?民法の定義

請負契約とは、一方が仕事の完成を約束し、もう一方がその仕事の結果に報酬を払う契約のことです。 民法632条に定められています。

条文は「当事者の一方がある仕事を完成することを約し」で始まります。続けて「相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」と書かれています。ポイントは「完成」と「結果に対する報酬」の2つです。

IT業界では、システム開発を「要件定義から納品まで一括で任せる」形がよく請負になります。SES会社が「持ち帰りで作ってほしい」と頼まれる案件も、多くは請負です。

請負契約でよく出てくる言葉

請負に関する言葉は、似ていて混乱しやすいものです。この記事を読むのに必要な言葉だけを、1つの表にまとめました。

言葉意味SES営業の場面での例
請負(うけおい)仕事の完成を引き受けること「この画面、請負で作れますか?」
請負人・請負者仕事の完成を約束する側開発を受けるSES会社
注文者仕事を頼み、報酬を払う側元請けのSIerやエンド企業
業務請負派遣と区別するときに使う、請負で業務を引き受ける形「業務請負」と書かれた案件票

契約書では、請負人が「受託者」「乙」と書かれることも多く、名前だけでは判断できません。「請負人」「請負元・請負先」など立場の呼び方は、請負元・請負先とは|元請け・下請けとの違いとSES商流での呼び方で解説しています。

「業務請負」は、派遣との区別の場面で使われることが多い言葉です。派遣・SESとの違いや、業務請負の案件を受ける条件は、下の「請負で客先常駐すると偽装請負になりやすい」で紹介する業務請負の記事で扱います。

「請負法」という法律はある?

「請負法」という名前の法律はありません。 請負のルールは、民法の第3編第2章第9節「請負」(632条〜642条)に書かれています。

ただし、取引の形によっては、民法以外の法律もかかります。SES会社に関係が深いのは次の法律です。

法律どんな時にかかるか請負で注意すること
民法(632条〜642条)すべての請負契約完成義務・報酬の時期・契約不適合責任
取適法(旧下請法)資本金や従業員数の条件を満たす委託取引受領日から60日以内の支払い
フリーランス法個人のフリーランスに再委託する時取引条件の明示・支払期日
印紙税法請負契約書を紙で作る時契約金額に応じた印紙(第2号文書)

取適法は、下請法が改正されて2026年1月1日に施行された法律です。システムの設計やプログラムの作成は「情報成果物作成委託」として対象に含まれます。プログラムの作成は、委託側と受託側の資本金「3億円/1,000万円」の区分か、従業員数「300人」の区分で対象かを判定します。SESとの関係は取適法でSESの準委任は対象?適用条件と営業の変更点7つで解説しています。

請負契約の4つの特徴

請負契約の特徴は、完成義務・引き渡しと同時の報酬・契約不適合責任・完成前の解除の4つです。 どれも民法に定めがあります。

  1. 完成義務がある:請負人は仕事を完成させなければなりません(632条)。途中までしかできなければ、原則として全額は請求できません。

  2. 報酬は引き渡しと同時:報酬は、仕事の目的物の引き渡しと同時に払うのが原則です(633条)。月末締めの準委任とは流れが違います。

  3. 契約不適合責任を負う:納品物が契約の内容に合わないと、修正・減額・賠償・解除を求められます(559条・562条〜564条)。

  4. 完成前なら注文者はいつでも解除できる:注文者は、完成前ならいつでも損害を賠償して解除できます(641条)。

途中で終わった場合にも救いはあります。完成した部分を分けられ、注文者が利益を受けるときは、その割合に応じて報酬を請求できます(634条)。

契約不適合責任とは、納品したものが契約の内容に合っていない時に、請負人が負う責任のことです。 注文者が不適合を知った時から1年以内に通知すれば、請負人は責任を問われます(637条)。

請負と準委任(SES)の違い

請負は「完成」に、準委任は「働くこと」に報酬が払われます。 SES契約の多くは準委任です。

準委任契約とは、法律行為ではない仕事を任せ、その処理そのものに報酬を払う契約のことです(民法656条)。システムの開発支援や運用で、エンジニアが時間単位で働く形がこれにあたります。

比べる点請負準委任(SES)
約束すること仕事を完成させる業務を注意深く行う
報酬の条件完成・引き渡し業務を行ったこと(時間・月額)
不具合の責任契約不適合責任善管注意義務(ミスの程度で判断)
作業者への指示請負人が自分で出す受注側が自分で出す

注意したいのは、準委任にも成果完成型がある点です。成果物の引き渡しに報酬が結びつくため、請負に近いリスクを負います。違いは準委任契約の成果完成型とは|履行割合型との違いと検収の注意点で解説しています。

契約書の条文で2つを見分ける方法は準委任契約と請負契約の違い|業務委託契約書を見分ける判定シートにまとめています。

請負で客先常駐すると偽装請負になりやすい

請負で働く人に、注文者が直接指示を出すと偽装請負になります。 請負でも準委任でも、作業者への指示は受けた会社が自分で出すのが決まりです。

偽装請負とは、契約は請負や準委任なのに、実態は注文者が作業者に指揮命令している状態のことです。 労働者派遣法違反などに問われるおそれがあります。

判断の基準は、厚生労働省の告示(通称「37号告示」)に書かれています。仕事の進め方の指示、働く時間の管理、人の配置を、受けた会社が自分で行う必要があります。

SES会社が請負を受けて客先に常駐する場合、特に気をつけます。客先の担当者が作業者に「この順番でやって」と直接言う状態は、請負の形と合いません。「業務請負」と書かれた案件を受ける前の3条件チェック表は業務請負とは?派遣・SESとの違いと請負で受けるときの条件にあります。

SES会社が請負を打診される3つの場面

SES会社に請負の話が来るのは、主に「持ち帰り開発」「一括請負」「準委任からの切り替え」の3つの場面です。 どの場面でも、完成の責任が自社に移ります。

場面よくある言い方注意すること
持ち帰り開発「御社の事務所で作って納品してほしい」設計・テスト・進行管理まで自社で担う
一括請負「この機能を〇〇万円で丸ごと」金額が固定。遅れても追加費用は出にくい
準委任からの切り替え「次のフェーズは請負で」常駐のまま請負にすると偽装請負になりやすい

SES会社は、人を出すことには慣れています。一方で、見積もり・設計・品質管理・納期管理を自社で背負う経験は少ないことが多いです。

請負は、うまく進めば準委任より利益が出ることもあります。ただし、遅れや不具合の損は、すべて請負人がかぶります。受けるかどうかは、7つの確認点を見てから決めましょう。

請負案件を受ける前の確認点7つ

請負案件は、見積もりを出す前に7つの点を注文者に確かめます。 金額を先に出すと、あとから条件を変えにくくなるからです。

#確認点確かめること
1成果物と完成の定義何を納めれば「完成」か
2検収の方法と期間だれが・何日で・何を基準に合格にするか
3契約不適合責任の期間と範囲何か月・どこまで無償で直すか
4損害賠償の上限最大いくらまで払う可能性があるか
5仕様変更と追加費用途中で変わった時の手続きとお金
6支払い条件いつ・いくら・分割はあるか
7体制と再委託自社だけでできるか。BPに出してよいか

確かめた内容を契約書のどの条文に書くかは、請負契約書とは?システム開発の記載事項10項目と雛形の選び方で解説しています。

1. 成果物と完成の定義

何を納めれば完成なのかを、文書で決めてもらいます。 プログラムだけか、設計書やテスト結果も含むかで、工数は大きく変わります。

要件定義書や画面一覧がない場合は、完成の線が引けません。その状態で固定金額を出すのは避けましょう。

2. 検収の方法と期間

検収とは、納品物が約束どおりかを注文者が確かめて、受け取りを認めることです。 検収が終わらないと、請求できないのが一般的です。

「納品から10営業日以内に検収し、連絡がなければ合格とみなす」と決めておきます。期間とみなし検収を定めると、支払いが止まり続けるのを防げます。

3. 契約不適合責任の期間と範囲

民法のままだと、不具合を知った時から1年以内の通知で責任を問われます。 契約書で「検収から6か月以内」などと短くできます。

あわせて、無償で直す範囲を決めます。注文者の指示や資料が原因の不具合は、民法636条でも責任を負わないのが原則です。ただし、請負人がその指示が不適当だと知りながら告げなかった時は責任を負います。

4. 損害賠償の上限

賠償の上限は「その個別契約の委託料まで」と書いてもらうのが基本です。 上限がないと、システムが止まった時の損害まで請求されるおそれがあります。

5. 仕様変更と追加費用

仕様変更は、別の見積もりで受けると契約書に書きます。 「ついでにこれも」を無料で受け続けると、赤字の一番の原因になります。

6. 支払い条件

請負の報酬は、原則として引き渡しと同時です。 数か月かかる開発では、着手金や工程ごとの分割払いを相談しましょう。

取適法の対象になる取引なら、注文者は受領日から60日以内の、できるだけ短い期間で支払期日を決める義務があります。

7. 体制と再委託

自社の社員だけで完成できるかを、社内で先に確かめます。 BPやフリーランスに一部を出す場合は、再委託してよいかを契約書で確認します。

請負では、注文者から見て開発責任者が自社にいることが前提です。人だけ集めて請負を受けると、指示を出す人がいなくなり、品質も偽装請負の面も危うくなります。責任者を含む体制の組み方と単価の出し方はSESのチーム提案のやり方|複数名の体制の組み方と単価の出し方で紹介しています。

見積もり前の確認手順とメール例文

請負の打診を受けたら、次の5つの手順で進めます。 営業だけで判断せず、開発を仕切る人を早めに入れるのがコツです。

  1. 案件情報を記録する:打診のメールや議事メモを残し、「請負」「持ち帰り」などの言葉を確かめます。

  2. 7つの確認点を注文者に聞く:メールで質問を送り、回答を文書で残します。

  3. 社内の開発責任者と工数を出す:設計・製造・テスト・進行管理まで含めて見積もります。

  4. 予備費と責任の条件を決める:リスクの大きさに応じて予備費を足し、責任期間や賠償上限の案をつくります。

  5. 契約書案を読み合わせる:責任・検収・支払いの条文を、見積もりの前提と一致させてから提出します。

注文者への確認メール例文

例文・テンプレート
件名:〇〇機能開発のお見積りに先立つご確認(株式会社△△ □□)

株式会社〇〇
××様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
〇〇機能の開発につきまして、お声がけありがとうございます。

請負でのお見積りを正確にお出しするため、
次の点をお教えいただけますでしょうか。

1. 納品物の範囲(プログラム、設計書、テスト結果など)
2. 検収のご担当と期間、合格の基準
3. 不具合対応の期間(検収後〇か月など)と範囲
4. 損害賠償の上限についてのお考え
5. 仕様変更が生じた場合のお手続き
6. お支払い条件(分割払いのご相談可否を含む)
7. 一部業務の再委託の可否

2026年10月9日(金)までにご回答いただけましたら、
10月16日(金)にお見積りをお送りいたします。
よろしくお願いいたします。

請負の見積もりの計算例

請負の見積もりは、工数に単価をかけたうえで、予備費と印紙などの費用を足して考えます。 準委任と違い、見込み違いの損は自社が負うからです。

例として、3名が3か月かかる開発を考えます。単価や予備費の割合は、説明のための仮の数字です。

項目計算金額
基本の工数3名 × 3か月 = 9人月―
基本の金額9人月 × 80万円720万円
予備費(例:15%)720万円 × 0.15108万円
見積もり金額720万円 + 108万円828万円(税抜)

紙の請負契約書で契約金額が828万円なら、印紙税は1万円です(国税庁の区分で500万円超1,000万円以下)。消費税額を分けて書けば税抜金額で判定します。電子契約なら印紙は要りません。

予備費をいくらにするかは、要件の固まり具合で変わります。要件が決まっていないほど、準委任で受けるか、工程を分けて契約するのが安全です。

請負を受けない方がよいケース

完成の線が引けない、責任者がいない、客先の指示で動く常駐。この3つの案件は請負で受けない方が安全です。 準委任での提案に切り替えましょう。

  • 要件が固まっていない:何を作るか決まっていないのに、金額だけ固定される

  • 開発責任者がいない:人は出せても、設計・品質・納期を仕切る人がいない

  • 客先の指示で動く常駐:請負の形のまま、客先の社員が作業者に直接指示する

  • 賠償の上限がない:契約書の修正にも応じてもらえない

切り替える時は「要件が固まるまでは準委任、固まった部分から請負」と提案します。この工程ごとの契約なら、話が通りやすくなります。工程の分け方と提案メールの例は開発委託契約とは|経産省モデル契約で見る請負と準委任の分け方にあります。

チョータツで案件の契約形態を提案前に確かめる

自分で管理する場合、案件ごとの「準委任か請負か」「成果物はあるか」は、メールやExcelに散らばりがちです。請負の条件を見落としたまま人を提案すると、あとで話がかみ合わなくなります。

チョータツとは、SES営業の案件・人材を管理・共有するツールのことです。 3,000社以上が使っており、無料で始められます。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の条件を残すメールやExcelに分かれて保存案件の情報をまとめて管理できる
提案前に確認する過去のメールを探し直す案件情報を見て、提案前に条件を確認できる
社内で共有する担当者しか知らない案件・人材の情報を社内で共有できる
入力の手間手で転記するAIが入力を手伝う

案件を登録するときに「契約形態」「成果物の有無」をメモしておけば、請負の案件を準委任と同じ感覚で扱う失敗を防げます。他社と連携すると、他社の営業中案件もデータベース化できるため、請負ではない準委任の案件を探す時にも役立ちます。

よくある質問

Q. 請負契約とは、簡単に言うと何ですか?
仕事の完成を約束して、完成した結果に報酬が払われる契約です(民法632条)。家の建築やシステムの一括開発が代表例です。
Q. 請負と業務委託は何が違いますか?
業務委託は法律上の言葉ではなく、請負や準委任をまとめて呼ぶ言い方です。業務委託契約の中身が「完成」を約束していれば請負です。
Q. 請負で完成できなかったら、報酬はゼロですか?
原則として全額は請求できません。ただし、できた部分を分けられ、注文者が利益を受けるなら、その割合に応じて請求できます(民法634条)。
Q. 請負の不具合の責任は、いつまで続きますか?
民法では、注文者が不具合を知った時から1年以内に通知すれば責任を問えます(637条)。契約書で「検収から6か月」などに短くできます。
Q. SES会社が請負で客先に常駐してもよいですか?
常駐すること自体は禁止されていません。ただし、客先が作業者に直接指示すると偽装請負になります。指示は必ず自社の責任者が出します。

まとめ

  • 請負契約とは、仕事の完成を約束し、完成した結果に報酬が払われる契約(民法632条)

  • 「請負法」という法律はなく、ルールは民法632条〜642条にある。取引によって取適法やフリーランス法もかかる

  • 請負は完成義務・引き渡しと同時の報酬・契約不適合責任・完成前の解除の4つが特徴

  • SESで多い準委任は「働くこと」、請負は「完成」に報酬が払われる

  • 請負で客先常駐し、客先が直接指示すると偽装請負になる

  • 見積もりの前に、成果物・検収・責任・賠償上限・仕様変更・支払い・体制の7点を確かめる

  • 要件が固まらない、責任者がいない案件は、準委任や工程ごとの契約で提案する

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

関連する記事