業務請負とは?派遣・SES(準委任)との違い|「業務請負」の案件を受けるときの3条件チェック表と派遣化の典型パターン
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
業務請負とは?
業務請負とは、ある仕事を完成させることを約束し、完成した結果に対して報酬を受け取る働き方・契約の形のことです。「作業請負」「請負業務」と呼ばれることもあり、意味はほぼ同じです。
法律上の根拠は、民法第632条の「請負」です。請負は、一方が仕事の完成を約束し、もう一方がその結果に報酬を払う契約と定められています。業務請負は、この請負契約を使って業務を丸ごと引き受ける形を指す、実務上の呼び方です。
請負事業・請負会社とは
請負事業とは、業務請負の形で仕事を受けて売上を立てる事業のことです。請負会社は、その事業をしている会社を指します。IT業界では、システム開発を一括で受けるSIerや開発会社が代表例です。
SES企業も、案件によっては請負会社の立場になります。たとえば「画面10本を作って納品してほしい」という持ち帰り開発を受けると、その案件ではSES企業が請負会社です。
業務請負の3つの特徴
業務請負には、ほかの契約形態にない特徴が3つあります。
完成責任がある:約束した成果物を仕上げないと、報酬を請求できません。
指揮命令は自社が行う:作業の進め方や担当者への指示は、請け負った会社が出します。
検収で完了する:客先が成果物を確認し、合格とした時点で仕事が終わります。
この3つが、あとで紹介する「受けるときの3条件」の土台になります。
業務請負と派遣・SES(準委任)・業務委託の違い
4つの違いは「報酬の対象」と「誰が指示を出すか」で見分けられます。業務請負は完成に報酬が出て、指示は自社が出します。
| 契約形態 | 報酬の対象 | 現場で指示を出す人 | 完成責任 |
|---|---|---|---|
| 業務請負 | 完成した成果物 | 自社(請負会社) | あり |
| SES(準委任) | 作業した時間・内容 | 自社(SES企業) | なし |
| 労働者派遣 | 働いた時間 | 客先(派遣先) | なし |
| 業務委託 | 契約による | 契約による | 契約による |
派遣との違い
労働者派遣とは、自社で雇った人を客先に送り、客先の指示で働いてもらう形のことです。派遣は、客先が直接指示を出せるのが最大の違いです。そのかわり、派遣会社は労働者派遣事業の許可が必要です。
業務請負では、客先はエンジニアに直接指示を出せません。指示を出してよいのは請負会社の責任者だけです。
SES(準委任)との違い
準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決められた作業をきちんと行うことに報酬が出る契約のことです。SESの多くはこの準委任で結ばれます。
準委任は完成責任を負わないので、月単価と稼働時間で精算するのが一般的です。業務請負は、完成しなければ報酬が出ないので、見積もりと納期の管理が重くなります。準委任について詳しくは「準委任契約とは?SES営業が押さえる委任との違いと注意点6つ」で解説しています。
業務委託との違い
業務委託とは、法律上の用語ではなく、仕事を外部に任せる契約の総称です。中身は請負か準委任(または委任)のどちらかになります。
つまり「業務請負と業務委託の違い」は、業務委託という大きな箱の中に、業務請負が入っている関係です。契約書のタイトルが「業務委託契約書」でも、中身が完成を約束していれば請負として扱われます。見分け方は「準委任契約と請負契約の違い|業務委託契約書を見分ける判定シート」にまとめています。
業務請負と派遣を分ける国のルール(37号告示)
請負か派遣かは、契約書の名前ではなく、現場の実態で判断されます。その基準が、厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」、通称37号告示です。
37号告示では、請負と認められるには大きく2つの条件をどちらも満たす必要があります。
| 条件 | 中身(要約) | SES営業が確かめること |
|---|---|---|
| 自社の人を自社で動かす | 作業の指示・評価、労働時間、配置や服務規律を請負会社が管理する | 作業指示・勤怠・席替えなどを誰が決めるか |
| 事業として独立している | 資金を自分で用意し、法律上の責任を負い、機材か専門的な技術・経験を自社で提供する | 単に人手を出すだけになっていないか |
2つめの条件にある「単に人手を出すだけではない」という点が、IT案件ではとくに大切です。エンジニアを客先に置くだけで、設計や管理を客先が行っていると、請負とは認められにくくなります。告示の中身は「偽装請負の37号告示をやさしく解説|厚労省Q&AのSES該当箇所」で詳しく扱っています。
「業務請負」の案件を受けるときの3条件チェック表
「業務請負」と書かれた案件は、①完成責任、②自社での指揮命令、③成果物の検収、の3条件をすべて満たせるときだけ受けます。1つでも「いいえ」があれば、そのまま受けるのは危険です。
条件1:完成責任を負えるか
完成責任とは、約束した成果物を仕上げる責任のことです。仕上げられないと報酬が出ず、不具合があれば直す責任も負います。
| 確認項目 | はい/いいえ | 「いいえ」のときの対応 |
|---|---|---|
| 成果物(何を作るか)が文書で決まっている | 要件定義書か仕様書を先にもらう | |
| 納期と、遅れた場合の扱いが決まっている | 納期と遅延時の条件を契約書に書く | |
| 不具合を直す期間と範囲が決まっている | 契約不適合責任の期間と上限を決める | |
| 自社で見積もった工数に余裕がある | 追加費用の条件を契約書に入れる |
契約不適合責任とは、納めた成果物が約束どおりでなかったときに、直したり代金を減らしたりする責任のことです。民法では、客先が不具合を知ってから1年以内に通知すれば請求できるのが原則です。
条件2:自社で指揮命令できるか
指揮命令とは、「この作業を先にやって」「明日は9時に来て」など、働き方や作業の中身を指示することです。業務請負では、自社の責任者だけが指示を出せます。責任者を含めた複数名の体制の組み方は「SESのチーム提案のやり方|複数名の体制の組み方と単価の出し方」で紹介しています。
| 確認項目 | はい/いいえ | 「いいえ」のときの対応 |
|---|---|---|
| 自社側の責任者(リーダー)を置ける | 置けないなら準委任に切り替える | |
| 作業の順番・割り振りを自社が決める | 客先の指示は責任者経由にする | |
| 勤怠・残業・休みを自社が管理する | 客先へ勤怠を報告する形に改める | |
| 客先の社員がエンジニアへ直接指示しない | 窓口を文書で決めて客先に伝える |
条件3:成果物を検収してもらえるか
検収とは、客先が納品物を確認し、約束どおりか合否を判断する手続きのことです。検収がないと、完成したかどうかがあいまいになり、請負の形が崩れます。
| 確認項目 | はい/いいえ | 「いいえ」のときの対応 |
|---|---|---|
| 検収の方法(テスト項目など)が決まっている | 受け入れ基準を契約前に合意する | |
| 検収の期限(例:納品から10営業日)がある | 期限と「期限後は合格とみなす」を書く | |
| 支払いが検収合格をきっかけにしている | 月額精算なら準委任として契約する |
3つの表で「いいえ」が残った案件は、請負のまま受けず、準委任(SES)で結び直せないか客先に相談しましょう。
実態が派遣になってしまう典型パターン6つ
契約書が請負でも、次のような状態なら実態は派遣と判断されやすく、偽装請負のおそれがあります。SES企業が請負を受けたときに起こりがちな例です。
客先のPMがエンジニアに直接タスクを振る:朝会で客先社員が「今日はこれをやって」と指示する状態です。
エンジニア1人だけを客先に置く:自社の責任者がいないと、指示は客先から出るしかありません。
勤怠を客先が承認する:遅刻や残業の許可を客先が出していると、労働時間の管理が客先に移っています。
成果物がなく、毎月の時間で請求する:完成物がないまま「140〜180時間」で精算すると、中身は準委任か派遣です。
客先の都合で人を入れ替える:客先が「この人は外して」と決めるのは、配置の決定を客先がしていることになります。
作業場所・機材・手順のすべてを客先が用意して決める:自社の技術や管理を出していないと、「人手を出しているだけ」と見られます。
偽装請負と判断されると、許可のない派遣として労働者派遣法の違反を問われるおそれがあります。さらに、客先がエンジニアに直接雇用を申し込んだとみなされる「労働契約申込みみなし制度」の対象になる場合もあります。判断基準の全体は「偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選と予防策」を、1人で客先にいる場合は「SESの一人常駐・一人請負は違法?偽装請負の境目と指示ルート」をご覧ください。
業務請負の案件を受けるまでの手順
案件票で「業務請負」を見つけたら、条件確認→社内判断→契約書の順に進めます。手順を決めておくと、担当者ごとの判断のばらつきを防げます。
案件票の契約形態を確認する:「請負」「業務請負」「一括」「持ち帰り」の言葉があれば、この手順に進みます。
3条件の確認メールを送る:成果物・自社の責任者・検収方法の3点を、客先か上位の会社に聞きます。
社内でチェック表を埋める:営業責任者と技術側で、3つの表の「はい/いいえ」を確認します。
請負で受けるか、準委任に切り替えるか決める:「いいえ」が残れば準委任を打診します。
契約書に3条件を書き込む:成果物、納期、検収方法、契約不適合責任の期間を明記します。
現場の窓口を文書で決める:客先からの指示は自社の責任者が受ける、と入場前に伝えます。
3条件を確かめるメール例文
件名:【ご確認】◯◯システム改修案件の契約条件について
◯◯株式会社 △△様
いつもお世話になっております。株式会社□□の◇◇です。
◯◯システム改修案件について、「業務請負」でのご契約と伺いました。
お見積もりの前に、次の3点を確認させてください。
納品する成果物と、その仕様がわかる資料
弊社側の責任者を置き、作業のご指示は責任者経由でいただく形でよいか
検収の方法と期限(例:納品から10営業日以内)
内容によっては、準委任契約でのご提案もあわせて検討いたします。
2026年10月9日(金)までにご回答いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
社内の判断表(請負で受けるか、準委任に切り替えるか)
3つのチェック表の結果は、次の判断表で社内の結論にします。営業責任者の承認ルールとして、そのまま使えます。
| 「いいえ」の数 | 判断 | 営業の次の行動 |
|---|---|---|
| 0個 | 請負で受ける | 契約書に成果物・納期・検収方法を書く |
| 条件3だけに「いいえ」 | 条件つきで請負 | 検収基準と期限を合意してから見積もる |
| 条件1か2に「いいえ」 | 準委任に切り替えを打診 | 月額単価と精算幅で見積もり直す |
| 客先が切り替えを断る | 見送り | 理由を記録し、別の案件を提案する |
エンド企業に直接体制を提案する場合の書き方は「エンド直案件の提案書の作り方|SESの体制提案の構成と見本」を参考にしてください。請負と準委任の選び方は「準委任契約と請負契約の違い|業務委託契約書を見分ける判定シート」でも解説しています。
チョータツで案件ごとの契約条件を管理する
自分で管理するなら、案件ごとに「契約形態」「3条件の確認結果」をスプレッドシートに残すのが基本です。ただ、案件が増えると、どの案件をどこまで確かめたかが追えなくなりがちです。
チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。案件の情報をまとめて管理し、チームで共有できます。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。
チョータツを使うと、次のことが楽になります。
案件ごとの条件(契約形態など)を案件情報と一緒に残し、提案前に確認できる
営業担当が替わっても、チームで同じ案件情報を見られる
他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる
「業務請負」の案件で条件がそろわないときは、準委任で探せるほかの案件に切り替える判断もしやすくなります。
よくある質問
- Q. 業務請負とは簡単に言うと何ですか?
- 仕事の完成を約束し、自社の指示で作業して、完成した成果に報酬をもらう形です。法律上は民法の請負契約にあたります。
- Q. 業務請負と業務委託の違いは何ですか?
- 業務委託は外部に仕事を任せる契約の総称で、業務請負はその一種です。業務委託の中身が「完成の約束」なら業務請負になります。
- Q. 作業請負と業務請負は違いますか?
- 実務上はほぼ同じ意味で使われます。どちらも、完成責任があるか、指揮命令を自社がしているかで請負かどうかが決まります。
- Q. SES企業が業務請負で客先常駐してもよいですか?
- 自社の責任者が現場で指示を出し、成果物の検収がある形なら可能です。エンジニアに客先が直接指示するなら、請負としては認められにくくなります。
- Q. 業務請負で月額精算してもよいですか?
- 時間で精算する形は、完成に報酬を払う請負とは合いません。月額で精算したいなら、準委任契約として結ぶのが自然です。
- Q. 業務請負に派遣の許可は必要ですか?
- 実態が請負であれば、労働者派遣事業の許可は不要です。ただし実態が派遣とみなされると、許可のない派遣として違法になるおそれがあります。
まとめ
業務請負とは、仕事の完成を約束し、自社の指揮命令で作業して、成果に報酬をもらう形
派遣は客先が指示し、SES(準委任)は作業に報酬が出る。業務請負は完成に報酬、指示は自社
業務委託は総称で、業務請負はその中の1つ
請負か派遣かは、37号告示にもとづき現場の実態で判断される
受ける条件は、①完成責任、②自社での指揮命令、③成果物の検収の3つ
客先の直接指示・一人常駐・時間精算などは、実態が派遣になる典型パターン
条件が合わなければ、準委任(SES)への切り替えを打診する
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「民法」(第632条 請負、第637条 目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
厚生労働省「請負を適正に行うために」(37号告示、請負事業主・発注者向けガイドラインとチェックシート)
e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(第5条 許可、第40条の6 労働契約申込みみなし)