業務委託契約の注意点|SES営業が契約書で確認する12項目と、弁護士・AIチェックに回す前の進め方

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

業務委託契約とは?SESで結ぶ契約の形

業務委託契約とは、自社の仕事の一部を、ほかの会社や個人に任せるときに結ぶ契約のことです。法律上の名前ではなく、実際には準委任契約か請負契約のどちらかにあたります。

SESで結ぶ業務委託契約は、ほとんどが準委任契約です。準委任契約とは、「作業をすること」そのものを約束する契約のことです。請負契約とは、「成果物を完成させること」を約束する契約のことです。

形約束する内容SESでの使われ方
準委任契約決まった作業を行うSESのほとんどの案件
請負契約成果物を完成させる受託開発・持ち帰り案件
労働者派遣契約人を派遣し、相手が指示する派遣許可を持つ会社だけ

契約書のタイトルが「業務委託契約書」でも、中身が請負や派遣に近いことがあります。まず形を確かめることが、すべてのチェックの出発点です。

基本契約と個別契約の関係

SESの契約書は、基本契約書と個別契約書(注文書・注文請書)の2段構えが一般的です。基本契約書とは、取引全体に共通するルールを決める契約書のことです。個別契約書とは、案件ごとの単価・期間・作業者などを決める書類のことです。

12項目のうち、損害賠償や中途解約は基本契約書に、単価や精算幅は個別契約書に書かれることが多いです。両方をそろえて読んでください。2つの書類の関係は「SESの基本契約書とは|テンプレートと個別契約の優先・印紙7号」でまとめています。

SES営業が契約書で確認する12項目チェックリスト

取引先から届いた契約書は、下の12項目を上から順に確認します。「見る場所」は条項名の例です。会社によって名前が違うので、似た条項を探してください。

#確認項目見る場所(条項名の例)特に揉めやすい点
1契約形態目的・契約の性質請負や派遣の文言が混ざる
2業務内容と指揮命令業務内容・業務の遂行相手が直接指示する書き方
3期間と更新契約期間・更新自動更新と通知期限
4単価と精算幅委託料・精算控除・超過の計算方法
5支払いサイト支払条件支払日が長すぎる
6再委託再委託BP・フリーランスが使えない
7損害賠償損害賠償・責任の制限上限がない
8中途解約解除・中途解約予告期間が相手だけ短い
9秘密保持秘密保持・個人情報期間と範囲が広すぎる
10知的財産権利の帰属自社の道具まで渡す書き方
11引き抜き禁止直接取引の禁止期間と対象があいまい
12反社・管轄反社会的勢力の排除・合意管轄相手の地元の裁判所だけ

ここからは、1項目ずつ「見るべき文言」と「営業としての確認ポイント」を説明します。

1. 契約形態:準委任か、請負か

最初に「本契約は準委任契約とする」などの文言があるかを見ます。「完成」「納品」「検収」の言葉が多いときは、請負に近い書き方です。

準委任のつもりで請負の書き方を受け入れると、成果物が完成するまで報酬を受け取れないおそれがあります。案件票に書かれた契約形態と、契約書の文言が同じかを確認してください。

2. 業務内容と指揮命令:偽装請負にならない書き方か

業務内容には「〇〇システムの開発支援」など、作業の範囲を具体的に書きます。注意したいのは、「甲の指示に従い業務を行う」のような文言です。

準委任や請負で、発注側が作業者に直接指示を出すと、偽装請負になるおそれがあります。偽装請負とは、契約の形は業務委託なのに、実態は労働者派遣になっている状態のことです。指示は自社の責任者を通す書き方になっているかを確かめます。

3. 期間と更新:自動更新と通知の期限

「期間満了の1か月前までに申し出がなければ、同じ条件で更新する」という自動更新の条項がよくあります。自動更新とは、どちらも何も言わなければ契約が続く仕組みのことです。

営業が確認するのは、更新しないときの通知期限です。期限を過ぎると、エンジニアを次の案件に動かせなくなります。期限日をカレンダーに入れておきましょう。

4. 単価と精算幅:控除・超過の計算方法

精算幅とは、月額の単価で認める稼働時間の上限と下限のことです。たとえば「140〜180時間」なら、その範囲の中は月額単価のままです。

契約書では、次の4点が案件票と一致しているかを見ます。

  1. 月額単価(税抜か税込か)

  2. 精算幅の上限と下限

  3. 控除・超過の計算方法(上下割か中間割か)

  4. 精算単位(15分・30分など)

計算方法の違いは「SESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法と有給・固定の扱い」で数字の例つきで説明しています。

5. 支払いサイト:締め日と支払日

支払いサイトとは、請求の締め日から入金されるまでの日数のことです。「月末締め翌月末払い」なら約30日です。

2026年1月から、下請法は「取適法(中小受託取引適正化法)」に変わりました。条件にあてはまる取引では、支払期日は成果物や役務を受け取った日から60日以内にする必要があります。支払日が長すぎないかを確認してください。計算の方法は「取適法の支払期日60日とSESの支払サイト|計算例と手形禁止」にまとめています。

BPが個人のフリーランスのときは、2024年11月1日に施行されたフリーランス法もかかります。フリーランス法でも、支払期日は原則として役務を受け取った日から60日以内です。

自社がBPに支払う側になるときは、客先からの入金日より前にBPへの支払日が来ないかも確かめます。入金より先に支払うと、手元のお金が足りなくなります。

6. 再委託:BPやフリーランスを出せるか

「乙は、甲の書面による承諾なく、本業務を第三者に再委託してはならない」という条項が一般的です。再委託とは、受けた仕事をさらにほかの会社や個人に任せることです。

民法でも、準委任の受任者がほかの人に任せられるのは、委任者の許しがあるときか、やむを得ないときだけとされています。BPのエンジニアやフリーランスを提案するなら、承諾の取り方を事前に決めておきます。「再委託は一切禁止」の場合、自社社員しか出せません。

7. 損害賠償:上限があるか

SESで一番大きなリスクになるのが損害賠償です。上限がない書き方だと、1人のミスで、受け取った報酬を大きく超える額を請求されるおそれがあります。

見るべき文言は、「損害賠償の額は、損害発生の直前〇か月分の委託料を上限とする」のような上限の定めです。「一切の損害を賠償する」とだけ書かれていたら、上限を入れる交渉を考えましょう。書き方と有効性は「SESの損害賠償の上限条項|準委任の責任限定の書き方と有効性」で解説しています。

8. 中途解約:予告期間と報酬の扱い

民法では、準委任契約はいつでも解除できます。ただし、相手に不利な時期に解除した側は、原則として損害を賠償しなければなりません。

契約書では、「〇日前までに書面で通知すれば解約できる」という予告期間を見ます。相手だけ予告期間が短い、という偏った書き方になっていないか確認してください。途中で終わった月の報酬の計算方法も大切です。詳しくは「SESの中途解約条項の書き方|準委任の途中解約と報酬の扱い」をご覧ください。

9. 秘密保持:範囲と期間

秘密保持の条項では、何が秘密にあたるかと、契約終了後に何年守るかを見ます。「業務に関して知り得た一切の情報」とだけあると、範囲が広すぎます。

BPに再委託するなら、BPとも同じレベルの秘密保持契約(NDA)を結ぶ必要があります。客先との契約と、BPとのNDAの内容をそろえておきましょう。

10. 知的財産:作ったものの権利は誰のものか

「本業務で作成された成果物の著作権は、甲に帰属する」という条項が一般的です。問題になるのは、自社が前から持っている道具やプログラムまで渡す書き方になっている場合です。

「従前から乙が保有していたものを除く」といった除外の文言があるかを確かめます。詳しくは「SESの契約書と著作権の帰属|知的財産権の条項例と注意点5つ」をご覧ください。

11. 引き抜き禁止:期間と対象

引き抜き禁止条項とは、取引先が自社のエンジニアを直接雇ったり、直接契約したりすることを禁じる条項のことです。SESでは商流飛ばしを防ぐために大切です。

見るのは、禁止する期間(契約終了後〇年など)と対象(社員だけか、BPの人材も含むか)です。長すぎる期間は、裁判で無効とされる場合もあります。

12. 反社条項と合意管轄

反社会的勢力の排除条項とは、相手が反社会的勢力とわかったら、すぐに契約を解除できると決める条項のことです。ほとんどの契約書に入っているので、抜けていないかを見ます。

合意管轄とは、揉めたときにどこの裁判所で争うかを決める条項のことです。相手の本社近くの裁判所だけになっていると、遠方の会社には負担が大きくなります。

契約書が届いてから締結までの進め方5ステップ

契約書のチェックは、営業・経営者・専門家で役割を分けると早く進みます。営業がやるのは、案件の条件との照合と、気になる点の洗い出しです。

  1. 案件票と並べる:案件票(単価・精算幅・期間・場所)と、契約書・注文書を横に並べます。

  2. 12項目に印をつける:チェックリストで「問題なし」「要確認」「修正したい」に分けます。

  3. 社内で判断する:「修正したい」ものは、上司や経営者に見せ、譲れる点と譲れない点を決めます。

  4. 専門家に回すか決める:次の見出しの基準にあてはまれば、弁護士にチェックを頼みます。

  5. 修正を依頼して締結する:修正したい点をメールで伝え、合意できたら締結します。

修正を依頼するメール例文

相手のひな形を変えてもらうときは、理由をそえて短く伝えます。

件名:業務委託基本契約書(案)について修正のご相談

〇〇株式会社 〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
先日お送りいただいた業務委託基本契約書(案)を拝見しました。
2点、ご相談させてください。

  1. 第12条(損害賠償):賠償額の上限として「直前3か月分の委託料」を加えられないでしょうか。

  2. 第15条(中途解約):予告期間を双方とも「1か月前」にそろえていただけないでしょうか。

修正案を添付しております。2026年10月9日(金)までにご確認いただけますと幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

修正の理由は「当社の標準条件に合わせたい」で十分です。相手を責める書き方は避けましょう。

弁護士チェック・AIチェック・自分でのチェックの使い分け

契約書のチェックは、自分で12項目を見る→必要なものだけ弁護士に回すの順がおすすめです。AIのチェックツールは、見落としを減らす補助として使います。

リーガルチェックとは、契約書に法律上の問題や、自社に不利な点がないかを確認することです。3つの方法は、得意なことが違います。上下の契約を並べて比べる手順は、契約書レビューのやり方|SES営業が基本契約を受け取ったら見る項目で解説しています。

方法得意なこと向いている場面
自分(営業)でチェック案件の条件との照合すべての契約書
AI・契約書チェックシステム条項の抜けや不利な文言の指摘件数が多いとき
弁護士チェック有効性の判断と修正案の作成金額が大きい・リスクが高い契約

弁護士チェックに回したい契約

次のどれかにあてはまるときは、弁護士に確認してもらうのが安全です。

  • 年間の取引額が大きい、初めての大口の客先

  • 損害賠償に上限がなく、相手が修正に応じない

  • 請負や成果物の完成を約束する内容が入っている

  • 相手のひな形から、多くの条項を変えたい

  • 海外の会社や、英文の契約書

顧問弁護士がいない会社は、まず基本契約書だけを見てもらう方法もあります。基本契約書が固まれば、案件ごとの注文書は営業が確認できる範囲になります。

AIの契約書チェックを使うときの注意

AIの契約書チェックシステムは、条項の抜けや、一般的に不利とされる文言を指摘してくれます。ただし、AIはあなたの案件の単価や精算幅を知りません。案件の条件と一致しているかは、営業が自分で見る必要があります。

法務省は2023年8月、AIを使った契約書チェックサービスと弁護士法72条の関係について考え方を公表しました。弁護士法72条とは、弁護士でない人がお金をもらって法律事務を行うことを禁じる規定です。サービスの中身によっては問題になる場合があるため、導入するときは提供会社の説明を確認しましょう。

また、契約書をAIに入れる前に、秘密保持の条項でほかのサービスへの提供が禁止されていないかも確かめてください。

チョータツで案件の条件を管理し、契約書と照らし合わせる

契約書のチェックで一番時間がかかるのは、案件の条件を探し出して照らし合わせる作業です。案件票がメールやExcelに散らばっていると、精算幅や期間の数字を探すだけで時間がかかります。

チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。案件ごとの条件を1か所で管理できるため、契約書が届いたときに、案件の条件をすぐに確認できます。チームで情報を共有できるので、営業と営業事務のあいだで条件がずれることも減らせます。

パートナー企業へのメール配信機能もあり、3,000社以上が利用しています。無料で始められるので、まずは進行中の案件を登録して、次の契約書チェックで試してみてください。

よくある質問

Q. 業務委託契約で一番注意すべき点は何ですか?
SESでは、損害賠償の上限と中途解約の予告期間です。どちらも、トラブルが起きたときの損失の大きさを決める条項だからです。
Q. 契約書のリーガルチェックは必ず弁護士に頼むべきですか?
すべての契約書を弁護士に回す必要はありません。基本契約書や大口の契約は弁護士に、案件ごとの注文書は営業が12項目で確認する、という分け方が現実的です。
Q. 業務委託契約書のチェックリストはどう使えばいいですか?
案件票と契約書を並べ、12項目ごとに「問題なし」「要確認」「修正したい」に分けます。「修正したい」ものだけを上司や弁護士に相談すると、早く進みます。
Q. AIの契約書チェックだけで締結してもいいですか?
おすすめしません。AIは一般的な不利な文言は指摘できますが、案件の単価や精算幅との一致までは確認できません。最後は人が確認してください。
Q. 相手のひな形の修正を頼んでも失礼になりませんか?
失礼にはあたりません。契約書の案は、話し合って決めるためのものです。理由をそえて、修正案を添付して短く依頼しましょう。
Q. 業務委託契約書に印紙は必要ですか?
契約の内容によって変わります。請負の内容なら第2号文書として印紙が必要になることがあります。準委任だけの契約書は原則不要で、電子契約なら印紙はかかりません。

まとめ

  • 業務委託契約の注意点は、お金・責任・終わり方の3つに集まる

  • SESの業務委託契約は、ほとんどが準委任契約。まず契約形態を確かめる

  • 届いた契約書は、12項目のチェックリストで営業が先に確認する

  • 精算幅・支払いサイト・再委託は、案件票と一致しているかを見る

  • 損害賠償の上限と中途解約の予告期間は、偏りがないかを見る

  • 大口・高リスクの契約は弁護士に回し、AIは見落とし防止の補助に使う

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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