SESの中途解約条項の書き方|準委任の途中解約と報酬の日割り精算・損害賠償の決め方【条項例・計算例つき】

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SESの中途解約条項とは?

中途解約条項とは、契約期間の途中で契約を終わらせるときのルールを決めた条文のことです。「何日前に伝えるか」「その月の報酬をどう払うか」「損害を払うか」を決めておきます。

SESの契約は、ほとんどが準委任契約です。準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決まった作業を行うこと自体を約束する契約のことです。民法656条で、委任のルールがそのまま使われます。

中途解約条項は、ふつう基本契約書に入れます。基本契約書とは、取引先とのあいだで何度も使う共通ルールをまとめた契約書のことです。案件ごとの期間や単価は、個別契約書や注文書で決めます。

→ 基本契約書の全体像はSESの基本契約書とは|テンプレートと個別契約の優先・印紙7号で確認できます。

準委任契約は民法上いつでも解除できる

準委任契約は、民法651条1項により、発注する側も受ける側も「いつでも」解除できます。理由がなくても、契約そのものは終わらせられます。

ただし、民法651条2項は、次の2つの場合に解除した側が損害を賠償すると定めています。

場合SESでの例
相手に不利な時期に解除した月末の2日前に「今月で終わり」と言われ、次の案件を探す時間がない
発注する側が、受ける側の利益も目的とする契約を解除した報酬以外に、受ける側にも特別な利益がある契約(報酬を得るだけの利益は含まない)

一方で、やむを得ない事由があったときは、損害賠償はいりません。

このルールだけでは「何日前なら不利な時期ではないのか」がはっきりしません。そこで契約書で予告期間を数字で決めておくのが一般的です。数字があれば、双方が同じ物差しで判断できます。

→ 一方的に解除されたときの請求の目安はSES契約の一方的な解除で損害賠償は?民法651条と請求の目安で解説しています。

途中で終わっても働いた分の報酬は請求できる

準委任の途中解約では、民法648条3項により、それまでに働いた割合に応じた報酬を請求できます。2020年4月の民法改正で、はっきり条文に書かれました。

民法648条3項が認めるのは、次の2つの場合です。

  1. 発注者のせいではない理由で、作業を続けられなくなったとき

  2. 契約が作業の途中で終わったとき

このように作業の量や時間に応じて報酬を払う形を、履行割合型といいます。履行割合型とは、働いた時間や日数などの「こなした割合」で報酬を決める契約のことです。SESの月額単価の契約は、ほぼこの形です。

ただし、「割合」の出し方は法律に書かれていません。暦日・営業日・稼働時間のどれで割るかで金額が変わります。そのため、契約書で計算の方法を決めておくことが大切です。

中途解約条項で決める3つのこと

中途解約条項で決めるのは、「予告期間」「その月の報酬の計算」「損害賠償の有無」の3つです。どれか1つでも抜けると、解約のたびに話し合いが必要になります。

決めることよくある決め方決めないと起きること
予告期間1か月前まで/前月の15日まで「来週で終わり」と言われても反論しにくい
その月の報酬暦日割り/営業日割り/稼働時間で精算請求額でもめ、入金が遅れる
損害賠償予告を守れば請求しない/予告不足の期間分を払う民法651条2項の「不利な時期」の解釈で争う

予告期間の決め方

予告期間とは、「契約を終わらせます」と相手に伝えてから、実際に終わるまでの期間のことです。SESでは「1か月前まで」がよく使われます。

予告期間は、次の案件や代わりの人を探す時間として考えます。SES営業の実感では、提案から参画まで2〜4週間かかる案件も珍しくありません。短すぎる予告期間は、エンジニアの待機に直結します。

期間の数え方も書いておきます。「1か月前まで」だけだと、月の途中で伝えた場合の扱いがあいまいです。「解約日の属する月の前月末日まで」のように、日付が1つに決まる書き方がおすすめです。

その月の報酬の計算方法の決め方

途中で終わった月の報酬は、「月額単価 × 働いた割合」で計算するよう決めます。割合の出し方は次の3つから選びます。

計算方法計算のしかた向いている契約
暦日割り月額 × 契約日数 ÷ その月の日数固定の月額で精算幅がない契約
営業日割り月額 × 稼働した営業日 ÷ その月の営業日平日稼働が前提の契約
時間精算精算幅も日割りし、実際の稼働時間で精算精算幅(140〜180時間など)がある契約

どれを選んでも間違いではありません。大切なのは、上位契約と下位契約で同じ方法にすることです。方法が違うと、差額が自社の損になります。

→ 精算幅がある契約の日割りはSESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法と有給・固定の扱いでくわしく解説しています。

損害賠償の決め方

損害賠償は、「予告期間を守った解約なら請求しない」と書くのが一般的です。そのうえで、予告期間が足りない解約だけ、足りない日数分の報酬を払う形にします。

「損害」の範囲も決めておきます。エンジニアの待機中の給与や、次の案件を探す費用まで含めると、金額が大きくなりがちです。上限を月額報酬の1か月分までなどと決めると、双方が安心できます。

→ 上限の決め方はSESの損害賠償の上限条項|準委任の責任限定の書き方と有効性で解説しています。

そのまま使える中途解約条項の例

中途解約条項は、「解約できること」「予告期間」「報酬」「損害賠償」「例外」の5つの項で書くと、抜けがありません。次の例は、SES営業の現場で使いやすい形にまとめたものです。

例文・テンプレート
第〇条(中途解約)
1 甲および乙は、個別契約の期間中であっても、解約日の属する月の
  前月末日までに相手方へ書面(電子メールを含む)で通知することにより、
  当該個別契約を解約することができる。
2 前項の通知が同項の期限より後にされた場合、解約日は、
  通知が到達した日の属する月の翌月末日とする。
  ただし、甲乙が書面で合意したときは、この限りでない。
3 個別契約が月の途中で終了した場合、甲は乙に対し、
  当該月の月額委託料に、当該月の営業日数に対する
  乙の業務従事者が業務に従事した営業日数の割合を乗じた額を支払う。
  精算幅の上限および下限も同じ割合で按分する。
4 第1項の期限を守って解約した場合、解約した当事者は、
  相手方に対し、解約による損害を賠償する責任を負わない。
5 前各項にかかわらず、相手方に重大な契約違反があり、
  相当の期間を定めて催告しても是正されないときは、
  直ちに契約を解除することができる。

書き方のポイントは3つです。

  1. 第2項で「遅れた通知」の扱いを決める。遅れたら自動で解約日が後ろにずれる形にすると、予告期間を守らせやすくなります。

  2. 第3項で精算幅も日割りする。月額だけ日割りして精算幅をそのままにすると、下限に届かず控除が大きくなります。

  3. 第5項で即時解除を分ける。相手の契約違反で終わらせる場合は、予告期間なしで解除できるようにします。

甲は発注する側、乙は受ける側です。自社が客先から受ける契約では自社が乙、BPに出す契約では自社が甲になります。同じ条文を両方の契約に使うと、予告期間と計算方法が自然にそろいます。

上位契約と下位契約で予告期間をそろえる理由

上位契約と下位契約の予告期間をそろえるのは、ずれた期間の報酬を自社だけが負担しないためです。SESの商流では、1人のエンジニアに2本以上の契約が重なっています。

上位契約とは、自社が仕事を受ける側の契約(客先や元請けとの契約)のことです。下位契約とは、自社が仕事を出す側の契約(BPやフリーランスとの契約)のことです。

例文・テンプレート
【商流図】予告期間がずれている例

 客先(エンド・元請け)
     │  上位契約:予告は「1か月前」
     ▼
 自社(SES企業)
     │  下位契約:予告は「2か月前」
     ▼
 BP(パートナー企業)── エンジニアが客先で稼働

たとえば、客先から10月30日(金)に「11月末で終了」と通知されたとします。上位契約の予告は1か月前なので、客先との契約は11月30日(月)で終わります。

ところが、BPとの下位契約は「2か月前」の予告です。自社がすぐBPに通知しても、BPとの契約は12月31日(木)まで続きます。12月は客先からの入金がないのに、BPには1か月分を払う義務が残ります。

月客先からの入金(上位)BPへの支払い(下位)自社の損益
11月60万円52万円+8万円
12月0円52万円−52万円

この例では、11月の利益8万円に対し、12月に52万円の赤字が出ます。予告期間のずれは、粗利の何か月分もの損につながります。

そろえ方の3つのルール

  1. 下位契約の予告期間を、上位契約と同じか短くする。上位が1か月前なら、下位も1か月前か「前月20日まで」などにします。

  2. 通知の期限日を、下位を数日遅くする。上位の通知を受けてからBPへ伝えるまでの時間を取ります。例:上位は「前月末日まで」、下位は「前月末日まで。ただし上位契約の通知を受けた日から3営業日以内」とします。

  3. 報酬の計算方法を同じにする。上位が営業日割りなら、下位も営業日割りにします。

上位から終了通知を受けたらBPへ送るメール例文

上位から通知を受けたら、その日のうちにBPへ書面(メール)で通知します。通知日が1日遅れるだけで、下位の解約日が1か月後ろにずれることがあるためです。

例文・テンプレート
件名:【個別契約終了のご通知】〇〇案件(佐藤様)2026年11月30日終了

株式会社◇◇
◎◎様

いつもお世話になっております。株式会社□□の□□です。
本日、エンド様より〇〇案件の体制縮小のご連絡があり、
佐藤様のご参画を2026年11月30日で終了させていただくことになりました。

基本契約書第〇条(中途解約)にもとづき、
個別契約を2026年11月30日付で終了する旨をご通知いたします。
11月分は通常どおりの精算でお支払いいたします。

急なご連絡となり申し訳ございません。
次の案件は弊社でもお探しいたしますので、
佐藤様のご希望条件をお知らせいただけますと幸いです。

通知メールには、根拠の条項・終了日・その月の精算方法の3点を必ず書きます。エンジニア本人への伝え方は、SESの契約途中の退場|営業がやる対応5ステップと連絡例文で紹介しています。

途中解約時の報酬の計算例

途中解約の月の報酬は、「月額単価 ÷ 月の日数 × 契約した日数」で出します。同じ解約日でも、暦日割りと営業日割りで金額が変わります。

計算例:11月15日で解約した場合

条件は次のとおりです。

  • 上位の月額単価:60万円、下位(BP)の月額:52万円

  • 解約日:2026年11月15日(日)

  • 11月の暦日:30日、営業日:19日(11月3日と23日の祝日を除く)

  • 11月1日〜15日の営業日:9日

計算方法上位(客先へ請求)下位(BPへ支払い)自社の粗利
暦日割り(15日÷30日)300,000円260,000円40,000円
営業日割り(9日÷19日)284,210円246,315円37,895円

営業日割りの計算は、600,000円 × 9 ÷ 19 = 284,210.5円で、1円未満を切り捨てています。端数の処理(切り捨て・四捨五入)も条項に書いておくと、請求書の金額が1円単位で合います。

上位と下位で計算方法がずれた場合

上位が営業日割り、下位が暦日割りだと、自社の粗利が減ります。同じ例では、客先への請求は284,210円、BPへの支払いは260,000円です。粗利は24,210円になり、そろえた場合より13,685円少なくなります。

精算幅がある契約の日割り

精算幅がある契約では、上限と下限も同じ割合で日割りします。140〜180時間の精算幅を営業日割り(9÷19)にすると、約66.3〜85.3時間です。下限をそのまま140時間で計算すると、ほぼ確実に下限割れの控除が発生してしまいます。

下位がフリーランスなら30日前の予告が必要

下位契約の相手が個人のフリーランスで、契約が6か月以上続くなら、フリーランス法16条により30日前までの予告が必要です。フリーランス法は、2024年11月1日に施行されました。対象は、従業員を使わずに1人で仕事を受ける個人や一人社長の法人(法律上の「特定受託事業者」)です。

継続的業務委託とは、フリーランス法で、6か月以上続く業務委託のことです(更新して6か月以上になる場合を含みます)。契約を途中で終わらせる場合も、更新しない場合も、予告の対象です。

注意したいのは、上位契約の予告期間が30日より短い場合です。客先から2週間前に終了を告げられても、フリーランスには30日前までの予告が必要です。この差の期間の扱いが、自社の負担になりえます。

そのため、フリーランスが入る案件では、上位契約の予告期間を「30日以上」または「前月末日まで」にしておくのが安全です。災害などのやむを得ない場合の例外も、厚生労働省令で定められています。

→ 例外と通知の例文はフリーランス法の中途解約は30日前予告|例外と通知例文を解説で解説しています。

中途解約条項の締結前チェックリスト

契約書にサインする前に、次の8項目を上位契約と下位契約の両方で確認します。1つでも食い違っていたら、下位契約の方を直すのが基本です。

#確認すること見るポイント
1予告期間上位と同じか、下位の方が短いか
2通知の期限日「前月末日まで」など日付が1つに決まるか
3通知の方法書面・メールのどちらでよいか
4遅れた通知の扱い解約日が後ろにずれる定めがあるか
5その月の報酬の計算暦日割り・営業日割りが上下でそろっているか
6精算幅の日割り上限・下限も日割りするか
7損害賠償予告を守れば請求なしか。上限はあるか
8フリーランスの有無下位に個人がいれば、上位の予告が30日以上か

自社のエンジニアが客先で働く場合も、同じ確認が必要です。客先との契約が途中で終わっても、雇っている社員の給与は自動では止められません。会社都合で仕事がない期間は、労働基準法26条により平均賃金の60%以上の休業手当が必要です。予告期間のあいだに次の案件を決め、待機そのものを減らすのが一番の対策です。

解約後の次の案件探しをチョータツで早める

予告期間を長く取っても、次の案件が決まらなければ待機は生まれます。中途解約の通知を受けたら、その日から次の案件探しを始めるのが基本です。

自分でやる場合は、次の順で進めます。

  1. 客先からの通知を受けたら、上位・下位の契約書で解約日を確定する

  2. BPやエンジニアに、解約日と理由を伝える

  3. 届いている案件メールやExcelの案件表から、条件が合う案件を探す

  4. スキルシートを整えて提案する

時間がかかりやすいのは、3の案件探しです。案件メールは毎日大量に届くので、条件の合う案件を手作業で探すと半日かかることもあります。

もっと楽にするなら、チョータツを使う方法があります。チョータツは、SES営業の案件・人材の管理・共有ツールです。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の条件を管理するExcelやメールに散らばる案件の情報をまとめて管理し、提案前に条件を確認できる
次の案件を探す届いたメールを1通ずつ読む他社と連携すると、他社の営業中案件がデータベースになる
情報を届けるBCCで一斉送信メール配信機能で、パートナーにまとめて配信できる

チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。入力はAIが手伝います。

よくある質問

Q. SESの中途解約の予告期間は何か月前が一般的ですか?
「1か月前まで」がよく使われます。法律で決まった期間はないので、契約書で決めます。下位が6か月以上続くフリーランスの契約なら、30日前までの予告が法律で必要です。
Q. 準委任を途中解約したら、その月の報酬はもらえませんか?
もらえます。民法648条3項により、働いた割合に応じた報酬を請求できます。計算方法(暦日割り・営業日割り)は契約書で決めておきましょう。
Q. 予告なしで解約されたら、損害賠償を請求できますか?
相手に不利な時期の解除なら、民法651条2項により請求できる場合があります。契約書に予告期間があれば、足りない期間分の報酬を目安に交渉しやすくなります。
Q. 上位契約と下位契約で予告期間が違うとどうなりますか?
下位の予告期間が長いと、客先からの入金が止まった後も、BPへの支払いが続きます。下位の予告期間は、上位と同じか短くしましょう。
Q. 自社の社員が客先を途中で外れたら、給与は減らせますか?
客先との契約が終わっても、雇用契約は別です。会社の都合で休ませる場合は、平均賃金の60%以上の休業手当が必要です。
Q. 解約をめぐってすでに揉めている場合はどうすればいいですか?
支払いの考え方はSESの途中解除でも支払い義務はある?稼働分の報酬と日割り計算例、違約金は業務委託の中途解約の違約金|何ヶ月前に通知か民法と条項例で解説を参考にしてください。

まとめ

  • 中途解約条項には「予告期間」「その月の報酬の計算」「損害賠償の有無」の3つを書く

  • 準委任契約は民法651条でいつでも解除できるが、不利な時期の解除は損害賠償の対象になる

  • 途中で終わっても、民法648条3項で働いた割合の報酬を請求できる

  • 月額60万円・11月15日解約なら、暦日割りで30万円、営業日割りで284,210円

  • 予告期間と計算方法は、上位契約と下位契約でそろえる。下位の予告は上位と同じか短くする

  • 下位が6か月以上続くフリーランスなら、30日前までの予告が必要

  • 通知を受けたその日から、次の案件探しを始める

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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