業務委託の中途解約の違約金はいくらまで有効?何ヶ月前に通知するかとSESの条項例

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

業務委託の中途解約と違約金とは?

業務委託の中途解約とは、決めた契約期間が終わる前に、契約を途中で終わらせることです。違約金とは、約束を守らなかった側が相手に払うと、契約で先に決めておくお金のことです。

SES営業が中途解約と違約金に向き合う場面は、次の4つです。

場面自社の立場よくある悩み
客先・元請けから切られる受ける側(受託側)予告が短い。違約金や補償を請求できるか
BPとの契約を途中で終える頼む側(委託側)何日前に言えばよいか。違約金を払う必要があるか
エンジニアが途中で抜ける受ける側(受託側)客先から違約金を求められたら払うのか
契約書をつくる両方違約金を何円・何か月分と書けば有効か

解約予告期間とは、「解約したい」と相手に伝えてから、実際に契約が終わるまでに空けるべき期間のことです。「1か月前までに通知」などと契約書に書きます。

業務委託という言葉の範囲は、業務委託とは?意味と種類|SES営業が押さえる準委任と請負の違いで確認できます。

民法のルール:準委任はいつでも解約できるが、賠償が必要な場合がある

準委任契約は、民法651条1項により各当事者がいつでも解約できます。ただし同条2項により、次の場合は相手の損害を賠償しなければなりません。

  1. 相手に不利な時期に解約したとき(例:月末の前日に「今月で終わり」と伝える)

  2. 受ける側の利益(報酬以外)も目的にした契約を解約したとき

どちらの場合も、やむを得ない事由があれば賠償は不要です。

準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決めた業務を行うことを約束する契約のことです。SESの多くは準委任で結ばれています。契約の種類ごとに、民法の中途解約のルールは次のように違います。

契約の種類途中で解約できる人民法のルール途中までの報酬
準委任(SESの多く)どちらからでも651条:いつでも解約可。不利な時期などは賠償648条3項:やった割合に応じて請求できる
請負(受託開発など)頼む側(注文者)641条:完成前ならいつでも、損害を賠償して解約可634条:できた部分に応じて請求できる場合がある
派遣契約書と派遣法による派遣先は相当の猶予期間を置いた申入れなどが求められる契約書による

実務では民法より契約書が先

民法651条などのルールは、契約書に別の決めがなければ使われるルールです。基本契約書や個別契約書に「中途解約」「解約予告」「違約金」の条項があれば、まずその条項で考えます。

営業がまずやることは、個別契約書と基本契約書の両方を読むことです。個別契約書に書かれていなくても、基本契約書に書かれていることがよくあります。

→ 一方的に切られたときの賠償の考え方は、SES契約の一方的な解除で損害賠償は?民法651条と請求の目安で解説しています。

中途解約は何ヶ月前に通知する?SESで「1か月前予告」が多い理由

会社同士の業務委託では、何ヶ月前に通知するかを決めた法律はありません。契約書に書いた期間が基準になります。SESでは「終了日の1か月前まで」が最もよく使われます。

1か月前が多い理由は、次の3つです。

  1. 契約が月単位だから:SESの単価は月額で、更新も1か月〜3か月ごとが多いです。1か月前なら、区切りのよい月末で終われます。

  2. 次の案件・要員を探す時間が必要だから:受ける側は次の案件、頼む側は代わりの要員を探します。1か月あれば、提案から面談まで進められることが多いです。

  3. 上位・BP・フリーランスでそろえやすいから:個人フリーランスへの30日前予告とも、ほぼ同じ長さになります。

相手別の予告期間の目安

相手法律の決まりよく使う予告期間注意点
客先・元請け(会社)なし(契約書しだい)1か月前大手は2か月前を求めることもある
BP(会社)なし(契約書しだい)1か月前上位の予告期間より長くしない
個人フリーランス(6か月以上)フリーランス法16条:30日前30日前〜1か月前例外を除き、30日を下回れない
派遣先との契約派遣法の指針で予告などの措置1か月前派遣の記事で確認する

自社のおすすめは、上位もBPも「終了日の1か月前まで・書面またはメール」にそろえることです。上位が2か月前なら、BPは1か月前にしておくと、自社が損をする期間をつくりにくくなります。

「1か月前まで」の日付の数え方

「1か月前まで」は、終了日の前の月の同じ日までに相手に届けるのが目安です。

終わらせたい日1か月前の通知期限30日前の通知期限(フリーランス)
2026年11月30日(月)2026年10月30日(金)2026年10月31日(土)
2026年12月31日(木)2026年11月30日(月)2026年12月1日(火)

期限が土日にあたるときは、前の営業日に送ると安全です。数え方は契約書の書き方でも変わるので、迷ったら早めに送りましょう。

→ フリーランスの30日前予告と例外は、フリーランス法の中途解約は30日前予告|例外と通知例文を解説をご覧ください。

違約金条項は有効?有効になる範囲と高すぎて無効になる例

違約金条項は、会社同士の契約なら原則として有効です。民法420条1項で、当事者は損害賠償の額を先に決めてよいとされています。

賠償額の予定とは、損害が出たときに払う額を、実際の損害を計算しなくてよいように先に決めておくことです。民法420条3項は、「違約金は賠償額の予定と推定する」と定めています。つまり違約金を決めると、実際の損害が少なくても多くても、原則その額で精算します。

高すぎると争いになる

2020年4月の民法改正の前は、「裁判所は予定額を増やしたり減らしたりできない」と書かれていました。改正でこの文は消えました。いまは、実際の損害と比べて高すぎる違約金は、公序良俗(民法90条)に反するとして一部が無効になることがあります。

「いくらなら有効」という決まった線はありません。次の表は、SESでよく見る条項を、争いになりやすさで分けた目安です。

違約金の決め方争いになりやすさ理由
予告が足りない日数分の単価(日割り)低い次の案件を探す期間の損害に近い
予告が足りない月の月額1か月分まで低い〜中待機1か月分として説明しやすい
残りの契約期間の報酬の全額中次の案件が決まれば、損害はもっと小さくなる
残り期間の全額+月額の数か月分高い損害より明らかに大きく、罰の意味が強い

どの場合も、一方だけに違約金がある条項は注意が必要です。客先は解約自由なのに、受ける側だけが高い違約金を負うと、交渉で問題にされやすくなります。

取適法の対象なら「費用なしの取消し」に注意

2026年1月1日から、下請法は改正されて取適法(中小受託取引適正化法)になりました。対象の取引では、次のことが禁止されています(取適法5条2項3号)。受ける側に責任がないのに、発注内容を変えさせて、受ける側の利益を不当に害することです。発注の取消しも、ここに含まれると考えられています。受ける側にかかった費用を頼む側が負担しない場合が、特に問題になりやすいです。

つまり取適法の対象なら、頼む側は受ける側にかかった費用を負担しないまま途中で打ち切ると、違反のおそれがあります。対象になるかは資本金や取引の内容で決まるので、取適法でSESの準委任は対象?適用条件と営業の変更点7つで確認してください。

違約金の計算例

条件を数字で置くと、条項の決め方で請求額が大きく変わることがわかります。

  • 月額単価:70万円(準委任・自社の正社員が常駐)

  • 契約期間:2026年12月31日(木)まで

  • 契約書:「終了日の1か月前までに書面で通知。不足する日数は月額÷30×不足日数を支払う」

  • 2026年11月20日(金)に、客先から「11月30日(月)で終了」と連絡が来た

11月20日から1か月後は12月20日(日)です。つまり正しく予告すれば、最短でも12月20日まで契約が続きます。

条項の決め方計算請求できる額
不足日数分の日割り70万円÷30×20日(12月1日〜20日)466,667円(1円未満切り上げ)
不足月の月額1か月分12月分の月額700,000円
条項なし(民法651条)実際の損害を立証する待機期間や次の案件の決まり方しだい

条項がないと、損害の額を自社が証明しなければなりません。日割りの条項を入れておくと、交渉がとても楽になります。

違約金・予告不足の補償を条項に入れるときのポイント

違約金や予告不足の補償は、上位向け(自社が受ける側)とBP向け(自社が頼む側)で書き方を変えます。中途解約条項の全文のひな形(予告期間・途中の月の報酬の精算・日割り計算)は、SESの中途解約条項の書き方|準委任の途中解約と報酬の扱いにまとめています。ここでは、違約金にかかわる部分だけを取り上げます。

上位向け(客先・元請けと結ぶ):予告不足の補償を入れる

自社が受ける側のときは、予告期間・予告不足の補償・途中の月の報酬の3つを書いておくと安心です。違約金にあたるのは、次のような補償の項です。

例文・テンプレート
2. 甲が前項の期間を置かずに解約する場合、甲は乙に対し、不足する日数に
   月額委託料の30分の1を乗じた額を支払う。ただし、乙の責めに帰すべき
   事由による解約の場合はこの限りでない。

※甲=客先・元請け、乙=自社。

  • この項は、客先側が予告を守らなかったときの補償です。額は日割りにすると、高すぎると言われにくいです。

  • 「乙の責めに帰すべき事由」(自社側の落ち度)の場合は除く、と書くと客先の法務も通しやすくなります。

  • 客先のひな形を使う場合は、違約金が乙(自社)だけにかかっていないかを必ず見ます。

BP向け(自社が頼む側):高い違約金より協議と引き継ぎ

自社が頼む側のときは、BPへの予告期間を上位より長くしないことと、上位の終了に合わせて終われることが大切です。予告不足分の委託料の扱いは、一方的に決めずに「甲乙協議のうえ定める」とします。

※乙が個人のフリーランスで6か月以上続く契約なら、予告期間を30日より短くできません。2月をまたぐと「1か月前」が28〜29日になります。個人向けは「1か月前または30日前のいずれか早い日まで」と書くと安全です。

  • 上位の終了に連動させる条項があると、上位から切られたときにBPとの話し合いが進めやすくなります。ただし、予告不足分を一切払わないと決めつけるのは避け、協議にします。

  • BPのエンジニアが途中で抜けたときに高い違約金(例:100万円)を課す条項は、争いになりやすいです。実際の損害より大きくなりがちだからです。取適法の対象なら、不当な経済上の利益の提供(取適法5条2項2号)を疑われることもあります。

  • 違約金よりも、代わりの要員の提案や引き継ぎへの協力を義務にするほうが、現場では役に立ちます。

BPとの取引そのものをやめる場合は、BPとの取引停止の判断基準と伝え方|SESの連絡例文と注意点もあわせて確認してください。

違約金を請求する・請求されたときの対応5ステップ

途中解約の連絡が来たら、その日のうちに契約書と日付を確かめ、記録が残る形で相手とやりとりします。請求する側でも、される側でも、流れは同じです。

  1. 契約書を集める:基本契約書・個別契約書・注文書・注文請書を並べ、中途解約と違約金の条項を探します。

  2. 日付を固める:通知を受けた日、終了したい日、契約上の最短の終了日を表にします。

  3. 額を計算する:条項どおりに違約金や予告不足分を計算します。条項がなければ、待機になる期間の見込みを出します。

  4. メールで伝える:電話で話したあと、同じ内容をメールで送り、記録を残します。

  5. BP側にも連動させる:上位の終了に合わせてBPへの通知期限を計算し、同じ日のうちに連絡します。

請求された側は、額が条項どおりか、日数の数え方が正しいかを確かめます。高すぎると感じたら、根拠(実際の損害)の説明を求めましょう。

予告不足分の支払いを相談するメール例文

例文・テンプレート
件名:〇〇案件 契約終了日についてのご相談(株式会社△△)

株式会社〇〇
〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
2026年11月20日(金)にいただいた、11月30日(月)での終了のご連絡について
ご相談させてください。

基本契約書第〇条では、解約日の1か月前までのご通知をお願いしております。
そのため、最短の終了日は12月20日(日)となります。

11月末での終了とする場合は、同条第2項にもとづき、不足する20日分
(466,667円)のお支払いをお願いできますでしょうか。
終了日を12月20日まで延ばしていただく形でも問題ございません。

ご検討のほど、よろしくお願いいたします。

満額を求めるより、「終了日の延長」か「不足分の支払い」かを選んでもらうほうが、関係を壊さずにまとまりやすいです。

→ 終了を伝える側の例文は、SESの契約終了メール例文5つ|理由別の伝え方と送る時期にまとめています。

契約前に確認する7項目チェックリスト

違約金のトラブルは、契約を結ぶ前にほとんど防げます。新しい客先・BPと契約する前に、次の7項目を確かめましょう。

#確認すること見るポイント
1解約予告期間何日前・何か月前か。上位とBPでそろっているか
2通知の方法書面だけか、メールでもよいか
3予告不足のときの扱い日割りの支払いがあるか。なければ入れられるか
4違約金の額実際の損害に見合うか。一方だけにかかっていないか
5途中の月の報酬日割り・精算幅の扱いが決まっているか
6上位の終了との連動BP契約に連動条項があるか
7相手が個人か個人フリーランスなら、30日前予告のルールがかかるか

途中解約の後の次の一手をチョータツで早める

途中解約で一番大きな損は、違約金よりもエンジニアの待機や、欠けた要員の穴です。自分でやる場合は、BPに一斉メールで声をかけ、届いた返信をExcelにまとめて探すことになります。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
自社のエンジニアの次の案件を探すBPに一斉メールを送り、返信を待つ連携した他社の営業中案件をデータベースで探せる
抜けた要員の代わりを探す知っているBPに1社ずつ連絡する連携した他社の営業中人材から探せる
契約条件を覚えておく契約書を毎回読み返す案件ごとの条件を管理し、提案前に確認できる
条件に合う人を急いで届けるBCCで一斉送信メール配信機能でパートナーに届けられる

チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。案件や人材の入力は、AIが手伝います。

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よくある質問

Q. 業務委託の中途解約は何ヶ月前に言えばいいですか?法律で決まっていますか?
会社同士なら法律の決まりはなく、契約書の予告期間に従います。SESでは「1か月前まで」が一般的です。個人フリーランスとの6か月以上の契約だけは、フリーランス法で30日前までの予告が必要です。
Q. 業務委託の中途解約は民法上いつでもできますか?
準委任契約なら、民法651条によりどちらからでもいつでも解約できます。ただし、相手に不利な時期の解約などでは、相手の損害を賠償する必要があります。請負は、完成前なら注文者が損害を賠償して解約できます(民法641条)。
Q. 違約金の条項は必ず有効ですか?
会社同士なら原則有効ですが、実際の損害と比べて高すぎると、公序良俗に反するとして一部無効になることがあります。予告不足の日数分の単価など、根拠を説明できる額にしましょう。
Q. エンジニアが途中で辞めたら、客先に違約金を払う必要がありますか?
契約書に違約金の条項があり、その条件にあてはまる場合は払う可能性があります。条項がなければ、民法のルールで判断します。まずは代わりの要員の提案を急ぎましょう。
Q. 途中で解約されたら、その月の報酬はもらえますか?
準委任なら、働いた割合に応じて報酬を請求できます(民法648条3項)。計算方法は契約書の日割りや精算幅の決めに従います。くわしくはSESの途中解除でも支払い義務はある?稼働分の報酬と日割り計算例で確認できます。

まとめ

  • SESの多くは準委任。民法651条でいつでも解約できるが、不利な時期などは賠償が必要になりうる

  • 何ヶ月前に通知するかは契約書しだい。SESでは「1か月前」が多く、個人フリーランス(6か月以上)は30日前

  • 違約金は賠償額の予定と推定される。予告不足の日割りなど、損害に見合う額なら有効になりやすい

  • 残り期間の全額に上乗せするような高すぎる違約金は、一部無効になることがある

  • 上位向けは「予告不足の日割り補償」、BP向けは「上位との連動」と「高すぎない違約金」がポイント

  • 途中解約の一番の損は待機。通知の日から次の案件・要員を探す

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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