SESの途中解除でも支払い義務はある?稼働分の報酬と日割りの計算例・請求メール例文
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
SESの途中解除とは?
SESの途中解除とは、契約期間の途中で、客先またはSES企業が契約を終わらせることです。「中途解約」「途中終了」とも呼ばれます。月の途中で終わると、その月の報酬をいくらにするかが問題になります。
SESの多くは準委任契約です。準委任契約とは、成果物の完成ではなく、決まった業務を行うことに対して報酬を払う契約のことです。民法656条により、委任契約のルールが準委任にもそのまま使われます。
委任契約は、民法651条1項によりどちらからでもいつでも解除できます。そのため、「来月15日で終わりにしたい」という連絡は、SESの現場でよく起きます。
途中解除でも支払い義務はある(民法648条3項)
途中で終わっても、働いた分の報酬を払う義務はあります。民法648条3項は、委任が途中で終わったときのルールです。受任者(仕事を受けた側)は「既にした履行の割合に応じて」報酬を請求できます。
このルールは、2020年4月の民法改正で条文にはっきり書かれました。働いた割合で報酬を決める形を履行割合型といいます。SESの月額単価の契約は、ほとんどがこの形です。
民法648条3項が報酬を認める場面は、次の2つです。
| 号 | 場面 | SESでの例 |
|---|---|---|
| 1号 | 委任者(発注側)の責任でない理由で、仕事を続けられなくなった | エンドの予算が止まり、プロジェクトが中止になった |
| 2号 | 委任が仕事の途中で終わった | 客先が651条で解除した/SES企業から解除した |
終わった理由ごとの考え方
終わった理由がどちらにあっても、働いた分の報酬は請求できるのが基本です。ただし、理由によって「それ以上」を請求できるかが変わります。
| 終わった理由 | 働いた分の報酬 | それ以上の請求 |
|---|---|---|
| 客先の都合(予算削減など) | 請求できる | 客先の責任で続けられなくなったなら、全額を請求できる余地がある(民法536条2項) |
| どちらの責任でもない(プロジェクト中止など) | 請求できる | 原則なし |
| SES企業側の都合(エンジニアの退職など) | 請求できる | 客先から損害賠償を求められることがある |
民法536条2項は、発注側の責任で仕事ができなくなったとき、発注側は代金の支払いを拒めないと定めています。ただし、SESの現場でどこまで認められるかは事情によります。争いになりそうなら、弁護士に相談しましょう。
報酬の扱いが違う「成果完成型」
成果物に対して報酬を払う成果完成型の準委任は、扱いが違います。成果完成型とは、報告書やシステムなど「成果」を渡したときに報酬を払う契約のことです。
成果完成型では、民法648条の2により、請負に近いルールで報酬を考えます。
月の途中で終わったときの計算方法3つ
途中で終わった月の報酬は、「暦日割り」「営業日割り」「時間割」のどれかで出します。どれを使うかは、個別契約書か基本契約書の精算条項で決まります。
| 方法 | 計算式 | 向いている契約 |
|---|---|---|
| 暦日割り | 月額 × 契約日数 ÷ その月の日数 | 精算幅がない固定の月額 |
| 営業日割り | 月額 × 稼働した営業日 ÷ その月の営業日 | 平日稼働が前提の契約 |
| 時間割 | 実際の稼働時間 × 時間単価 | 時間単価を決めている契約 |
暦日割りとは、土日祝日も含めたカレンダーの日数で割る方法のことです。営業日割りとは、土日祝日を除いた、働く予定の日数で割る方法のことです。時間割とは、実際に働いた時間に1時間あたりの単価をかける方法のことです。
契約書に書いていなければ、客先と話し合って決めます。その場合も、客先と合意した方法をBPとの契約にも使うのが大原則です。
計算例:月額65万円・2026年10月16日(金)で終了
同じ終了日でも、方法によって報酬は数千円変わります。ここでは、客先への単価が月額65万円、BPへの支払いが月額55万円の案件で計算します。
2026年10月は31日あり、土日と10月12日(月・スポーツの日)を除くと営業日は21日です。10月1日(木)から16日(金)までは、暦日で16日、営業日で11日です。
暦日割り:650,000円 × 16 ÷ 31 = 335,483円
営業日割り:650,000円 × 11 ÷ 21 = 340,476円
時間割:時間単価は650,000円 ÷ 160時間 = 4,062円。稼働84時間なら84 × 4,062円 = 341,208円
どれも1円未満を切り捨て、税抜の金額です。時間割の160時間は、精算幅140〜180時間の真ん中を基準にした例です。基準にする時間は、契約で決めた数字を使います。
| 方法 | 客先への請求 | BPへの支払い | 自社の粗利 |
|---|---|---|---|
| 暦日割り | 335,483円 | 283,870円 | 51,613円 |
| 営業日割り | 340,476円 | 288,095円 | 52,381円 |
| 時間割(84時間) | 341,208円 | 288,708円 | 52,500円 |
BPへの支払いは、月額55万円を同じ方法で計算しています。時間割の単価は、550,000円 ÷ 160時間 = 3,437円です。
精算幅がある契約は、精算幅も日割りする
精算幅がある契約では、月額と同じ割合で精算幅の上限と下限も縮めます。精算幅とは、追加の請求も値引きもしない稼働時間の範囲のことです(例:140〜180時間)。
営業日割り(11 ÷ 21)の場合、140〜180時間の精算幅は約73.3〜94.3時間になります。稼働が84時間なら精算幅の中なので、請求額は営業日割りの340,476円のままです。
精算幅を日割りしないと起きること
精算幅を140時間のまま使うと、84時間の稼働は56時間の不足と扱われます。上下割の控除単価は650,000円 ÷ 140時間 = 4,642円です。
控除額は56 × 4,642円 = 259,952円になります。請求額は340,476円 − 259,952円 = 80,524円です。働いた分より大幅に少ない、不合理な金額になってしまいます。
精算幅の控除の出し方は、SESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法と有給・固定の扱いでくわしく解説しています。
上位への請求とBPへの支払いをそろえる方法
上位(客先)からの入金とBPへの支払いは、終了日・計算方法・端数処理の3つをそろえます。SES企業は、上位からは報酬をもらい、BPには報酬を払う立場です。途中終了の月は、この2つがずれやすくなります。
ずれると粗利が減る例
上位は暦日割り、BPは営業日割りで計算した場合を考えます。客先への請求は335,483円、BPへの支払いは288,095円です。
自社の粗利は47,388円です。両方を暦日割りにそろえた51,613円と比べ、4,225円少なくなります。1人分でもこの差なので、複数名が同時に終わると無視できません。
そろえるための確認5項目
終了日:上位の終了日と、BPへ通知する終了日が同じか
計算方法:暦日割り・営業日割り・時間割のどれで、上下が同じか
精算幅の日割り:上位で日割りするなら、BPでも日割りするか
端数処理:1円未満を切り捨てるか、四捨五入か
支払日:上位からの入金日より、BPへの支払日が早すぎないか
上位の契約を上位契約、BPとの契約を下位契約といいます。途中終了の連絡を受けたら、まず上位契約の精算条項を読み、同じ内容をBPに伝えましょう。条項の書き方は、SESの中途解約条項の書き方|準委任の途中解約と報酬の扱いで解説しています。
BPがフリーランスなら予告期間にも注意
下位がフリーランスなら、報酬だけでなく予告の時期にも注意が必要です。フリーランス法の正式名は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。その第16条が、継続的業務委託を解除するときの予告を定めています。
継続的業務委託とは、一定期間(政令で6か月以上)続く業務委託のことです。解除するときは、原則として30日前までに予告します。例外や通知の書き方は、フリーランス法の中途解約は30日前予告|例外と通知例文を解説で確認できます。
途中終了した月の報酬は、いつ払う?
途中終了した月の報酬も、原則は契約で決めた支払サイトどおりに払います。支払サイトとは、締め日から支払日までの期間のことです。
民法648条2項は、期間で報酬を決めた場合、その期間が過ぎた後に請求できると定めています(民法624条2項の準用)。月額契約なら、その月の締め日が過ぎた後に請求するのが一般的です。
たとえば「月末締め翌月末払い」の契約で2026年10月16日(金)に終わった場合を考えます。10月31日(土)で締めて請求書を出し、支払日は11月30日(月)です。
支払いを拒まれた・減らされたときの対応5ステップ
途中終了を理由に支払いを拒まれたら、根拠をそろえて書面で請求するのが基本です。電話だけで話すと、言った・言わないになりやすいからです。
稼働報告書を確定する:終了日までの稼働時間を、客先の担当者に確認してもらう
契約書の精算条項を確認する:日割りの方法、端数処理、支払サイトを確かめる
計算式つきの請求書を出す:「650,000円 × 11 ÷ 21」のように式を書く
メールで根拠を伝える:民法648条3項と、契約書の条項番号を添える
期日を過ぎたら督促に進む:入金がなければ、督促や内容証明の手順に移る
請求書の書き方は、SESの請求書の書き方とテンプレート|精算の記載例と送付前チェック10が参考になります。
請求の根拠を伝えるメール例文
件名:10月分(10月1日〜16日)のご請求について/株式会社△△ 株式会社〇〇 ご担当 □□様 いつもお世話になっております。株式会社△△の◇◇です。 10月16日(金)で終了となりました〇〇さんの10月分について、 ご請求の内容をお送りいたします。 ・対象期間:2026年10月1日(木)〜10月16日(金) ・稼働:11営業日/84時間(稼働報告書にてご確認済み) ・計算:月額650,000円 × 11日 ÷ 21日 = 340,476円(税抜) ・根拠:個別契約書 第〇条(途中終了時の精算) 契約が途中で終了した場合も、稼働した割合の報酬を お支払いいただく扱いとなっております(民法648条3項)。 お支払い期日は11月30日(月)です。 ご不明点があれば、お気軽にお知らせください。
それでも支払われない場合は、SESの報酬未払いを回収する方法|内容証明から少額訴訟まで5段階の手順で進めます。
働いた分の報酬とは別に、損害賠償を請求できる場合
働いた分の報酬とは別に、損害賠償を請求できる場合があります。民法651条2項は、相手に不利な時期に解除したときなどに、解除した側が損害を払うと定めています。
たとえば、予告なしに「明日で終わり」と言われ、次の案件まで待機が出た場合です。損害賠償は報酬の請求とは別の話なので、まず働いた分の報酬を確実に回収しましょう。
請求できる目安は、SES契約の一方的な解除で損害賠償は?民法651条と請求の目安で解説しています。エンジニア側の事情で終わった場合は、SESの契約途中の退場|営業がやる対応5ステップと連絡例文が参考になります。出社必須への変更で要員が続けられず終わる例は、SESのリモート案件が出社必須に変わったら|条件交渉と退場の判断で扱っています。
チョータツで案件ごとの精算条件と次の案件を管理する
自分で管理する場合は、Excelに案件ごとの単価・精算幅・日割りの方法・支払サイトを書きます。そのうえで、上位とBPの条件を横に並べて見比べます。ただ、案件が増えると「この案件は暦日割りだったか」がすぐにわからなくなります。
チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 案件の条件を残す | Excelやメールに散らばる | 案件の情報としてまとめて管理できる |
| 社内で共有する | ファイルを送り合う | チームで同じ情報を共有できる |
| 情報を入れる | 1件ずつ手で書き写す | AIが入力を手伝う |
| 終了後の次の案件を探す | 届いたメールを1通ずつ探す | 他社と連携すると、他社の営業中案件をデータベースとして見られる |
途中終了した月は、精算と同時にエンジニアの次の案件探しも始まります。チョータツで他社と連携しておけば、営業中の案件から次の候補を探せます。
よくある質問
- Q. SESで途中解除されたら、その月の報酬はもらえますか?
- もらえます。準委任契約が途中で終わっても、民法648条3項により働いた割合の報酬を請求できます。計算方法は契約書の精算条項で確認しましょう。
- Q. SESの中途解約で、報酬の支払義務がなくなることはありますか?
- 履行割合型の契約なら、働いた分の支払義務はなくなりません。成果物に対して払う成果完成型の契約は、成果の扱いで決まるので別に確認が必要です。
- Q. 月の途中で契約が終わったら、日割りは暦日と営業日のどちらですか?
- 契約書に書いた方法で計算します。書いていなければ客先と話し合って決め、BPとの契約にも同じ方法を使います。2026年10月16日終了で月額65万円なら、暦日割り335,483円、営業日割り340,476円です。
- Q. SESで途中終了した月の精算幅はどうなりますか?
- 月額と同じ割合で、精算幅の上限と下限も日割りするのが一般的です。11営業日÷21営業日なら、140〜180時間は約73.3〜94.3時間になります。
- Q. 上位から減額されたら、BPへの支払いも減らせますか?
- BPとの契約に同じ精算条件があれば、同じ計算を当てられます。条件がなければ、BPとの契約どおりに払う必要があります。また、BPとの契約に特別な定めがない限り、上位から入金がないことを理由にBPへの支払いを止めることはできません。
- Q. 途中解除された側は、損害賠償も請求できますか?
- 相手に不利な時期の解除などは、民法651条2項により請求できる場合があります。ただし、働いた分の報酬とは別の話です。まず報酬を回収し、損害賠償は証拠をそろえて検討しましょう。
まとめ
準委任契約が途中で終わっても、民法648条3項により働いた割合の報酬を払う義務がある
計算方法は暦日割り・営業日割り・時間割の3つ。契約書の精算条項で決まる
月額65万円・2026年10月16日終了なら、暦日割り335,483円、営業日割り340,476円
精算幅がある契約は、精算幅も同じ割合で日割りする
上位への請求とBPへの支払いは、終了日・計算方法・端数処理・支払日をそろえる
支払いを拒まれたら、稼働報告書と計算式を添えて書面で請求する
損害賠償は報酬と別の話。まず働いた分を確実に回収する
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「民法」(第536条 債務者の危険負担等、第624条 報酬の支払時期、第648条 受任者の報酬、第648条の2 成果等に対する報酬、第651条 委任の解除、第656条 準委任)
e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(第16条 解除等の予告)