SESのリモート案件が出社必須に変わったら|契約の確認、交通費・単価の交渉例文と、出社できない要員の交代・終了の進め方
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
リモート案件が出社必須に変わるのは契約違反?
客先の出社方針の変更が契約違反になるかは、個別契約書・注文書に作業場所がどう書かれているかで決まります。書き方ごとの考え方は次のとおりです。
| 契約書の作業場所の書き方 | 出社への変更の扱い | 営業の動き方 |
|---|---|---|
| 「リモート(在宅)」とだけ書いてある | 契約条件の変更。客先だけでは決められない | 変更の協議を申し入れ、条件を交渉する |
| 「客先指定場所(リモート可)」 | 客先がある程度決められる書き方 | 頻度・開始日・交通費を確認して調整する |
| 「〇〇ビル(東京都港区)」だけ | もともと出社が前提の契約 | 慣行でリモートだっただけなので、交渉の余地は小さい |
| 何も書いていない | 案件メールや面談での約束が手がかり | メール・議事録を集め、客先と条件を確認する |
準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決められた作業を行うこと自体を約束する契約のことです(民法第656条)。SESの多くは準委任契約で、作業場所は契約で決める条件の1つです。
契約は、当事者が合意すれば変えられます。逆にいえば、一方が言っただけでは契約の条件は変わりません。「来月から出社」と言われたら、「条件変更のご相談」として受け止め、話し合いの場をつくります。
客先に返事をする前に、要員に確認すること
客先への返事は、要員の事情を聞いてからにします。先に「承知しました」と答えると、要員が出社できなかったときに引き返せません。
要員に聞くことは、次の5つです。
週に何日なら出社できるか(週5/週2〜3/出社不可)
開始日までに準備できるか(引っ越し・家族の予定・通勤経路)
片道の通勤時間と、定期代・交通費の金額
出社になるなら、単価や給与の条件に希望があるか
出社できない場合、この案件を続けたいか、次の案件に移りたいか
BP(ビジネスパートナー:案件や人材を紹介し合う取引先の会社)の要員なら、BPの営業を通して本人の意向を聞きます。BPとの付き合い方はITのBPとは?「BPさん」の意味とSES営業での使い方・注意点で解説しています。本人に直接聞くと、BPを飛ばしていると受け取られるおそれがあります。
聞いた結果は、次の判断表で方針を決めます。
| 要員の答え | 客先の方針 | 方針 |
|---|---|---|
| 週5で出社できる | 週5出社 | 交通費・単価の見直しを交渉して継続 |
| 週2〜3なら出社できる | 週5出社 | 頻度を下げる交渉。まとまらなければ交代を提案 |
| 週2〜3なら出社できる | 週2〜3出社 | 交通費の扱いを決めて継続 |
| 出社できない | 出社必須 | 更新しない、または交代要員の提案 |
交通費と単価を見直す交渉のしかた
出社を受けるなら、交通費の扱いと単価の2つを必ず見直します。リモート前提の単価のまま出社が増えると、交通費の分だけ自社かBPの持ち出しになります。
交通費の決め方には、「単価込み」か「実費精算」かの2通りがあります。リモート案件は交通費の取り決めがないことが多いので、出社への変更と同時に決めます。交通費の契約での決め方はSESの交通費の請求ルール|精算の記載例と契約で決める4項目で解説しています。
交渉で伝える材料は、次の3つです。
通勤の負担:片道〇分、月の交通費〇円
要員の確保の難しさ:同じスキルで出社できる人は少ないこと
今の単価の根拠:リモート前提で決めた単価であること
例文:出社への変更に伴う条件の相談(客先向け)
件名:〇〇案件 作業場所変更(出社)に伴う条件のご相談
〇〇様
11月からの出社必須化について、ご連絡ありがとうございます。
現在の注文書では、作業場所を「リモート(在宅)」としております。変更にあたり、次の点をご相談させてください。
出社の頻度と開始日(弊社要員は週3日からの対応が可能です)
交通費の扱い(実費精算でのご請求をお願いできますでしょうか)
単価(出社対応を踏まえ、12月分から月5万円の見直しをお願いしたく存じます)
合意できました内容は、覚書または新しい注文書でいただけますと幸いです。
単価の交渉のタイミングはSESの単価交渉のタイミング|更新の何か月前か・例文と資料5点も参考にしてください。
変更は覚書か注文書で書面に残す
出社への変更が決まったら、覚書か新しい注文書で書面に残します。口頭やチャットの「了解です」だけだと、あとで交通費を請求したときに揉めます。
書面に入れる項目は、次の5つです。
変更後の作業場所(住所)
出社の頻度(週〇日、または「原則出社」)
変更の開始日
交通費の扱い(単価込み/実費精算、上限)
変更後の単価(変える場合)
客先・自社・BPの3つの契約で条件をそろえることも大切です。客先から交通費を受け取れるのに、BPとの契約が「交通費込み」のままだと、BPから不満が出ます。
要員が出社できないときの交代・終了の進め方
要員が出社できないなら、「更新しない」か「交代要員を出す」かを、早めに客先へ提案します。出社開始日の直前に「出られません」と伝えるのが最も信用を失います。
契約期間の途中で出社が始まる場合
契約期間の途中で出社が始まる場合、進め方は3つあります。
| 進め方 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 今の契約期間はリモートのまま続ける | 契約書に「リモート」と書いてある | 客先と合意できれば、次の更新から出社にする |
| 交代要員を出す | 客先が出社の開始を急いでいる | 引継ぎ期間と費用の負担を決める |
| 契約を途中で終える | 出社できず、交代要員もいない | 解約予告の条項と損害賠償の有無を確かめる |
準委任契約は、民法第651条第1項により、当事者がいつでも解除できます。ただし、相手に不利な時期の解除では、やむを得ない事由がなければ損害賠償が必要になることがあります(同条第2項)。途中で終える進め方はSESの契約途中の退場|営業がやる対応5ステップと連絡例文で確認してください。
BP・フリーランスとの契約も確かめる
客先との契約を終えるなら、自社とBP・フリーランスとの契約も同じ日に終えられるかを確かめます。
要員が個人のフリーランスで、6か月以上の継続的な業務委託の場合を考えます。途中で解除するときや更新しないときは、少なくとも30日前までに予告が必要です(フリーランス法第16条第1項)。
ただし、例外もあります。元の委託契約が解除され、再委託した業務の大部分が不要になった場合などです(同法施行規則第4条第2号)。
フリーランス法とは、従業員を使わない個人などに仕事を頼むときのルールを定めた法律のことです(2024年11月1日施行)。予告の例外と通知の例文はフリーランス法の中途解約は30日前予告|例外と通知例文を解説にまとめています。
例文:出社できないことを客先に伝える
〇〇様
出社必須化の件、弊社要員の〇〇と相談いたしました。家庭の事情で、週5日の出社は難しいとのことです。
12月末の契約満了をもって、〇〇は交代させていただき、1月からは週5日出社が可能な要員をご提案いたします。
候補者のスキルシートは、11月14日までにお送りいたします。
次の案件で勤務場所を書面にする方法
同じトラブルを防ぐには、提案の段階から「作業場所」「出社頻度」「変更時の扱い」を書いておくことです。2026年は、リモート可の案件が減り、出社を求める案件が増えたと感じる営業が多いテーマです。案件の傾向はSESの案件動向2026|募集要件・リモート可否の変化と営業の打ち手で解説しています。
書面に残す場面と書き方は、次のとおりです。
| 場面 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 案件メール・人材メールの条件面 | 「作業場所:港区(週2出社・他リモート)」 |
| 面談の議事録 | 「出社頻度:当面週2、変更時は1か月前に相談」 |
| 注文書・個別契約書 | 「作業場所:〇〇。出社頻度を変更する場合は、甲乙協議のうえ書面で定める」 |
| BP・フリーランスとの契約 | 客先との契約と同じ作業場所・交通費条件 |
条件面の書き方はSESの条件面の書き方|案件・人材メールに入れる14項目と記入例が参考になります。なお、リモートでも客先が要員に直接指示を出していると、偽装請負を疑われます。在宅での注意点はSESのテレワークは偽装請負になる?在宅常駐のOK・NG基準で確認してください。
チョータツとxhoursで、出社できる要員を早く探す
自分で交代要員を探すなら、BPに「出社可能な人材」の提案依頼メールを一斉に送り、届いた返信を表にまとめるのが基本の方法です。ただ、出社開始日が迫っていると、返信を待つ時間がありません。
チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有するツールのことです。3,000社以上が利用し、無料で始められます。
| やること | 自分でやる場合 | チョータツ・xhoursを使う場合 |
|---|---|---|
| 交代要員を探す | BPに依頼メールを送り、返信を待つ | チョータツで連携した会社の営業中人材がデータベースになる |
| BPへ依頼する | 1社ずつメールを送る | チョータツのパートナーへのメール配信機能で送れる |
| 個人のエンジニアに声をかける | 知り合い経由で探す | xhoursでITフリーランスに直接スカウトできる |
xhoursとは、企業がITフリーランスに直接スカウトできるサービスのことです。数千名のフリーランスのデータベースから、勤務地や出社の条件に合う人を探せます。
よくある質問
- Q. 客先から急に出社必須と言われたら、断れますか?
- 契約書の作業場所が「リモート」なら、変更は話し合いで決めるものです。すぐに断るより、頻度・交通費・単価を条件にした協議を申し入れるほうが、関係を保てます。
- Q. 出社になった分の交通費は、客先に請求できますか?
- 契約で決めたとおりです。取り決めがなければ請求しにくいので、出社への変更と同時に、単価込みか実費精算かを覚書で決めます。
- Q. 出社を理由に単価を上げてもらうことはできますか?
- 交渉はできます。通勤の負担や、出社できる要員を確保する難しさを材料にします。変更は、次の更新月からにすると合意を得やすくなります。
- Q. 要員が出社を拒否したら、すぐ退場させるべきですか?
- すぐ退場させる必要はありません。まず今の契約期間をリモートのまま終えられるかを客先と相談し、並行して交代要員を探します。
- Q. フリーランスの要員との契約も、すぐに終えられますか?
- 6か月以上の継続的な業務委託なら、原則30日前までの予告が必要です(フリーランス法第16条第1項)。元の契約が解除された場合などの例外もあります。
まとめ
出社必須化を言われたら、まず個別契約書・注文書の作業場所の書き方を確かめる
客先に返事をする前に、要員に出社できる日数・通勤・希望条件を聞く
出社を受けるなら、交通費と単価を見直し、覚書か注文書で書面に残す
出社できないなら、更新しない・交代を出すのどちらかを早めに提案する
次の案件からは、作業場所・出社頻度・変更時の協議を条件面と契約に書く
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「民法」(第651条 委任の解除、第656条 準委任)
e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)」(第16条 解除等の予告)
e-Gov法令検索「厚生労働省関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」(第4条 予告が不要な場合)