偽装請負の通報への対応|通報後・是正指導の流れと、SES営業が当日やること・証拠確認・客先と直す4項目
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
偽装請負の通報とは?誰がどこに通報するのか
偽装請負の通報とは、働いている人などが「偽装請負の疑いがある」と労働局に知らせることです。法律では申告と呼びます。SES会社の営業が知っておくべきなのは、通報先・通報する人・法律の根拠の3つです。
偽装請負とは、契約書は請負や準委任なのに、実際には客先がエンジニアに直接指示を出している状態のことです。これは、許可や手続きのいる「派遣」を、請負のふりをして行っていることになります。定義の詳しい説明は、偽装請負とは?SESとの違いと違法になる仕組みをわかりやすくで解説しています。
| 通報先 | 主に扱う内容 | 法律の根拠 |
|---|---|---|
| 都道府県労働局 | 偽装請負・二重派遣など派遣法の違反 | 労働者派遣法 第49条の3 |
| 労働基準監督署 | 残業代の未払い・長時間労働など | 労働基準法 第104条 |
| 弁護士・労働組合 | 会社との交渉・裁判の相談 | ― |
通報するのは誰か
通報するのは、客先で働くエンジニア本人が多いと考えられます。ほかに、すでに辞めた元社員や、BP(取引先の会社)から来ているエンジニアのこともあります。
SES営業にとって大事なのは、自社のエンジニアだけでなく、BPのエンジニアからも通報が起こりうることです。商流のどこで通報が起きても、同じ現場の全社に調査が及ぶ可能性があります。
通報した人を不利益に扱うことは禁止
労働者派遣法第49条の3第2項は、申告したことを理由に解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めています。労働基準法第104条第2項にも、同じ趣旨の決まりがあります。
公益通報者保護法も、通報したことを理由にした降格・減給などを禁じています(第5条)。派遣で受け入れた人について、派遣元に交代を求めることも不利益な取扱いとして禁止されています。
「誰が通報したのか」を探したり、通報を理由に契約を切ったりしてはいけません。調査への対応とは別に、通報者への接し方にも気をつけましょう。
2026年12月1日から公益通報者保護法の改正が施行される
改正公益通報者保護法(令和7年法律第62号)は、2026年12月1日に施行されます(消費者庁)。主な変更点は次の4つです。
| 変更点 | 中身 | SES営業への影響 |
|---|---|---|
| 通報者探しの禁止 | 正当な理由なく通報者を特定しようとすることを禁止 | 「誰が言ったか」を聞くこと自体が違反になりうる |
| 刑事罰の新設 | 通報を理由にした解雇・懲戒に拘禁刑・罰金。会社にも罰金 | 通報者の交代や処分は絶対に避ける |
| 推定規定 | 通報から1年以内の解雇・懲戒は、通報が理由と推定 | 会社側が別の理由を示す必要がある |
| フリーランスの保護 | 業務委託のフリーランスも保護の対象に | BP経由・直接契約のフリーランスにも同じ配慮 |
施行前でも、通報者探しや交代は避けるべき行為です。社内の営業ルールに、今のうちから書き込んでおきましょう。
通報された後の流れ【時系列】
通報された後は、「調査」→「指導」→「是正と報告」の順に進むのが基本です。直さずに放置すると、「勧告」「企業名公表」へ進む可能性があります。
指導監督とは、労働局が会社に報告を求めたり、立ち入って調べたりして、法律が守られているか確認することです。各段階の根拠は、労働者派遣法の条文です。権限は厚生労働大臣にありますが、実際には都道府県労働局が対応します。
| 段階 | 労働局がすること | 会社がすること | 根拠 |
|---|---|---|---|
| ①通報(申告) | 内容を受け付ける | ―(まだ知らないことも多い) | 派遣法49条の3 |
| ②報告の求め | 契約書や記録の提出を求める | 資料を正直に提出する | 派遣法50条 |
| ③立入検査 | 事業所に入り、質問・書類の確認をする | 担当者が対応し、質問に答える | 派遣法51条 |
| ④指導・助言 | 口頭や文書で是正を求める | 現場の実態を直す | 派遣法48条 |
| ⑤是正の報告 | 直ったかを確認する | 直した内容を報告する | 指導への対応 |
| ⑥勧告・公表 | 受け入れ側に勧告、従わなければ公表 | ―(ここまで進ませない) | 派遣法49条の2 |
①通報から労働局の連絡まで
通報を受けた労働局は、まず事実かどうかを調べます。調査にかかる期間は、法律で決まっていません。
SES企業が最初に気づくのは、客先から「労働局から連絡が来た」と言われたときが多いです。自社に直接、資料の提出依頼が届くこともあります。
②報告の求め:資料の提出
派遣法第50条により、労働局は派遣をする会社と受け入れる会社の両方に報告を求められます。報告をしない、または嘘の報告をすると、30万円以下の罰金です(第61条)。
求められやすい資料は、次のとおりです。
業務委託(準委任・請負)の契約書と注文書
作業の指示がどう流れているかがわかる資料(体制図、指示の記録)
勤怠や稼働時間の記録、作業報告書
現場の業務責任者の名前と役割がわかる資料
③立入検査:現場と事務所の確認
派遣法第51条により、労働局の職員は事業所に立ち入り、関係者に質問し、書類を確認できます。立入りを拒んだり、質問に嘘で答えたりすると、30万円以下の罰金です(第61条)。
調べられるのは「労働者派遣事業を行う事業主」と「その役務の提供を受ける者」です。SESでいえば、エンジニアを出している会社と、受け入れている客先の両方が対象になりえます。立入検査では、書類上の契約と現場の実態が合っているかが見られます。「契約書は準委任なのに、客先の社員が毎朝タスクを割り振っている」といったずれが、そのまま指摘の対象になります。
④指導・助言:違反の指摘
違反が確認されると、労働局は指導・助言を行います(第48条)。指導は口頭のこともあれば、文書で出ることもあります。文書指導とは、直すべき点を書面で示す指導のことです。
指導の対象は、SES企業だけではありません。厚生労働省の集計では、令和7年度の指導監督は請負事業者241件、発注者214件でした。文書指導は請負事業者85件、発注者74件です。客先も指導を受ける側だということを、客先との話し合いで共有しましょう。
⑤是正の報告:直した内容を伝える
指導を受けた会社は、現場を直し、何をどう直したかを労働局に伝えます。報告の形や期限は、指導の内容によって変わります。
大事なのは、書類だけを直さないことです。契約書の文言を変えても、現場で客先が直接指示を出し続ければ、同じ指摘をまた受けます。直し方は、この記事の後半「客先と一緒に直す指揮命令・勤怠のポイント」で説明します。
⑥改善命令・勧告と企業名の公表
違反をやめず、指導を受けてもなお違反のおそれがあるとき、厚生労働大臣は受け入れ側(客先)に勧告できます(第49条の2第1項)。勧告に従わない場合は、その旨を公表できます(第49条の2第2項)。
SES企業(派遣をする側)が法律や労働関係の法律に違反した場合は、改善命令の対象になります(第49条)。改善命令に違反すると、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(第60条)。
罰則の中身と、誰が罰せられるかは、偽装請負の罰則はどちらに?発注者・SES企業・個人別に整理で解説しています。
通報とは別に起きること:客先の「雇用の申込み」
偽装請負が認められると、労働局の手続きとは別に、客先がエンジニアに雇用を申し込んだとみなされることがあります。これが労働契約申込みみなし制度です(派遣法第40条の6)。
労働契約申込みみなし制度とは、違法な派遣を受けた客先が、その人に雇用を申し込んだとみなす仕組みのことです。偽装請負では、法律を逃れる目的で請負などの名目にした場合が対象です。申込みの条件は、その時点の労働条件と同じです。客先が違法だと知らず、知らなかったことに落ち度もないときは、みなされません。
このみなしの申込みは、違法な状態が終わった日から1年間は撤回できません。エンジニアが承諾すれば、客先との雇用関係が生まれる可能性があります。
SES企業から見ると、大事な人材が客先の社員になり、契約も売上も失う可能性があるということです。客先にとっても大きな問題なので、客先から契約の打ち切りを言われる前に、商流の各社と情報をそろえることが大切です。判例の考え方は、偽装請負の判例・摘発事例|IT・SES業界の事例と営業の教訓でまとめています。
通報を知った日にSES営業がやること5つ
通報や労働局からの連絡を知ったら、その日のうちに「社内への報告」と「証拠の保全」を始めます。慌てて客先に謝ったり、現場の運用を勝手に変えたりすると、あとで説明が合わなくなります。
上司・経営者・法務担当に報告し、社内の窓口を1人に決める:いつ、誰から、どんな連絡があったかを書き残す。現場の営業が個別に動くと、説明が食い違います
対象の案件を特定する:客先名、エンジニア名、契約の種類(準委任・請負・派遣)、商流を一覧にする
記録を消さない指示と、通報者探しをしない指示を出す:メール・チャット・勤怠の記録を削除しないよう伝える。「誰が言ったか」を聞く、担当を急に替えるといった行動もしないと、チーム全員に伝える
商流の各社と客先に連絡する:上位の会社と下位のBPに事実確認を一緒に進めたいと伝え、客先とは「一緒に直す」前提で話し合いの場を持つ
弁護士に相談する日を決める:労働局への回答を出す前に、専門家に確認してもらう
やってはいけないこと
通報した人を探す、問い詰める、契約を打ち切る
記録を削除する、あとから書き換える
「指示は受けていなかったことにしてほしい」とエンジニアに頼む
商流の他社に相談せず、自社だけで労働局に回答する
偽装請負の証拠になるもの・確認する手順
偽装請負かどうかは、契約書の名前ではなく、現場の実態で判断されます。そのため、証拠は「契約書」と「日々の指示の記録」の2種類をそろえて確認します。
判断の物差しは、厚生労働省の「37号告示」です。37号告示とは、請負と派遣を分ける基準を国が示した告示のことです。中身は偽装請負の37号告示をやさしく解説|厚労省Q&AのSES該当箇所で説明しています。
確認する証拠の一覧
| 種類 | 具体例 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 契約書類 | 基本契約書、個別契約書、注文書・請書 | 契約の種類、業務の範囲、責任者の定め |
| 指示の記録 | メール、チャット、議事録、タスク管理 | 客先の社員が個人に直接指示していないか |
| 時間の記録 | 勤怠表、稼働報告書、入退館記録 | 客先が始業・終業や残業を決めていないか |
| 体制の記録 | 体制図、責任者の名簿、座席表 | 自社の責任者が指示を出す仕組みがあるか |
エンジニア側が証拠として出しやすいのは、客先社員からの直接の指示が残ったチャットやメールです。会社側も同じ記録を見て、どこまでが自社の責任者を通した指示かを確かめます。
証拠を確認する6ステップ
基本契約書と個別契約書を出し、契約の種類と業務の範囲を確認する
自社の業務責任者が誰で、どこで働いているかを確認する
直近3か月のメール・チャットから、客先から個人への指示を探す
勤怠表・稼働報告書で、始業・終業や残業を誰が決めたかを確認する
商流の上位の会社と、契約書の内容(特に再委託の可否)を突き合わせる
確認した事実を時系列の表にまとめ、弁護士と共有する
勤怠の扱いは、SESの勤怠管理は違法?客先が管理するNG例と日報・週報の扱いで解説しています。
商流の各社と連携するときの進め方と例文
SESは商流が長いため、1社だけで事実を確かめることはできません。上位の会社は客先との契約を、下位のBPはエンジニアの働き方を知っています。調査への回答がずれないよう、各社と情報をそろえます。
商流とは、仕事がエンド(発注元)から、いくつもの会社を通って流れてくる経路のことです。
| 相手 | 確認すること | 注意点 |
|---|---|---|
| 上位の会社・元請け | 客先との契約の種類、客先の窓口、労働局からの連絡の有無 | 自社だけの判断で客先に直接連絡しない |
| 下位のBP | エンジニアの雇用形態、指示の受け方、勤怠の付け方 | 通報者を特定しようとしない |
| 自社のエンジニア | 誰から、どんな指示を受けていたか | 記録を消さないよう伝える。責めない |
上位の会社に送る連絡の例文
件名:【ご相談】〇〇様案件の契約・体制の確認について(株式会社△△) 株式会社〇〇 □□様 いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。 〇〇様案件(現在、弊社より1名参画)につき、 契約と現場の体制を確認したい事項がございます。 ・貴社と〇〇様との契約の種類と、業務の範囲 ・現場での指示の流れ(業務責任者の配置) ・この件で労働局などからご連絡があったかどうか 事実を正しくそろえるため、一度お打ち合わせの時間を いただけますでしょうか。候補日は〇月〇日(〇)〜〇日(〇)です。 よろしくお願いいたします。
メールには、推測や「偽装請負だった」という結論を書かないようにします。事実の確認をお願いする書き方にとどめ、判断は弁護士と相談してからにしましょう。
客先に送る連絡の例文
客先と直接の窓口がある場合、または上位の会社と相談して自社から連絡すると決めた場合は、次の形で送ります。
件名:【ご相談】常駐体制の確認と改善のお打ち合わせのお願い 株式会社〇〇 〇〇部 〇〇様 いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。 〇〇プロジェクトの作業の指示の流れと勤怠の扱いを、 御社と一緒に確認させていただけないでしょうか。 労働局から確認が入っている件もあり、 契約の内容と現場の運用をそろえたいと考えております。 候補日:2026年10月5日(月)14時〜、10月9日(金)10時〜 所要時間:60分ほど 当日は、体制図と現在の指示・報告の流れをお持ちします。 ご多忙のところ恐れ入りますが、ご検討のほどよろしくお願いいたします。
例文では、通報者が誰かには触れていません。「労働局から確認が入っている」事実と「一緒に直したい」目的だけを伝えます。
事実を時系列でまとめる表のひな形
証拠確認の6ステップ目で作る表の例です。弁護士や上位の会社との打合せに、そのまま持っていけます。
| 日付 | 出来事 | 誰から誰へ | 裏付けの記録 |
|---|---|---|---|
| 2026/7/1 | 参画開始。責任者は自社の佐藤 | ― | 個別契約書・体制図 |
| 2026/8/20 | 客先リーダーがチャットでタスクを直接依頼 | 客先→本人 | チャットの画面 |
| 2026/9/25 | 労働局から上位の会社へ連絡 | 労働局→上位 | 上位からのメール |
客先と一緒に直す指揮命令・勤怠のポイント
是正の中心は、「誰が指示を出すか」と「誰が勤怠を管理するか」を契約どおりに戻すことです。準委任や請負で常駐するなら、指示と勤怠の管理はSES企業側が行います。37号告示も、SES企業が自分で作業の指示や労働時間の管理をしていることを求めています。
| 見直す点 | 偽装請負と疑われる状態 | 直した後の状態 | 主に動く人 |
|---|---|---|---|
| 作業の指示 | 客先社員がエンジニアに直接タスクを割り振る | 客先→自社の業務責任者→エンジニアの順に伝える | 客先・自社の責任者 |
| 勤怠の管理 | 客先が出退勤を記録し、遅刻を注意する | 自社が勤怠を管理し、客先には稼働報告を出す | 自社 |
| 残業・休日出勤 | 客先社員がその場で残業を指示する | 客先は自社の責任者に相談し、自社が判断する | 客先・自社の責任者 |
| 評価・注意 | 客先がエンジニアを直接叱る、評価する | 要望は自社の責任者に伝え、自社が対応する | 客先・営業 |
指揮命令を直すときのポイント
業務責任者とは、SES企業側で作業の指示や管理を行う人のことです。客先からの依頼は、業務責任者を通してエンジニアに伝える形にそろえます。
客先との定例で「依頼は業務責任者経由」と決め、議事録に残す
チャットのグループや依頼の窓口を、業務責任者が入る形に作り直す
1人だけで常駐している場合は、責任者の置き方を見直す
具体的なOK・NGの例は、準委任契約の指揮命令はどこまで?SES現場のOK・NG具体例20で確認できます。残業の指示が問題になった現場では、業務量の相談も必要です。SESの客先で残業が続くときの営業の対応|安全配慮義務と交渉の交渉手順が使えます。
勤怠を直すときのポイント
勤怠の是正は、客先の勤怠システムへの入力をやめ、自社の記録を正本にすることから始めます。客先に出すのは、契約で決めた稼働報告や作業報告です。
出退勤の記録は自社のシステムで行う
客先へは、月次の稼働時間と作業内容を報告書で出す
入館記録は「建物の管理」の目的に限って使ってもらう
次の参画からは、入場前の案内で指示と勤怠の窓口を伝える
エンジニアへの説明の例文
是正の内容は、現場のエンジニアにも自社から説明します。通報の話には触れず、変わる点だけを伝えます。
〇〇さん 来週10月13日(月)から、客先での作業の依頼の受け方が変わります。 ・作業の依頼は、弊社の業務責任者□□から伝えます ・客先の方から直接依頼があったときは、「□□に確認します」と答えてください ・出退勤は、客先の勤怠システムではなく弊社の勤怠表に入力してください わからない点は、いつでも□□か私に連絡してください。
契約の形を見直す場合
現場の実態として客先の直接指示が欠かせないなら、準委任のままでは直せません。派遣契約に切り替えるか、体制を組み直すかを客先と決めます。派遣契約にするには、SES企業が労働者派遣事業の許可を持っている必要があります。許可がなければ、この選択肢はとれません。
是正の記録を残す方法
是正が終わったら、「何を、いつ、誰と、どう直したか」を1枚の記録に残します。労働局への報告にも、次の案件での再発防止にも使えます。
是正記録のチェックリスト
客先との打ち合わせの日付と参加者
作業の指示の流れ(直す前/直した後)
業務責任者の名前と役割
勤怠の管理方法(直す前/直した後)
契約書・注文書の変更点(あれば)
エンジニアへの説明の日付と内容
次に確認する日(例:2026年10月30日(金))
Excelで管理するなら、案件ごとに1行を作ります。「指示の窓口」「勤怠の管理者」「業務責任者」の列を足すと、ほかの案件でも同じ点を確認できます。
弁護士に相談するタイミングと準備
弁護士には、労働局へ回答する前に相談するのが基本です。回答の内容が、その後の指導や、客先との契約の話し合いに影響するためです。
相談の前に、次の資料をそろえておくと話が早く進みます。
基本契約書・個別契約書・注文書(商流の上位分も含む)
体制図と、業務責任者の名前・勤務場所
指示の記録(メール・チャット)を時系列でまとめた表
勤怠表・稼働報告書
労働局からの連絡の内容(日時・担当部署・求められた書類)
社会保険労務士は、派遣法や勤怠の運用に詳しい専門家です。契約の見直しや現場の運用ルールづくりでは、社会保険労務士に相談するのも一つの方法です。
偽装請負を起こさない現場をつくる予防チェック
通報への一番の備えは、そもそも偽装請負の状態をつくらないことです。営業が提案前・参画中に確認できる項目をまとめました。
| # | 確認すること | 確認するタイミング |
|---|---|---|
| 1 | 契約の種類(準委任・請負・派遣)と業務の範囲 | 提案前 |
| 2 | 自社の業務責任者を置けるか | 提案前 |
| 3 | 客先から個人への直接指示がない運用か | 参画直後 |
| 4 | 始業・終業・残業を客先が決めていないか | 毎月 |
| 5 | 商流が深すぎず、再委託のルールが明確か | 提案前 |
| 6 | エンジニアが相談できる社内窓口があるか | 参画中 |
特に6は大切です。エンジニアが社内で相談できれば、問題が小さいうちに直せます。月1回の面談で「客先から直接の指示が増えていないか」を聞くだけでも、予防になります。
NG行為の全体像は、偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選と予防策にまとめています。
案件の条件管理をチョータツで楽にする
予防チェックを自分で回す場合は、Excelなどで案件ごとに契約の種類・責任者・商流を記録します。ただ、案件が増えると、提案のたびに条件を探し直す手間がかかります。
チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。案件ごとの条件を管理し、提案前に確認できます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 案件の条件を残す | Excelやメールに分散 | 案件情報としてまとめて管理 |
| 提案前に確認する | 過去のメールを探し直す | 管理している案件情報で確認 |
| チームで共有する | ファイルを送り合う | 案件・人材の情報を共有 |
| 入力の手間 | すべて手入力 | AIが入力を手伝う |
チョータツは3,000社以上が使っていて、無料で始められます。他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できます。条件が明確な案件を選んで提案することが、偽装請負の予防にもつながります。
よくある質問
- Q. 偽装請負を通報されたら、どうなりますか?すぐに会社名が公表されますか?
- 労働局がまず報告の求めや立入検査で事実を確かめ、違反があれば指導します。すぐには公表されません。公表は、勧告に従わなかった場合にできると定められています(派遣法第49条の2)。直せばそこで止まるのが基本です。
- Q. 労働局の立入検査は断れますか?
- 断れません。立入りを拒んだり、質問に嘘で答えたりすると、30万円以下の罰金の対象です(派遣法第61条)。
- Q. 客先(発注者)にも調査が入りますか?
- 入ることがあります。派遣法は、役務の提供を受ける者にも報告や立ち入り検査ができると定めています。令和7年度は発注者214件の指導監督が行われました。
- Q. 偽装請負の証拠として何が見られますか?
- 契約書類と、現場の実態を示す記録です。客先社員からの直接指示が残ったメールやチャット、勤怠表、体制図などが主な確認対象になります。
- Q. 弁護士にはいつ相談すればいいですか?
- 労働局への回答を出す前が基本です。契約書・指示の記録・勤怠表をそろえて相談すると、見通しが立てやすくなります。
- Q. 通報したエンジニアとの契約を終わらせてもいいですか?
- 申告を理由にした解雇や不利益な取扱いは、派遣法第49条の3と労働基準法第104条で禁止されています。公益通報者保護法は、派遣で受け入れた人の交代を求めることも不利益な取扱いとして禁じています。契約の変更は、必ず専門家に相談してから判断しましょう。
- Q. BPのエンジニアが通報した場合、自社も調べられますか?
- 同じ現場の商流に入っていれば、調査が及ぶ可能性があります。BPと上位の会社の両方と、契約と体制の情報をそろえておきましょう。
まとめ
偽装請負の通報先は主に都道府県労働局。派遣法第49条の3が申告の根拠
労働局は報告の求め・立ち入り調査で事実を確かめ、違反があれば是正指導をする。会社は直した内容を報告する
指導に従わないと、改善命令・勧告・社名の公表に進むことがある
客先(発注者)も指導監督の対象。令和7年度は発注者214件
偽装請負が認められると、客先がエンジニアに雇用を申し込んだとみなされることがある
営業は、社内報告・証拠の保全・商流と客先への連絡・弁護士への相談を早めに進める
是正は「指示は業務責任者経由」「勤怠は自社で管理」の2点が中心。直した記録を残す
通報した人を探したり、不利益に扱ったりしてはいけない
一番の備えは、提案前に契約の種類・責任者・商流を確認すること
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(第40条の6・第48条・第49条・第49条の2・第49条の3・第50条・第51条・第60条・第61条)
e-Gov法令検索「労働基準法」(第104条 監督機関に対する申告)
e-Gov法令検索「公益通報者保護法」(第2条、第3条、第5条)
消費者庁「公益通報者保護制度の概要」(令和7年改正法の施行日 2026年12月1日)
厚生労働省「労働契約申込みみなし制度の概要」
厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」
厚生労働省「労働者派遣事業に係る指導監督の実施状況」
東京労働局「あなたの使用者はだれですか?偽装請負ってナニ?」